家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多

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兄貴、ちょっと話を聞いてよ 2

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「真ー、遊びに来たよー」
「真ー、お世話しに来たよー」
「真ー、もうさみしくないからねー」
「真ー、おやつ持ってきたよー」
「真ー、おやつ食べよー」

 そんな朝5時の目覚めは容赦なくちみっこに叩き起こされると言うびっくりな朝です。
 最初はロフトに寝ていたけどトイレから遠い問題と台所から遠い問題の為に今となっては玄関横の部屋を寝室に決めました。
 そんな安心の場所にいきなり子供の甲高い声が響くのだから何事かと目を覚ますのは当然という物。
「お、お前らいつの間にって言うかどうやって……」
 俺を起こす様に顔に乗り上げるちみっこたちのせいで起き上がれないし、冷たい手足に頭も覚めていくものの

「主がー、郵便受けの中に入れてくれて
ー、真を起こしてこいってー」
 無事ミッションをクリアしたちみっこ達は誇らしげな顔をしていた。
「大家さんひどい……」
 こんな起こし方はさすがにないだろう。さらに……
「玄関で待ってるから鍵を開けさせろだってー」
 きちんと伝言ができる玄さんの言葉に頭を抱えてしまうも他のちみっこは俺の布団に潜り込んであったかいねーと遊び出し、うっかり潰すんじゃないのかとビビる俺はベッドを離れる。
 これじゃあもう寝たふりはできない。
 ベッドも占領された。
 そして大家が玄関で待っている。
 仕方がないと言う様に寝起きのまま玄関に向かい鍵を開けて
「おはようございます」
 眠い目をショボショボさせながらの挨拶。
 だけど大家さんは
「あー、悪いな。まだ寝てたか」
 なんて全く悪びれることのない朝にふさわしい確信犯の爽快な笑顔でおはようと挨拶をしてくれるのだった。
「早いですね」
 回らない頭ではいきなり負け決定の対決だった。
「そうか?サマータイムじゃないけどこの田舎タイムじゃ普通だろ?」
「常識的に言えば普通じゃないので?」
「このあたりじゃ二、三時間程度の時差が発生する。
 それがここの常識だ」

 あ・り・え・な・い!

 日の出と共に起きて日の入りと共に家に帰るごく普通の生活リズムだと言うものの残業が日常な都会タイムではそんな優雅な生活なんて夢のまた夢だ。
「とりあえず朝のうちにチビどもにお前のお世話という修行を言い聞かせたからぜひ褒めて伸ばしてやってくれ」
「そう言うものですか?
 って、昨日のアレ、もう大丈夫ですか?」
 烏骨鶏のヒヨコ達に全滅寸前まで追い込まれたショックは大丈夫なのだろうかと思うも
「ああ、あれ?
 反省と学習機能がちゃんとあれば9連敗なんてスコアが発生するわけないだろ。
 だいたい一晩寝れば忘れるぞ」
 どこか死んだ目の大家さんになるほど、苦労するわけだと納得してしまう。
 俺も改めてとんでもない役目を引き受けてしまったと思うも大家は一つの土鍋を俺に渡してくれた。
 桜の花びらが描かれたスーパーでもよく見る何処にでもある土鍋。
 ふわっとした高級そうなタオルがはさんであるものを見てこれは何だとたっぷりと十秒ほど鍋を見てから大家さんへと視線を向ければ
「ちび共のベッドだ。
 油断すると布団の中まで潜り込んで占領してくるからここに寝かせるようにしつけはしておいたから」
「どおりで、この家のいたるところに土鍋があるわけだ」
 一体何なんだと思って片づけた引っ越し初日だったが今さらながら納得をしてしまう。
「基本座布団一枚あれば十分だから。ただ寝相が悪いから土鍋がちょうどいいんだ。そして悪さをした時は蓋をしてやればしばらくいい子になる」
「それは虐待といいませんか?」
「本体は別にある。
 これは教育だ」
 死んだ目で言われてこれ以上深く突っ込んだら行けないと思いながらも
「実際あいつらなんか不思議な事にすり抜けるから蓋なんてあっても意味がないんだよ。
 さっきだって新聞受けから入れたけどあの隙間からひよとかしろが通れるわけないだろ?ほんと不思議で興味深い生き物だよ」
 真剣にうなる大家さんにそこー?なんて疑問を覚えるも
「まあ、あいつらの事よろしく。
 鍋の中に朝どれのミニトマトを入れておいたからあいつらのおやつに食べさせてやってくれ。
 基本はベジタリアンだから。ヴィーガンまで厳しく考えなくていいけどなるべく生臭は避けてやってくれ」
 そんな細かな配慮。
 さすがにこんな小さくて無知で無邪気な付喪神でも神の末端には並べられる付喪神だ。
 うっかりケーキを食べさせてしまったけど許される量かと思えば
「こいつらまだ自分の稼ぎがないくせに当たり前のようにご飯を要求してくるからな。
 食べ物は大切だという事を覚えさせるためにも粗食で育てろ」
「いや、保護者が必要なうちはそれは保護者の責任かと……」
 言えば大家さんは首を振って
「こいつらが大人になる頃俺達が生きて居られると思うか?
 うっかりさっさと大人になったとしてもこいつらの食事をまかないきれると思ってるのか?」
 脳裏のなかで真白の姿を思い出す。
 肉を何キロ食べるのだろうか……
 絶対俺よりも食べると血の気の引いた顔で大家を見ながら
「だからこそ粗食に耐えさせろ。玄さんは協力的だしひよさんは元からベジタリアンだ爬虫類共は雑食な所はあるが、しろさんが今ひとつわからん」
 いや、緑青さんも爬虫類のうちなのかよ?なんて疑問を口にも出さしてもらえず大家さんは話を続ける。
「取り合えずペットフードのカリカリを与えてるから……」
 そういって犬の写真と猫の写真のついたものを俺に渡してくれた。生臭問題どうしたと問いただしたい。
「何が正解かわからんから研究をしてくれ」
 それじゃあまたなと言うようにここに来た時と同じ胡散臭い笑顔で去っていくのを唖然と見送るのだった。

 とりあえず俺は台所に行って小さな小鉢にカリカリやトマトを五つほど用意していればすぐにちみっこ達がやってきていただきますとお行儀よくご飯を食べるのだった。
「食べるんだ……」
 なんとなくその光景を感慨深げに見守った後、枕元近くのサイドボードに我が家にはないくらいのふうわっふわのタオルを敷き詰めた土鍋を用意してベットに横たわり、その後スマホが騒ぎ出すまで現実逃避をするように夢を見ずに眠りにつくのだった。
 

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