64 / 73
星屑物語 57
しおりを挟む
一方魔法兵団隊長のサンクールの魔物呼び寄せの魔法が効いてか、数日前より魔物を呼び集めていたせいか判らないが土煙を上げてこちらに押し寄せてくるのが目視できるようになってきた。
ファウエルは魔法騎士団隊長として王族の側で起立して隊長になって三度目のその光景を眺めている。
毎年とは言え中々迫力ある光景とここを突破されれば王都に被害が出る、そんな危険をはらむ祭はいかがなものかと思うも何やら開国の時の逸話に則ってと言うのだから異を唱えればどんな目に合うかは想像するまでもない。
そんなわけでぼんやりと王族の警護に当たるのだがたまにはあちら側で狩りをしたいなと思っているのは楽屋裏のもっぱらの話題だ。
そして家ごとに趣向を凝らした制服は陛下達のお世話をする侍女達の話題の花となっている。
未婚の女性が多い中で趣向を凝らせば凝らすほど高価になる隊服で家柄を見て、そしてその中で目立つ功績を残した者が優良物件として取り扱われる事が多く、無駄に壁際に並ぶこんなにも必要としない侍女達は今では立派なハンターになっていた。
そんな中で先ほど見た赤を見つけた。狩りの出発地点は家柄の具合を示すように中央から陣取っている。
王家のテントの前には音楽隊と言う他国にはない騎士団所属の部隊があるのだが、彼らが鎮座して準備を始めている。
何でも開祖の初代リンヴェル王が音楽を深く愛したとか何とかで他国よりも芸術に力を入れている。
よく必要かと言われているものの、武力としての戦力にならない者が主にそちらに回されている傾向があり、それはそれで彼らは新天地に辿り着いて活躍しているのだから良しとするしかない。
父が言うにはそう言う事に力を入れる事が出来る、それは豊かで平和だからだと言うが、確かに豊かでもなく平和でなければ剣を握るしかないとこの国の平和の象徴と言うのを最近なんとなく理解が出来るようになってきた。
理由は主にグレゴールの屋敷だろう。
数百年前にあれだけの技術があって今では維持できなく失われている技術もあると言うのだから年数が経てば経つほど向上するわけではない事を目の当たりにして理解するのだから俺の他にももっと理解が深まればいいと思うしかない。
ぼんやりとそんな事を考えながら二人を眺めていれば周囲の者達に何か話しかけられて笑われていた。
残念な事に他の公爵家はアリーのデビューに花を持たせようと今回不参加を決めており、縁戚の侯爵家伯爵家もどこも出ていない。
支払うお金があるのだろうと言う事なのでどの家も立派なんだと、実家のセルグラードの場合宰相の家の警備は完ぺきだと言う理由でアピールをしなくてはいけないと言って参加している。どちらかと言うと事務方の家ではそう言った意味合いで参加をする家が多いが……
それにしても会話の内容は聞こえなくても馬鹿にされている事だけは見ているだけで理解できた。
ちらりちらりと副隊長と補佐の視線が痛かったが気にせず前だけを向いていればついに声が風に乗ってここまでたどり着いた。
「グレゴール公爵家様はたった二人しか使用人を出さないとはとんだ方だな!」
笑い声と共にどうとでもとれる声に思わず眉をひそめてしまうもそれよりも先に陛下の咳ばらいが聞こえた。
これは向こうまで聞こえないだろうが、周囲の胆を冷かすには十分すぎた。
「あの家もう終わりましたね」
「しかも大層な事に背中のマントに家紋を……
当主の顔に泥を塗ってるのが判らない物ですかねぇ」
小声の部下の会話に混ざることなく俺はルードとヒューリーの様子を見守っていた。
彼らの実力がどれほどの物か知らないが、ヒューリーはともかくルードは笑顔でその言葉を受け流していた。
やはりここは陛下達の言葉に素直に従わずにセルグラードから何人か騎士を連れて来ればと今更ながら悔やんでしまう。
本当に今更だがとグレゴールのテントを見ればアリーは目の前の景色なんて見れないほどの来客相手にてんてこ舞いになっていた。
頂いたお土産がなんだかすごい事になってるが大丈夫だろうかと思うもケイトがそのお土産をガゼボの二階に運んでいた。
物見の為の二階だと思ったらまさかの倉庫使いなのかと唖然としていれば
「公爵様のお家は初参加と聞く!
