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ご近所さんとの付き合い方
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「母さんただいま!」
「おかえり晴朝」
「おにいちゃんおかえり!」
晴朝が学校から帰ればすでに幼稚園から妹の陽菜乃は帰っており、我が家で新たに仲間になった蝶の簪の付喪神の椿を頭の上に乗せて同じく新たに仲間になった付喪神のぶんさんと煎じいと一緒に他の付喪神とおままごとをしていた。
俺は知らなかったけどぶんさんは我が家の付喪神とも顔見知りだったらしく、前は茶々と呼ばれていた事を教えてもらった。
「ぶんさんって名前、ダサいよなあ?」
母さんに言えば
「綾人さんが名前を変えれるのなら晴朝の好きな名前を付けて良いって言ってたわよ。お父さんもそう言ってたわ」
「ほんと!だったが凄くかっこいい名前にしないとな!」
言いながら晴朝はぶんさんを抱き上げて
「……」
ぶんさんを預かってからずーっとこの名前が気に入らなくてコレだったいいのにと考えていたのにいざ口に出そうとすれば一言も出てこない。
「おかしいなあ。いっぱいかっこいい名前を考えたのに」
口をとがらせてお日様の匂いのするぶんさんの背中に頬を摺り寄せながらなんだっけーとぼやけば母さんが困ったように笑う。
「綾人さんより強い力を付けないと名前の上書きと所有者の変更は出来ないのよ」
「えー?!
俺綾人より弱いのー?」
「綾人さんは強いわよー。そして怖いわよー」
「知ってる!
あいついつも意地悪するし!」
それはかわいいの裏返しなのだがと言う所は晴朝の母親、志月は黙っている。
この九条家の後継ぎとして大切に育てられすぎている晴朝をああやって遊んでくれる貴重な人なのだから。幼少期の代えがたい経験を積ませられるにはもってこいだと義父様もおっしゃっていたのでその方針に従っている。
それに志月だって怖いのだ。
あっという間に他者の付喪神の所有権を奪い、あっさりと新しい名前を書き換えて与えてしまったのだ。その上能力者の目と耳と手を奪ってしまったあの座敷の出来事を後から聞かされて長年培った常識が通用しない相手に恐怖すら覚えた。
だというのにあの一件から長い事ご近所で療養されていたのだから綾人が持つ力には恐怖以上の危うさを覚えずにはいられないもどかしい気持ちもある。
「それより今日はしいさん達に会いに行くの?」
「ええ、週に一度様子を見にお邪魔しに行く約束だから」
「だったら俺もついて行く!ぶんさんも一緒に行こう!」
「私もよろしいので?」
すっかり晴朝に抱っこされるのに慣れたぶんさんはついて行ってもよろしいのでしょうかと私に聞く腰の低さは前の所有者の家での扱われ方が問題だと暁さんは言っていた。
今の晴朝と同じように初めての付喪神として与えられ、修業時代を共に乗り越えた相棒だというのに前の所有者が力をつけて行くうちに他のもっと力のある付喪神を求めるようになり、長い間いないものとして扱われていたらしい。
綾人さんが取り上げたことはもっともだというもののだからと言って面倒を見る義理はないといって晴朝と陽菜乃に与えてくれたのはちょっと無責任のように思えたが、二人のこの顔と部屋の日当たりの良い所で他の付喪神と語り合う煎じいを見ていればまあいいかと思うところもあった。
「ぶんさんも椿も煎じいも行くわよ。
同じ主を持つ付喪神同士の交流会なのだから」
「しいさん、こまさん達いるかな?」
「じろーさんとすずさんいるかなー?」
「二人がいい子にしていたらいるかもね」
そう。
そこが一番の心配なのだ。
