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掴んだ幸せの花の名は 3
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大家さんと新幹線に乗る緊張を思い出す横の指定席の一角でパソコンをカタカタと操作していた。
今はあの日のトラウマしか思い出せないけど
「京都何て小学生の時の修学旅行以来です」
ものすごく楽しみという顔ではしゃぐ結奈さんに癒されていく俺って単純。
「俺が生まれ育った家は残念な事に観光地から外れてますからね」
「私は今観光地のど真ん中に住んでいるのですよ。
京都程観光客はいませんが毎日何かお祭りみたいで楽しいです」
うん。京都程観光客いなくて観光客より町の人間の方が多い場所だからそう言っていられるんだよと言う言葉は飲み込んでいれば
「そう言えば高守さん。
結婚したら今住んで居る家どうする?」
そんな大家さんの質問。
視線も手もパソコンに向いているけど耳だけ俺達に向けての質問に
「あの、まだ考えてません。
そうですよね。真さんの家に引っ越さないといけませんよね」
「いや、別に引っ越さなくてもあそこを仕事場にするとか考えてみれば?」
「なんか、贅沢ですね」
それが出来たらどれだけ良いだろうか。そんな夢を見るように微笑みながらペットボトルのお茶を飲む横顔に結奈さんの生活を思い出す。
結奈さんはあの町家造りの家を本当に大切にしていてびっくりするくらい丁寧な暮らしをしている。
玄関の前というか、家の前はいつも掃除をしているし、あの広い土間には埃さえ落ちている所を見た事がない。
台所も洗い物が置きっぱなしになることはなく、食器もすぐにふいて棚に片づけている。
お庭の方も俺が駐車場を借りるようになってからは余分なプランターは処分して今はなんかおしゃれな鉢植えを購入してガーデニングを楽しんでいた。
せっかく手に入れた小さなお城を結婚する事によって手放して良いのか。
それが会社を辞めてまで手に入れた生活なのかと思えば答えはするりと出た。
「贅沢じゃないですよ。
頑張って手に入れた自分の城なんだから維持が出来るのなら仕事場として割り切ってみてはどうですか?」
なんて言えば驚いたように瞬きを繰り返していた。
「あの町家の家でまだまだやりたいことがあるんじゃないですか?」
言えばきゅっと紡ぐ口元にまだまだあの家から離れたくないのは見てるだけで理解が出来た。
なのでもう一押しする。
「うちに仕事道具をもって来るとちみっこ達がおもちゃとして遊びだしますよ。
緑青はきらきらした石が好きだし、岩さんも工芸品が好きだから仕事しているとくっついてきて仕事になりません。
挙句に真白は紐を見れば咥えて走り出すので仕事道具死守は無理だと思います」
「それはダメです!」
持ち込めないというように顔色を青くしていた。
大家さんも想像したのか一瞬キーボードを叩く手が止まった。
「確かにあいつらならやるな。ひよは美味しそうとか言って食べそうだし、玄さんは岩さんが喜ぶからっていろんな所に飾りそうだな」
「確かにやりそうですね」
俺達の真剣な会話に結奈さんは
「私が長い時間かけて集めたもの……
たくさん力を注いだ子たちが……」
どんな目に合うのか想像して顔を青くしている様子に大家さんは笑いながら新幹線に乗る前に買ったなが餅の箱を開けて
「まあ、そう言う意味でも仕事場の確保は大切だな。
まだ物理的に簡単に行けないし、出勤とかそう言うメリハリは大切だと思う」
「あ、そこは俺も思いますね。
緑青達がいなかった頃は仕事を始める時間ぎりぎりまでベッドの中にいたり、仕事しながらご飯食べたり私生活と切り離すのが難しかったですね」
「そこにさらに新婚という要素。
プライベートとさび達のお邪魔に集中して仕事ができるとは思わん」
「た、確かに。
緑青さん達がかわいくて遊んでってお願いされたら仕事をする手が止まってしまいますね」
ものすごく自信を持っていうので大家さんまでくつくつと笑い出していた。
「今まで通り買い物の途中に寄って行ったり今まで通り散歩コースに入れて、真が出張の時一緒に行動できるまでが当面の目標だな」
「ですね。ずいぶん人間社会のルールを守れるようになったので最近は安心して見ていられますよ」
ご褒美のおやつ買って!の大合唱さえなければ完璧だと思うもそれを含めて成長なのだろうから一概に否定はできない問題だと思う。
「まあ、あとはその生活を維持できるように真の甲斐性の問題だな」
「これは頑張らないと」
張り合いがあると言えば甘えていいのかというように慌てている結奈さんの様子に通路を挟んだ隣の大家さんがニヤニヤと笑う顔に俺はからかわれないように気合を入れる事にした。
「さて、そろそろか?」
「はい。もうすぐアナウンスも入ると思います。
タクシーで直接飯田さんの家へ向かえばいいのですか?それともバスに乗りますか?」
そんな選択に
「んなもんつっきーを呼び出してあるから合流一択で飯田家に直行に決まってるだろ」
「相変わらず人使い荒いですね」
「それだけあいつらが俺に迷惑かけてるって話だ」
今回は違うだろと思うもそれを知らない結奈さんは「まあ……」なんて驚いていた。
結奈さん達は暁様と呼ぶ人をつっきーと呼ぶのだから怒るのかと思うも
「ずいぶん仲良しなのですね?
