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うちの隊長はこの世の至福をあじわってます

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 広いベッド。
 まっさらなシーツ。
 豪華なシャンデリアとお城のような調度品に囲まれ、天蓋付のベッドの中でぞくりと背筋さえ凍えるようなアイスブルーの瞳を持ち、黄金の髪がその美しい顔立ちを縁取る奇跡のような美貌を持つ人が俺の下で身悶え喘いで啼いていた。

 なんて卑猥な光景なのだろう。

 片足を高く持ち上げ腰を打ちつけて、よほど気持ちいいのか手を添えなくても高ぶる先端から涎を垂らす先はその胸元を飾る美しい二つの蕾のすぐ隣。
   流れてシーツの海に飲まれる光景に身震いを起こした。
 すぐ横に置かれたテーブルに並ぶワインの効果もあるのかもしれないが、美しい啼き声が響く室内にこの奇跡のような人のこんな卑猥な姿に我慢なんて出来なくって何度目だろう俺は彼の最奥で精を放っていた。
 これ以上奥に行けないというのに波打つそこは尚も俺をのみ込もうとして限界を迎えた今も搾り取ろうとしている。
 勿論、奇跡のような美しい人も同時に限界を迎えていて、放った精は自ら自分の顔を汚すという息を飲む光景に俺は我慢が出来なくって、力を失い引きずり出した物でも駄犬のように腰を振りながらその美しい顔を穢す、いや、妖しいまでに淫らに変貌させてしまった物を舐めつくして、なおもしっとりと汗ばむ肌を味わうのだった。

「ヴォーグもうむり、さすがにこれ以上は……」

 珍しく先に限界を訴える声に俺はなお両手を使って快感を呼び出していた。

「そんな事ないよ、すごくイイって言ってるよ」

 ひくひくと何も出せなくなったモノでも裏の筋がくっきりと浮かび上がっていて、今にもイキそうな状態になっている。

「それとも手よりも口の方が良い?」
「口、好き……
 だけど少しだけ休ませて……」

 うるうると今にも零れんばかりに涙を溜めての懇願は嗜虐心しか生まない事を知っているはずなのにと思うも、目尻にキスを落してその屈辱だけはなかった事にしてあげた。

「ならもう一回イク所見せてくれたら少し休憩しよう?」

 その言葉に可愛くもコクコクと頷く姿は俺だけが知るベッドの上だけの姿だ。
 ああ、もう何でこの人はこんなにも綺麗なのに俺を殺せるくらい可愛い姿をさらすのだろうと後ろを三本の指で、前を彼の要望通り口で導いて行けば、既に何も出せない状態でも体を震わせて瞬く間に達してしまう姿を俺は心行くまで味わっていた。
 ゆっくりと指を抜いて、先端を拭うようにチロリと舐めてから離れてもラグナーはまるで今も後ろに貫かれているというように喘いでいて、先端を撫でてやればそれだけでイッてしまった姿にイキっぱなしの状態から解放するべきかどうか真剣に悩むのだった。
 だけど約束なのでと悪戯はそれで終わりにして、ヴォーグは張り付く髪をその奇跡のような美しい顔から剥がしながらも我慢が出来なくてついキスをして下腹部へとてがのびてしまうのだった、が

「休むって約束したよな?」

 衝動が少し治まって思わぬ一言にこの手はこれ以上進める事が出来なくて何もしませんと言う様にひっこめるのだった。

「もちろん。
 ただラグナーが可愛くてつい……」
「水飲みたい……」
「すぐ用意させていただきます」

 密な毛足の絨毯を裸足で歩きながら戸棚からグラスを用意して冷たい水を魔法で召喚して用意した。
 透明でひんやりとした無臭の水はラグナーに良くせがまれるだけに水と言えばこれと言うように条件反射でヴォーグは用意していた。
 水指にも水を用意して何時でも飲めるようにとすぐそばの机に置いておく。
 水をごくごくと男前に飲むラグナーの喉の動きにヴォーグはつばを飲み込んでその光景を眺めてしまう。
 勢い余って口元から溢れた水が喉元を濡らして、そのまま胸元にした垂れ落ちていた。
 この人はこれがどれだけいやらしい姿のか理解しているのだろうか。
 何度この光景に頭を悩ましただろうか両の手ではもう数えきれない悩みにまた新たに悩むのだったが

