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モブの考察はストロベリーとシャンパンを味わいながら語らいます
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シーンと静まり返るダンスホールの中心に向けて次の展開を楽しみにもぐもぐしながら眺めていれば
「アズリール嬢、随分と楽しまれている様ですね
こくん。
思わず口にしたシャンパンが変なところに入っていきそうな手前で咳払いをして何事もなかったかのようなすました顔で過ごせば
「まあ、クレスト様。クレスト様も殿下の補佐役なのにこちらでのんびりしていらっしゃってよろしいのですか?」
サンスーン公爵家の小公子様でもある良きクラスメイトだったクレスト様に早く何とかしなさい。ですがこの顛末が気になるのでもう少しお待ちになってと言う複雑な感情を視線で訴えればどこか疲れた様な顔で
「昨日のうちに父と一緒に陛下に嘆願したよ。もうあのバカ殿下のお守は無理だって。
それでもって無事お役御免。代わりに卒業したらすぐに公爵家の後継教育に専念するって事で父上にもお許しをもらった」
「まあ、騎士の道は諦めたのですか?」
「剣を諦めるのは無念だがあのバカ王子を制御できない国を守る意義が分からない。
バカにとられる時間を考えたら家を守る方を優先するよ」
騎士にあこがれて剣一筋だったのにそれすら諦める事のできる悲しい選択。
「となると早急に探さなくてはいけませんね?
確かまだ、でしたわよね」
婚約者は……
嫌な事を思い出させるなと言う顔を向けてくるものの財力権力顔面偏差値オールクリアな金髪と湖水を映す瞳をお持ちのクレスト様なら年頃が釣り合う娘様でなくてももう少し待てば掘り出し物も探したい放題なだけに大した問題ではありませんねなんてこの人の心配は止めておく。
「そう言うアズリール嬢もまだとか?」
「わたくしの場合は官吏になりたいと言う目標があるし、いずれ家を出る身。
職場で程よい相手を探すなり、家に籍だけは残させていただいて一人街中で暮らすのも悪くないと考えています」
せっかく学問はもちろん淑女教育も恙なく終了し、名前だけの家名と言う名の権力それらすべてを投げ捨ててどこぞの家に収まって子育てとお茶会を繰り広げる生涯なんて冗談じゃない。いや、それで納得できる結婚なら妥協するけど残念ながらそんな出会いはこの三年間の学校生活の中でかけらもなかった。
まあ、官吏になる為に授業と授業の合間の時間は本を読む時間にあてたり、放課後は図書館で官吏になるための勉強をしたりと出会いの瞬間さえ隙を作らなかったのが原因だけど。
うん。私が悪いね。
でもすでに官吏の道を切り開けたので悔いはない!
もちろん学年4位のクレスト様はこんな私の事情も理解してくれている。
ひょっとして官吏の為に成績を調整してくれているふしも感じていたもののその程度でどうこうなるサンスーン公爵家ではない。
学校生活でそれなりに友人が出来た中で数少ない男の子の友達だったけど、こうやっておしゃべりをする事ももうないのかと公爵家の後継ぎ様の煌びやかにかっこいい姿となんかいい香りがする空気を満喫しながら目の前の茶番劇を眺めていた。
人の不幸は蜜の味とおっしゃいますが、正直何も今こんな所でしなくてももっと早い段階でいくらでもできたでしょうとシャンパンのお替わりを頂けばクレスト様がイチゴを食べる?と差し出していただいたのでありがたく頂戴します。
シャンパンとイチゴの組み合わせってサイコー!!!
これぞまさに至福!
そしてクレスト様ナイスアシストありがとうございます!
