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言の葉の裏側 6
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縁側のカーテンにくるまって返事もしない大家さんを面白いなあと思いつつも今は下ごしらえの準備中でこちらに来れないというお世話になった料理長と女将さんの代わりに様子を見に来た飯田さんに向かって手をついて頭を下げる。
「今日は今から帰ろうと思います。
突然お邪魔したのに大変良くしていただいてありがとうございます」
そんな感謝の言葉に飯田さんは笑って
「こちらこそ綾人さんを連れてきてありがとうございます。
もしまた何かあった時は是非頼ってきてください。次郎さんや鈴さん達もきっと喜びますので」
言われれば縁側の座布団に寄り添って寝ている次郎さんと鈴さんは素知らぬ顔をしていてもこちらの様子が気になるというように耳を向けている様子がかわいくて
「はい。きっとこっちに帰ってくることは少なくなると思いますが、このご縁を通じて何かあった時はまたお力を貸してください」
情けない言葉だけど、それだけ今回の件で俺は急なトラブルの時身動きもできない世間知らずの子供だという事をいやというほど経験した。
火事の中飛び込む大家さんは大切なものを真っ先に助け出し、奪われた物を奪い返す行動力。どれ一つとっても俺は自分から動くことが出来なかった……
あまりにも情けなさすぎて膝の上に乗せた手を握りしめてしまうものの
「そうですね。また綾人さんがこちらに乗り込んでくるようなことがあれば真っ先に連絡を頂ければと思います。
そうすればいくらでもこちらで準備して待ってられますし、万が一の時は僅かばかりですが協力もできるかも、です」
言って柔らかな笑みを浮かべ
「そもそも綾人さんと言う人は言って止まる様な人ではありません。
そんな人にちゃんとついてこれただけで十分です。ありがとうございます」
どこか遠回しの様な嫌味は今もカーテンにくるまっている大家さんに向けられたもの。この人何度こうやってしでかして心配をかけてきたのだろうと想像しながらも立ち上がり
「緑青、玄さん、岩さん。真白が待ってるから帰ろうか」
言えば
「主はー?」
そんな玄さんの質問に
「大家さんはもうちょっとこちらでご用事があるから。それが終わってから帰る事になるから俺達は先に帰ろうか」
「「「えー?」」」
大家さんの側に居たいというような口ぶりだけど、まるでそれを見透かしたかのように
「九条君、お土産と言うほどではないのですが今から帰るとご飯の準備とか手間でしょうからお弁当持って行ってください。
父さんが昨日お店で出した煮物を余分に作ってくれたり母さんも賄のお稲荷さんを一杯詰めてくれたので召し上がってください」
視えてないはずなのにまるで見えているかのようなタイミングとフォローのすばらしさに思わず破顔。
「こんなにも、ありがとうございます」
ずしっとしたお弁当箱はお土産用のプラスチックの箱に詰めらているようでかなりの量だった。鼻をひくひくと鳴らし、小さなお目目をきらきらとさせながらついでに涎まで垂らしまるで宝箱を見る正直者の緑青達に思わず笑ってしまえば
「今回は会えなかった真白さんと朱華さんにも楽しんでいただけるように工夫を凝らしたので是非楽しみにしていてください」
「真、緑青は新幹線に乗りたいです!」
「玄もまた新幹線でぴゅーんってしたいよー」
「岩も新幹線早くて好きー!