「それにしてもすっごい贅沢だよなあ」

 ラグナーはグラスをテーブルに置いて裸のままベットに仰向けに転がった。

「はい。ブロムクヴィスト伯がラグナーのお祝いに遊びに来いっておっしゃってくれて鵜呑みにしてきたまではいいけど、一番いい部屋にまさか泊めさせていただけるなんてさすがに想定外でした」

 小さなキッチンもあり、侍女や執事の待機部屋もある。
 風呂やトイレはもちろん、このベッドルーム以外に食堂とリビングもある。
 広いテラスにはくつろげるようにカウチが置いてあり、そこからこのシャトーの葡萄畑が一望できるのだ。
 もちろんワンフロアに一室だけというプライベート空間が約束されていた。
    ヴォーグの快気祝いとラグナーの伯爵の祝いにと来る事にしたのだが、それでも大盤振る舞いしすぎだろと思うも嬉しすぎるサービスはしっかりと受け取っておく。
 
「いくら提案しただけで言ってみてもまさか実行するとは思わなかったなあ」
「驚かす事も含めてヴォーグに泊まらせたかったんじゃないか?」
「ですが、予約も取れない状況と聞いていたので見る事も早々に出来ないと思ってたのに」
 
 まさか、いつ来ても良いようにずっとこの部屋を空けていたとはさすがに想定してなかった。

 ヴォーグもベッドヘッドに背を預けて一泊金貨何枚だろうと想像するのも怖い室内を眺めながら足を枕に頭を乗せてきたラグナーの眩しいまでの黄金の髪を撫でてしまう。
 こんな風に甘えて来るなんて何で可愛いんだと思いながらも髪を撫でながら気持ちを落ち着けていれば

「ヴォーグのベッドでくっつくのも俺の楽しみだが、こうやって変な格好も挑戦するのも広いベットならではだな」
「ええ、ラグナーの体の柔らかさには驚きましたよ」
「怪我しない為の最低限の訓練だ。
 と言うか、ヴォーグだって体柔らかいだろ?」
「そりゃ、最低限はね。
 だけど自分と同じくらいやわらかい人になかなかお目にかかる事なんてないじゃないですか?」
「まぁ、アレクなんか士官学校時代はそれでいつも泣かしてたからな」
「理不尽……」

 ラグナーの士官学校時代の話しを聞いて何度クラウゼ副隊長に同情したか数えきれないくらいの逸話に今回も涙をなくしては聞けなかった。

「まぁ、アレクの話しは放って置いて……」

 ごろんと俺の上にのしかかる姿に期待は膨らむ。

「休憩は終わり?」
「まだ休憩中で」

 さすがにもう少し休ませろと笑顔で言われたら、この笑顔が曲者な事を理解した以上従うしかない。

「まぁ、お前も何とか体調戻ってよかったよ」
「ええ、エーンルート侯にはほんとお世話になりましたから。
 前ブルフォード侯にもお世話になりっぱなしになったし……」
「しっかり躾けてくれて助かったな。
 まぁ、当面ブルフォード侯の屋敷に両親が滞在するのなら悪い事は出来んだろうし」
「友人関係も洗い直したという位だから、逆に申し訳ない位ですしご婚約もしたそうです。
 エーンルート侯の次女の方と」
「おふ……
 あの鉄の女と……」
「王妃の護衛も兼ねた筆頭侍女をなされてるとお聞きしました」
「正直あの女は俺よりも剣の腕があるの知ってるか?」
「何で騎士団に居ないのか不思議な存在ですね?」
「騎士団程度の剣の腕じゃ満足できないからそんな所に意味がないと言ったのを覚えてる」
「これで副隊長とブルフォード侯は義兄弟ですか」
「悪夢だな……」

 言いながらももそもそと這いあがってきて足をまたぐように座る。
 ゆるゆると腰を押し付けながらももう少し話を楽しみたいというようにテーブルに手を伸ばしてフルーツの盛られたプレートを取り寄せる。
 一つは自分の口に、そして一つを俺の口に。
 赤く甘酸っぱいイチゴを食べてスパークリングワインに手を伸ばす。
 もちろん銘柄はシャトー・ブロムクヴィストのキュヴィリエ。
 一本金貨10枚と言うお祝いの場でよく見かける品だ。
 黄金の液体にはじけるような炭酸に人気は集まり、今は世に出て数年の銘柄でも国中から買い求める商人が多いと聞く。
 シャトー以外で購入すると倍の金額になるという奇跡の値段に貴族がこぞって群がるのだから物の価値なんてまったく理解できない。

