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モブが場外で奮闘したら案外幸せな人生を手に入れることが出来たようです
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しかしクレスト様はほんの少し目を見張っただけでゆっくりと一つ深呼吸をして
「あなたが王太子妃に選ばれなかったことを心よりお喜び申し上げる」
「まあ、嫌みでして?」
あんなにも頑張ったのに酷いと傷つくそぶりをむせるも彼は私の正面で膝を折り
「王太子妃となれば私の手が届かない方となる所でした。
私サンスーン公爵家クレストは是非クリスタ侯爵家アズリール嬢に結婚を申し込みたく存じます」
あらまあ?
さすがに顔面偏差値が高すぎて冗談は顔だけにしてと耳を疑いましたが本気ですか?
百人並みの百人並みな私に何をおっしゃっているのでしょうかと小首を傾げて何のお戯れで?とお尋ねすれば
「あなたの能力は誰よりも側で見てきた私が保証します。
その力、是非とも王家ではなくサンスーン家にご助力をお願いしたく申し上げます」
「まあ、結婚前から労力を当てにするお家に嫁げだなんてひどいお話ですわ」
「もちろん、欲しいドレスや宝石、そのたもろもろ総て望みのままに」
「そのような報酬を用意されても私相手では」
豚に真珠とは言わないけどもったいないのではと悩む素振り。
「公爵家と侯爵家、家格差もバランスが良く、よろしければご実家の支援も致しましょう」
「そこまで困っているわけでもないですし」
穀倉地帯を手に入れた今では実家の支援と言う言葉の魅力は半減。もう一声ほしいと思うように悩んだそぶりをしてしまう。クレスト様もこれでもダメかというように眉間を狭めてしまいますがそこは公爵家の跡取り息子。更に交渉の手段を用意していた。
「もちろん未だに決まってない長兄殿の伴侶に我が従妹をお勧めしましょう。ただいま隣国に留学の身ですがこの社交シーズンにこちらでデビュタントを予定してます。
まずはパートナーとして顔合わせが出来れば、これから先も長兄殿とは深い縁続きとなり我がサンスーン家に嫁がれても寂しい思いはなさらないでしょう」
あらやだ。
ものすごい良い物件をとかなり心が揺れたあたりブラコンの私の負けは決定したも同然でしょう。
「今、この周囲で見ている方を保証にぜひ我が妻にどうか」
ここで決断しなくては王太子妃教育を終えたあなたが次の王太子妃筆頭になりますよとそんな脅迫めいたプロポーズ。
ほんの少し視線を外せば大修羅場をしていたはずの三人をよそに、いや、その三人すら私達の次の展開を見守るように注目をしていた。
今さっきこんな注目を浴びる場所で衆目を保証に婚約破棄をしていた場所で同じく衆目を保証に求婚を行う者達がいる。
こうなってしまえばなかった事にはできませんと言ったのは誰だったか。
尾ひれがついて明日にはこの狭い貴族社会に伝わりゆくだろう今夜の出来事に私が出せる答えはただ一つしかない。
「そうですね。それも悪くはありませんわ」
全然悪くはないのだけどねと自力で稼いだお小遣いで可愛い甥っ子を愛でまくる計画が目の前で崩れ去って心の中で血の涙を流しながらも安定した職場なら問題ないと自分に言い含めてその手を取った。
あとはもう殿下たちの事はまるで過去の事のようにだれも見向きはしないように祝福の嵐の中でクレスト様はその手に乗せた私の手にキスを一つ落として
「では善は急げ、まだ王宮に父がいますので至急報告に参りましょう」
「ふふふ、せっかちですわね。私の父も今日は王宮に来ていますので後ほどご一緒に挨拶に参りましょう」
かくして壁の花が本日の主役となって今回の卒業パーティは幕を下ろした。
マスターク第一王子殿下は王太子候補から外されてその後は公爵として王席から出されて生涯領地内に幽閉される事となり、自称・男爵家のココ・ラスター嬢は貴族の名前を騙った詐称罪で牢屋へと案内された。
