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うちの隊長はかなり厄介なトラブルに巻き込まれていると想像されています

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 お土産のワインから始まった食事はほぼ俺と副隊長のお母様は以降ソフィア様と呼ぶ事で何とか妥協してもらうい、副隊長から諦めて母に付き合ってくれとお願いされる事になった。
 そこからは主に冒険者としてはランクも低い為にどういった事をしていたという話から、冒険者と言うにはあまり相応しくないような依頼ばかりを受けていた為に逆に興味をもたれ、そして隊長との結婚の理由の一つでもある魔法薬を作る資金集めと言う今への騎士団への就職と言うシフト変更に平民の職業選択の自由さを目をキラキラとさせて初めて聞く話に耳を傾けてくれていた。

「……なので、大半は素材集めばかりしております。
 普通の冒険者のように魔物を狩ったりはしないのでレベルも上がらなければランクも上がらないのでごく普通に魔物に追いかけられたりしたら川に飛び込んで流されながら逃げたりと言うのも良くある話なのです」
「まぁ、うちのアレクもやんちゃだと思ってたのにもっとやんちゃな子がいたなんて驚きだわ」
「だから冒険者なのです。
 副隊長が魔物から逃げるのに川に流されるなんて想像がつきません」
「いや、それはそれで面白そうだな……」
「ラグナー、何か変な事考えてないか?」
「いや、訓練の一環に川辺の戦闘訓練を考えてみようかなと……」
「やめてください。我々は王都周辺警護が任務になります。
 王都周辺の川は総て蓋がされているので余計な経費をかけないでください」
「悪かった。
 確かに我が隊は余計な経費を掛けれる余裕はない」

 まるで狙ったかのようにデザートまで下げられた所で切り出した隊長の言葉に家令と副隊長の執事を残して総ての使用人まで下がっていた。
 テーブルに残された暖かな紅茶を副隊長が口へと含み

「ラグナーの資産は総て洗い直させていただきました。
 危惧した通り一度ラグナーの口座に振り込まれてからまた別の口座へと移され、そこからさらに違う口座へと、既に追いかけられるのは不可能です。
 ただ、我がクラウゼ家の紋章の印を使用しておりましたので鑑定結果を持って銀行で確認して来ました。
 当然偽物と言う結果に事件を文面化してもらい騎士団に提出、銀行の方でも協力者が見つかり騎士団で更迭させていただきました。
 流れた金額は今騎士団団長の方で追いかけてもらってますが、正直見つからないと思いましょう」
「私の後見人になっていただいたばかりにこのようなトラブルに巻き込んでしまって申し訳ありませんでした」

 深々と頭を下げる隊長にソフィア様は伯爵様に寛大な配慮をと訴えてくれている。
 しばらく無言が続く中、それを調べ上げてはじき出したその金額を俺は知っている。
 
「そのお金は何に使われているのでしょうね」

 思考を整理するために声に出して言えば、暫くして隊長が忌々しげに一番想像の付きそうな返答をくれた。

「俺や団長、副団長の見解だが多分武器の購入の資金だろう」

 桁違いの武器の所持数が合わなかった事を合わせれば俺と同じく想像が付き過ぎて言葉にしなかった事を声を出してもらった事により俺も最悪の方向で思考を働かせる。

「と言う事は武器を集めているようなので何処かで武器を購入する事になります。
 ですが、有名な武器屋ではまず購入はしないはずです。
 武器は作り手と使い手の信頼関係によって成り立ちます。
 大概の武器屋は購入者を覚えているし、珍しい顔なら余計忘れる事はないでしょう。
 そんな武器屋で大量に武器を買えば目立つことこの上ないはずです」
「となると騎士団で使う剣を卸してくれる先での購入か?」

 ギラリと鋭い視線の副団長に首をかしげて

「それこそ危険な橋は渡らないでしょう。
 多少数の多い少ないはあれど何年も卸している数字から見れば大体の平均値でいきなりの変動しては警戒されましょう。
 上の方に一報がはいると思いますので、金の流れの足取りを消すぐらいの慎重な奴らならその手は取らないでしょう」
「そうなると闇のルートか?」

 そこまで想像するかと隊長に向かって苦笑する。

「たぶん数を必要としていましょう。
 闇ルートに流れるようなわけあり品は通常品と桁が一つ二つちがう事がザラです。
 あの金額では十ダース程度も購入できないでしょう」
「まぁ、話に聞く程度しか知りませんが怖い話ですわね」

 フルリと身を振るわせるソフィア様にだから闇のルートなのですと苦笑をして

「私の想像ですが安物の武器を大量に買い、自分達で鍛冶師を育て、もしくは手持ちの鍛冶師で武器を再利用するのが一番の安上がりで何より気付かれにくいでしょう。
 最安の武器はダンジョンで孤児達がその日の食事にありつく為に拾ってきた壊れた武器で、武器屋の店先で弟子が鍛え直した物を二束三文で売ってます。
 冒険者になりたてなら自分に合った武器を探すと言う事も含めて武器を鍛え直すよりそう言った物を買い替える方が安上がりです。
 何より初心者は消耗品だと割り切って安い値段ならと手持ちのお金があるうちに武器を複数持とうとします。
 最近も若手が増えたと知り合いの冒険者から聞いたような覚えがあるので、一度詳しく話を聞いて来ましょう。
 最悪は何も知らされずに初心者の冒険者に投資と言う形で剣を買わせ、怪我して引退した冒険者に新たな道だとして投資を約束して鍛冶屋に変更させる。
 剣は冒険者についでと言って幾らでも買いに走らせ、鍛冶屋に練習としてどんどん剣を鍛え直させる。
 それは食事を得る為に浮浪者の子供ならいくらでもやるでしょう。
 その先には冒険者で食っていけなくなったような冒険者崩れのならず者に、こうなったのは国のせいだと責任転嫁させて羽振りと口調の良いパトロンに乗せらえて暴動が起きます。
 鎮圧は出来るでしょうが、最後は誰の責任かとなれば……
 資金が流れた一番最初の、貴族で歴代騎士職に就いている方から見たら一番邪魔な平民上がりのシーヴォラ隊長となるでしょう。
 何せ、冒険者上がりの俺と婚姻関係を結んで平民の冒険者どもに情報を流したとなる言いがかりで決定でしょうから。
 隊長が役所で俺に剣を突きつけて婚姻届を書かせたのは多くの人に見られてます。
 皆さん知っての噂の流れで言うと隊長が何故か俺にべたぼれで強引に結婚を迫って職場まで連れ込むと言う根も葉もないうわさに周囲の心証は既に固定されていると思っても間違いはないでしょうから……
 いつどこで隊長が騎士団の情報を漏らしたりとか、俺から強請られるまま横領していたが私が考えた最悪のパターンですね。
 なんせこうやって俺が購入したわけでもない高級ワインを幾つも持っているので」

 自分で言うのもなんですが本当に最悪ですねと、最後に明るい口調で肩を竦めながら紅茶を飲めば、遅れて紅茶を口に含んだ伯爵様がカップを置いて

「冒険者と言うのは恐ろしい事を考える。
 だが、我々にはない冒険者からの視点……
 参考にさせてもらおう」
「世間知らずの戯言です。
 あまり大きく取らないでください」

 空になったカップに執事さんが紅茶をもう一杯入れてくれて、火傷しないように息を吹きかけながらゆっくりと飲んでる間に伯爵様と隊長と副隊長が目配せしてた事を俺はあえて気づかないようにしていた。
 
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