目の前のゲスなやり取りを観覧しながら傍観者でいられる、これも最高でしょう。
そんなもぐもぐタイムを満喫していれば
「アズリール嬢はあの三人をどう見るかな?」
呆れた視線のまま傍観者に徹するクレスト様に私は小首をかしげ
「まずこのような誤魔化しのないような公的な場所でのマスターク様の言動は臣下として不信を抱かずにはいられません。
マリアーネ様との婚約は王命とお伺いしました。
王命も守られない方にこの国の未来を預ける事は不安でしかなりません。
さらにこのような観衆の中でのこのやり取りは王家が否定するより噂が流れて明日には近隣諸国の耳に入るでしょう。こうなってしまえば婚約破棄をなかった事にはできません」
思いっきり不敬罪の言葉ですがマスターク様はまだ王太子候補の段階。一つ下、三つ下、五つ下と候補の方々がちゃんとその座を狙っています。
理解してらっしゃるのでしょうか?
理解してないからこんな事になるのですよねと溜息を零せば隣に立つクレスト様もうんうんと頷いてくれた。
「そしてマリアーネ様。
すでに王太子妃教育は終了したとお伺いしましたが、このような日が来るのは判っていたはずなのに裏付け調査や実証、さらに誰かが仕組んだ悪事を擦り付けられているのに断罪しない方を国母とするには温すぎましょう。
すでに婚約者として王家の仕事に携わる代わりにある程度の権限も与えられていると聞いています。それを有効に使わないなんてこれからの国政が不安でしかありません」
「なるほどなるほど」
言いながら私同様クレスト様もシャンパンを傾けながら私の評価に耳を傾けてくれる。
無駄にいい男ってこういう仕草ですら絵になるのねとシャンパングラスに移りこむ姿に少し見とれてしまうのは周囲でお声を掛けたがっている令嬢たちも同様のよう。
もう少しお話が続きますのでお待ちくださいとその令嬢たちに目配せをすれば普段はあまりおしゃべりをしないクレスト様の珍しい様子を最後に目に刻み付けるのでどうぞごゆっくりと言う合図を受けてから話を続ける。
学年順位が近く高位貴族だからこそおしゃべりを邪魔しに来ないけど、これが最後にお話しさせてくださいなんて飛び込んできた令嬢なら即座に排除される恐ろしいシステムがあるが、私とクレスト様の間には勉強の確認などからのおしゃべりから許しえ貰える地位を確立した。いや、別にどうでもいいけどお菓子をいつも持って来てくれるので断れないのが悔しかったのは内緒にしておこう……
「アズリール嬢、随分と楽しまれている様ですね
こくん。
思わず口にしたシャンパンが変なところに入っていきそうな手前で咳払いをして何事もなかったかのようなすました顔で過ごせば
「まあ、クレスト様。クレスト様も殿下の補佐役なのにこちらでのんびりしていらっしゃってよろしいのですか?」
サンスーン公爵家の小公子様でもある良きクラスメイトだったクレスト様に早く何とかしなさい。ですがこの顛末が気になるのでもう少しお待ちになってと言う複雑な感情を視線で訴えればどこか疲れた様な顔で
「昨日のうちに父と一緒に陛下に嘆願したよ。もうあのバカ殿下のお守は無理だって。
それでもって無事お役御免。代わりに卒業したらすぐに公爵家の後継教育に専念するって事で父上にもお許しをもらった」
「まあ、騎士の道は諦めたのですか?」
「剣を諦めるのは無念だがあのバカ王子を制御できない国を守る意義が分からない。
バカにとられる時間を考えたら家を守る方を優先するよ」
騎士にあこがれて剣一筋だったのにそれすら諦める事のできる悲しい選択。
「となると早急に探さなくてはいけませんね?
確かまだ、でしたわよね」
婚約者は……
嫌な事を思い出させるなと言う顔を向けてくるものの財力権力顔面偏差値オールクリアな金髪と湖水を映す瞳をお持ちのクレスト様なら年頃が釣り合う娘様でなくてももう少し待てば掘り出し物も探したい放題なだけに大した問題ではありませんねなんてこの人の心配は止めておく。
「そう言うアズリール嬢もまだとか?」
「わたくしの場合は官吏になりたいと言う目標があるし、いずれ家を出る身。
職場で程よい相手を探すなり、家に籍だけは残させていただいて一人街中で暮らすのも悪くないと考えています」
せっかく学問はもちろん淑女教育も恙なく終了し、名前だけの家名と言う名の権力それらすべてを投げ捨ててどこぞの家に収まって子育てとお茶会を繰り広げる生涯なんて冗談じゃない。いや、それで納得できる結婚なら妥協するけど残念ながらそんな出会いはこの三年間の学校生活の中でかけらもなかった。
まあ、官吏になる為に授業と授業の合間の時間は本を読む時間にあてたり、放課後は図書館で官吏になるための勉強をしたりと出会いの瞬間さえ隙を作らなかったのが原因だけど。
うん。私が悪いね。
でもすでに官吏の道を切り開けたので悔いはない!