「さっぱりとしてるのに濃厚な味だなあ」
「ええ、オーナーが言うには採算は取れないだろうが本気でいい物を作ろうとして出来た物だからとおっしゃってました。
 まぁ、今では希少性も付いて十分採算が取れる物になりましたが今度は供給が追い付かないという悩ましい問題が発生しました」
「まぁ、それだけ払っても欲しいって言う金持ちはどこにでもいるのだから満足させる事が出来るオーナーには感服だな」

 満足げにグラスを傾けたラグナーにもう一つイチゴを口元へと持っていけばその白い歯が真っ赤なイチゴを齧り取るように食べて、残りを俺が食べた。

「なんつーか、恥ずかしい奴だな」
「ラグナーがあまりに美味しそうに食べるのでつい食べたくなるのですよ」
「まぁ、美味い物は美味いし?
 って言うか、下のダイニングで出してもらったディナーの肉、あれお前が絡んでるだろ?」
「あはは、ばれますよね?」
「散々食べさせてもらっている俺が気付いたぐらいだからな」

 聞いてはいけないヴォーグの家の肉事情。
 分け前をもらってる割には消費の量が全然少ないのを気にはしていたが、まさかここで排出しているとは思いもしなかった。

「あの料理長昔は王宮の宮廷料理長でしたが育ててきた弟子も良い年になったので引退して街に自分の店を持ったとの事でしたが、やはり王宮のいい物を見てきた料理長には街で手に入る物では納得できないらしく、街でも宮廷料理長の料理を中々評価してもらえなかったようでくすぶっていた所をそれならいっそ田舎に引っ越そうかってなったらしく、反対する奥方と離縁してやってきたそうです」
「まぁ、王都都心部で育った人なら都落ちって感じで嫌がるって話を聞くぐらいだからな……」

 城壁の中で暮らせる幸せを考えた事のない発言に城壁の外で育った俺としては魔物に怯えなくて平和で良いじゃないかと呆れてしまうもそう言う分けにはいかないらしい。

「もっともここで新鮮な野菜とシャトー・ブロムクヴィストのワイン使い放題と言う奇跡に城勤めの時以上に張り切っていると自己申告ですが、せっかくなら美味しい肉料理も食べてみたいのは人として当然の欲求でしょう?」
「ああ、ヴォーグの料理も美味いがプロが作るとまた別格だ」
「プロと一緒にしないでください」

 言いながらも生ハムに包まれたチーズをラグナーの口へと放り込んでやればその新鮮なチーズのまろやかさに目を細めて至福と言わんばかりに咀嚼していた。

 今ではシャトー・ブロムクヴィストの台所は料理長を筆頭に、料理長を慕ってついて来た料理人達で回している。
 偶然ここで再会したとか、ここで料理を味わって荷物片手に弟子入りに来た料理人の卵とかが主なメンバーだ。
 もちろん料理長はしっかりと料理人を育てる事もしてくれるので常に新しい料理が開発されていて、味見役は当然ブロムクヴィスト伯夫妻だ。

「なんかお前は幸せを運んでくる妖精みたいだなあ」

 ラグナーの呟きにヴォーグは「は?」と言うように目を見開いて驚くのだから思わずと言うように言ってしまったラグナーはいたたまれない。

「だってよ、ホルガー達の奴隷落ちを助けて、アレクの家の毒問題も解決した。
 雷華達の再就職先も斡旋してくれて、シャトー・ブロムクヴィストの立て直しとそれにまつわる人達の関係も成り立った。
 それよりも俺が今一番幸せだから……」

 最後は声が小さく、恥ずかしそうに最後まで言えなかった言葉にパタンと胸元に倒れて首筋に唇を寄せて

「ヴォーグ、もう一回シヨ?」

 柄にもない比喩を使ったせいか恥ずかしくって照れくささを誤魔化すように散々痕をつけた胸元に新たにキスの痕を増やした姿にヴォーグは薄っすらと張られた天蓋を見上げ、出会った時からこんなにも綺麗な俺には不釣り合いなくらいの美しい人にこんな事を言われる日が来るなんてと感動しながらゆっくりと体の位置を入れ替えてその均整のとれた美しい身体に負けじとキスの痕を残して行くのだった。
 











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