暁様をつっきーって呼ぶ人を私は知りませんから」
多少の交流があったみたいだけど他の候補の方も雲の上の人のように接していたという話に
「十代からの付き合いだし、あいつ自分からつっきーって名乗ってるぞ?」
「俺も最初はつっきーって呼んでましたね」
なんて笑って話していればやっと京都に到着。
改札口で待っていた暁さんの眉間の皺に前回が激おこの大家さんに呼び出されておいてスルーされる事件もあったので無事交流できたのを逆に警戒してる様子に顔を背けて噴出してしまう。
そんな俺に気付かないふりをして
「高守さんお久しぶりです」
「暁様もお久しぶりです。この度は私たちの為にお手を……」
「つっきー、とりあえず車に移動しようぜー。ここじゃ邪魔だからな」
大家さんが言うように改札口出てすぐの人の流れを邪魔する場所はよくないと俺達は移動して、暁さんの車に乗り込み
「つっきーお土産。
なが餅食べさせてやる」
「俺の車は飲食禁止だ!」
前回の事がよほどトラウマになったようで見事なまでに即答するお断りの言葉に思わず声を上げて笑う俺に結奈さんは不思議そうな顔をしていた。
今はあの日のトラウマしか思い出せないけど
「京都何て小学生の時の修学旅行以来です」
ものすごく楽しみという顔ではしゃぐ結奈さんに癒されていく俺って単純。
「俺が生まれ育った家は残念な事に観光地から外れてますからね」
「私は今観光地のど真ん中に住んでいるのですよ。
京都程観光客はいませんが毎日何かお祭りみたいで楽しいです」
うん。京都程観光客いなくて観光客より町の人間の方が多い場所だからそう言っていられるんだよと言う言葉は飲み込んでいれば
「そう言えば高守さん。
結婚したら今住んで居る家どうする?」
そんな大家さんの質問。
視線も手もパソコンに向いているけど耳だけ俺達に向けての質問に
「あの、まだ考えてません。
そうですよね。真さんの家に引っ越さないといけませんよね」
「いや、別に引っ越さなくてもあそこを仕事場にするとか考えてみれば?」
「なんか、贅沢ですね」
それが出来たらどれだけ良いだろうか。そんな夢を見るように微笑みながらペットボトルのお茶を飲む横顔に結奈さんの生活を思い出す。
結奈さんはあの町家造りの家を本当に大切にしていてびっくりするくらい丁寧な暮らしをしている。
玄関の前というか、家の前はいつも掃除をしているし、あの広い土間には埃さえ落ちている所を見た事がない。
台所も洗い物が置きっぱなしになることはなく、食器もすぐにふいて棚に片づけている。
お庭の方も俺が駐車場を借りるようになってからは余分なプランターは処分して今はなんかおしゃれな鉢植えを購入してガーデニングを楽しんでいた。
せっかく手に入れた小さなお城を結婚する事によって手放して良いのか。
それが会社を辞めてまで手に入れた生活なのかと思えば答えはするりと出た。
「贅沢じゃないですよ。
頑張って手に入れた自分の城なんだから維持が出来るのなら仕事場として割り切ってみてはどうですか?」
なんて言えば驚いたように瞬きを繰り返していた。
「あの町家の家でまだまだやりたいことがあるんじゃないですか?」
言えばきゅっと紡ぐ口元にまだまだあの家から離れたくないのは見てるだけで理解が出来た。
なのでもう一押しする。
「うちに仕事道具をもって来るとちみっこ達がおもちゃとして遊びだしますよ。
緑青はきらきらした石が好きだし、岩さんも工芸品が好きだから仕事しているとくっついてきて仕事になりません。
挙句に真白は紐を見れば咥えて走り出すので仕事道具死守は無理だと思います」
「それはダメです!」
持ち込めないというように顔色を青くしていた。
