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春と共に駆ける 4
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実桜さんが真さんにお習字を習えばと言った件。
挨拶に来てくれた真さんにご飯をご馳走した件。
そんな流れから私は今真さんの家の前に来ています。
今日はお習字を学んだ後『この間のお礼の代わりにちみっこ達とご飯を一緒に食べていって下さい』そんなお礼も兼ねたお招きだった。
小中高、そして社会人となっても男性の家にお招きされた事のない私としては緊張の真っ最中です。
ですが、そんな緊張させてもらえる余裕はありません。
なんせ
「真ー!結奈来たよー!」
「真ー!結奈ご案内するねー!」
「結奈ー!こっちが玄関だよー!」
「結奈ー!足元に気を付けてー!」
「結奈ー!今日のお昼の準備お手伝いしたから楽しみにしててー!」
「ゆいなー!ごはんたのしみだねー!」
「たのしみだねー?」
真っ先に飛び出してお迎えに来てくれた緑青さんに追いかけて来た真白さん。玄関の前で待っていてくれた玄さんと並んで待っていた岩さん。
ちょうど私たちの間までやって来た朱華さんとピタリと朱華さんの隣を走るもっくんと言うかわいいお出迎えに真さんの家にお邪魔するという緊張は一瞬で解けてしまった愛らしい大歓迎ぶりに
「いらっしゃい。賑やかなお出迎えだったでしょう?」
真さんが玄関を開けて出迎えてくれた。
「こんな大歓迎して頂けるのなら嬉しくてしょうがないですね」
なんて言えば得意げな付喪神様達はお家の中からこっちだよーと案内してくれる。
あまりに賑やかに家の中をかけていく様子に仕方がないなと言うように笑みを浮かべる真さんにとても素敵な関係なんだなと少し羨ましく思えば
「街からちょっと遠かったけど大丈夫でしたか?」
「運動不足解消にはちょうどいいです。
この街に来てまだ少しだけどまだまだ知らない事がいっぱいあるなって発見させてもらったぐらいですから」
「いやいや、さすがにここまでくると何もないし」
「街が一望できました」
「あ、たしかに。夜見るとまたいい雰囲気だよ」
「街中からは見えない景色ですね」
なんておしゃべりをしながらお邪魔する私。
なんかすごい事してる気がすると思いながらスリッパに履き替えてお部屋に案内されればそこは吹き抜けのある解放感あるリビングだった。
そしてダイニングを挟んでの対面カウンターキッチン。
ガス回りはお庭の景色を眺めるような明るいキッチンは正直羨ましい。
お客様の訪問が嬉しいのか緑青さんはさっきから飛び回っているし、真白さんは大好きなおもちゃなのか咥えて並べて見せてくれた。
玄さんと岩さんは暖炉のように見せかけたストーブの前でまったりしていて朱華さんはもっくんを連れて
「結奈!結奈!見て見て!
あれ朱華なの!大きくなったらあんな風にかっこよくなるんだから!」
くちばしで引っ張られて案内された先の客間の欄間に描かれた見事な彫刻に浮かぶ今にも飛びだしそうな躍動感ある鳥が朱華さんだという。
今はどう見てもチョコボだけど……
「一日も早くかっこよくなれると良いですね」
「でしょ!朱華はかっこいい鳥になって主とこの家と真を守るのですから!」
きっと今言った順番が朱華さんの優先順位なのだろう。
真さん三番目だなんてと思っていたら
「岩は主に意地悪する奴らをやっつけるんだから!」
「玄は主を悪い奴らから守るよ~」
「真白も悪い奴やっつける!」
「緑青もえいっ!てやっつけるんだから!」
「もっくんは、もっくんは……
主がこわいおもいしないようにいっしょにいてあげる!」
誰も真さんではなく主って言うか大家さんを守るために一生懸命なのがなんとなくもやもやしてしまうものの
「そうだね。
大家さんがのんびりお山の生活が出来るようにみんなで頑張ろうね」
「「「「「ねー!」」」」」
「ねー!」
真さんの言葉にみんな満面の笑みで返事をした。
なるほど。そう言うスタンスですか。
ダイニングの席に案内された私は大家さんから頂いた紅茶ですと出してもらった紅茶の美味しさにびっくりしながらクッキーまで頂いていればストーブの近くで敷物を敷いてピクニックしている付喪神様達を二人で眺めながら
「ほんと大家さん大好きでびっくりしたでしょう?」
くつくつ笑う真さんには申し訳なくも頷けば
「一応大家さんの式神なのでやっぱり大家さんが一番なんです」
そう言うものなのかな?
