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とにかくおとなしく座りなさい 2
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何とか暁達を追いだ……旅行に旅立たせ、代わりにやってきたのは数少ない親戚づきあいのある従弟の浩志だった。
「綾ちゃん久しぶり。先におじいちゃん達に挨拶して来るね」
「お茶入れてるからついでに荷物も片づけてこい」
「うん」
蝋の溶ける匂い、そして白檀が香るお線香の匂いと
チーン……
涼やかに響くおりんの音。
台所から仏壇に向かって手を合わせる背筋の伸びた姿にあんな引っ込み思案の従弟が立派になったもんだと感慨ぶがげに正しく成長した姿に感動する。
それぐらい前が酷かったと言うのもあるがなんだか妙に年寄り臭くなった気がして少し落ち込んだ。
その後鞄を持って一時期ここに住んで居た時に使っていた部屋に行き、厚手の服から少し楽な服に着替えて再び囲炉裏の前に現れた。
「どうだ?北部はここと比べても寒いだろう」
「まあね。だけどこっちの方が酸素が薄いから少し頭痛を覚えるよ」
「薬飲んどけ」
「麓で飲んできた」
笑いながらバスでの移動時間も考慮して対策してきたのだろうが薬の飲み方はそうじゃないとだけ睨んでおく。
「それよりお客さんでもいたの?子どもの本が置いてあるなんて……」
大きな文字のカラフルな絵本を手にして不思議そうに首をかしげる従弟の浩志。
すぐばれるだろうと思ったけどそれより早く視界の端に朱いひよこや白い猫の様な犬のような何かや黒い亀と蛇、そして空飛ぶ蜥蜴ではなく龍を見て固まっていた。
だけど俺と同じく視える体質の浩志はお茶を手にしてゆっくり飲んで菩薩のような顔をしていた。
だけどそんな暇を与えないと言うように
「お客様だ!いらっしゃい!」
「ややや、お兄さん。お茶菓子のそば饅頭を食べてもよろしいでしょうか?」
「お茶だ!玄喉乾いたから少し貰っても良い?」
「良かったら玄さんの為に飲みやすいようにフーフーしてください!もしくは茶托に出していただけると助かります」
「あ、お暇でしたら一緒にボール遊びしませんか?今なら晴朝がいないのでボールで遊びたい放題だよ!」
さっそくと言うように襖の影からわらわらと集まりだして囲んで遊ぼうよとおねだりをするちび達に浩志は煤けた天井を見上げてからゆっくりと綾人の顔を見て
「綾ちゃん!何か飼うつもりなら犬猫程度にしようよ?」
「こいつらはもともと家にあったバアちゃんのコレクションだ。
もともともお住まいがここだから選択の余地なんてないんだよ」
なんて説明すれば顔を無表情にしてすとんと座り直し、茶托にお茶を入れて黒い亀に差し出し、そば饅頭を半分に割ってお饅頭を気にしている赤い鳥と青いトカゲに差し出し、そして白い猫が持ってきたボールを裏庭に続く部屋へと投げれば全力で走って行く様子をぼんやりと眺めるのだった。
「あ、ひよこ!中の餡だけ食べない!さびは食べ物もってふらふらしない!しろはボールをもってお茶を飲んでる玄さんの方に近寄らない!岩さんは玄さんを見てないでしろから玄さんを守って!」
なんて従兄の見た事のないかいがいしい姿に浩志は残った茶を飲んでこの状況を確認するが
「これって明日からのアレと何か関係あるの?」
一応疑問と言うように聞けば
「明日のアレと言うかこの土地の問題らしい。
曰くこの土地がああいう場所だから神域化してるとかなんとか。
まあ、してようがどうだろうがうちはうちだけどな」
「神域化とか訳の分かんないこと置いておいて綾ちゃんって時々繊細か図太いか分からないよね」
「せめて逞しくなったと言ってくれ」
うんざりと言う顔を見て浩志は仕方なくと言う様子になるほどと思うもののこんな感じでこの家に集まる人達に勉強を教えてたのかと思うとなんだか少し羨ましく思う。
「そんなわけで今日は紹介したい奴がいるから。