大家さんも想像したのか一瞬キーボードを叩く手が止まった。
「確かにあいつらならやるな。ひよは美味しそうとか言って食べそうだし、玄さんは岩さんが喜ぶからっていろんな所に飾りそうだな」
「確かにやりそうですね」
俺達の真剣な会話に結奈さんは
「私が長い時間かけて集めたもの……
たくさん力を注いだ子たちが……」
どんな目に合うのか想像して顔を青くしている様子に大家さんは笑いながら新幹線に乗る前に買ったなが餅の箱を開けて
「まあ、そう言う意味でも仕事場の確保は大切だな。
まだ物理的に簡単に行けないし、出勤とかそう言うメリハリは大切だと思う」
「あ、そこは俺も思いますね。
緑青達がいなかった頃は仕事を始める時間ぎりぎりまでベッドの中にいたり、仕事しながらご飯食べたり私生活と切り離すのが難しかったですね」
「そこにさらに新婚という要素。
プライベートとさび達のお邪魔に集中して仕事ができるとは思わん」
「た、確かに。
緑青さん達がかわいくて遊んでってお願いされたら仕事をする手が止まってしまいますね」
ものすごく自信を持っていうので大家さんまでくつくつと笑い出していた。
「今まで通り買い物の途中に寄って行ったり今まで通り散歩コースに入れて、真が出張の時一緒に行動できるまでが当面の目標だな」
「ですね。ずいぶん人間社会のルールを守れるようになったので最近は安心して見ていられますよ」
ご褒美のおやつ買って!の大合唱さえなければ完璧だと思うもそれを含めて成長なのだろうから一概に否定はできない問題だと思う。
「まあ、あとはその生活を維持できるように真の甲斐性の問題だな」
「これは頑張らないと」
張り合いがあると言えば甘えていいのかというように慌てている結奈さんの様子に通路を挟んだ隣の大家さんがニヤニヤと笑う顔に俺はからかわれないように気合を入れる事にした。
「さて、そろそろか?」
「はい。もうすぐアナウンスも入ると思います。
タクシーで直接飯田さんの家へ向かえばいいのですか?それともバスに乗りますか?」
そんな選択に
「んなもんつっきーを呼び出してあるから合流一択で飯田家に直行に決まってるだろ」
「相変わらず人使い荒いですね」
「それだけあいつらが俺に迷惑かけてるって話だ」
今回は違うだろと思うもそれを知らない結奈さんは「まあ……」なんて驚いていた。
結奈さん達は暁様と呼ぶ人をつっきーと呼ぶのだから怒るのかと思うも
「ずいぶん仲良しなのですね?
暁様をつっきーって呼ぶ人を私は知りませんから」
多少の交流があったみたいだけど他の候補の方も雲の上の人のように接していたという話に
「十代からの付き合いだし、あいつ自分からつっきーって名乗ってるぞ?」
「俺も最初はつっきーって呼んでましたね」
なんて笑って話していればやっと京都に到着。
改札口で待っていた暁さんの眉間の皺に前回が激おこの大家さんに呼び出されておいてスルーされる事件もあったので無事交流できたのを逆に警戒してる様子に顔を背けて噴出してしまう。
そんな俺に気付かないふりをして
「高守さんお久しぶりです」
「暁様もお久しぶりです。この度は私たちの為にお手を……」
「つっきー、とりあえず車に移動しようぜー。ここじゃ邪魔だからな」
大家さんが言うように改札口出てすぐの人の流れを邪魔する場所はよくないと俺達は移動して、暁さんの車に乗り込み
「つっきーお土産。
なが餅食べさせてやる」
「俺の車は飲食禁止だ!」
前回の事がよほどトラウマになったようで見事なまでに即答するお断りの言葉に思わず声を上げて笑う俺に結奈さんは不思議そうな顔をしていた。
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