初めてご挨拶に伺った時柴犬サイズの狛犬二体に抱き心地よさそうな兎と三毛猫に我が家の子供たちはしがみ付いて連れて帰るとまで言い出したのだ。
まあ、その時は主の綾人さんもいたからお泊りに行っておいでってうちの子のパワフルさを知らないわけじゃないのにあっさり外泊許可を出してくれて大喜びで連れて帰ったものの、一晩一緒に過ごして二度とうちに連れて来る事はなかった。
次郎さんと鈴さんは陽菜乃がなでなでとかわいがる程度で収まっていたけどしいさんとこまさんは晴朝が全力で遊び倒そうとしてこまさんがへばってしまったのだ。しいさんはぼーっとしているように見えて忍耐力があり、最後は晴朝を押さえつけて寝かしつけてくれたから大騒動の一夜を無事過ごせたのだけど、真の悲劇は朝にやってきた。
他の付喪神にご飯を用意するようにしいさん達にもご飯を用意した時のなんとも言えないがっかりした顔……
忘れてはいけない。
しいさん達はあの飯田の家のご飯で日々を過ごす付喪神なのだ。
しかもごはん当番はあの料理長が自ら用意しているというのをお泊りを終えてお連れした時に聞かされ、あのがっかりした顔の意味を悟った私の花嫁修業のむなしさを覚えた瞬間でもあった。
主の綾人さんもそれをわかっていたかのようにニヤニヤと笑い
「まあ、一度お泊りしたから満足しただろう?」
子供たちの不満とは裏腹にその意味を正しく理解できた私は以降この交流会のみの接点だけに留めるようにした。
時々晴朝が一人でお邪魔して会いに来ているようだが、そこはお店のお邪魔になるからだめだときちんとしかりつけている。
でも週に一度の交流は女将さんの強い要望だけではなく
「志月さん。よかったら今晩のおかずに持っていきなさい」
料理長が大きめのタッパーに野菜の煮物を詰めたものを渡してくれた。
「いつもありがとうございます」
決してこれがあるからやめられない、なんて口が裂けても言えないけど顔に出ていたようで綾人さんには手間賃としてもらっておけば?なんていわれて以来続いている。
三十分ほどの交流の間に料理長も女将さんも週に一度の邂逅というようにしいさん達をブラッシングしたりそれはもう丁寧なもてなしを見て晴朝も家でぶんさん相手に真似をするようになり、ほかの付喪神のお世話をするようになって最近では付喪神に囲まれる生活に少しだけ付喪神達との距離感を覚え始めていた。
そんな良き教育の場となっている飯田家に向かえば女将さんがすでにお待ちかねで
「いらっしゃい。
晴朝君も陽菜乃ちゃんもどうぞ」
いそいそと客間へと案内してくれる様子がかわいらしくて将来女将さんみたいになれたらいいなと思いながらすでに縁側で待っているしいさん達の行儀の良さに大切にされている事を嬉しく思い
「では!」
印を結んで気合を入れれば女将さんといつの間にかお見えになっていた料理長の顔が嬉しそうにほころんだ。
「ふふふ。しいさん、こまさん、鈴さん、次郎さん。一週間ぶりだわ」
いえ、毎日いますよ?なんてことは言わずに微笑ましく皆さん一同をわしゃわしゃと撫でてはハグと言うように抱きしめて
「ぶんさん、椿さん、煎じいもいらっしゃい」
ぶんさん達にも丁寧にあいさつをしてくれる。
そして我が家の遠慮を知らない子供達も
「すずさんもじろーさんも可愛いね!」
「しいさん、こまさん元気だった?!」
無遠慮に撫でられまくり、しっぽを巻いて逃げて行くこまさんとは別にしいさんはおとなしく座ったままで晴朝の容赦ないなでくり攻撃を受けていた。
ほんと我慢強い子ねと感心している横で女将さんと陽菜乃が一緒に鈴さんと次郎さんをお膝の上に乗せて可愛い可愛いとほめちぎっていた。
そんな付喪神と人が共存する夢のような生活。