確かにそうかもしれないと実家の付喪神様は父と兄、そして後継ぎの甥っ子には従順だけど三人のいない場所では私や母、そして義姉への態度はひどいものだったなと思い浮かべる。
それは相手を見下すような……
甥っ子だけではなくうち自体がそうなのか?そうじゃなければあんな付喪神になるわけがないという事を緑青さん達を見て思った。
「ここにはいない京都にいる子たちもみんな素直でつい甘えさせたくなってしまうけどやっぱり大家さんがみんな大好きで声をかけてもらうのを待ってるって言うくらいいじらしくて」
「なにそれ!私も見てみたい!
って前に大家さんいかほど付喪神を式しているのですか?」
なんて聞けばまずここで、というように指を折り始め、迷うかのように二本折り、それから四本、さらに三本。
「俺が知っているだけで15体かな?」
「そんなこと可能なのですか?」
「まあ、俺達が知らない所で拾ってなければの話しですが」
「なにそれ、犬猫じゃあるまいし……」
「大家さんにとったら同レベルなんですよ。むしろ犬猫の方がもっとシビアに対応してますから」
いや、それもどうよと思うものの
「俺も大家さんに拾われたようなものですから」
恥ずかしそうに両手でカップをもって顔を隠して紅茶を飲んでいる様子こそかわいいと思う私はこの可愛いにあふれた家の中で何を見ても可愛いと思うくらいにちょっとヤバい状態だ。
癒されまくりだ~ なんてもう今日真さんのお宅にお邪魔した理由を完全に忘れかけている私はおやつを食べた付喪神様達のおねだりに暫くの間一緒にボール遊びをするのだった。
挨拶に来てくれた真さんにご飯をご馳走した件。
そんな流れから私は今真さんの家の前に来ています。
今日はお習字を学んだ後『この間のお礼の代わりにちみっこ達とご飯を一緒に食べていって下さい』そんなお礼も兼ねたお招きだった。
小中高、そして社会人となっても男性の家にお招きされた事のない私としては緊張の真っ最中です。
ですが、そんな緊張させてもらえる余裕はありません。
なんせ
「真ー!結奈来たよー!」
「真ー!結奈ご案内するねー!」
「結奈ー!こっちが玄関だよー!」
「結奈ー!足元に気を付けてー!」
「結奈ー!今日のお昼の準備お手伝いしたから楽しみにしててー!」
「ゆいなー!ごはんたのしみだねー!」
「たのしみだねー?」
真っ先に飛び出してお迎えに来てくれた緑青さんに追いかけて来た真白さん。玄関の前で待っていてくれた玄さんと並んで待っていた岩さん。
ちょうど私たちの間までやって来た朱華さんとピタリと朱華さんの隣を走るもっくんと言うかわいいお出迎えに真さんの家にお邪魔するという緊張は一瞬で解けてしまった愛らしい大歓迎ぶりに
「いらっしゃい。賑やかなお出迎えだったでしょう?」
真さんが玄関を開けて出迎えてくれた。
「こんな大歓迎して頂けるのなら嬉しくてしょうがないですね」
なんて言えば得意げな付喪神様達はお家の中からこっちだよーと案内してくれる。
あまりに賑やかに家の中をかけていく様子に仕方がないなと言うように笑みを浮かべる真さんにとても素敵な関係なんだなと少し羨ましく思えば
「街からちょっと遠かったけど大丈夫でしたか?」
「運動不足解消にはちょうどいいです。
この街に来てまだ少しだけどまだまだ知らない事がいっぱいあるなって発見させてもらったぐらいですから」
「いやいや、さすがにここまでくると何もないし」
「街が一望できました」
「あ、たしかに。夜見るとまたいい雰囲気だよ」
「街中からは見えない景色ですね」
なんておしゃべりをしながらお邪魔する私。
なんかすごい事してる気がすると思いながらスリッパに履き替えてお部屋に案内されればそこは吹き抜けのある解放感あるリビングだった。
そしてダイニングを挟んでの対面カウンターキッチン。
ガス回りはお庭の景色を眺めるような明るいキッチンは正直羨ましい。
お客様の訪問が嬉しいのか緑青さんはさっきから飛び回っているし、真白さんは大好きなおもちゃなのか咥えて並べて見せてくれた。
玄さんと岩さんは暖炉のように見せかけたストーブの前でまったりしていて朱華さんはもっくんを連れて
「結奈!結奈!見て見て!