ひょっとしたらお前もお世話になるかもしれないから顔合わせしておくぞ」
「こんな季節に誰か来るの?」
「いや来るって言うより居るって奴だ」
「ふーん。居るって意味わかんないけど、だったらさ俺綾ちゃんのお土産にお酒買ってきたからお出しする?」
「さすが吉野の血だな……
お客様にお出しするものが酒なんて普通無いから」
「なに、私は少しのつまみとお酒があれば十分よ」
振り向けばそこには年上の
「キツネ耳と尻尾の人がいる?!綾ちゃんレイヤーさんと知り合い?!」
「違う。
これは八仙花って言って花って呼べばいい」
「は、花さん……?」
失礼しましたと浩志がすぐ頭を下げる様子に気をよくしたのか
「うむ、我が名を呼ぶのは主殿の特権故我を花と呼ぶと良い」
「ええと……はい。それでそちらの方は……」
「杜ちゃんだ!」
「杜ちゃん遊ぼう!」
「杜ちゃんもボールで遊ぼう!」
「杜ちゃん遊ぼう!」
「朱華の知らない方が!ここはひとつ一緒に遊びましょう!」
「まあ、改めて花の子供の深杜。杜って呼んでやれ。
あと空飛んでるのがさびで亀が玄さん、蛇が岩さん、白いのがしろで赤いのがひよこ」
「緑青だよ!」
「真白ってよんでね!」
「朱華はひよこではありませんがひよこですので!」
中々な個性の皆さまだ。
と言うか何で名前と呼び名が違うんだと思うも
「ええと、さびとかしろとかは花さんと一緒で綾ちゃんだけの特別な呼び方なのかな?」
小さな子供に問いかけるように聞けば皆さん嬉しそうに
「そうなの!主だけの特別な名前なの!」
「主が一生懸命考えてくれた名前なの!」
「玄は主が呼んでくれるなら何でもいいよ?」
「岩は玄さんとおそろいなのでこの名前が大好きです!」
「だけど朱華はもっと気高い名前が似合うと思うのです!」
小さくてもちゃんと自己主張する赤いひよこに俺は
「来る途中買った食べかけのナッツ食べる?」
「是非頂きます」
キランと目を光らせて差し出したナッツを片足で掴みながらがつがつ食べていく様子、これ言ったら絶対機嫌をこじらせるよなと絶対綾人の方を見ないようにして勢いよくナッツを食べるひよこを飼い主そっくりと思っていたのは内緒だ。
「綾ちゃん久しぶり。先におじいちゃん達に挨拶して来るね」
「お茶入れてるからついでに荷物も片づけてこい」
「うん」
蝋の溶ける匂い、そして白檀が香るお線香の匂いと
チーン……
涼やかに響くおりんの音。
台所から仏壇に向かって手を合わせる背筋の伸びた姿にあんな引っ込み思案の従弟が立派になったもんだと感慨ぶがげに正しく成長した姿に感動する。
それぐらい前が酷かったと言うのもあるがなんだか妙に年寄り臭くなった気がして少し落ち込んだ。
その後鞄を持って一時期ここに住んで居た時に使っていた部屋に行き、厚手の服から少し楽な服に着替えて再び囲炉裏の前に現れた。
「どうだ?北部はここと比べても寒いだろう」
「まあね。だけどこっちの方が酸素が薄いから少し頭痛を覚えるよ」
「薬飲んどけ」
「麓で飲んできた」
笑いながらバスでの移動時間も考慮して対策してきたのだろうが薬の飲み方はそうじゃないとだけ睨んでおく。
「それよりお客さんでもいたの?子どもの本が置いてあるなんて……」
大きな文字のカラフルな絵本を手にして不思議そうに首をかしげる従弟の浩志。
すぐばれるだろうと思ったけどそれより早く視界の端に朱いひよこや白い猫の様な犬のような何かや黒い亀と蛇、そして空飛ぶ蜥蜴ではなく龍を見て固まっていた。
だけど俺と同じく視える体質の浩志はお茶を手にしてゆっくり飲んで菩薩のような顔をしていた。
だけどそんな暇を与えないと言うように
「お客様だ!いらっしゃい!」
「ややや、お兄さん。お茶菓子のそば饅頭を食べてもよろしいでしょうか?」
「お茶だ!玄喉乾いたから少し貰っても良い?」
「良かったら玄さんの為に飲みやすいようにフーフーしてください!もしくは茶托に出していただけると助かります」
「あ、お暇でしたら一緒にボール遊びしませんか?今なら晴朝がいないのでボールで遊びたい放題だよ!」