自称・男爵家のココ・ラスター嬢にハントされた方々は爵位継承を外されたり、婚約破棄をされたり、領地に引きこもらされたりと将来有望でしたのに様様な対処が行われたようで、二度と社交界でお会いする事はありませんでした。
そして一年後に予定されていた結婚も取りやめになったアガート公爵家令嬢のマリアーネ様は王妃様の侍女として王宮に身柄を拘束される事になりました。
ほら、王家の事をいろいろ知りすぎてしまっているので二度と王宮から出してもらえないようです。それだけ王家もマリアーネ様にお金をかけてきたので仕方がないと言えば仕方がないのですが……
結局の所王太子妃も最初から教育し直しという事で末の王子殿下が王太子候補に挙がりました。他の王子様にはすでに他国の王家に婚約者様がお見えになるのでこのような形になりましたのは仕方がないのでしょう。早々に王位を譲って王妃様とゆっくりしたかった国王にはもう少し頑張ってもらわなくてはいけませんねと応援はしておく。
そしてあれから一年。
王家に召し抱えられる前に本日私はサンスーン公爵家に嫁ぐことになりました。
真っ白のシルクで出来た花嫁衣装はスラリとしたシンプルなデザインに凝った意匠のレースと真珠をふんだんにあしらった公爵家の財力を表すかのような素晴らしいドレスに身を包んでいます。
今私はお父様からクレスト様にエスコートの手を受け渡され見つめあっています。
まぶしいほどの顔面偏差値がとろけるような笑みを浮かべるので私の意識はもうどこかへ旅立とうとしています。
司祭からの言葉なんて右から左に通り抜ければじっと見つめるクレスト様の瞳は私だけを映し出していて……
学生時代は友人も少ない壁際のモブでしたが……
今、私は世界一贅沢なほどに幸せな花嫁となり、クレスト様の腕の中で誓いのキスを交わしています。
「あなたが王太子妃に選ばれなかったことを心よりお喜び申し上げる」
「まあ、嫌みでして?」
あんなにも頑張ったのに酷いと傷つくそぶりをむせるも彼は私の正面で膝を折り
「王太子妃となれば私の手が届かない方となる所でした。
私サンスーン公爵家クレストは是非クリスタ侯爵家アズリール嬢に結婚を申し込みたく存じます」
あらまあ?
さすがに顔面偏差値が高すぎて冗談は顔だけにしてと耳を疑いましたが本気ですか?
百人並みの百人並みな私に何をおっしゃっているのでしょうかと小首を傾げて何のお戯れで?とお尋ねすれば
「あなたの能力は誰よりも側で見てきた私が保証します。
その力、是非とも王家ではなくサンスーン家にご助力をお願いしたく申し上げます」
「まあ、結婚前から労力を当てにするお家に嫁げだなんてひどいお話ですわ」
「もちろん、欲しいドレスや宝石、そのたもろもろ総て望みのままに」
「そのような報酬を用意されても私相手では」
豚に真珠とは言わないけどもったいないのではと悩む素振り。
「公爵家と侯爵家、家格差もバランスが良く、よろしければご実家の支援も致しましょう」
「そこまで困っているわけでもないですし」
穀倉地帯を手に入れた今では実家の支援と言う言葉の魅力は半減。もう一声ほしいと思うように悩んだそぶりをしてしまう。クレスト様もこれでもダメかというように眉間を狭めてしまいますがそこは公爵家の跡取り息子。更に交渉の手段を用意していた。
「もちろん未だに決まってない長兄殿の伴侶に我が従妹をお勧めしましょう。ただいま隣国に留学の身ですがこの社交シーズンにこちらでデビュタントを予定してます。
まずはパートナーとして顔合わせが出来れば、これから先も長兄殿とは深い縁続きとなり我がサンスーン家に嫁がれても寂しい思いはなさらないでしょう」
あらやだ。
ものすごい良い物件をとかなり心が揺れたあたりブラコンの私の負けは決定したも同然でしょう。
「今、この周囲で見ている方を保証にぜひ我が妻にどうか」
