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うちの隊長は八つ当たりをするそうです
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団長から新たに降りた命令でシーヴォラ隊は一気に活気づいた。
今まで除けられていたといってもいいアルホルンの森の魔物討伐の参加命令なのだ。
小隊長を全員集めて振り分けをする。
隊舎からの連絡係として事務方のマリン小隊長が留守役となり、後方支援役としてノラス小隊長、シルビオ小隊長がアルホルンとこの王都までの支援物資の運搬を請け負う事とした。
通常任務としてレーン小隊長、イリスティーナ小隊長が残り、後の残りのレドフォード小隊長、ルーツ小隊長、ランダー小隊長の部隊をアルホルンの森へと向かわせる事となった。
居残り組はふてくされた顔をしたが……
「隊長、所で補佐官はどちらにいかれたのでしょうか」
さっき騒ぎがあったばかりだ。
とは言えこの議事録を纏めるのも補佐官の仕事だと言う様に先ほどの一件を知らないまま警邏から戻って来たばかりのルーツは言う。
少しばかり場の空気が悪くなった事にルーツは顔を顰めるが、この場にいるはずの人物の不在に説明を求めるのは仕方がないだろう。
自分の手をじっと見つめたままのレーンはまさか自分の部下が仲間を売るとは思わなくって、普段なら確実にベテランのレーンを討伐に参加させるはずのラグナーの采配に周囲は驚きは息を呑み込む事で補佐官の不在というこの場をしのいでいたのだ。
既にあの一件を知る面々は誰も視線を合わせないようにしていれば
「ヴォーグ補佐官はつい先ほど移動命令が出て団長補佐官となった。
ヴォーグの身辺警護はこれより団長が直接指揮を執る」
「ちょっと待て!
何で、何があいつにそこまで!」
ルーツ小隊長が思わずと言う様に全員の代弁をしたが
「ルーツ小隊長が警邏中に城内でちょっとした騒ぎがあった。
レーン小隊で致命的なミスがあり、その結果団長は自分の目の届く所に置くという決断をしただけだ。
詳しい事は言えないが彼は今、ここにいた間も厳重に保護される立場であり、 それだけ命の危険があるという状況にいるのは変りはない。
団長がその命で敵を釣るつもりかそこは俺には判らん。
ただ言えるのは俺達ではあいつの警護は無理だと判断された、それだけだ」
数分前のあの苦々しい光景を思い出して言いながらマリン小隊長に
「ヴォーグにさせていた仕事は全面凍結する。
代わりにあいつが請け負ったお前の仕事はまたお前の仕事とする」
「いや、それは構いませんが、副隊長一体これは……」
「すまん。俺には入室許可が下りなかった。
中での話しは隊長しか知らない」
「反論は許されなかった。
ただ、それだけ今回の事件は大事となっており、それを推測した、そしてその先も推測するだろうヴォーグは確実に危険な状態だという事だ。
こんな茶番に付き合わせるような余裕はないという事だろう。
タイミングよく副団長が居たと思っていたが、既に団長達の方でヴォーグの警備をしていたと思えば納得できる。
となるとだ。
かなり状況が悪く、この一件でも何もしっぽがつかめなかったどころか相手に警戒させただけであいつをここで泳がす理由もなくなったと考えれば納得する」
そこまで言って一気に肺から空気を吐き出し
「今回のアルホルン行きは俺達への懲罰でもある。
向こうに行ったとしてもまともな討伐に参加できるとは限らない。
後方支援隊にはただひたすら走ってもらう事になるだろうし、マリンにはかなり無理な要求をさせてもらうかもしれない。
居残り組は何かあればすぐにアルホルン先行隊と交代も考えておくように、別名スペア部隊だ。
すぐにでも参加できるように常に準備をしておけ」
以上と言って席を立ち俺は隣の休憩室へと向かう。
全員の視線を背中で受け止めていればアレクが付いてきた。
アレクと一緒に休憩室へと入ればすぐにアレクは紅茶を淹れてくれた。
その間しばらく目を瞑っていれば
「ヴォーグが気になるか?」
「ならない方がおかしいだろう。
なんだって団長は名前さえ知らなかった初対面のあいつをあそこまで保護する?
平民出、ギルド上がりの一般公募の、一番下っ端のしがない文官だぞ。
そもそも何で団長室に招かれた?
一体この事件はどうなってる?