あれ朱華なの!大きくなったらあんな風にかっこよくなるんだから!」
くちばしで引っ張られて案内された先の客間の欄間に描かれた見事な彫刻に浮かぶ今にも飛びだしそうな躍動感ある鳥が朱華さんだという。
今はどう見てもチョコボだけど……
「一日も早くかっこよくなれると良いですね」
「でしょ!朱華はかっこいい鳥になって主とこの家と真を守るのですから!」
きっと今言った順番が朱華さんの優先順位なのだろう。
真さん三番目だなんてと思っていたら
「岩は主に意地悪する奴らをやっつけるんだから!」
「玄は主を悪い奴らから守るよ~」
「真白も悪い奴やっつける!」
「緑青もえいっ!てやっつけるんだから!」
「もっくんは、もっくんは……
主がこわいおもいしないようにいっしょにいてあげる!」
誰も真さんではなく主って言うか大家さんを守るために一生懸命なのがなんとなくもやもやしてしまうものの
「そうだね。
大家さんがのんびりお山の生活が出来るようにみんなで頑張ろうね」
「「「「「ねー!」」」」」
「ねー!」
真さんの言葉にみんな満面の笑みで返事をした。
なるほど。そう言うスタンスですか。
ダイニングの席に案内された私は大家さんから頂いた紅茶ですと出してもらった紅茶の美味しさにびっくりしながらクッキーまで頂いていればストーブの近くで敷物を敷いてピクニックしている付喪神様達を二人で眺めながら
「ほんと大家さん大好きでびっくりしたでしょう?」
くつくつ笑う真さんには申し訳なくも頷けば
「一応大家さんの式神なのでやっぱり大家さんが一番なんです」
そう言うものなのかな?
確かにそうかもしれないと実家の付喪神様は父と兄、そして後継ぎの甥っ子には従順だけど三人のいない場所では私や母、そして義姉への態度はひどいものだったなと思い浮かべる。
それは相手を見下すような……
甥っ子だけではなくうち自体がそうなのか?そうじゃなければあんな付喪神になるわけがないという事を緑青さん達を見て思った。
「ここにはいない京都にいる子たちもみんな素直でつい甘えさせたくなってしまうけどやっぱり大家さんがみんな大好きで声をかけてもらうのを待ってるって言うくらいいじらしくて」
「なにそれ!私も見てみたい!
って前に大家さんいかほど付喪神を式しているのですか?」
なんて聞けばまずここで、というように指を折り始め、迷うかのように二本折り、それから四本、さらに三本。
「俺が知っているだけで15体かな?」
「そんなこと可能なのですか?」
「まあ、俺達が知らない所で拾ってなければの話しですが」
「なにそれ、犬猫じゃあるまいし……」
「大家さんにとったら同レベルなんですよ。むしろ犬猫の方がもっとシビアに対応してますから」
いや、それもどうよと思うものの
「俺も大家さんに拾われたようなものですから」
恥ずかしそうに両手でカップをもって顔を隠して紅茶を飲んでいる様子こそかわいいと思う私はこの可愛いにあふれた家の中で何を見ても可愛いと思うくらいにちょっとヤバい状態だ。
癒されまくりだ~ なんてもう今日真さんのお宅にお邪魔した理由を完全に忘れかけている私はおやつを食べた付喪神様達のおねだりに暫くの間一緒にボール遊びをするのだった。
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