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うちの隊長はまだ知りません

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 ユハが女装して目の前に現れた。
 線が細くて背も小さい事からギルドでは事務員から可愛いとよくからかわれている光景を見ていたが

「何で違和感がないんだ……」

 ピンク色のシンプルながらも可愛らしい、下町のお嬢さんがちょっとおしゃれをしたような恰好をしていた。
 しかもカツラをつけてまごう事なき少女の出で立ちでにこにこと笑顔でするりと俺の腕に長袖で隠した弓使いの筋肉質な腕をからめてきた。
 そして如何にも俺に気があるという用にやたらと柔らかな詰め物をした胸をふにふにと押し付けて来て

「これが本物だったらお前アウトな?」

 ちらりと視線を向けた先を覗いていれば、そこには見慣れたシーヴォラ隊の隊服を纏う一隊が警邏に回っていた。
 しかもその先頭には黄金と漆黒の……
 見つかるのは仕方がないとして、せめて俺が気付いてないという位置取りをした。
 ユハの変装は完ぺきで、この距離なら気付かれないだろうからせめて一瞬でも後ろめたさを浮かべた顔を見られないように背を向けるのだった。

「今夜は修羅場か?」
「その前に説明しますし、ここ最近の話しはしてあるので大丈夫かと思います」
「何でぇ、詰まらん」

 言いながらも俺の腕に胸を押し当てたままぐいぐいと引っ張って

「上で少し話をしよう。部屋は取ってある」
「ひょっとして楽しんでます?」
「まぁ、いろいろ話しておかないといけない事が多いからな」

 殺気の籠った視線を背中で受けながらも宿屋に連れこまれて取ってあるという二階へと案内された。
 そして部屋に入った所でユハが断音の魔法をかけた。
 彼らが今ギルドから受けている依頼を知っている為にそれは納得できたものの、ユハは鬱陶しいと言いながらワンピースを床に脱ぎ捨てた……

「男前だなぁ」

 思わずと言う様に呆れていつものぴちっとしたズボンとラフなシャツと言う姿に着替えるのを見ながら

「一応仕事とプライベートぐらいはちゃんと分けてるつもりさ」

 言って俺に椅子を、ユハはベットにどかり座るのだった。

「で、何か収穫でも?」
「大ありだ。
 あのバイロンの野郎どうやら魔族と手を組んだようだ」

 その一言に思わず立ち上がってしまえば

「今のところ例のギルマスのバイロンに気づかれてはないが、多分魔族の方には気付かれたと思う。
 一瞬目が合ったってホルガーが言っていたからたぶん気づかれてる。
 今全員散って王都に潜伏してる事をヴァルターに連絡してほしい。
 一度明日には安全が確保できたらギルドに集合する事になってるからヴォーグが先にギルドに行ってそれなりに準備を頼むと伝言をしてくれ。
 ちなみに全員居所は不明だ」
「って、ユハ大丈夫なのか?!
 何なら一緒に行くか?」

 音は漏れないようにしてある物の思わず小声で叫んでしまえば肩をすくめて

「気持ちだけは貰っとく。
 みんな色んな所のスラムに潜り込んでいるとは思うけど、常に移動しているし全員どこかしらにマークを残して移動してるから今の所全員の無事は確認取れている。
 共通して言えるのは今は足取りをわからなくして無事ギルドにいち早く情報を届ける事だ。
 気を付けてはいるが、周囲に魔族の気配は今の所感じた事はないけど……」
「インキュバスは大体どの個体も残念な頭だから特に気にはしてなかったけどヴァンパイアキングはホルガーが灰にしたと言ってたからこちらも問題ないと思います。
 アルホルン以外にまだいたとなると厄介ですね」
「まぁ、一応俺と接触したお前も気を付けて置け」

 言いながらもユハは俺の膝に乗り上げてきた。
 息が荒く、そして顔も赤い。
 どことなく目がうるうるとしていて、危険を感じて逃げ腰になるもそうはいかなかった……

「ユハ……」
「悪い。ここんところずっと逃亡生活でさ、ヴォーグの顔見て安心したらちょっと……」
「トイレと風呂場はあちらです」
「やー、最近恋人にずっと会ってないから男ならわかるだろ?」
「悪いけど俺で穴埋めしないでください」
「上手い事言うなぁ。
 だいじょーぶだって、絶対ばれないようにうまくやるから」
「脱がないし脱がさないでください!」
「どうせ浮気疑惑が発生してるんだから楽しもうか?」
「だからって無理だって!!!」
「いやぁ……二か月ぶりぐらい?
 あ、アルホルン行く前が最後だったか?」

 膝の上に乗り上げたユハを押しのけて逃げようとした俺にタックルをかましてそのままベットに倒れ込んで、器用にも一瞬で俺のズボンを膝まで下ろしたかと思えば、気付いた時にはしっかりと咥えていたユハに俺は何でこの国の男ってこういう肉食が多いのかと呻いてしまう。

「ああ、もしラグナーに知られたら俺が全力で謝るからすぐに連絡してくれ」
「こうなったら絶対知られたくない!」
「ってか、俺が恋人なの言ってなかったのか?」
「恋人違う。お前がレイプ魔の間違いだ」
「言う割には毎回気持ちよくしてるくせに?
 全力で嫌がらないくせに?
 お前が本気だったら俺太刀打ちできない事ぐらい理解してるぞ」
「ああ、あの時なんでお前らの借金に全力で助けに行ったんだろう……
 あの時売られてた方が俺が平和だったのに……
 お礼がマイヤかテレサじゃない方が既におかしいだろ……」
「まぁ、世間一般ではそっちが正当な報酬かもしれんが、生憎所詮は体が売りの冒険者の世界だからな。
 俺の一大ピンチを助けてくれたヴォーグに全力で生涯尽すさ。
 ヴォーグからのサービスは期待してないけど気持ちよくぐらいはしてやるよ。
 なーに、お前はただ寝転んでりゃいいんだよ」

 言いながらも服を脱ぎすてて一人俺を咥えて楽しむ光景を見ながら俺はいつまで付き合わなくてはいけないのだろうかと悔しい事に昔からこう言う事を強要されて来たというユハは確実に俺の性感帯を刺激して来て……

「ほんともう十分だからこう言うのは勘弁してくれ……」
「言いつつも未だ関係は継続中。
 俺もラグナーには嫌われたくないからばれるまで黙ってるからそこは安心しとけ」

 ウインクしながらも、ラグナーとはまた違う華奢ながらも一切の無駄のない筋肉を纏う裸体は確かに男を誘う事に慣れていて……

「何で冒険者してる時とこんなにも別人なんだよ……」

 首筋に顔を埋めながら娼婦のごとく盛大に尽しているユハに、それでも最後まで抵抗できない俺自信を呪うのだった。











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