団長はどこまで何を知ってるんだ?!」
淹れてくれたばかりの紅茶を一口所か口元へすら近づけずにそのまま扉へと投げつけた。
派手な音と陶器の砕ける音が室内に響き渡るもアレクは床に広がる紅茶をじっと見つめ
「ヴォーグを団長に取り上げられてようやく彼への好意を自覚しましたか?」
静かに室内に広がる声に俺は鼻で笑い
「まさか。
気のいい奴だがそんなんで好きになったりしてたら俺の人生とっくにハーレムが出来上がってる」
「でしたね。
ハーレムが出来るほど交友関係が広いとは思ってませんが、貴方が人を好きになれるわけがない。
散々士官学校時代上位貴族の遊び相手にされた貴方が今更まっとうな恋愛なんてできるわけがないのを忘れてました」
「はっ!思い出して貰えて光栄だな!」
アレクシスの目の前をソーサーが通り過ぎて行ってまたドアに派手な音を立ててぶつかっていた。
ひょいと肩をすくめて
「ラグナーが私の代わりにそんな目に遭ってしまった事は今でも謝っても謝りきれない出来事です。なのでクラウゼ家はクラウゼ家の持ち得る力の限り貴方に尽くす事を約束しました。
だからと言って、ヴォーグの件はまた別件です。
ヴォーグの方は貴方には尊敬の念位持っている様子は見受けられても馬鹿貴族のような愚かしい真似をしない自制心もお持ちで、ここ数日我が家での交流からも彼の人柄は保障できます」
ラグナーはあっさりと団長の下へと行ってしまったヴォーグが許せなくて、そして引き止めるどころか反論させてももらえない力のなさを突きつけられて八つ当たりをしているしているのは判ってはいた。
だがそれと感情は別物で、それが何だか理解どころか知りたくもなくて、認めるなんてもってのほかで……
ヴォーグとはこの騎士団隊長と言う立場で得た貴重な気のいい友人で居たくて、それは得難い貴重な存在で……
今となってはただの悪あがきで……
「判ってる、八つ当たり悪かった。
だから出て行け」
ソファーに寝転んでふて寝をしようと思う。
そんな時間なんて一刻もない状況なのは判っているが、今は誰とも顔を合わせたくないと言って背中を向ける。
アレクのため息が聞こえ
「アルホルン行きの準備をしてきます」
返さない返事に気を悪くする事もなくアレクは部屋からが出て行った。
今まで除けられていたといってもいいアルホルンの森の魔物討伐の参加命令なのだ。
小隊長を全員集めて振り分けをする。
隊舎からの連絡係として事務方のマリン小隊長が留守役となり、後方支援役としてノラス小隊長、シルビオ小隊長がアルホルンとこの王都までの支援物資の運搬を請け負う事とした。
通常任務としてレーン小隊長、イリスティーナ小隊長が残り、後の残りのレドフォード小隊長、ルーツ小隊長、ランダー小隊長の部隊をアルホルンの森へと向かわせる事となった。
居残り組はふてくされた顔をしたが……
「隊長、所で補佐官はどちらにいかれたのでしょうか」
さっき騒ぎがあったばかりだ。
とは言えこの議事録を纏めるのも補佐官の仕事だと言う様に先ほどの一件を知らないまま警邏から戻って来たばかりのルーツは言う。
少しばかり場の空気が悪くなった事にルーツは顔を顰めるが、この場にいるはずの人物の不在に説明を求めるのは仕方がないだろう。
自分の手をじっと見つめたままのレーンはまさか自分の部下が仲間を売るとは思わなくって、普段なら確実にベテランのレーンを討伐に参加させるはずのラグナーの采配に周囲は驚きは息を呑み込む事で補佐官の不在というこの場をしのいでいたのだ。
既にあの一件を知る面々は誰も視線を合わせないようにしていれば
「ヴォーグ補佐官はつい先ほど移動命令が出て団長補佐官となった。
ヴォーグの身辺警護はこれより団長が直接指揮を執る」
「ちょっと待て!