私達よりはるかに長く時を過ごし、私たちがいない未来にも変わる事無く生きる彼らが少しでも寂しくありませんようにとこの幸せな時間が続きますようにと祈りをささげた。
「おかえり晴朝」
「おにいちゃんおかえり!」
晴朝が学校から帰ればすでに幼稚園から妹の陽菜乃は帰っており、我が家で新たに仲間になった蝶の簪の付喪神の椿を頭の上に乗せて同じく新たに仲間になった付喪神のぶんさんと煎じいと一緒に他の付喪神とおままごとをしていた。
俺は知らなかったけどぶんさんは我が家の付喪神とも顔見知りだったらしく、前は茶々と呼ばれていた事を教えてもらった。
「ぶんさんって名前、ダサいよなあ?」
母さんに言えば
「綾人さんが名前を変えれるのなら晴朝の好きな名前を付けて良いって言ってたわよ。お父さんもそう言ってたわ」
「ほんと!だったが凄くかっこいい名前にしないとな!」
言いながら晴朝はぶんさんを抱き上げて
「……」
ぶんさんを預かってからずーっとこの名前が気に入らなくてコレだったいいのにと考えていたのにいざ口に出そうとすれば一言も出てこない。
「おかしいなあ。いっぱいかっこいい名前を考えたのに」
口をとがらせてお日様の匂いのするぶんさんの背中に頬を摺り寄せながらなんだっけーとぼやけば母さんが困ったように笑う。
「綾人さんより強い力を付けないと名前の上書きと所有者の変更は出来ないのよ」
「えー?!
俺綾人より弱いのー?」
「綾人さんは強いわよー。そして怖いわよー」
「知ってる!
あいついつも意地悪するし!」
それはかわいいの裏返しなのだがと言う所は晴朝の母親、志月は黙っている。
この九条家の後継ぎとして大切に育てられすぎている晴朝をああやって遊んでくれる貴重な人なのだから。幼少期の代えがたい経験を積ませられるにはもってこいだと義父様もおっしゃっていたのでその方針に従っている。
それに志月だって怖いのだ。
あっという間に他者の付喪神の所有権を奪い、あっさりと新しい名前を書き換えて与えてしまったのだ。その上能力者の目と耳と手を奪ってしまったあの座敷の出来事を後から聞かされて長年培った常識が通用しない相手に恐怖すら覚えた。
だというのにあの一件から長い事ご近所で療養されていたのだから綾人が持つ力には恐怖以上の危うさを覚えずにはいられないもどかしい気持ちもある。
「それより今日はしいさん達に会いに行くの?」
「ええ、週に一度様子を見にお邪魔しに行く約束だから」
「だったら俺もついて行く!ぶんさんも一緒に行こう!」
「私もよろしいので?」
すっかり晴朝に抱っこされるのに慣れたぶんさんはついて行ってもよろしいのでしょうかと私に聞く腰の低さは前の所有者の家での扱われ方が問題だと暁さんは言っていた。
今の晴朝と同じように初めての付喪神として与えられ、修業時代を共に乗り越えた相棒だというのに前の所有者が力をつけて行くうちに他のもっと力のある付喪神を求めるようになり、長い間いないものとして扱われていたらしい。
綾人さんが取り上げたことはもっともだというもののだからと言って面倒を見る義理はないといって晴朝と陽菜乃に与えてくれたのはちょっと無責任のように思えたが、二人のこの顔と部屋の日当たりの良い所で他の付喪神と語り合う煎じいを見ていればまあいいかと思うところもあった。
「ぶんさんも椿も煎じいも行くわよ。
同じ主を持つ付喪神同士の交流会なのだから」
「しいさん、こまさん達いるかな?」
「じろーさんとすずさんいるかなー?」
「二人がいい子にしていたらいるかもね」
そう。
そこが一番の心配なのだ。
初めてご挨拶に伺った時柴犬サイズの狛犬二体に抱き心地よさそうな兎と三毛猫に我が家の子供たちはしがみ付いて連れて帰るとまで言い出したのだ。