早く帰ってみんなでお弁当持ってピクニックしよう!」
「なるほど。お弁当≠ピクニックか」
さすがにこの長距離移動の後はキッツいけどお庭で食べるぐらいならまだましか。というか、飯田さんのご飯につられ過ぎだろうと笑ってしまう。
しかし今日は暑いから無理だろうなとお家の中で敷物を敷いて食べればいいかとそれで許してもらおう。
「ピクニックとは楽しそうですね」
飯田さんもにこやかに笑うので
「近くの公園にピクニックに行ってどんぐりを拾いに行ったりして今ではお庭にたくさんどんぐりが隠されています」
「緑青の宝物なの!」
自慢げに言うもそこは飯田さんには全く聞こえていない。
それでも緑青が飯田さんにどんぐりの話しを精いっぱい話すも不思議な事ににこにこと聞いてる飯田さんの表情に不思議と会話が成立しているようにも見えて
「さすが飯田さん。話し相手と言うかこの場合お前の顔を窺って空気読んで場を合わせているぞ」
やっとカーテンの中から出てきた大家さんに飯田さんはにっこりと笑いながら
「場の空気を濁さないというのも接客の一つなので」
そのプロ根性に驚いてしまうも
「それよりタクシー呼んだんだろ?お迎えが来てるぞ」
呼び鈴はなってないのにと思えば
「薫、真さんをお連れして。タクシーが見えたわよ」
女将さんがぱたぱたとスリッパを鳴らしてやって来た。
「今行きます」
飯田さんの返事に俺も少ない荷物をもって立ち上がり、改めて女将さんにご挨拶をする。
「本当にお世話になりました……」
「いいのよ。綾人さんをちゃんと連れてきてくれたから気にしないで」
何か大家さんが迷子になった子供のような扱いをされているような気もしないでもないけど
「それにこれが良いご縁でこまさん達と一緒に暮らせるのだから。
真さんがいなかったら綾人さんずっとこの秘密を隠してたいたからこの秘密を打ち明けてくれて嬉しいのよ」
大家さんを背後に俺へ感謝する姿に大家さんは遠回しに叱られているというようにこちらを見なくなった。
案外と子供っぽい大家さんにもほっこりとしつつ
「もし俺の家の方に寄る事があったら是非遊びに来てください。
これと言っておもてなしが出来るとは思いませけど……」
泊まらせてもらった挙句にご飯とお土産を頂いたのだ。
早々こちらに来る事はなくなったので是非とも家の方に来る事があれば精いっぱいおもてなしをしようと張り切る俺に女将さんも飯田さんも子供が精一杯背伸びをしているのを見守る親の視線で俺を見るので思わず大家さんに泣きついてしまうも
「タクシーの運転手さんを待たせるな」
ものすごく大人な対応で急に現実に引き戻されて荷物と靴ををもって広い飯田家のお店側の入り口まで案内してもらってそこで待っていた料理長にもお世話になりましたと挨拶をしてタクシーへと乗り込んだ。
そうか、飯田さんの家にタクシーを呼ぶとお店側でお待ちするのか。
どうでもいいマメ知識を覚えて緑青達は初めてのタクシーにも興奮して京都の巨大ターミナルの人ごみにちょっとだけ脅えた玄さん達を迷子にしないようにしっかりと鞄に入れて新幹線に乗れば大家さんを真似してお札を貼り、平日の人の少ない時間帯という効果もあってほぼ貸し切り状態のまま緑青達を満足させる旅を堪能するのだった。
「今日は今から帰ろうと思います。
突然お邪魔したのに大変良くしていただいてありがとうございます」
そんな感謝の言葉に飯田さんは笑って
「こちらこそ綾人さんを連れてきてありがとうございます。
もしまた何かあった時は是非頼ってきてください。次郎さんや鈴さん達もきっと喜びますので」
言われれば縁側の座布団に寄り添って寝ている次郎さんと鈴さんは素知らぬ顔をしていてもこちらの様子が気になるというように耳を向けている様子がかわいくて
「はい。きっとこっちに帰ってくることは少なくなると思いますが、このご縁を通じて何かあった時はまたお力を貸してください」
情けない言葉だけど、それだけ今回の件で俺は急なトラブルの時身動きもできない世間知らずの子供だという事をいやというほど経験した。
火事の中飛び込む大家さんは大切なものを真っ先に助け出し、奪われた物を奪い返す行動力。どれ一つとっても俺は自分から動くことが出来なかった……
あまりにも情けなさすぎて膝の上に乗せた手を握りしめてしまうものの
「そうですね。また綾人さんがこちらに乗り込んでくるようなことがあれば真っ先に連絡を頂ければと思います。
そうすればいくらでもこちらで準備して待ってられますし、万が一の時は僅かばかりですが協力もできるかも、です」
言って柔らかな笑みを浮かべ
「そもそも綾人さんと言う人は言って止まる様な人ではありません。
そんな人にちゃんとついてこれただけで十分です。ありがとうございます」
どこか遠回しの様な嫌味は今もカーテンにくるまっている大家さんに向けられたもの。この人何度こうやってしでかして心配をかけてきたのだろうと想像しながらも立ち上がり
「緑青、玄さん、岩さん。真白が待ってるから帰ろうか」
言えば
「主はー?」
そんな玄さんの質問に
「大家さんはもうちょっとこちらでご用事があるから。それが終わってから帰る事になるから俺達は先に帰ろうか」
「「「えー?」」」
大家さんの側に居たいというような口ぶりだけど、まるでそれを見透かしたかのように
「九条君、お土産と言うほどではないのですが今から帰るとご飯の準備とか手間でしょうからお弁当持って行ってください。
父さんが昨日お店で出した煮物を余分に作ってくれたり母さんも賄のお稲荷さんを一杯詰めてくれたので召し上がってください」
視えてないはずなのにまるで見えているかのようなタイミングとフォローのすばらしさに思わず破顔。
「こんなにも、ありがとうございます」
ずしっとしたお弁当箱はお土産用のプラスチックの箱に詰めらているようでかなりの量だった。鼻をひくひくと鳴らし、小さなお目目をきらきらとさせながらついでに涎まで垂らしまるで宝箱を見る正直者の緑青達に思わず笑ってしまえば
「今回は会えなかった真白さんと朱華さんにも楽しんでいただけるように工夫を凝らしたので是非楽しみにしていてください」
「真、緑青は新幹線に乗りたいです!」
「玄もまた新幹線でぴゅーんってしたいよー」
「岩も新幹線早くて好きー!
