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幸運の赤い鳥 8

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 暁に草を刈らせながら俺は木の枝を切る。
 本当なら手を付けずに春になってから手を入れた方が良いのだろうが、やっぱりどう見ても鬱蒼としているので年明けからまた募集をかけようとしている以上今のうちに手は加えておきたい。
 おやつも食べて元気になった子供たちの家の中を走り回る元気な笑い声を聞きながらニヤニヤしている暁をきもっ……なんて距離を取りながら枝に足をかけて伸び切った枝を落としていたが

「主~、木から落ちないでね?」

 家の中から緑青が俺の様子を見に来たようだ。
「緑青も枝とかにぶつかると危ないぞ?」
 言えば俺の肩にピタリと止まり……
 あ、おやつタイムか。
 意味が分かれば苦笑。
 朱華も玄さん達ももうほとんど俺をおやつにする事はないのだが緑青は未だに俺に張り付いて本当にあるのかわからないが霊力とやらを取り込んでいると言う。その様子を見ている暁や志月さん曰くこんなにも霊力を食べる使役達はいないと言う。
 緑青が大食漢なのかどうかは俺は他と比べることは出来ないが暁の爺さん曰くそこが龍があまりいない理由かもしれないと言う。
 こんなにも霊力を与え続けられる人間は早々居ないだろうからと生まれてすぐに空腹になってしまい……という事になるのだろうと仮説を立ててくれた。
 まあ、一度餌を決めたら他は嫌がるし、食事も多少の生臭は口にするけど基本ヴィーガンで量もそこまで多くない。いや、朱華と真白が多すぎるだけなのだろう。
 だったら緑青は何でその空腹を満たすのか?となれば俺の霊力という事になるのだろう。
 一番良いのは霊力で満たされている場で過ごさせるのが良いらしいが、そんな場所おっかなくて連れていけれないから無理。
 小さい子供の頃とは言えジイちゃんに騙されてじゃないけど良く足を運んだよと何も知らない子供の頃の俺を褒め称えたい。
 まあ、おかげでこんな体質になったらしいが、別段困った事は起きてないので問題はない。騒がしくて面倒な事は変わりないからね。おかげでひいばあちゃんからいろいろ教えてもらえる特典付き。
 ジイちゃんのお母さん。
 貴女の教えは大切にしますと思い出しついでに家の周りにはない雑草の花を持ち帰る事を決めた。

「主ー、何してるの?」
「ん?雑草を刈ってお庭を綺麗にしたり、かわいいお花を持ち帰って仏壇に飾ろうかなってな」
「んー、葉っぱ引っこ抜くの?緑青もお手伝いする」
「ありがとうな。さびは優しいなあ」
「えへへ、緑青主のお手伝いいっぱいするね!」
 
 なんて一生懸命引っ張っても引っこ抜けない草。
 龍が草の根に負ける瞬間を見てそっと視線を外して笑劇を耐える綾人だがそこは主。

「さび、悪いけどあの抜いた草の山に持って行ってくれるか?」

 雑草が抜けないどころか手がすっぽ抜けて転がっている緑青にお願いすればすぐに文字通り飛んでやってきて

「これ運ぶの?」
「うん。あの草のお山の上に置いてこれるかな?」
 
 言えば両手に雑草をもって

「行ってくるね!」
 
 自分にもできる仕事があると判れば一生懸命行ったり来たりと運び出すのだった。
「うんうん、さびは働き者さんだね」
「主のお手伝いするのー!」
 なんて何度か往復するけどそこは子供。だんだん退屈しだして……

 すぐに俺が抜いた草と集めた草山を往復する姿は見えなくなった。
 まあ、これぐらいは想定のうち。
 暁の子供たちの走り回って笑う声が止まらない事を考えれば緑青が一番お役に立ってることは考えるまでもない。
 だけど肝心の緑青は何をしているのかとなんとなくそこにいるなと言うように感じた方向へと顔を向ければ庭にある梅の古木に目が留まった。
 よくよく見ればその梅の木から緑青のしっぽが生えていた。
「いや、ないから」
 思わず自分で突っ込みながらも近くへと足を向ければそこには年季の入った洞があり……

 ひょい

 中に詰まった何かが外に放り出された。
思わずのけぞってゴミを交わす綾人だが、その後もひょい、ひょいと葉っぱや訳の分からない物が放り出された。
 何をしているのかと思うもその洞の中に緑青の姿が完全に消え、それからすぐに緑青が顔を出した。 
 覗き込もうとする俺と視線が合えば緑青は見た事もないような嬉しそうな笑顔できゅ~う!と悲鳴を上げた。
 やだ、なにこの可愛い声……
 うちの子凄くかわいいんだけどと誰かに自慢したかったけどいつの間にか姿を消した暁になんて自慢なんてしたくないからねとニマニマしてしまえば

「いい秘密基地見つけたな?」
 
 緑青の鼻先に俺の鼻先をチョンと押し当てればすぐにきゅ~!なんてかわいい声で外に出てきて俺の頭の上にしがみ付く始末。
 うちの子可愛すぎるんだけど?!
 思わず頭に張り付いている緑青を剥がして抱きしめて

「綺麗にお掃除して緑青の秘密基地を作ろうな!」
「緑青の秘密基地作るね!」
 
 なんて一生懸命洞に溜まったごみを外に放り出した後緑青はさっき俺が積んで居た雑草の小さな花を一生懸命引きちぎって洞の中へと運び込んでいた。 
 いやいや、これは何という習性だろう。
 質問したい暁はいつの間にか家の中で晴朝たちと遊んでいる始末だし何が起きているか分からないまま緑青を見ていればいっしょうけんめいざっそうの小さな花を洞の中に詰め込んだと思えば地面に転がっていたどんぐりを見つけてそれも洞の中へと運び込む。
 さらには透明度の低い、水晶か?白く濁った、でも透明度のある石を見つけてきては洞の中へと運んでいた。
 それを何も言わずに見ていれば緑青がどこで見つけてきたのか花のつぼみを抱えて洞の中へと入れた所で

「緑青の秘密基地お花の匂いがいっぱいしてるんだよ!」
「そうか?主は見ることできないけどきっと素敵な秘密基地なんだろうな?」

 言えばまたかわいらしくきゅ~!と鳴いて

「緑青の秘密基地だからね!」

 中身は判らずともバレバレの秘密基地には思わず笑顔になってしまう。
 本当なら切り倒した方が良いだろういつ倒れてもおかしくない古木がこんな風に愛される理由を見つけられては切り倒せないなとなかなかの風格を持つ梅の木に緑青が大きくなって入る事が出来なくなるまでもう少し頑張ってくれと手を添えるのだった。




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