よければみんな公爵様のデビューを記念してまず最初の一発をこちらの騎士様に打ち上げてもらおうじゃないか!」
高らかな声にに込めた嫌味をオブラートに包み込んで周囲から賛同をもぎ取っていた。
どこの家か知らんが縁の方の家は何処か哀れそうな視線を向けて、でも頷くしかないと言わんばかりのヒエラルキーを感じるように力なく手を振って返事をしていた。
ファウエルは魔法騎士団隊長として王族の側で起立して隊長になって三度目のその光景を眺めている。
毎年とは言え中々迫力ある光景とここを突破されれば王都に被害が出る、そんな危険をはらむ祭はいかがなものかと思うも何やら開国の時の逸話に則ってと言うのだから異を唱えればどんな目に合うかは想像するまでもない。
そんなわけでぼんやりと王族の警護に当たるのだがたまにはあちら側で狩りをしたいなと思っているのは楽屋裏のもっぱらの話題だ。
そして家ごとに趣向を凝らした制服は陛下達のお世話をする侍女達の話題の花となっている。
未婚の女性が多い中で趣向を凝らせば凝らすほど高価になる隊服で家柄を見て、そしてその中で目立つ功績を残した者が優良物件として取り扱われる事が多く、無駄に壁際に並ぶこんなにも必要としない侍女達は今では立派なハンターになっていた。
そんな中で先ほど見た赤を見つけた。狩りの出発地点は家柄の具合を示すように中央から陣取っている。
王家のテントの前には音楽隊と言う他国にはない騎士団所属の部隊があるのだが、彼らが鎮座して準備を始めている。
何でも開祖の初代リンヴェル王が音楽を深く愛したとか何とかで他国よりも芸術に力を入れている。
よく必要かと言われているものの、武力としての戦力にならない者が主にそちらに回されている傾向があり、それはそれで彼らは新天地に辿り着いて活躍しているのだから良しとするしかない。
父が言うにはそう言う事に力を入れる事が出来る、それは豊かで平和だからだと言うが、確かに豊かでもなく平和でなければ剣を握るしかないとこの国の平和の象徴と言うのを最近なんとなく理解が出来るようになってきた。
理由は主にグレゴールの屋敷だろう。
数百年前にあれだけの技術があって今では維持できなく失われている技術もあると言うのだから年数が経てば経つほど向上するわけではない事を目の当たりにして理解するのだから俺の他にももっと理解が深まればいいと思うしかない。
ぼんやりとそんな事を考えながら二人を眺めていれば周囲の者達に何か話しかけられて笑われていた。
残念な事に他の公爵家はアリーのデビューに花を持たせようと今回不参加を決めており、縁戚の侯爵家伯爵家もどこも出ていない。
支払うお金があるのだろうと言う事なのでどの家も立派なんだと、実家のセルグラードの場合宰相の家の警備は完ぺきだと言う理由でアピールをしなくてはいけないと言って参加している。どちらかと言うと事務方の家ではそう言った意味合いで参加をする家が多いが……
それにしても会話の内容は聞こえなくても馬鹿にされている事だけは見ているだけで理解できた。
ちらりちらりと副隊長と補佐の視線が痛かったが気にせず前だけを向いていればついに声が風に乗ってここまでたどり着いた。
「グレゴール公爵家様はたった二人しか使用人を出さないとはとんだ方だな!」
笑い声と共にどうとでもとれる声に思わず眉をひそめてしまうもそれよりも先に陛下の咳ばらいが聞こえた。
これは向こうまで聞こえないだろうが、周囲の胆を冷かすには十分すぎた。
「あの家もう終わりましたね」
「しかも大層な事に背中のマントに家紋を……
当主の顔に泥を塗ってるのが判らない物ですかねぇ」
小声の部下の会話に混ざることなく俺はルードとヒューリーの様子を見守っていた。
彼らの実力がどれほどの物か知らないが、ヒューリーはともかくルードは笑顔でその言葉を受け流していた。
やはりここは陛下達の言葉に素直に従わずにセルグラードから何人か騎士を連れて来ればと今更ながら悔やんでしまう。
本当に今更だがとグレゴールのテントを見ればアリーは目の前の景色なんて見れないほどの来客相手にてんてこ舞いになっていた。
頂いたお土産がなんだかすごい事になってるが大丈夫だろうかと思うもケイトがそのお土産をガゼボの二階に運んでいた。
物見の為の二階だと思ったらまさかの倉庫使いなのかと唖然としていれば
「公爵様のお家は初参加と聞く!
