家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多

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夏休みを迎えるための踏ん張りどころ 6

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 今日一日ちみっこ達は時計の前でそわそわとしている一日だった。
 いつ帰ってきてもいいようにとお外にも遊びに行かず、そして主と一緒に神飯をたくさん食べるんだと言ってはおやつやご飯はお替わりをせずにいい子に待っていた。
 いや、俺の目の前でぶんぶんと揺れる真白のしっぽがだんだん疲れて勢いがなくなっていく様子に大家さんが帰ってくるまで待てるのかそんな心配もあったがちゃんと待ち疲れをしてさりげなく差し出した座布団の上に皆さん移動すればすうっ……とお昼寝体制に入ってくれるのだった。
 お昼も過ぎておやつの時間も過ぎた頃。
 いつものお買い物に行くアラームが鳴った所でちみっこ達はそれを大家さんからの連絡なのではという期待に集まったがこれは違うよと言った所でしょぼんとさせてしまったのだ。
 可哀そうな事をしたなと慌てて慰めるようにみんな大好きアンパンのキャラクターのおせんべいを渡せばしょぼんとしながらもおとなしくモクモク食べる様子もまた可愛い。そんな様子でも癒されてしまえば車の音が聞こえた。
 聞きなれた先生の車の音ではないから誰だと思っていれば

「九条いるかー」
「綾人さん。開口一番それですか……」

 鍵はかけておいたのにバーンというように勢いよく空いた扉の音と聞き覚えのある声にちみっこ達がすぐに反応する。
 みんなの大好きおせんべいは放せないというように咥えながら

「「「「「主ー!おかえりー!」」」」」

 緑青もしっかり手におせんべいを握りしめながら主の顔へと飛び込んでいく。
 迷わずダイニングに姿を現した大家さんは少しだけ目を見開いて……



 信じられない。

 この魔王全力でお迎えに行ったおめめきらきらの緑青をさっと避けやがった。

 そのまま後に続いた飯田さんの胸へと突撃していた。
 もちろん緑青の後に続いた朱華も魔王は華麗に避けて羽を広げて抱きしめると言う姿は飯田さんのお腹にタックルをして跳ね返されるという結果だった。突撃された飯田さんが全く見えてないのがせめてもの救いだと思う。
 それを見てか真白の足も遅くなったものの大家さんは急角度で曲がったので壁に激突し、玄さんに合わせてゆっくり来た岩さんの二体はおせんべいを銜えたまま走り回っている事に静かにはしたないと怒っている事を気付けばそそくさと玄さんのおせんべいも咥えてお皿の上に置いてから玄さんと一緒にお出迎えをするのだった。
 大家さんは小さく溜息を零したけど

「ただいま。ちゃんといい子にしてたか?」
 
 やっと手を伸ばしてもらえたことでほっとしながら乗せられた肩から大家さんの匂いを満喫するようにすり寄っていた。

「綾人さん、今何かあったのですか?」
 不思議そうに首をかしげる飯田さんに
「前に見た事あると思うけど緑青と玄さんと岩さんがいて、まだ合わせてない朱華って言う赤いひよこと真白って言う多分白虎なんだろうけど今のところ犬か猫か分かりづらいのがいて、全員おやつを食べながら走って来たからそんなはしたない子にお出迎えされたくないと避けた所」
「ちなみに玄さんと岩さんはそれに気づいておせんべいを置いてからお出迎えし直したので大家さんの肩に居ます」
 さりげなくフォローをしておいた。
「寄りにもよって緑青と朱華は飯田さんに突撃するし、真白は壁にぶつかるからおせんべいが砕けたし」
「ん?ああ、ほんとだ。
 先生の汚い部屋に落ちたものだから拾って食べちゃだめですよ?」
 飯田さんなんか先生に辛らつだなと思いながらもおせんべいを食べていけませんと言われた真白はしょぼんとした顔でおせんべいを見てるし、緑青は岩さんを真似ておせんべいを机のお皿の上に置いていた。そして赤いひよこは必死になって食べて始末しているし……
「九条悪いな。ちょっと目を離したすきに食べ歩きするような子になっていて」
「いえ、普段はそうではなく、大家さんに会えるのが嬉しすぎてなので大目に見てあげてください」
「俺を理由にするな」
 俺にまで呆れた視線を向けて来る。
 その背後で落ちたおせんべいを処分する飯田さんとそのそばで片づけられていくおせんべいを切なそうに見ている真白。
 視えないのは仕方がないけど残酷すぎると思ったのが顔に出ていたのか
「九条、今回はせんべいが砕けただけで済んだが、それが硬い物を咥えて怪我をする可能性を考えればダメな事はダメだとしつけるのが大人の義務だ。
 俺だってバアちゃんに殴られて育ってきたんだから。躾は本人の為だから甘やかすな」
「すみません」
 俺も併せて叱られていればいつの間にか玄さんと岩さんは大家さんのフードの中に潜り込んでまったりとしていた。




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