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気合一発「ちっくしょーーーっ!!!」
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結局この日は教師役の方達と挨拶だけを済ませてルヴィ様の寝室の掃除に明け暮れるのだった。
大量すぎて開きなおった私はなんでこんなにも溜め込むんだと怒りに任せながら下着類を袋に詰めてヴァレリーさんと愉快な仲間達に手伝ってもらいながらヴァレリーさんの家の馬車をお借りしてルヴィ様の家までピストン輸送をしてもらうのだった。お願いした時には皆さん一瞬引き攣った顔をする所多分あの汚屋敷状態を知ってるんだと納得したけど無事玄関前までの通路を復活させたおかげで玄関の所に山のような洗濯物の袋を積んでもらう事が出来た。
最後の便に私とルヴィ様も一緒に乗せてもらって帰って来た所でヴァレリーさんは言った。
「裏の使用人の通路が利用できるのならそちらから出入りできると便利でしたのにね」
正面玄関は訪問する者にこの家の佇まいをたっぷりと見せつけるようにわざと遠回りするように作られているのだと。
「裏門があるなんて知らなかった……」
項垂れるメルに普通のお屋敷ならあるに決まってるでしょーと普通ではない汚屋敷の主人のルヴィはヴァレリー一行を連れて北棟へと向かい
「確かこの辺りからまっすぐだったと思ったんだけど。
まあその悲しみを草むらに向けてどうぞ」
「ちっくしょーーーっ!!!」
薄暗い夕焼けが射す中ばふんと音を立てて雑草達が一瞬にして刈り取られ、遥か先にある門がキンと小さな金属音の悲鳴を上げるのを誰もが驚きの視線で見守る中死んだ瞳のルヴィはそれでも注意は怠らない。
「女の子なんだからちくしょーはないでしょ。
そんでもってこの雑草達はどうするの?」
「とりあえず通路からどかして、馬小屋をお借りしても良いですか?
馬小屋の裏辺りでたい肥を作ろうと思います。
よろしければこの辺りの花壇で簡単なお野菜を作らせていただけると幸いなのですが」
「裏庭はもう好きにしてちょーだい……」
花を植えるではなく野菜を植える。
さすがに花を愛でる嗜みもない令嬢に誰もが涙をこらえながらも目の前で喜々として草を両側に押しのけて行くメリッサを見ないふりをする。
そして途中運悪く切られてしまった数々のスライム達を全力で見ないふりをするルヴィをヴァレリー一行は睨みつけて現実逃避をする中メリッサは仕上げと言わんばかりに大量の水で汚れを押し流して数年ぶりに夕方だけど陽の目を見た石畳の通路を発掘し終えていた。
「これで裏庭から出入りできますね」
ふいーっと、大してかいてない汗を拭いながらルヴィに使用許可を求めれば、ああそうだねとのそっけない返答。
ヴァレリー一行が鎌を持って草を刈っても一日がかりになるだろう行程をたった数発の魔法で片づけてしまったのだ。
なによりもコントロールが素晴らしい事をメリッサは理解していない点にもルヴィは頭を抱えている。
「ヴァレリー、お前ならこの行程どれだけで出来る?」
「一時間を貰えれば。ですが、脇の所まで綺麗にとなるともう少しお時間が欲しいかと」
「ったく、メリッサは自分がどれだけ規格外か理解してるのかしら」
「まったくです。
そしてベルリオーズ様もご自宅がダンジョン化している事を理解しておりますか?」
「それは気のせいだってー。
とりあえずお前はこの規格外娘に正しい知識を与えろ。
でないとお前が苦労して覚えた魔法も血と汗と涙の結晶で作り上げた魔法もみんな「ちくしょー!」とか「えい!」の気合一発で使いまくってくれちゃうんだから。
どうやって発動するのか、たぶんお前も知らないような魔法も無意識で使ってるだろうから解析して調べて報告してほしいんだけど。お前の得意分野だったでしょ?」
「もちろんですとも!
