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家に帰れる幸せをかみしめろ
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食事も終わり食後のお茶を飲んで今後のメリッサの方針を語り合っていた。
何はともあれ昨日国王に爵位継承の書類を提出して認められた為にメリッサがアーヴィン伯爵なのだ。
たとえ領地を始めとした家などの資産一つも持たなくても伯爵なのだ。
「とは言え、あの男から巻き上げたお金があるからメルちゃん何か欲しい物とかなーい?
おっさんお買い物について行ってあげるよー」
「ドレス?靴?宝石もいいわねぇ。
あ、良かったら私が今度フルコーデしてあげるわぁ」
きゃっ、素敵!と朝からテンション高いマダムにどのみちお披露目に見繕わなくてはいけないので
「お披露目の時はぜひお願いします」
「ああん!そんなつまらない理由じゃなくてもよくってよ!!
今から創作意欲が膨らむわぁ!」
身をくねらせていればアンディがすっと横からスケッチブックを差し出してペンを握らせればそこからはもうペンの走る音しかしない。
次々に描かれていくデザイン画を魔法のようにずっと眺めていてしまうも
「で、何か欲しい物は決まったか?」
終わりのない光景と見てかスコット様が声をかけて来てくれたところで
「そうですね。
物と言うより許されるなら一度家に帰りたいです」
俯いて膝の上で手を握りしめるメリッサにスコットは
「何か理由でも?」
心配げに尋ねるも
「理由と言いますか、今まで世話してきた庭や掃除してきた家が埃まるけになるの、悔しいじゃないですか。
私が言うのもなんですが自分の家なんだからっていつ誰が来ても恥ずかしくない様に手入れして来たんです。来たのは借金取りばかりでしたけど。
だから、愛着と言うか、意地と言うか、それがぐちゃぐちゃになるのが悔しいって言うか……
やっぱりお家に帰りたいのです」
情けない顔をしながらも笑みを浮かべるメリッサにスコットは判ると言う様に頷く。
「生まれた家に帰る事が出来る、それはとても幸せな事だよ」
目を伏せてそのまま口を開く。
「私の家には女だてらと言ってはいけないのだがそれは気の強い姉が居てね、騎士団にも所属して隊長にまでなった傑物なんだ」
「あー、居ましたね」
そっと目を反らすルヴィ様にまた悲しいお話と思って緊張するも
「何をとち狂ったのか『ベアーウルフを素手で倒せた今ならバーサークボアも素手で殺せるかもしれない!』と言って真っ直ぐ向かって来たバーサークボアに真っ向から挑んでな……」
さすがのメリッサでも「え?」と声を零し、真っ青な顔でまさかと言う様に頬を引き攣らせているのを見て頷く。
「ああ、当然のように帰らぬ人になったよ」
室内に沈黙と言うより皆さんこの話を知っているのか室内に失笑が響く。
「姉を連れて帰ってくれた部下の人達はこの国でも女だてらに騎士団の隊長に抜擢された有名人だったからね。
討伐先から家まで何度も何度もすれ違う人に涙を流してもらい、部下の方は姉の武勇伝を語らなくてはいけないと言う嫌がらせ、じゃなく義務を果たさなくてはならなくてね。
姉が我が家に戻って来る前より先に噂の方が先に我が家に辿り着いてね。
あの時ほど無事に帰って来て欲しかったと呪った時はなかったよ」
何とも返答が出来なくそっと視線を反らしてしまうもスコット家の姉兄共に印象が強すぎると引き攣る頬を両手で挟んでマッサージをする。
「だから思うのかもしれない。
帰る家があるのは良い。そして自分の足で返れる幸せ程ないと」
「それはお前の家だけだ。
そして弟達も油断しないように言い含めておけ」
ルヴィ様の呆れた声に心より祈ってしまう。
スコット様の弟君達がまともな感性でありますように、と。
何はともあれ昨日国王に爵位継承の書類を提出して認められた為にメリッサがアーヴィン伯爵なのだ。
たとえ領地を始めとした家などの資産一つも持たなくても伯爵なのだ。
「とは言え、あの男から巻き上げたお金があるからメルちゃん何か欲しい物とかなーい?
おっさんお買い物について行ってあげるよー」
「ドレス?靴?宝石もいいわねぇ。
あ、良かったら私が今度フルコーデしてあげるわぁ」
きゃっ、素敵!と朝からテンション高いマダムにどのみちお披露目に見繕わなくてはいけないので
「お披露目の時はぜひお願いします」
「ああん!そんなつまらない理由じゃなくてもよくってよ!!
今から創作意欲が膨らむわぁ!」
身をくねらせていればアンディがすっと横からスケッチブックを差し出してペンを握らせればそこからはもうペンの走る音しかしない。
次々に描かれていくデザイン画を魔法のようにずっと眺めていてしまうも
「で、何か欲しい物は決まったか?」
終わりのない光景と見てかスコット様が声をかけて来てくれたところで
「そうですね。
物と言うより許されるなら一度家に帰りたいです」
俯いて膝の上で手を握りしめるメリッサにスコットは
「何か理由でも?」
心配げに尋ねるも
「理由と言いますか、今まで世話してきた庭や掃除してきた家が埃まるけになるの、悔しいじゃないですか。
私が言うのもなんですが自分の家なんだからっていつ誰が来ても恥ずかしくない様に手入れして来たんです。来たのは借金取りばかりでしたけど。
だから、愛着と言うか、意地と言うか、それがぐちゃぐちゃになるのが悔しいって言うか……
やっぱりお家に帰りたいのです」
情けない顔をしながらも笑みを浮かべるメリッサにスコットは判ると言う様に頷く。
「生まれた家に帰る事が出来る、それはとても幸せな事だよ」
目を伏せてそのまま口を開く。
「私の家には女だてらと言ってはいけないのだがそれは気の強い姉が居てね、騎士団にも所属して隊長にまでなった傑物なんだ」
「あー、居ましたね」
そっと目を反らすルヴィ様にまた悲しいお話と思って緊張するも
「何をとち狂ったのか『ベアーウルフを素手で倒せた今ならバーサークボアも素手で殺せるかもしれない!』と言って真っ直ぐ向かって来たバーサークボアに真っ向から挑んでな……」
さすがのメリッサでも「え?」と声を零し、真っ青な顔でまさかと言う様に頬を引き攣らせているのを見て頷く。
「ああ、当然のように帰らぬ人になったよ」
室内に沈黙と言うより皆さんこの話を知っているのか室内に失笑が響く。
「姉を連れて帰ってくれた部下の人達はこの国でも女だてらに騎士団の隊長に抜擢された有名人だったからね。
討伐先から家まで何度も何度もすれ違う人に涙を流してもらい、部下の方は姉の武勇伝を語らなくてはいけないと言う嫌がらせ、じゃなく義務を果たさなくてはならなくてね。
姉が我が家に戻って来る前より先に噂の方が先に我が家に辿り着いてね。
あの時ほど無事に帰って来て欲しかったと呪った時はなかったよ」
何とも返答が出来なくそっと視線を反らしてしまうもスコット家の姉兄共に印象が強すぎると引き攣る頬を両手で挟んでマッサージをする。
「だから思うのかもしれない。
帰る家があるのは良い。そして自分の足で返れる幸せ程ないと」
「それはお前の家だけだ。
そして弟達も油断しないように言い含めておけ」
ルヴィ様の呆れた声に心より祈ってしまう。
スコット様の弟君達がまともな感性でありますように、と。
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