家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多

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仮のお住まいは賑やかに? 4

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 モップで洗濯物をかき集める初体験。
 仕分けは先生がやってくれたがまさか洗濯機を三回も回す羽目になるとはさすがに思わなかった。
 他にも雑誌をまとめて外のゴミステーションに置きに行く時車の中を覗けばもぬけの殻で水場を覗けば
「玄さん、岩さんここだったか」
 金魚と一緒に戯れる姿にほっとする。
「真おそかったねー?」
 水面まで上がってきてくれた玄さんに水面で遊んでいた岩さんは葉っぱを揺らして金魚と遊んでいた。
「ごめんね。昼間はお家煩いからこちらの家の方の所でお部屋を借りる事になったんだけどお掃除する事になって」
「せんせーのお家、お掃除しないと歩けないって主言ってた」
 その情報もっと早く知りたかったです。
 そこは心を読む玄さん達とはいえぐっと言葉を飲み込んで
「お家からも近いし、ご近所さんだから仲良くしたいし。
 大家さんもお世話になった方だから学ぶことは多い方だよ」
「「ふーん」」
 大家さんの家に遊びに行っているようだからちみっこ達はきっと先生の事を知っているのだろう。玄さんと岩さんの目が騙されちゃいけないと訴えかけているようにも見えたのはすでに俺が騙されているというのに気づいているからだろうか。
 ともかくすでに握手までしてお部屋を借りる約束をしたのだ。
 ここでやっぱりごめんなさいと言うのは責任がなさすぎる言葉で言いたくないと言う代わりににこりと笑い
「所で緑青達はどうしたのかな?」
 水場周辺に姿が見えないと思えば
「あっちのお庭の方に遊びに行ったよー」
「畑があるって朱華が喜んで走って行ったよー」
「走ったんだ……」
 丸々としたひよこが全力疾走する姿がすぐに思い浮かべることが出来るあたり嘆かわしいと本気で思う。
 あの欄間の素晴らしい彫刻を思いだす躍動に満ちた美しい赤色の鳥は彫刻の美を体現するかのようなスラリとした優美な鳥だった。
 そして大家さんに小さくしてもらった時もこの姿からあの美しい鳥になるのだというのが想像できる愛らしい姿の上に俺の肩からふよふよとどこか頼りなくても素晴らしい滑空を見せてくれたというのに、飯田さんのご飯を心行くまで食べたひよこはおなじみの飛べない鳥の代表にまでなり下がっていた。
 折角あの美ボディを手に入れたのに何で簡単に手放すんだかと思うも相手は飯田家のご飯。
 俺はそっと腹の肉をつまみ
「たった数日飯田さんの家でご飯を頂いただけでなんでベルトの位置がずれるんだ……」
 いや、久しぶりの実家のご飯であんな事があったのにもかかわらずガッツリ食べたし、そういや暁さんにスイーツを食べさせている間俺も隣で肉まんとかひたすら食べていたな。大家さんのおごりだからって新幹線の中もお弁当食べたし……
 明らかなカロリーオーバーな事を理解した。
「真ー、元気ないのー?」
「真ー、元気だしてー?」
 玄さんと岩さんに慰めてもらうも
「玄さん、岩さん。俺、ダイエット頑張るから」
「真太ったのー?」
「真はもう少し太ってもいいんだよー?」
 これは気づかいか優しさか分からないけど俺は首を横にふって
「これは俺のプライドの問題なので」
 きりっとした顔で決意表明のように言えば

「主言ってたよー。
 ダイエットを宣言する人ほどダイエットをする気はないって」

 大家さん。あなた一体このちみっこ達にどんな教育をしているのでしょうか本気で問いただしたいです。
 だけど俺は笑顔を玄さんと岩さんに向けて
「京都旅行の間は結構暴飲暴食だっただろ?
 そうなるとおなかも疲れているから体を休めるために少しカロリー制限するだけだよ。
 せめてベルトの穴の位置が戻せるように頑張るだけだからね?」
 そう言えばどこかほっとしたような玄さんと岩さん。
 こんなにも小さいのに俺の健康を思って心配してくれていたのかと心が温まる。
「じゃあ朱華たちを探してくるから。
 お掃除もうちょっと時間かかりそうだからここで遊んで待っててね」
「「はーい」」
 そう言って玄さんはまた水の中に潜り、岩さんは水面を泳いで遊び始めた。
 ほんとこの二体は仲が良いなと癒されながらすぐそばの畑のあるお庭を見れば

「トマト美味しいねー!」
「こっちのきゅりも美味しいよ!」
「この赤いピーマン全然苦くないよ!」
「ウソだー!ピーマン苦くて朱華はきらいー!」
「真白もピーマンきらいー!
「だったら緑青一人で食べるもんねー!
 果物みたいで甘いのにねー!」
 なんて言いながら緑青は自分と同じ大きさの巨大なパプリカにしがみ付いて齧っていた。
 朱華はどこにあるのかというかどうやってなのかプチではない巨大トマトを落としてきゅうりをかじる真白の隣で至福の顔でトマトを食べていた。
 
 ああ、なんで時々やっと食べごろになったトマトとかが落ちているのかその理由に納得した……
 
 つまみ食いをしただろうその証拠だと。

「朱華、真白、緑青」
 呼べばやっぱり悪い事と分かっているのだろう。
 ピクリと体を震わせて俺を見て固まっていた。

「ここはうちの畑ではありません。
 勝手によそ様が大切に育てた野菜を食べるのは泥棒です。
 とても悪い事です」
 
 言えばしゅんとした姿になり、食べかけの野菜から手を放した。

「二度としてはいけません」

 怒られている事が分かるのか目をうるうるとさせながら

「「「はい……」」」

 きちんと反省のできる素直な姿に俺は緑青、真白、朱華をパーカーのフードの中に入れて

「バツとして先生のお家のお掃除のお手伝いをします」
「「「はい……」」」

 この落ち込み様は言い過ぎたかなと思うもぐすぐすとぐずりながらも掃除の手伝いをしようと先生の家に上がり、硬直していた。

「ま、真!ここはなんて言う地獄ですか!」
「ま、真!ここは人が住んではいけない場所です!」
「ま、真!ここから逃げ出さないと病気になっちゃうよ!」

 床に置いたのが間違いだったのか、朱華たちの視線より高い洗濯物の山を見せたのが間違いだったのか……
 
 あまりに衝撃過ぎる景色に震える緑青達を掬い上げてフードの中に入れる。
 そして眼下に広がる景色になんでさっき掃除をして洗濯物をまとめて置いておいたはずなのにこんなにも散らかったんだ?
 三体の悲鳴に俺も頷かずにはいられなかった。



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