ここで決断しなくては王太子妃教育を終えたあなたが次の王太子妃筆頭になりますよとそんな脅迫めいたプロポーズ。
ほんの少し視線を外せば大修羅場をしていたはずの三人をよそに、いや、その三人すら私達の次の展開を見守るように注目をしていた。
今さっきこんな注目を浴びる場所で衆目を保証に婚約破棄をしていた場所で同じく衆目を保証に求婚を行う者達がいる。
こうなってしまえばなかった事にはできませんと言ったのは誰だったか。
尾ひれがついて明日にはこの狭い貴族社会に伝わりゆくだろう今夜の出来事に私が出せる答えはただ一つしかない。
「そうですね。それも悪くはありませんわ」
全然悪くはないのだけどねと自力で稼いだお小遣いで可愛い甥っ子を愛でまくる計画が目の前で崩れ去って心の中で血の涙を流しながらも安定した職場なら問題ないと自分に言い含めてその手を取った。
あとはもう殿下たちの事はまるで過去の事のようにだれも見向きはしないように祝福の嵐の中でクレスト様はその手に乗せた私の手にキスを一つ落として
「では善は急げ、まだ王宮に父がいますので至急報告に参りましょう」
「ふふふ、せっかちですわね。私の父も今日は王宮に来ていますので後ほどご一緒に挨拶に参りましょう」
かくして壁の花が本日の主役となって今回の卒業パーティは幕を下ろした。
マスターク第一王子殿下は王太子候補から外されてその後は公爵として王席から出されて生涯領地内に幽閉される事となり、自称・男爵家のココ・ラスター嬢は貴族の名前を騙った詐称罪で牢屋へと案内された。
自称・男爵家のココ・ラスター嬢にハントされた方々は爵位継承を外されたり、婚約破棄をされたり、領地に引きこもらされたりと将来有望でしたのに様様な対処が行われたようで、二度と社交界でお会いする事はありませんでした。
そして一年後に予定されていた結婚も取りやめになったアガート公爵家令嬢のマリアーネ様は王妃様の侍女として王宮に身柄を拘束される事になりました。
ほら、王家の事をいろいろ知りすぎてしまっているので二度と王宮から出してもらえないようです。それだけ王家もマリアーネ様にお金をかけてきたので仕方がないと言えば仕方がないのですが……
結局の所王太子妃も最初から教育し直しという事で末の王子殿下が王太子候補に挙がりました。他の王子様にはすでに他国の王家に婚約者様がお見えになるのでこのような形になりましたのは仕方がないのでしょう。早々に王位を譲って王妃様とゆっくりしたかった国王にはもう少し頑張ってもらわなくてはいけませんねと応援はしておく。
そしてあれから一年。
王家に召し抱えられる前に本日私はサンスーン公爵家に嫁ぐことになりました。
真っ白のシルクで出来た花嫁衣装はスラリとしたシンプルなデザインに凝った意匠のレースと真珠をふんだんにあしらった公爵家の財力を表すかのような素晴らしいドレスに身を包んでいます。
今私はお父様からクレスト様にエスコートの手を受け渡され見つめあっています。
まぶしいほどの顔面偏差値がとろけるような笑みを浮かべるので私の意識はもうどこかへ旅立とうとしています。
司祭からの言葉なんて右から左に通り抜ければじっと見つめるクレスト様の瞳は私だけを映し出していて……
学生時代は友人も少ない壁際のモブでしたが……
今、私は世界一贅沢なほどに幸せな花嫁となり、クレスト様の腕の中で誓いのキスを交わしています。
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おもしろいです。
アズリールさん、とてもいい性格、能力、素晴らしいモブさん?ですね、大好きです😍
わんっ様
感想ありがとございます!
アズリールさんは表舞台には立たずともひっそり壁際で場外で暴れた結果をご満悦に眺める事が出来るモブさんなのですw
衝動的に書いてみましたが楽しんでいただけたようで何よりです!