まあ、その時は主の綾人さんもいたからお泊りに行っておいでってうちの子のパワフルさを知らないわけじゃないのにあっさり外泊許可を出してくれて大喜びで連れて帰ったものの、一晩一緒に過ごして二度とうちに連れて来る事はなかった。
次郎さんと鈴さんは陽菜乃がなでなでとかわいがる程度で収まっていたけどしいさんとこまさんは晴朝が全力で遊び倒そうとしてこまさんがへばってしまったのだ。しいさんはぼーっとしているように見えて忍耐力があり、最後は晴朝を押さえつけて寝かしつけてくれたから大騒動の一夜を無事過ごせたのだけど、真の悲劇は朝にやってきた。
他の付喪神にご飯を用意するようにしいさん達にもご飯を用意した時のなんとも言えないがっかりした顔……
忘れてはいけない。
しいさん達はあの飯田の家のご飯で日々を過ごす付喪神なのだ。
しかもごはん当番はあの料理長が自ら用意しているというのをお泊りを終えてお連れした時に聞かされ、あのがっかりした顔の意味を悟った私の花嫁修業のむなしさを覚えた瞬間でもあった。
主の綾人さんもそれをわかっていたかのようにニヤニヤと笑い
「まあ、一度お泊りしたから満足しただろう?」
子供たちの不満とは裏腹にその意味を正しく理解できた私は以降この交流会のみの接点だけに留めるようにした。
時々晴朝が一人でお邪魔して会いに来ているようだが、そこはお店のお邪魔になるからだめだときちんとしかりつけている。
でも週に一度の交流は女将さんの強い要望だけではなく
「志月さん。よかったら今晩のおかずに持っていきなさい」
料理長が大きめのタッパーに野菜の煮物を詰めたものを渡してくれた。
「いつもありがとうございます」
決してこれがあるからやめられない、なんて口が裂けても言えないけど顔に出ていたようで綾人さんには手間賃としてもらっておけば?なんていわれて以来続いている。
三十分ほどの交流の間に料理長も女将さんも週に一度の邂逅というようにしいさん達をブラッシングしたりそれはもう丁寧なもてなしを見て晴朝も家でぶんさん相手に真似をするようになり、ほかの付喪神のお世話をするようになって最近では付喪神に囲まれる生活に少しだけ付喪神達との距離感を覚え始めていた。
そんな良き教育の場となっている飯田家に向かえば女将さんがすでにお待ちかねで
「いらっしゃい。
晴朝君も陽菜乃ちゃんもどうぞ」
いそいそと客間へと案内してくれる様子がかわいらしくて将来女将さんみたいになれたらいいなと思いながらすでに縁側で待っているしいさん達の行儀の良さに大切にされている事を嬉しく思い
「では!」
印を結んで気合を入れれば女将さんといつの間にかお見えになっていた料理長の顔が嬉しそうにほころんだ。
「ふふふ。しいさん、こまさん、鈴さん、次郎さん。一週間ぶりだわ」
いえ、毎日いますよ?なんてことは言わずに微笑ましく皆さん一同をわしゃわしゃと撫でてはハグと言うように抱きしめて
「ぶんさん、椿さん、煎じいもいらっしゃい」
ぶんさん達にも丁寧にあいさつをしてくれる。
そして我が家の遠慮を知らない子供達も
「すずさんもじろーさんも可愛いね!」
「しいさん、こまさん元気だった?!」
無遠慮に撫でられまくり、しっぽを巻いて逃げて行くこまさんとは別にしいさんはおとなしく座ったままで晴朝の容赦ないなでくり攻撃を受けていた。
ほんと我慢強い子ねと感心している横で女将さんと陽菜乃が一緒に鈴さんと次郎さんをお膝の上に乗せて可愛い可愛いとほめちぎっていた。
そんな付喪神と人が共存する夢のような生活。
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