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一面白色の……と言ったら何を連想します?

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 自宅をダンジョンへと変えた男の別宅にやってきた。 
 いや、別宅ではなく職場なのだがマダムからの情報によると宮廷魔道士の長と言うだけに城には個室が与えられていて、そこには風呂も寝室も何もかもが揃っていると言うのだ。当然ご飯も三食食べれる。
 繁忙期にはそこで寝泊まりする事もあり、ますます家に興味がわかなくなったわけだと理解した。
 そしてどうぞと言わんばかりに大きくあけ広げられた職場のお部屋は……やはり汚部屋でした……

「まぁ、家よりはましでしょ?」
「確かに空き瓶や脱ぎっぱなしの服がないだけましと言いましょうか……」

 壁一面の書物と床からも積み上げられた書物。
 辛うじてドアから獣道のような細い通り道がいくつかある先の一つは応接セット。
 ここでは誰も茶を出したりしないのかそこから他に繋がる道はないようだ。
 そして別に繋がる獣道に案内されればそこは日当たりの大きな机と隣の部屋に繋がる獣道。
 
「この先におっさんのプライベートな場所があるのよ~」

 喜々として紹介してくれるものの、確かにそこにはベットとライトテーブル、脱ぎっぱなしの宮廷魔道士の制服に……

「んで、奥の扉に風呂とかトイレとか小さいけどキッチンも付いてるのよ」

 おっさんこれぐらいの部屋で十分なんだけどねぇと言うのはあの広大な敷地面積を誇る汚屋敷持ち侯爵様のお言葉。

「あの、あちらのクローゼットを見てもよろしいでしょうか?」
「ああ、あっちのクローゼットは女の子にはお勧めしないけど片づけてくれるなら確認しておくといいわよ」

 不安しかない許可を頂いたのでスライド式のクローゼットを開ければ……
 白色の……基本は白色……大概が白色……
 
「まぁ、誰が見ても見苦しいからね。来客もあるからここに隠してたのよ」

 悲鳴を上げたくなるような驚きが口から飛び出す前にさらりと悪びれる事無く寧ろ自分でもよく詰めたと誇らしげに使用済みのおっさんの下着にうずもれる私を見ていた。
 怒りよりもクローゼットを開けた瞬間むせかえるような男臭、と言うかおっさん臭……
 何だか気が遠くなってきたと思うもそこは男性のプライベートルーム。
 下着の山から這い出て窓を大きく広げてからこの部屋を脱出するのだった。
 死亡原因がおっさんの下着何て痴女以外何でもないだろう噂が飛び交う前に隣の部屋に逃げ込んで扉を閉めた。

「どお?お掃除したくなったでしょ?」
「ええ、まずはゴミ捨てですね!汚物処理ですね!!!
 家と全く変わりませんね!!!」

 あまりの匂いにむせ返って涙があふれてしまうもおっさんは失礼なと言う視線を私に向けながらも応接セットに座らせて

「とりあえずおっさんがメルたんのスケジュール組んでみたわ。
 午前中に魔法学から要素学、構築学。午後は実戦よ。
 自分の力と一般的な力の差を理解する事から始めましょうか。
 だからまずは教本」

 そう言って窓際の大きな机から何冊もある分厚い本を持ってきて目の前に置いてくれた。

「語学力を見たいから六ページ目から読んでみて」

 その指示に私は要素学の本の目次を飛ばした先の最初の言葉を読む事になった。
 何やら物語のプロローグ的な事が書いてあってこの世界は地水火風の四大要素と光と闇の要素を合わせた六大要素で基礎魔法は構築されているといい構築パターンは無限大だとされている。
 確かに、と言うか途中で飽きそうだなと心の中で勝手に突っ込みながらもくもくと読んでいるうちにコンコンとノックの音がした。
 思わず本から視線を外して扉を見ればルヴィ様のどうぞと言う声と共に三人の魔道士風の制服を着た人がやってきた。
 
「ベルリオーズ様お呼びでしょうか」

 まだ年若いと言うか、私と同じくらいの魔道士風の人が一瞬だけ私をちらりと見る。
 私はこの部屋に無表情でやってくる人がいるんだと驚きでがん見してたから取り繕う為にも慌てて会釈だけするも私なんて風景の一つでしかないのよと言わんばかりに無視をされている。挨拶が出来ないといはどういう育ちをしているのかお家の人に是非とも問い質したい懸案だときっと私の家よりも御立派な財力がある家の人なのだろう。


 
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