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こんな迷路で幼馴染と再会です

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 魔道士何てお金のかかる事なんて一般的な平民何て学ばないだろうしーと心の中で突っ込む理由の一つとして庭師のおじいちゃんに魔法を教えてもらう時に使った魔法石が自力で採取しなくてはいけなかった事が起因としている。
 魔物を倒し、魔物を捌いて、取り出した魔石に魔力を込めて作った魔法石に加工してやっと魔法が学べるのだ。
 この行程は魔物のサイズにもよるけど大体一日掛りになる作業だ。当然毛皮も売れるので綺麗に剥ぐ事も食材としてお肉を取る事も大事な作業だ。それを全部赤の他人にやってもらうとなるとものすごくお金がかかるとおじいちゃんは言っていた。だけど自分でやればお金はかからない上に食事のおかずにもなるから重要な仕事だと私に仕込んでくれた。
 学校に通って魔道士を始めとする魔法使いはそれを湯水のように使って学んでいくと言う……
 お給料減らされない様に私も自分で消費する分の魔石を集めるべきかしらと唸っている間に四人の間では何やら話がどんどんと進んでいるようだった。

「せっかくのベルリオーズ様の命令でもそのような内容でしたらお断りさせていただきます」

 上司には絶対服従なのではと思ってちらりとルヴィ様の方を見れば、先ほどの方達は私を物凄い視線で睨んでいた。

「魔法学校を三年学び、さらに魔導学院で四年履修した私達に彼女に魔法の基礎を教えろだなんて……」

 随分とお怒りのようで顔を真っ赤にされている。
 まぁ、それだけ一生懸命に学ばれたその後が私の面倒なんて閑職に飛ばされたと言ってるも同義語だ。
 断れるなら断るのが彼らのプライドだろう。
 
「そもそも魔法を学びたければ魔法学校に行かせれば済む話ではないですか」

 あまりのごもっともな意見に頷いてしまう。
 だけどそれ以前に先立つ物がない私としては無償でべんきょーと言う環境の方がかじりつきたい条件。
 ルヴィ様のお屋敷で一ヶ月働いてもアパートをお借りするお金ぐらいにしかならないだろう。
 もっともこれから先上手くやって行けるようならルヴィ様のお屋敷で働き続けるつもりだが……何とか掃除してあの部屋から窓のある部屋へと移りたいのが私の本音。時間を確認する為にベットから出なくてはならないのは正直めんどくさいのだ。
 もっとも今住んでいる南棟の廊下のゴミを何とかしない限り掃除は進まないんだけどねと、まだ当面はメインキッチンのお片付けと、二階の風呂の状況だろう。ライフラインの完全復活は是非ともお願いしたい物だ。
 そうこうしている間に三人は私の面倒の話しを断ってしまい、いざ退出しようとした所でまたノックの音が響いた。
 こちらには心当たりがないようで小首を傾げながらどうぞと促せば

「やあ、ベルリオーズ。随分と懐かしい顔を連れて歩いていると聞いて会いに来たぞ」
「これはセドリック殿下、わざわざ足を運ばなくても馳せ参じましたのに」
「なに、先ほど話を聞いた足でこちらに伺ったんだ。先触れもなく悪いな」

 私とよく似たハチミツを垂らしたような黄金の髪とかつて何度も王家へと嫁いで行ったり来たりと繰り返した為に同じ翡翠の瞳が私を見て笑っていた。
 似たような素材なのに貧相な私に比べてさすがは王族、毛並みも艶も全く違って豪華さをまき散らすような顔立ちと、相変わらずの王子様スマイルはほほ笑むだけでこの汚部屋でも周囲すら光り輝くような空間を作り出していた。 
 そんな今日も絶好調な王子様スマイルに存在がくすんでしまう背後には先ほどの三人より少し年上だろう一人の魔道士と一人の官僚みたいな恰好をした人を共に連れてこの部屋に入って来ていた。とんだチャレンジャーだ。いや、本当の供は外で待機しているのだろうが、こうやって連れて入ってきたと言う事は何か凄い人なのだろうと想像だけはしておく。
 こんなにも物が溢れてただで狭い部屋なのに入れる人数さえ制限されるような場所に人を連れてくること自体驚きはあれど、それよりもだ。
 細い筋のように分岐した迷路のようにできた獣道の一筋を使って私の側までやっ来る器用さを披露してくれた。
 よくぞ雪崩を発生せずに来れたなと感心する背後でお供の人は扉の側で待機している。たぶんそこがこの迷路の中で一番広い空間だと思うからいい場所を確保できてほっとしているのはその表情からも理解できた。

「メリッサ久し振り。
 君の家の事を心配していたがどうやら元気そうで安心したよ」
「セドリック殿下、お久しぶりにございます。
 私のような者にそのようなお心を……」
「それは良い。そんな畏まらず昔のようにリックと呼んでくれ」
「ありがたき幸せ、ですが一度もそのように呼んだ覚えはございませんのでお言葉に甘えさせていただきまして昔の通りセドリック様とお呼びさせていただきます」

 昔から妙に人懐っこいこの人は今も変わらずの様で、こうやってリックと名を呼んでくれと言われて断る度に犬耳があればペタンと垂れ下がって叱られた仔犬のような顔芸をするのは今も変わらないようだった。
 少し懐かしくて自然と笑みが浮かんでしまうも

「所で仕事中だったかな?」

 そうやってルヴィ様の前に立つ三人を見れば彼らは顔色悪く殿下と私を何度も見比べていた。

「いや、今しがた話が終わった所だ」

 そう言って三人に仕事に戻れとあっさりと追い払って私の横を通り過ぎる瞬間物凄い目で睨みつけられた。
 



 
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