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うちの隊長は案外甘えたがりのようです

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 結局あれからヴォーグと最後まで搾り取り搾り取られた所で急に我に返るように二人そろって腹がなった為に苦笑しながら風呂で身体を綺麗にして、屈辱にもヴォーグに中も洗ってもらう羽目になり俺って結構愛されてるなと指からブツに変わっている事はもうお約束だがこんなにも愛されてるんだよなあと感動したりもう思考は単純なまでにヴォーグバカに成り下がっていた。
 だけど、こう言った対策も兼ねてシチューを火にかけてから急いで風呂場に来た為に、結局無駄な対策になったけどそれでもシチューが焦げるかもと慌てて風呂場から出て来た所で髪をよくふく前に食事が始まったのだ。
 
「魔法でさっさと乾かした方が良いぞ?」
「とりあえずおなかが空いてるので食べたら乾かします」
「横着だな……
 まぁ、結構な運動だからな」

 運動か?なんて思うも

「普段使わない筋肉使ったから明日は筋肉痛かも?」
「それぐらいポーションで直せよ緑の魔法使いさん。そして俺にもポーションをくれ」
「作り置きのでよければ」
「妥協しよう」

 そういや明日全体訓練だったなーなんてめんどくせーとボヤいてしまうのはアルホルン討伐戦が反省するしかない様がありありとうき出て溜息を吐くしかない状況だったせいもあるからだ。
 そしてヴォーグはアルホルン討伐の後処理に頭を悩ませてるらしい。

「所で団長達と何やってたんだ?
 ホルガーがギルドの仕事で何か向こうに行ったけど会えなかったとか言ってたが」

 シチューの中のイモをかみ砕いて飲みこんだヴォーグは

「うん。来てるのは知ってたけど、緑の魔法使いとしてアルホルンの施設を使わせてもらってたからそっちに集中してて会えなかったんだ」
「アルホルンの施設?」

 何かあんなところに施設何てあったっけと首を傾けながら硬くなってるパンをシチューに浸して口に運ぶ。

「騎士団の隊長に向かっていいます」

 どうか内密にとそんな前置きをして

「アルホルンの城に王宮の緑の魔道士の施設があります。
 アルホルンの領主は代々王族の中から強力な魔力を持つ者が任命され、緑の魔道士として施設の権利を与えられます」
「そういや先代が亡くなってもう何年か……五年だったか?空席だったな?」
「はい」

 言いながらヴォーグは具の無くなったシチューをスプーンでぐるぐるとかき混ぜながら

「宮廷騎士の中には緑の魔道士が何名か居ます」
「噂には聞いた事あるが団長と同行していたあいつらか」
「はい。そして、緑の魔法使いとして知識のある俺が補佐役で連れてこられました」
「ちょっとまて。
 なんだ?そうなるとお前今度は国お抱えの王宮魔道士になるのか?
 それとも近衛の方の宮廷魔道士……とか?」
「緑の魔道士は王宮魔道士にはいません。
 一応知識あるからって言うだけで今回同行しただけです。
 そんな簡単に宮廷魔道士になれるわけないじゃないですか」

 だけどあの施設はいいよなとぼやく言葉に俺はスプーンをおいて

「なったらなったであのクソ団長の部下だぞ。こき使われるだけだから止めて置け」
「騎士団の隊長さんに言われると妙な説得力を感じますね」

 そう言って具のないシチューをパンですくって食べていた。

「ただ、施設の使い方を教えてもらって魔力を提供していくつか早急に必要な薬をいくつか作ってきましたが、やはりあれだけの規模の施設で作る薬となると時間がかかる物が多くてくたびれました」
「ごくろうさん。
 で、どうだった?楽しかったか?」
「はい。夢が現実味を帯びました」

 小さくだが力強く頷くヴォーグには机の下で蹴っておく。
 呻く姿を見ながら

「お前が楽しんでる頃手紙の一つも寄越さないお前のせいで俺は散々周りから旦那に捨てられた哀れな嫁って可哀想な目で見られたんだけど?」
「あ、その、すみません……
 って言うか……みなさんそう思ってるんですか?」
「まぁ、アルホルンのあの一件はいくら隠してもすぐに広まるからな。
 みーんなあの手の話しは大好物なんだよ」
「すみません」
「いちいち気にするな。
 俺にまつわる話は俺を紹介する時に一番わかりやすい話としていまだに広まってるからな。
 もっとも、士官学校卒業してからアルホルンの時までヤローには縁がなかったけどな」
「あれはラグナーのせいだと思ってます」
「ああ、アレクもなんか言ってたな。
 何でも夢にも出て魘されたって言ってたが……」
「ええ、あのクソ団長でも怯えた顔をしてたぐらいの出来事でしたから」

