流星物語

雪那 由多

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星屑物語 48

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「トージ祭には二度ほど参加した事があります。
 一度は見学で、一度はとあるお屋敷の方のお宅で体験と言う意味で参加させていただきました」

 ルードはまた傍らに来て膝をつくので私は席を詰めて椅子に座る事を命じる。
 ルードは少し躊躇ったものの素直に椅子のすみに腰を下ろせば正面に座るレーシャがすこし緊張した面持ちになるのを少しだけ面白く見るのだった。

「トージ祭ってどういった事をするの?」

 クレヴィングから出た事のない身としては王都のお祭り何て初耳なので期待してルードを見上げてしまう。

「そうですね。簡単に言えば冬場に蔓延る魔物を冬が深くなる前に魔物が餓えて王都に侵入して人を襲う前に狩ってしまおうと言うのが始まりだったと思います。
 かつては王都を囲む外壁はなかったと聞きましたので魔物討伐は今よりも頻繁に行っていたそうです。
 そして魔物の警戒は冬の貴重な食料として、その毛皮は衣類として。長い冬を安心して過ごす為そう言った事も兼ねながら動きの鈍い魔物を今の内に数を減らそうって言う意味合いもあります」
「なんかもっともらしい理由ね」
「だけどそれでは面白くないので貴族中に義務づけてお祭りのように楽しむ、それが初代様の意見だと言う事です。
 貴族の中には狩りに参加する事が出来ないほどの小さなお家もあります。
 そう言ったお家の場合、領民を召し抱えたりする機会にもなりますし、腕に覚えのある者のアピールする場にもなります」
「就職活動の場でもあるのですか?」
「はい、それと同時に年齢制限はないので社交界にデビューする前の子息令嬢の出会いの場にもなります」
「すでに婚活が始まってるとか?!」
「まぁ、公衆の面前なので知り合いになって茶会で親睦を深める前の段階でしょう。
 階級ごとに場所分けをしてあるので早々知らない方と出会う事はありませんが」
「位置取りが大切なのね……」
 
 結婚した身なのでそれは問題ないねと思うも

「場所は王家より指定されてます。
 なのでテントの準備をそろそろ取り掛かってるお家もあるかと思います」
「はい。我が家は今夜からテントを張る為の準備を取りかかる事になってます」
「凄い気合いなのねって言うか場所は指定なんだ?」
「はい。グレゴールは公爵家なので王家の方のお隣ですね」
「そうそう、うちの隣。遊びに行くから二人とも遠慮なく遊びに来いよー」
「そうやって交流を図るのも目的ですのでどんどん顔を売ってください」

 言いながら配置の地図を収納空間から取り出して見せてくれた。
 持ってるなら見せてよと睨みつけるも逆にそう言った事はちゃんと質問して聞いてくださいと教育的指導な視線で返されてしまった。

「ルードうちのテントの準備は?」

 ここまで話が進んでいるのなら既に用意してあるよねと聞けば

「既に下見も済ませましたので当日設置するだけです。
 あとはお菓子とお料理、お茶などを前日から準備をすればいいだけですね。
 クレヴィングのリンゴ酒を皆様に振舞うチャンスですよ?売り込むなら最大のチャンスです!
 リンゴ酒に合うおつまみにチーズをいくつか用意させてますので合わせて売り込みますよ?!」
「ルードって時々商人の顔をするのね?」
「当然です。商店で小遣い稼ぎをするアルバイトの身ならば少しでも出来高を気にするのは普通ですよ?」

 ふっふっふっと笑うルードは兄様方と同じような笑い方をするので何を考えてるのか怖いなあと思ってしまうも

「ルードさんは庭師だけではなくアルバイトもされてるのです?」

 レーシャが話を聞きながらマカロンに手を伸ばした所で、庭師がそのような時間があるのかと言う様に口にしてしまえば

「はい。陽が沈んで道具の手入れを終えた後の寝るまでの残された時間に宝飾の勉強をさせていただいたので腕が鈍らない様に作り続けています。仕上がった物はお向かいの店だったり他の店だったりと置いてもらって売り上げから頂いています」

 新米が作る物なので品質は他の宝飾と同じものですがお買い求めやすくなっておりますとアピールするこの笑顔も曲者だ。

「でしたら私のお小遣いで買えるか判りませんが一度どのような品か見させて頂きたいです」

 マカロンに向かって伸びた手をすぐに戻し、もじもじと膝の上で指を汲むレーシャにおやおや?と思いながらも話を戻すようにして

「じゃあトージ祭の方はもう問題がないのね?」
「他は当日の御召し物ですね。
 そちらも準備は済んでおります。
 寒くない様にテントの方の暖も十分なように想定してます。
 あとテントに足を運んでくれる方の数が想定できないので最低数を親戚の数と予想をさせていただいてます。
 当日ですがお嬢様は狩りをするわけではないのでテントでしっかりと筆頭公爵家当主として顔を売ってください。当日はケイトだけでは不安なのでナタリーにも応援を先ほど頼みました。
 モデラーとケイト、ナタリー、マリエル、ソナーの五人では数字的には心細いですがナタリーが要れば十分だと思います」
「私は狩りに参加しなくていいの?」

 したいのにとうずうずするアリーにミシェルは笑いっぱなしだ。

「お嬢様の戦場はテントなのでそちらで戦い下さい。
 討伐の方は私とヒューリーにお任せを」
「そりゃあルードがいれば心配する事はないけどね」

 そう言った所で茶器のお茶が空になっていた。

「ルード、悪いけどお茶を貰ってきて」
「承りました」

 そう言ってもう話は終わりと下がらせれば彼は優雅に一礼して出て行ってしまい、お茶はマリエルが持って来たのでもう彼はこの場に戻って来る事はないだろうとレーシャは溜息を落すのだった。



 


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