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一人で歯を食いしばっていたつもりでも気が付けばたくさんの人に支えられている事を気付くのはいつも事が終わってから 1

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 ここのところすっかり日の出時間に起きると言う癖がついてしまった。
 学校や会社に遅刻なんて事はなかったものの、やっぱり朝は一分一秒でも長く布団に入っていたいと言うのが人の性。
 だけど引っ越してきて五体の付喪神と共同生活をするようになってからは

「真ー朝だよー!」
「真ーご飯の時間だよー!」
「真ーお布団めくっちゃうよー!」
「真ー朱華が置いてあるみかんをつまみ食いしてるよー?
「真ートイレ―!」

 ますます容赦のない起こし方になってとりあえずと言うように寝起き一番に真白をトイレへと連れていく。
 トイレの躾が出来ていて何より、もういっそのことトイレは洗面所の一角に引っ越そうかとしたけど真白に

「トイレはトイレにあるべきじゃないの?」

 どうして洗面所に置くのだと言う正論で逆に諭されてしまった。
 まあ、その奥に風呂場があるから少しでも苦手な場所から遠ざかりたいと言う所だろうか。でもそのくせ庭にできたビオトープの浅瀬ではみんなと一緒に水遊びを楽しんでいるのだから好きと嫌いの境界線は難しい。
 あれだ。
 お風呂は好きだけど水泳の授業は嫌い、そう思えば普通の子供と何ら変わりないなと新たな発見に和んでしまう。
 そして台所の様子に寝起きからため息が出てしまう。
「朱華、あれもこれもつまみ食いしたらいけないって教えたよね?」
「あれもこれも美味しそうだからどれが美味しいか味見しただけだもん!」
 欄間の修復を終えてからなんだか少し賢くなった朱華の素晴らしい切り返しにその気持ちはわかるなと納得しそうになる物の
「主と約束しただろ?
 一度手を付けたものは最後まで食べるって」
「そんな昔の話しなんて覚えてないもん!」
 どうやら賢くなったと同時に反抗期も来たようだ。
 ばっかわいい!と思いつつもやってくれる事はかわいくないので朱華によってボロボロになったミカン、基、オレンジの皮をむいて食べやすくして用意する。
 剥けたそばからみんな手を出してむしゃぶりつくので忙しくオレンジの袋の薄皮を剥くも五体でオレンジ一個を食べてほぼほぼ満足したようなおなかのプリンプリン具合に笑いは止まらない。
 そしておなかいっぱいご飯を食べて満足したのか誰ともなく毛づくろいをしたかと思えば緑青と真白を筆頭に外へと駆け出していく。
 当然ながら玄さんはゆっくりとマイペースに、時々陽だまりに足を止めてしまうものの、なかなかハードな事に縁側の隙間から落ちて池へと向かう様子は毎日見ていてもハラハラする光景だ。
 そして岩さんもそんな玄さんに合わせてゆっくりと移動する。
 依存、ではないだろうがよほどあの玄さんがいなくなったショックが大きかったのかあれから家の外に行く時は絶対と言うほど離れないようにしていた。
 そして玄さんもそれを嫌がらない。
 玄さん、あまり岩さんを甘やかせないでね?将来が不安だよと生暖かく見守っておく。
 ショートカットをしてビオトープで泳いで遊んでいるけど岩さんに泳ぎを教えるんだとここ数日張り切っている玄さんよ。
 岩さんしっかり泳げているぞ?
 むしろ浮き輪のように玄さんにしがみ付いて楽しんでるぞ?
 仲が良いのは知ってはいるけど彼女に振られてまだ生傷が癒えてない俺の目の前でいちゃつかないでくださいと心の中で突っ込みつつもこの子たちの性別ってどうなっているのだろうかと今度つっきーに聞いていようとメモを取っておく。
 そして今一番のちみっこ達の成長の楽しみはこの方です。

「朱華すごい!すごい!ちゃんと飛べてるよ!」
「昨日よりも遠くまで飛べてるよ!」
「ふぬうううっ!朱華、頑張るんだから!」

 縁側から飛び立って、やがて力尽きてぽとりと庭の真ん中に落ちてしまったけど、今までみたいに助走をつけて飛び出した距離ではなく明らかに飛行をしたと言う距離を叩きだしていた。
 一生懸命羽を羽ばたかせて目標の梅の木までもう少しと言う所で地面を抱きしめる事になってしまったがそれでも日々飛距離を伸ばしているので梅の木に到達するのはあと数日先になるだろうと見ている俺も期待を込めた眼差しで見守ってしまう。
 朱華のこの変わりようはやっぱり欄間の修復によるものだとつっきーは言っていた。

「本体に罅や欠けがあるとそこから力が抜けていくんのだろうね。だから手っ取り早く修復するのが一番なんだけど、ちびーずはそもそも力の大半が封じられているから。
 ひよこが飛べるわけがないのにちょっとでも飛べるようになったって事は修復してくれた大工さんの腕の賜物だね」

 手放しで褒めてもらい、朱華がほれ込んだ浩太さんを誇らしく思うのだった。




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