さっそくと言うように襖の影からわらわらと集まりだして囲んで遊ぼうよとおねだりをするちび達に浩志は煤けた天井を見上げてからゆっくりと綾人の顔を見て
「綾ちゃん!何か飼うつもりなら犬猫程度にしようよ?」
「こいつらはもともと家にあったバアちゃんのコレクションだ。
もともともお住まいがここだから選択の余地なんてないんだよ」
なんて説明すれば顔を無表情にしてすとんと座り直し、茶托にお茶を入れて黒い亀に差し出し、そば饅頭を半分に割ってお饅頭を気にしている赤い鳥と青いトカゲに差し出し、そして白い猫が持ってきたボールを裏庭に続く部屋へと投げれば全力で走って行く様子をぼんやりと眺めるのだった。
「あ、ひよこ!中の餡だけ食べない!さびは食べ物もってふらふらしない!しろはボールをもってお茶を飲んでる玄さんの方に近寄らない!岩さんは玄さんを見てないでしろから玄さんを守って!」
なんて従兄の見た事のないかいがいしい姿に浩志は残った茶を飲んでこの状況を確認するが
「これって明日からのアレと何か関係あるの?」
一応疑問と言うように聞けば
「明日のアレと言うかこの土地の問題らしい。
曰くこの土地がああいう場所だから神域化してるとかなんとか。
まあ、してようがどうだろうがうちはうちだけどな」
「神域化とか訳の分かんないこと置いておいて綾ちゃんって時々繊細か図太いか分からないよね」
「せめて逞しくなったと言ってくれ」
うんざりと言う顔を見て浩志は仕方なくと言う様子になるほどと思うもののこんな感じでこの家に集まる人達に勉強を教えてたのかと思うとなんだか少し羨ましく思う。
「そんなわけで今日は紹介したい奴がいるから。
ひょっとしたらお前もお世話になるかもしれないから顔合わせしておくぞ」
「こんな季節に誰か来るの?」
「いや来るって言うより居るって奴だ」
「ふーん。居るって意味わかんないけど、だったらさ俺綾ちゃんのお土産にお酒買ってきたからお出しする?」
「さすが吉野の血だな……
お客様にお出しするものが酒なんて普通無いから」
「なに、私は少しのつまみとお酒があれば十分よ」
振り向けばそこには年上の
「キツネ耳と尻尾の人がいる?!綾ちゃんレイヤーさんと知り合い?!」
「違う。
これは八仙花って言って花って呼べばいい」
「は、花さん……?」
失礼しましたと浩志がすぐ頭を下げる様子に気をよくしたのか
「うむ、我が名を呼ぶのは主殿の特権故我を花と呼ぶと良い」
「ええと……はい。それでそちらの方は……」
「杜ちゃんだ!」
「杜ちゃん遊ぼう!」
「杜ちゃんもボールで遊ぼう!」
「杜ちゃん遊ぼう!」
「朱華の知らない方が!ここはひとつ一緒に遊びましょう!」
「まあ、改めて花の子供の深杜。杜って呼んでやれ。
あと空飛んでるのがさびで亀が玄さん、蛇が岩さん、白いのがしろで赤いのがひよこ」
「緑青だよ!」
「真白ってよんでね!」
「朱華はひよこではありませんがひよこですので!」
中々な個性の皆さまだ。
と言うか何で名前と呼び名が違うんだと思うも
「ええと、さびとかしろとかは花さんと一緒で綾ちゃんだけの特別な呼び方なのかな?」
小さな子供に問いかけるように聞けば皆さん嬉しそうに
「そうなの!主だけの特別な名前なの!」
「主が一生懸命考えてくれた名前なの!」
「玄は主が呼んでくれるなら何でもいいよ?」
「岩は玄さんとおそろいなのでこの名前が大好きです!」
「だけど朱華はもっと気高い名前が似合うと思うのです!」
小さくてもちゃんと自己主張する赤いひよこに俺は
「来る途中買った食べかけのナッツ食べる?」
「是非頂きます」
キランと目を光らせて差し出したナッツを片足で掴みながらがつがつ食べていく様子、これ言ったら絶対機嫌をこじらせるよなと絶対綾人の方を見ないようにして勢いよくナッツを食べるひよこを飼い主そっくりと思っていたのは内緒だ。
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