流星物語

雪那 由多

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星屑物語 57

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 一方魔法兵団隊長のサンクールの魔物呼び寄せの魔法が効いてか、数日前より魔物を呼び集めていたせいか判らないが土煙を上げてこちらに押し寄せてくるのが目視できるようになってきた。
 ファウエルは魔法騎士団隊長として王族の側で起立して隊長になって三度目のその光景を眺めている。
 毎年とは言え中々迫力ある光景とここを突破されれば王都に被害が出る、そんな危険をはらむ祭はいかがなものかと思うも何やら開国の時の逸話に則ってと言うのだから異を唱えればどんな目に合うかは想像するまでもない。
 そんなわけでぼんやりと王族の警護に当たるのだがたまにはあちら側で狩りをしたいなと思っているのは楽屋裏のもっぱらの話題だ。
 そして家ごとに趣向を凝らした制服は陛下達のお世話をする侍女達の話題の花となっている。
 未婚の女性が多い中で趣向を凝らせば凝らすほど高価になる隊服で家柄を見て、そしてその中で目立つ功績を残した者が優良物件として取り扱われる事が多く、無駄に壁際に並ぶこんなにも必要としない侍女達は今では立派なハンターになっていた。
 そんな中で先ほど見た赤を見つけた。狩りの出発地点は家柄の具合を示すように中央から陣取っている。
 王家のテントの前には音楽隊と言う他国にはない騎士団所属の部隊があるのだが、彼らが鎮座して準備を始めている。
 何でも開祖の初代リンヴェル王が音楽を深く愛したとか何とかで他国よりも芸術に力を入れている。
 よく必要かと言われているものの、武力としての戦力にならない者が主にそちらに回されている傾向があり、それはそれで彼らは新天地に辿り着いて活躍しているのだから良しとするしかない。
 父が言うにはそう言う事に力を入れる事が出来る、それは豊かで平和だからだと言うが、確かに豊かでもなく平和でなければ剣を握るしかないとこの国の平和の象徴と言うのを最近なんとなく理解が出来るようになってきた。
 理由は主にグレゴールの屋敷だろう。
 数百年前にあれだけの技術があって今では維持できなく失われている技術もあると言うのだから年数が経てば経つほど向上するわけではない事を目の当たりにして理解するのだから俺の他にももっと理解が深まればいいと思うしかない。
 ぼんやりとそんな事を考えながら二人を眺めていれば周囲の者達に何か話しかけられて笑われていた。
 残念な事に他の公爵家はアリーのデビューに花を持たせようと今回不参加を決めており、縁戚の侯爵家伯爵家もどこも出ていない。
 支払うお金があるのだろうと言う事なのでどの家も立派なんだと、実家のセルグラードの場合宰相の家の警備は完ぺきだと言う理由でアピールをしなくてはいけないと言って参加している。どちらかと言うと事務方の家ではそう言った意味合いで参加をする家が多いが……
 それにしても会話の内容は聞こえなくても馬鹿にされている事だけは見ているだけで理解できた。
 ちらりちらりと副隊長と補佐の視線が痛かったが気にせず前だけを向いていればついに声が風に乗ってここまでたどり着いた。

「グレゴール公爵家様はたった二人しか使用人を出さないとはとんだ方だな!」

 笑い声と共にどうとでもとれる声に思わず眉をひそめてしまうもそれよりも先に陛下の咳ばらいが聞こえた。
 これは向こうまで聞こえないだろうが、周囲の胆を冷かすには十分すぎた。

「あの家もう終わりましたね」
「しかも大層な事に背中のマントに家紋を……
 当主の顔に泥を塗ってるのが判らない物ですかねぇ」

 小声の部下の会話に混ざることなく俺はルードとヒューリーの様子を見守っていた。
 彼らの実力がどれほどの物か知らないが、ヒューリーはともかくルードは笑顔でその言葉を受け流していた。
 やはりここは陛下達の言葉に素直に従わずにセルグラードから何人か騎士を連れて来ればと今更ながら悔やんでしまう。
 本当に今更だがとグレゴールのテントを見ればアリーは目の前の景色なんて見れないほどの来客相手にてんてこ舞いになっていた。
 頂いたお土産がなんだかすごい事になってるが大丈夫だろうかと思うもケイトがそのお土産をガゼボの二階に運んでいた。
 物見の為の二階だと思ったらまさかの倉庫使いなのかと唖然としていれば

「公爵様のお家は初参加と聞く!
 よければみんな公爵様のデビューを記念してまず最初の一発をこちらの騎士様に打ち上げてもらおうじゃないか!」

 高らかな声にに込めた嫌味をオブラートに包み込んで周囲から賛同をもぎ取っていた。
 どこの家か知らんが縁の方の家は何処か哀れそうな視線を向けて、でも頷くしかないと言わんばかりのヒエラルキーを感じるように力なく手を振って返事をしていた。




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