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ご近所さんと遭遇してみる? 5
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手のひらの上には片手の、本当に手のひらだけに乗るサイズの玄さんがにこにこと頭をにゅっと伸ばして
「真ー、おんぶされてきたけどだいじょーぶ?」
こてっと頭を横に倒す。
うん。かわいい。
思わず俺も同じようにこてっと頭を横に倒してしまう。
「大丈夫だよ」
多分とは付け加えずに気を使われて思い出せば遠藤さんに声をかけられたところから何も覚えてない。それなのにこの涼しい場所で横たわっている間の記憶がないのならきっと遠藤さんが運んでくれたのだろう。救急車で病院に運ばれなくてよかったと思えば手にかかる水の冷たさに驚くと同時にプラスチックのコップからあふれているお水の存在を思い出した。
「喉が渇いたから」
そう言って山水を頂く事にした。
貯水槽の横から流れ出る水のそばに置かれた簀の子の上で寝ていたので飛び散るしぶきをかぶるって言うか、頭の一部は西瓜を冷やすかのように思いっきり水をかぶっていたのでその冷たさは保障されていると言うか、風邪ひかないかな俺と少しだけ寒気を覚えてかシャツを脱いで簡単に頭をぬぐって日当たりの良い場所へと移動した。
「ところで玄さんはなんでこんな所に居たのかな?」
ここに居たのならいくらあの放置されていた場所を探しても見つかるわけもないし返事もしないわけだと納得と言うかいつの間にこの距離を移動したのだろうと言うのを是非とも聞かせてもらいたい。
「えーとね、最初はね、緑青みたいにぽーんってお空飛んだの。その後は草がいっぱいの所に着地したから痛くなかったよー。だけどあんなにも草をぼーぼーにしているなんてひどいよねー」
どうやら玄さんのお話は脱線しまくり確定のようだ。
負けるな俺。
じっくり話を聞いて行こうじゃないか。
玄さんと初めてお話をした時もそうだったじゃないかと根気よく耳を傾けることに決めた。
「草の上はちょっと危ないから玄頑張って地面におりたんだー。
みんながどっちに居るかはお空をポーンって飛んだ時に見ていたからちゃんとわかってたんだ。玄えらいでしょー!」
「うんうん。えらいぞ」
ほめて伸ばす。
つっきーの言う通り一晩でもおしゃべりする相手がいなくて寂しかったと言うようにたくさんの事を一生懸命に教えてくれようとする玄さんのお話に相槌を打つ。
「そうしたらね、カエルさんに会ったんだ」
嫌な想像がなんか確定した。
「カエルさんすごいんだよ。
ベロがびよーんってのびて玄の事をクルンって捕まえてパクってお口にくわえたんだ」
想像通りで思わず片手で目を覆ってしまう。
思いっきり食べられているじゃんって声が飛び出そうだったけど何とか押しとどめておけば玄さんは何も気にしないように話を続けていく。
「だけど玄の甲羅が硬くて嫌だったのかすぐにぺっぺってされてね、カエルさんとそこでバイバイしたんだ」
「あ、遊んでもらってよかったな?」
「うん!くるくるお目目がまわっておもしろかったよー!」
無邪気。
そう大家さんは言ったけど命の危険をぜひとも気づいてもらいたいと握りこぶしに力を込めてどう伝えるべきか考えている間に玄の冒険の話しは続く。
「そうしたら今度はネズミが来たんだ。
ネズミってね玄の甲羅をガジガジしてくる嫌な奴なの。
だけどカエルさんの次に会ったネズミさんは玄とあまり変わらない大きさでね、でも玄の甲羅を狙ってるからどうやって逃げようか考えたんだ。玄えらいでしょ!」
「玄さんえらい!玄さんの奇麗な甲羅をガジガジなんて許せないからちゃんと逃げるんだよ!」
力いっぱい危ない奴からは逃げろと言うように教え込めば褒められて喜ぶ玄さんが貯水槽の縁で少し誇らしげに笑みを浮かべていた。
「だけどね、その後すっごい大きな鳥さんが来てね」
またも嫌な事しか想像できなかった。
「玄を長いくちばしでパクってしたんだー」
「ああああああ……」
弱肉強食この世の理。
たとえ付喪神だろうが人の目に見えない存在だろうが動物達にはしっかり認識されて、敬うとかそういう概念のなさに頭を抱えてしまった。
「真っ白の大きな鳥さんでね。
主のおうちの鳥さん達とは違って痛い事はしなかったんだよー」
すっごい大きな鳥さんなら丸のみが出来るからつつく真似なんて必要がないからかと考えていれば
「その鳥さんがね、ここに連れてきてくれたんだー。
ここなら大丈夫だからって言ってバイバイしたのー。
お水が冷たくって気持ちよくって遊んでいたらお魚さんがやってきてね、泳ぎ方を教えてくれるって言うから教えてもらったんだよー」
「お、おふ?」
なんか急にサバイバルな世界からファンタジーな世界になったぞ?