早く帰ってみんなでお弁当持ってピクニックしよう!」
「なるほど。お弁当≠ピクニックか」
さすがにこの長距離移動の後はキッツいけどお庭で食べるぐらいならまだましか。というか、飯田さんのご飯につられ過ぎだろうと笑ってしまう。
しかし今日は暑いから無理だろうなとお家の中で敷物を敷いて食べればいいかとそれで許してもらおう。
「ピクニックとは楽しそうですね」
飯田さんもにこやかに笑うので
「近くの公園にピクニックに行ってどんぐりを拾いに行ったりして今ではお庭にたくさんどんぐりが隠されています」
「緑青の宝物なの!」
自慢げに言うもそこは飯田さんには全く聞こえていない。
それでも緑青が飯田さんにどんぐりの話しを精いっぱい話すも不思議な事ににこにこと聞いてる飯田さんの表情に不思議と会話が成立しているようにも見えて
「さすが飯田さん。話し相手と言うかこの場合お前の顔を窺って空気読んで場を合わせているぞ」
やっとカーテンの中から出てきた大家さんに飯田さんはにっこりと笑いながら
「場の空気を濁さないというのも接客の一つなので」
そのプロ根性に驚いてしまうも
「それよりタクシー呼んだんだろ?お迎えが来てるぞ」
呼び鈴はなってないのにと思えば
「薫、真さんをお連れして。タクシーが見えたわよ」
女将さんがぱたぱたとスリッパを鳴らしてやって来た。
「今行きます」
飯田さんの返事に俺も少ない荷物をもって立ち上がり、改めて女将さんにご挨拶をする。
「本当にお世話になりました……」
「いいのよ。綾人さんをちゃんと連れてきてくれたから気にしないで」
何か大家さんが迷子になった子供のような扱いをされているような気もしないでもないけど
「それにこれが良いご縁でこまさん達と一緒に暮らせるのだから。
真さんがいなかったら綾人さんずっとこの秘密を隠してたいたからこの秘密を打ち明けてくれて嬉しいのよ」
大家さんを背後に俺へ感謝する姿に大家さんは遠回しに叱られているというようにこちらを見なくなった。
案外と子供っぽい大家さんにもほっこりとしつつ
「もし俺の家の方に寄る事があったら是非遊びに来てください。
これと言っておもてなしが出来るとは思いませけど……」
泊まらせてもらった挙句にご飯とお土産を頂いたのだ。
早々こちらに来る事はなくなったので是非とも家の方に来る事があれば精いっぱいおもてなしをしようと張り切る俺に女将さんも飯田さんも子供が精一杯背伸びをしているのを見守る親の視線で俺を見るので思わず大家さんに泣きついてしまうも
「タクシーの運転手さんを待たせるな」
ものすごく大人な対応で急に現実に引き戻されて荷物と靴ををもって広い飯田家のお店側の入り口まで案内してもらってそこで待っていた料理長にもお世話になりましたと挨拶をしてタクシーへと乗り込んだ。
そうか、飯田さんの家にタクシーを呼ぶとお店側でお待ちするのか。
どうでもいいマメ知識を覚えて緑青達は初めてのタクシーにも興奮して京都の巨大ターミナルの人ごみにちょっとだけ脅えた玄さん達を迷子にしないようにしっかりと鞄に入れて新幹線に乗れば大家さんを真似してお札を貼り、平日の人の少ない時間帯という効果もあってほぼ貸し切り状態のまま緑青達を満足させる旅を堪能するのだった。
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