 何を思い出してか身体を震わせる様子に俺はそっと視線を外した。
 意識無いんじゃ仕方ねーだろと声には出さずにヴォーグの皿の上に置かれているパンに手を伸ばして齧れば

「でも、まあおかげで新婚家庭らしくなったって言うか、理性と戦わなくて済むようになったって言うか?」
「お前、理性と戦ってたのか?」

 そんな風には見えなかったぞと言うも

「いつの間にか人のベットに潜り込んでくるようになったり当たり前のように人のベットで寝る人を意識しない方が難しいです。
 と言うかラグナーは寝る時に抱き着く癖でもあるのですか?
 正直どんな試練なのか不眠の日々でしたよ」
「いや、抱きつくのはお前の癖だろ?」
「いえいえ、ラグナーですよ」

 ちゃんと姿勢よく寝てるはずですとでも言うような否定する言葉に苦笑しつつ

「まぁ、これからは我慢しなくてもいいし堂々と抱き着いていいぞ。
 喜んでいいんだぞ?」
「となるとこれからは寝相との戦いですね」
「安心しろ。天国一直線の抱き心地を提供してやる」

 それはそれで大変だと言いながらも既に日付も変わった時間帯。
 食べてすぐ寝るのは翌朝胃がつらいがベットでごろごろしていればそのうち寝れるだろう。
 もっともヴォーグのシャツを脱がして鍛え上げられた身体に触れて温もりを堪能している間に眠ってしまったが、ヴォーグがいつまで起きていたかまでは俺は知らない。
 ただ大きな手が酷く優しい手つきで頭を撫でてくれている感触を何時までも感じていて、それが何かを一杯にするくらいに幸せな気持ちを連れて来るのだった。






「ラグナー、起きてください。
 そろそろ行かないと遅れます」
「全体訓練めんどくせー。
 風邪ひいたってクソ団長に連絡頼む」
「無理ですって。駄目ですって。
 ほら、起きましょう!
 クラウゼ副隊長がもうすぐ来ます!」
「だったらアレクが来たら起こしてくれ。
    それまで寝る……」
「ダメだから!
 何でラグナーは毎度ながら寝起きがこんなにも悪いんですか?!」
「そりゃ昨日あれだけ激しけりゃこうなるさ」
「それは貴方も同じでしょう?!
 俺だけのせいにしないでください!
 休ませてくれなかったのはラグナーでしょう?!
 ああ、早く準備しないと、寝間着のまま城に行くつもりですか?!」
「脱がせてくれたらひょっとしたら起きれるかも?」
「そんな可愛く言っても駄目です!
 そんな事言って俺の事襲うつもりのくせに!」
「そりゃ隙があればヤリたいというのが男の本能だろ?」
「理性はどこ行ったんですか?!」
「只今睡眠中デス」
「そんな都合のいい事言ってないで……」

「とりあえず二人とも外まで声が丸ぎ声だから黙れ!」

 何時の間にだろう黙して背後に立っていたご機嫌麗しくない様子のクラウゼ副隊長は無造作にラグナーの足首を掴んで一息でベットから引きずり落として広いとは言い難い寝室に派手な音が響いた。

「このまま自力で階段を下りますか?
 それとも転がり落ちますか?
 きっとすぐに目が覚めると思いますよ?」
「大丈夫だ。今目が覚めた」

 ピシリと立ち上がってこの家に置いてある制服に身を包み自力で階段を下りてクラウゼ家の馬車へと乗り込むのを黙って背後に付いて行って見送る。
 なんてプロだと感心しながらも容赦なさすぎですと心の中で抗議しておくのはその麗しいお顔が恐ろしすぎて今はまともに見れない状況だから仕方がないと言う物。

「とりあえず今日はエーンルート侯のお屋敷に向かい、そのままシャトーの方へ顔を出しに行きます。
 夜までにはクラウゼ伯のお屋敷にお伺いしてすこし家令とお話ししたいと思ってます」
「判った、家にはそう伝えよう。
 何だったら泊まって行く準備をしてくるように。
 父がラグナーも交えて話がしたいと言ってたから」
「判りました。よろしくお願いします」

 では行ってらっしゃいと言おうとした所でひょいと想定外の影が現れた。

「何だ?今日はヴォーグは休みか?」
「はい。アルホルンに一ヶ月縛られた帰りなのでさすがに今日明日と休みをもらいましたって、アーツさん?」

 見覚えのある顔にだけど何で?と瞬きを繰り返すヴォーグに

「もう上司と部下じゃないからラビでいいよ。
 昨日はアレクの家の離れで遊んでたからな」
「そう言えば同期でしたね」
「そうそう。
 まぁ、こいつの話しをちょくちょく聞いてたから大体知ってるから。
 落ち込んだこいつを励ましてたんだよ」
「仲がいいですね?」
「だろ?」

 にやにやと笑いながら話すラビにヴォーグはまだアレクとの関係を知らないせいか微笑ましく眺めているこいつにいつ真実を教えてやるべきか少しだけ悩むラグナーとアレクであった。





 
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