よければみんな公爵様のデビューを記念してまず最初の一発をこちらの騎士様に打ち上げてもらおうじゃないか!」
高らかな声にに込めた嫌味をオブラートに包み込んで周囲から賛同をもぎ取っていた。
どこの家か知らんが縁の方の家は何処か哀れそうな視線を向けて、でも頷くしかないと言わんばかりのヒエラルキーを感じるように力なく手を振って返事をしていた。
8
お気に入りに追加
365
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

【完結】「政略結婚ですのでお構いなく!」
仙桜可律
恋愛
文官の妹が王子に見初められたことで、派閥間の勢力図が変わった。
「で、政略結婚って言われましてもお父様……」
優秀な兄と妹に挟まれて、何事もほどほどにこなしてきたミランダ。代々優秀な文官を輩出してきたシューゼル伯爵家は良縁に恵まれるそうだ。
適齢期になったら適当に釣り合う方と適当にお付き合いをして適当な時期に結婚したいと思っていた。
それなのに代々武官の家柄で有名なリッキー家と結婚だなんて。
のんびりに見えて豪胆な令嬢と
体力系にしか自信がないワンコ令息
24.4.87 本編完結
以降不定期で番外編予定

もう一度あなたと?
キムラましゅろう
恋愛
アデリオール王国魔法省で魔法書士として
働くわたしに、ある日王命が下った。
かつて魅了に囚われ、婚約破棄を言い渡してきた相手、
ワルター=ブライスと再び婚約を結ぶようにと。
「え?もう一度あなたと?」
国王は王太子に巻き込まれる形で魅了に掛けられた者達への
救済措置のつもりだろうけど、はっきり言って迷惑だ。
だって魅了に掛けられなくても、
あの人はわたしになんて興味はなかったもの。
しかもわたしは聞いてしまった。
とりあえずは王命に従って、頃合いを見て再び婚約解消をすればいいと、彼が仲間と話している所を……。
OK、そう言う事ならこちらにも考えがある。
どうせ再びフラれるとわかっているなら、この状況、利用させてもらいましょう。
完全ご都合主義、ノーリアリティ展開で進行します。
生暖かい目で見ていただけると幸いです。
小説家になろうさんの方でも投稿しています。

婚約したら幼馴染から絶縁状が届きました。
黒蜜きな粉
恋愛
婚約が決まった翌日、登校してくると机の上に一通の手紙が置いてあった。
差出人は幼馴染。
手紙には絶縁状と書かれている。
手紙の内容は、婚約することを発表するまで自分に黙っていたから傷ついたというもの。
いや、幼馴染だからって何でもかんでも報告しませんよ。
そもそも幼馴染は親友って、そんなことはないと思うのだけど……?
そのうち機嫌を直すだろうと思っていたら、嫌がらせがはじまってしまった。
しかも、婚約者や周囲の友人たちまで巻き込むから大変。
どうやら私の評判を落として婚約を破談にさせたいらしい。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる