上 下
77 / 308

うちの隊長は背後の話しをちゃんと聞いてるのでそろそろやめてほしいと副隊長は願ってます

しおりを挟む
 ラグナー、アレク、レドフォードは私服に着替えゴルディーニと共に城下町へと向かって歩き出した。
 そこで早速ゴルディーニは後悔する事になった。

「なんかすごく目立ってませんか?」

 ぽつり……
 ゴルディーニの言葉にレドフォードは言う。

「二人そろって歩いている時はいつもの事ですよ。
 隊長と副隊長が並ぶ景色は月一警邏の名物で見物客まで来てパレードみたいな状況なんですよ?」

 知らなかったのですか?と三十歳に近いゴルディーニも血統の良さを表すように黒い髪と黒の瞳の持ち主だった。
 ちなみに王族は各国の姫君との結婚からかカラフルな色が多く、それは上位になれば上位になるほど現れる傾向があり、そしてそこまで外国と交流のない貴族になるにつれて黒色が現れると言う不思議な現象として現れていた。
 ちなみに街の人は濃い薄いはあれど茶色い髪の茶色い瞳と言う色が一般的。
 だからラグナーのように黄金の髪にアイスブルーの瞳はかなり限定的なので生まれが想像つきそうだったが、隣国に行けばそれは大多数でラグナーの居た孤児院が隣国に近い事もありそちらから流れた者の……と考える方が自然だった。
 ちなみにアレクの家がこっそりと探した事があったが該当者はなく一般に揶揄される言葉が真実だった事は今更ながらなので伝えられる事はなかったが、それでもラグナーの金の髪とアイスブルーの瞳は誰もが心をときめかすには十分で、街の女性はもちろん男性も虜にしているのをすぐそばで体験するゴルディーニはとても居心地悪そうにいる中レドフォードはそっと耳打ちする。

「閣下は存じ上げないと思いますがここで隊長と親しげに話をすると何言われるか判らないので背後で二人の邪魔にならないようについて行くのが我々の役目です」

 何で?とレドフォードを見るも

「隊長と副隊長と言うセットが重要であって我らはただの背景もしくは虫以下の存在です」
「ええと、それは君の思い込みと言う物では?」

 冷や汗を流しながら目を白黒するする雲の上の存在に

「いいですか。声を掛ける時は話しかけているのを悟られないように。
 一般市民にとって騎士の階級は勿論爵位何て知った事ではありません。
 自分がこの場にいると勘違いすると一生のトラウマを負いますよ?
 一日あれば十分学習できますよ?」
「それは……
 思い込みではなく?」
「閣下は立場の圧力よりも数の暴力の方が怖い事を知りたいですか?
 毒を賜る死に方と肉を削ぎ落とされながら死んでいく方とどちらを所望いたしますか?」

 アルホルン以来時々見せるようになった死んだ魚のような目をするようになったレドフォードにゴルディーニは本気でそんな目に合うのだろうかと震えながらも想像して

「そんな事なら背景になる方が良いのだろうな」
「さすが閣下でらっしゃる。
    お家の事を思えば自分の存在価値を捨てられて見事でらっしゃる」
「ああ、シーヴォラ隊の特殊性は前々から気にはなってたが、ここまで独自路線を歩んでいた事は知らなかった。
 共通事項として戻ったら連絡しなくては……」
「閣下、声をもっと小さく。
 隊長達の会話の邪魔をすると野菜くず投げられますよ?」
「そこまで?!」
「まだその程度です」  
「その程度?!
 となるとヴォーグ殿はよほどうまくやっていたのでしょうな」
「あいつは先に街の住民に無償で町医者まがいの事をやっていたから信頼の方が上でしたので」
「そんな事も?!」
「緑の魔法使いになりたいといろいろ薬を作る訓練の成果を分けていたみたいです」
「騎士団に持ってこれば買い取った物を」
「金のある人は金を出して買えばいいというのがあいつの方針なので。
 そしてなければ労働と引き換えに渡していたと聞いてます」

 レドフォードを見上げ

「仲がいいんだな?」
「アルホルンの後に何日か食事と少しお酒を交わした時に能力だけなら騎士団にも入れるのに何で事務方がいいのかって聞けば、薬を作る時間、そしてそれを扱う時間、薬の出来を確かめる時間を考えれば自分が食べるだけの収入があれば十分だと言ってまして……」

 あくまでも自分の本分は緑の魔法使いと言うスタンスを貫こうとする精神に俺はそういう生き方もあるのだと感心していた。

「一日だけ緑の魔法使いのあいつの仕事について行ったんです。
 まだ剣が握れなくって、仕事を休ませてもらってあいつのかばん持ちをしてついて行けばスラムに潜り込んで。
 だけど既に交流があったのかスラムの主みたいなやつに挨拶して女子供から薬の実験台にと治療を施して行くんです。
 そしてお金の代わりにスラムに住むスライムをかき集めてこさせて、あいつなんでか数分でスライムを手懐けたのですよ」
「は?」

 レドフォードも信じられなかったようにゴルディーニも耳を疑うようにレドフォードの顔を見てしまう。

「その後子供達とスライムを連れてスラムの中を歩き回って、最後にはスライムを子供達に渡して
 『みんながかかる病原菌をスライムが退治してくれるからみんなでスラムの中をスライムと散歩して綺麗にするんだよ?』
 って手渡して、その頃には子供もスライムもすげー仲良しで俺の常識何なんだろうって、その日久し振りにアルホルンの夢を見ませんでした」

 代わりにスライムの夢を見たというのは聞かなくても想像が付くも

「それはシーヴォラ殿も知っておいでで?」
「さあ?
 聞いた事はないけどそう言った話位してるんじゃないかな?
 ヴォーグの『先生達の常識非常識話し』を隊長も良く隊舎で話してくれていたので」

「……楽しそうですね?」
「ええ、あの隊長もよく笑ってくれて、楽しかったです。
 今は何だかあいつが来る前に戻ったみたいで少し寂しいですが……」
 
 少しだけ近くになれたどころか、年齢もそう違わない友人関係にもなれたと思った気がしていたものの、それは錯覚だったかのような温度のない瞳に映し出された自分の姿を見てもうあの時には戻れない事をそれ以上に悪化していた事を俺は一瞬で理解してしまった。



















しおりを挟む
感想 57

あなたにおすすめの小説

【書籍化確定、完結】私だけが知らない

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

処理中です...