ああ、こんな素敵な素材が埋もれていたなんて……
しかも何の魔道具も使わずにこのレベル!」
「しかもこの子当然の顔で無詠唱だからね。
見落とさないと言うか巻き込まれないように注意してねー」
グリンと表情のない顔で振り向き俺を見るヴァレリーの表情には心当たりがある。たぶん俺が今している顔と同じなんだと妙な師弟関係に気づかされて失笑するのだった。
大量すぎて開きなおった私はなんでこんなにも溜め込むんだと怒りに任せながら下着類を袋に詰めてヴァレリーさんと愉快な仲間達に手伝ってもらいながらヴァレリーさんの家の馬車をお借りしてルヴィ様の家までピストン輸送をしてもらうのだった。お願いした時には皆さん一瞬引き攣った顔をする所多分あの汚屋敷状態を知ってるんだと納得したけど無事玄関前までの通路を復活させたおかげで玄関の所に山のような洗濯物の袋を積んでもらう事が出来た。
最後の便に私とルヴィ様も一緒に乗せてもらって帰って来た所でヴァレリーさんは言った。
「裏の使用人の通路が利用できるのならそちらから出入りできると便利でしたのにね」
正面玄関は訪問する者にこの家の佇まいをたっぷりと見せつけるようにわざと遠回りするように作られているのだと。
「裏門があるなんて知らなかった……」
項垂れるメルに普通のお屋敷ならあるに決まってるでしょーと普通ではない汚屋敷の主人のルヴィはヴァレリー一行を連れて北棟へと向かい
「確かこの辺りからまっすぐだったと思ったんだけど。
まあその悲しみを草むらに向けてどうぞ」
「ちっくしょーーーっ!!!」
薄暗い夕焼けが射す中ばふんと音を立てて雑草達が一瞬にして刈り取られ、遥か先にある門がキンと小さな金属音の悲鳴を上げるのを誰もが驚きの視線で見守る中死んだ瞳のルヴィはそれでも注意は怠らない。
「女の子なんだからちくしょーはないでしょ。
そんでもってこの雑草達はどうするの?」
「とりあえず通路からどかして、馬小屋をお借りしても良いですか?
馬小屋の裏辺りでたい肥を作ろうと思います。
よろしければこの辺りの花壇で簡単なお野菜を作らせていただけると幸いなのですが」
「裏庭はもう好きにしてちょーだい……」
花を植えるではなく野菜を植える。
さすがに花を愛でる嗜みもない令嬢に誰もが涙をこらえながらも目の前で喜々として草を両側に押しのけて行くメリッサを見ないふりをする。
そして途中運悪く切られてしまった数々のスライム達を全力で見ないふりをするルヴィをヴァレリー一行は睨みつけて現実逃避をする中メリッサは仕上げと言わんばかりに大量の水で汚れを押し流して数年ぶりに夕方だけど陽の目を見た石畳の通路を発掘し終えていた。
「これで裏庭から出入りできますね」
ふいーっと、大してかいてない汗を拭いながらルヴィに使用許可を求めれば、ああそうだねとのそっけない返答。
ヴァレリー一行が鎌を持って草を刈っても一日がかりになるだろう行程をたった数発の魔法で片づけてしまったのだ。
なによりもコントロールが素晴らしい事をメリッサは理解していない点にもルヴィは頭を抱えている。
「ヴァレリー、お前ならこの行程どれだけで出来る?」
「一時間を貰えれば。ですが、脇の所まで綺麗にとなるともう少しお時間が欲しいかと」
「ったく、メリッサは自分がどれだけ規格外か理解してるのかしら」
「まったくです。
そしてベルリオーズ様もご自宅がダンジョン化している事を理解しておりますか?」
「それは気のせいだってー。
とりあえずお前はこの規格外娘に正しい知識を与えろ。
でないとお前が苦労して覚えた魔法も血と汗と涙の結晶で作り上げた魔法もみんな「ちくしょー!」とか「えい!」の気合一発で使いまくってくれちゃうんだから。
どうやって発動するのか、たぶんお前も知らないような魔法も無意識で使ってるだろうから解析して調べて報告してほしいんだけど。お前の得意分野だったでしょ?」
「もちろんですとも!
ああ、こんな素敵な素材が埋もれていたなんて……
しかも何の魔道具も使わずにこのレベル!」
「しかもこの子当然の顔で無詠唱だからね。
見落とさないと言うか巻き込まれないように注意してねー」
グリンと表情のない顔で振り向き俺を見るヴァレリーの表情には心当たりがある。たぶん俺が今している顔と同じなんだと妙な師弟関係に気づかされて失笑するのだった。
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