「玄はねー、お魚さん達とおしゃべりできるんだよー」
「……へえ?」
そういうものなのか?今夜帰ったらつっきーに確認しよう。うん。
「朱華も良くお庭に来るすずめさんとおしゃべりしてるしー、真白もお庭に来る猫のおばあちゃんとおしゃべりしてるよー」
「そ、そうなんだ?」
そうなの?よくわからない世界だと俺の前では一切のそぶりは見せないけど。
「だけどまだみんなと仲良く出来る分けじゃないのー。
意地悪な黒い鳥さんは追いかけてくるし、怖い猫さんはいじめてくるんだよー」
「悪い猫さんもいるんだな?」
なんて言う事でいいのかと思えば
「玄たちが小さいからってパンチしてくるんだー!」
ぷんすかとご立腹な様子だが猫の本能の事を思えば仕方がないと言う所だろうか。なんて事だと思いながらも
「玄さん達が大きくなったら真白とおしゃべりしてくれる猫さんとも仲良くできると良いね」
「ねー!猫のおばあちゃんは縁側でお昼寝に来るからその時玄も一緒にお昼寝させてもらうんだー!
いまはまだご挨拶しかできないけどー」
「みんなと仲良くできると良いねー」
「ねー!」
そう言っていつの間にか集まってきた金魚さん達に笑顔を向けながら
「玄のお友達―!」
ぽちゃんと貯水槽の中に飛び込んで金魚と一緒になってまた遊び始めてた。
「真ー、おんぶされてきたけどだいじょーぶ?」
こてっと頭を横に倒す。
うん。かわいい。
思わず俺も同じようにこてっと頭を横に倒してしまう。
「大丈夫だよ」
多分とは付け加えずに気を使われて思い出せば遠藤さんに声をかけられたところから何も覚えてない。それなのにこの涼しい場所で横たわっている間の記憶がないのならきっと遠藤さんが運んでくれたのだろう。救急車で病院に運ばれなくてよかったと思えば手にかかる水の冷たさに驚くと同時にプラスチックのコップからあふれているお水の存在を思い出した。
「喉が渇いたから」
そう言って山水を頂く事にした。
貯水槽の横から流れ出る水のそばに置かれた簀の子の上で寝ていたので飛び散るしぶきをかぶるって言うか、頭の一部は西瓜を冷やすかのように思いっきり水をかぶっていたのでその冷たさは保障されていると言うか、風邪ひかないかな俺と少しだけ寒気を覚えてかシャツを脱いで簡単に頭をぬぐって日当たりの良い場所へと移動した。
「ところで玄さんはなんでこんな所に居たのかな?」
ここに居たのならいくらあの放置されていた場所を探しても見つかるわけもないし返事もしないわけだと納得と言うかいつの間にこの距離を移動したのだろうと言うのを是非とも聞かせてもらいたい。
「えーとね、最初はね、緑青みたいにぽーんってお空飛んだの。その後は草がいっぱいの所に着地したから痛くなかったよー。だけどあんなにも草をぼーぼーにしているなんてひどいよねー」
どうやら玄さんのお話は脱線しまくり確定のようだ。
負けるな俺。
じっくり話を聞いて行こうじゃないか。
玄さんと初めてお話をした時もそうだったじゃないかと根気よく耳を傾けることに決めた。
「草の上はちょっと危ないから玄頑張って地面におりたんだー。
みんながどっちに居るかはお空をポーンって飛んだ時に見ていたからちゃんとわかってたんだ。玄えらいでしょー!」
「うんうん。えらいぞ」
ほめて伸ばす。
つっきーの言う通り一晩でもおしゃべりする相手がいなくて寂しかったと言うようにたくさんの事を一生懸命に教えてくれようとする玄さんのお話に相槌を打つ。
「そうしたらね、カエルさんに会ったんだ」
嫌な想像がなんか確定した。
「カエルさんすごいんだよ。