もちろん学年4位のクレスト様はこんな私の事情も理解してくれている。
ひょっとして官吏の為に成績を調整してくれているふしも感じていたもののその程度でどうこうなるサンスーン公爵家ではない。
学校生活でそれなりに友人が出来た中で数少ない男の子の友達だったけど、こうやっておしゃべりをする事ももうないのかと公爵家の後継ぎ様の煌びやかにかっこいい姿となんかいい香りがする空気を満喫しながら目の前の茶番劇を眺めていた。
人の不幸は蜜の味とおっしゃいますが、正直何も今こんな所でしなくてももっと早い段階でいくらでもできたでしょうとシャンパンのお替わりを頂けばクレスト様がイチゴを食べる?と差し出していただいたのでありがたく頂戴します。
シャンパンとイチゴの組み合わせってサイコー!!!
これぞまさに至福!
そしてクレスト様ナイスアシストありがとうございます!
目の前のゲスなやり取りを観覧しながら傍観者でいられる、これも最高でしょう。
そんなもぐもぐタイムを満喫していれば
「アズリール嬢はあの三人をどう見るかな?」
呆れた視線のまま傍観者に徹するクレスト様に私は小首をかしげ
「まずこのような誤魔化しのないような公的な場所でのマスターク様の言動は臣下として不信を抱かずにはいられません。
マリアーネ様との婚約は王命とお伺いしました。
王命も守られない方にこの国の未来を預ける事は不安でしかなりません。
さらにこのような観衆の中でのこのやり取りは王家が否定するより噂が流れて明日には近隣諸国の耳に入るでしょう。こうなってしまえば婚約破棄をなかった事にはできません」
思いっきり不敬罪の言葉ですがマスターク様はまだ王太子候補の段階。一つ下、三つ下、五つ下と候補の方々がちゃんとその座を狙っています。
理解してらっしゃるのでしょうか?
理解してないからこんな事になるのですよねと溜息を零せば隣に立つクレスト様もうんうんと頷いてくれた。
「そしてマリアーネ様。
すでに王太子妃教育は終了したとお伺いしましたが、このような日が来るのは判っていたはずなのに裏付け調査や実証、さらに誰かが仕組んだ悪事を擦り付けられているのに断罪しない方を国母とするには温すぎましょう。
すでに婚約者として王家の仕事に携わる代わりにある程度の権限も与えられていると聞いています。それを有効に使わないなんてこれからの国政が不安でしかありません」
「なるほどなるほど」
言いながら私同様クレスト様もシャンパンを傾けながら私の評価に耳を傾けてくれる。
無駄にいい男ってこういう仕草ですら絵になるのねとシャンパングラスに移りこむ姿に少し見とれてしまうのは周囲でお声を掛けたがっている令嬢たちも同様のよう。
もう少しお話が続きますのでお待ちくださいとその令嬢たちに目配せをすれば普段はあまりおしゃべりをしないクレスト様の珍しい様子を最後に目に刻み付けるのでどうぞごゆっくりと言う合図を受けてから話を続ける。
学年順位が近く高位貴族だからこそおしゃべりを邪魔しに来ないけど、これが最後にお話しさせてくださいなんて飛び込んできた令嬢なら即座に排除される恐ろしいシステムがあるが、私とクレスト様の間には勉強の確認などからのおしゃべりから許しえ貰える地位を確立した。いや、別にどうでもいいけどお菓子をいつも持って来てくれるので断れないのが悔しかったのは内緒にしておこう……
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