何で、何があいつにそこまで!」
ルーツ小隊長が思わずと言う様に全員の代弁をしたが
「ルーツ小隊長が警邏中に城内でちょっとした騒ぎがあった。
レーン小隊で致命的なミスがあり、その結果団長は自分の目の届く所に置くという決断をしただけだ。
詳しい事は言えないが彼は今、ここにいた間も厳重に保護される立場であり、 それだけ命の危険があるという状況にいるのは変りはない。
団長がその命で敵を釣るつもりかそこは俺には判らん。
ただ言えるのは俺達ではあいつの警護は無理だと判断された、それだけだ」
数分前のあの苦々しい光景を思い出して言いながらマリン小隊長に
「ヴォーグにさせていた仕事は全面凍結する。
代わりにあいつが請け負ったお前の仕事はまたお前の仕事とする」
「いや、それは構いませんが、副隊長一体これは……」
「すまん。俺には入室許可が下りなかった。
中での話しは隊長しか知らない」
「反論は許されなかった。
ただ、それだけ今回の事件は大事となっており、それを推測した、そしてその先も推測するだろうヴォーグは確実に危険な状態だという事だ。
こんな茶番に付き合わせるような余裕はないという事だろう。
タイミングよく副団長が居たと思っていたが、既に団長達の方でヴォーグの警備をしていたと思えば納得できる。
となるとだ。
かなり状況が悪く、この一件でも何もしっぽがつかめなかったどころか相手に警戒させただけであいつをここで泳がす理由もなくなったと考えれば納得する」
そこまで言って一気に肺から空気を吐き出し
「今回のアルホルン行きは俺達への懲罰でもある。
向こうに行ったとしてもまともな討伐に参加できるとは限らない。
後方支援隊にはただひたすら走ってもらう事になるだろうし、マリンにはかなり無理な要求をさせてもらうかもしれない。
居残り組は何かあればすぐにアルホルン先行隊と交代も考えておくように、別名スペア部隊だ。
すぐにでも参加できるように常に準備をしておけ」
以上と言って席を立ち俺は隣の休憩室へと向かう。
全員の視線を背中で受け止めていればアレクが付いてきた。
アレクと一緒に休憩室へと入ればすぐにアレクは紅茶を淹れてくれた。
その間しばらく目を瞑っていれば
「ヴォーグが気になるか?」
「ならない方がおかしいだろう。
なんだって団長は名前さえ知らなかった初対面のあいつをあそこまで保護する?
平民出、ギルド上がりの一般公募の、一番下っ端のしがない文官だぞ。
そもそも何で団長室に招かれた?
一体この事件はどうなってる?
団長はどこまで何を知ってるんだ?!」
淹れてくれたばかりの紅茶を一口所か口元へすら近づけずにそのまま扉へと投げつけた。
派手な音と陶器の砕ける音が室内に響き渡るもアレクは床に広がる紅茶をじっと見つめ
「ヴォーグを団長に取り上げられてようやく彼への好意を自覚しましたか?」
静かに室内に広がる声に俺は鼻で笑い
「まさか。
気のいい奴だがそんなんで好きになったりしてたら俺の人生とっくにハーレムが出来上がってる」
「でしたね。
ハーレムが出来るほど交友関係が広いとは思ってませんが、貴方が人を好きになれるわけがない。
散々士官学校時代上位貴族の遊び相手にされた貴方が今更まっとうな恋愛なんてできるわけがないのを忘れてました」
「はっ!思い出して貰えて光栄だな!」
アレクシスの目の前をソーサーが通り過ぎて行ってまたドアに派手な音を立ててぶつかっていた。
ひょいと肩をすくめて
「ラグナーが私の代わりにそんな目に遭ってしまった事は今でも謝っても謝りきれない出来事です。なのでクラウゼ家はクラウゼ家の持ち得る力の限り貴方に尽くす事を約束しました。
だからと言って、ヴォーグの件はまた別件です。
ヴォーグの方は貴方には尊敬の念位持っている様子は見受けられても馬鹿貴族のような愚かしい真似をしない自制心もお持ちで、ここ数日我が家での交流からも彼の人柄は保障できます」
ラグナーはあっさりと団長の下へと行ってしまったヴォーグが許せなくて、そして引き止めるどころか反論させてももらえない力のなさを突きつけられて八つ当たりをしているしているのは判ってはいた。
だがそれと感情は別物で、それが何だか理解どころか知りたくもなくて、認めるなんてもってのほかで……
ヴォーグとはこの騎士団隊長と言う立場で得た貴重な気のいい友人で居たくて、それは得難い貴重な存在で……
今となってはただの悪あがきで……
「判ってる、八つ当たり悪かった。
だから出て行け」
ソファーに寝転んでふて寝をしようと思う。
そんな時間なんて一刻もない状況なのは判っているが、今は誰とも顔を合わせたくないと言って背中を向ける。
アレクのため息が聞こえ
「アルホルン行きの準備をしてきます」
返さない返事に気を悪くする事もなくアレクは部屋からが出て行った。
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