ベロがびよーんってのびて玄の事をクルンって捕まえてパクってお口にくわえたんだ」
想像通りで思わず片手で目を覆ってしまう。
思いっきり食べられているじゃんって声が飛び出そうだったけど何とか押しとどめておけば玄さんは何も気にしないように話を続けていく。
「だけど玄の甲羅が硬くて嫌だったのかすぐにぺっぺってされてね、カエルさんとそこでバイバイしたんだ」
「あ、遊んでもらってよかったな?」
「うん!くるくるお目目がまわっておもしろかったよー!」
無邪気。
そう大家さんは言ったけど命の危険をぜひとも気づいてもらいたいと握りこぶしに力を込めてどう伝えるべきか考えている間に玄の冒険の話しは続く。
「そうしたら今度はネズミが来たんだ。
ネズミってね玄の甲羅をガジガジしてくる嫌な奴なの。
だけどカエルさんの次に会ったネズミさんは玄とあまり変わらない大きさでね、でも玄の甲羅を狙ってるからどうやって逃げようか考えたんだ。玄えらいでしょ!」
「玄さんえらい!玄さんの奇麗な甲羅をガジガジなんて許せないからちゃんと逃げるんだよ!」
力いっぱい危ない奴からは逃げろと言うように教え込めば褒められて喜ぶ玄さんが貯水槽の縁で少し誇らしげに笑みを浮かべていた。
「だけどね、その後すっごい大きな鳥さんが来てね」
またも嫌な事しか想像できなかった。
「玄を長いくちばしでパクってしたんだー」
「ああああああ……」
弱肉強食この世の理。
たとえ付喪神だろうが人の目に見えない存在だろうが動物達にはしっかり認識されて、敬うとかそういう概念のなさに頭を抱えてしまった。
「真っ白の大きな鳥さんでね。
主のおうちの鳥さん達とは違って痛い事はしなかったんだよー」
すっごい大きな鳥さんなら丸のみが出来るからつつく真似なんて必要がないからかと考えていれば
「その鳥さんがね、ここに連れてきてくれたんだー。
ここなら大丈夫だからって言ってバイバイしたのー。
お水が冷たくって気持ちよくって遊んでいたらお魚さんがやってきてね、泳ぎ方を教えてくれるって言うから教えてもらったんだよー」
「お、おふ?」
なんか急にサバイバルな世界からファンタジーな世界になったぞ?
「玄はねー、お魚さん達とおしゃべりできるんだよー」
「……へえ?」
そういうものなのか?今夜帰ったらつっきーに確認しよう。うん。
「朱華も良くお庭に来るすずめさんとおしゃべりしてるしー、真白もお庭に来る猫のおばあちゃんとおしゃべりしてるよー」
「そ、そうなんだ?」
そうなの?よくわからない世界だと俺の前では一切のそぶりは見せないけど。
「だけどまだみんなと仲良く出来る分けじゃないのー。
意地悪な黒い鳥さんは追いかけてくるし、怖い猫さんはいじめてくるんだよー」
「悪い猫さんもいるんだな?」
なんて言う事でいいのかと思えば
「玄たちが小さいからってパンチしてくるんだー!」
ぷんすかとご立腹な様子だが猫の本能の事を思えば仕方がないと言う所だろうか。なんて事だと思いながらも
「玄さん達が大きくなったら真白とおしゃべりしてくれる猫さんとも仲良くできると良いね」
「ねー!猫のおばあちゃんは縁側でお昼寝に来るからその時玄も一緒にお昼寝させてもらうんだー!
いまはまだご挨拶しかできないけどー」
「みんなと仲良くできると良いねー」
「ねー!」
そう言っていつの間にか集まってきた金魚さん達に笑顔を向けながら
「玄のお友達―!」
ぽちゃんと貯水槽の中に飛び込んで金魚と一緒になってまた遊び始めてた。
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