流星物語

雪那 由多

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星屑物語 44

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 お茶の時間も終わり教室へとみんなと一緒に移動して顧問のフォーレ先生も職員室へとむかう。
 朝の稽古の時間を終えて始業間際の教室へと入れば何故かクラスの中が沸き立っていた。
 何が起きたのかと思うもその輪の中心はマリーだった。
 鼻にかかった甘ったるい声が笑い声となって教室中に響くも、その話に皆興味あるのか同じような笑みを浮かべて話を聞いていた。

「何だ?随分と賑やかだな?」

 教室に入ってミシェルが口を開けば輪の中心にいたマリーはぴょんと跳ねるような足取りで入口にいる私達の所まで出迎えに来てくれて

「ミシェルさまぁおはようございますぅ!
 聞いてくださぁい!マリーはぁ、朝学校に来る時すごーいものを見ちゃったのですぅ!」

 両手のこぶしを胸の前に揃えて前のめりに興奮を隠さない様子にミシェルだけでなくたじろいでしまう。

「で、なにがあったんだ?」

 当たり障りがないようにと自分の机に移動するミシェルのすぐ後ろをピタリと離れない様に追いかけてきて

「王城正門のセラート工房の前をぉとーるのがマリーの朝の楽しみなのですぅ。
 だけどぉ、きょうわぁ、何だかすごぉーーーくこんでましてぇ、マリーちこくしちゃうー、すごぉーくはずかしぃからぁかえろーかなんてマリーの執事とはなしをしてたのぉ」

 お前の喋り方の方が聞いていても恥ずかしいわとニールの小声のツッコミに思わず頷きそうになったけど辛うじてこらえながらも聞くのさえ苦痛な話に耳を傾ける。

「その時ねぇ、セラート工房のお向かいのおばけ屋敷あるでしょ?」

 その言葉に確かに否定できないくらい樹が茂りすぎてるけどと思いながらも黙って聞いていればシェリーたちの気遣い気な視線に辛うじて大きなお世話と言うのは堪える事が出来た。
 そりゃ少し前にちょっと入口の所を整えただけだけどと否定できない我が家の様子はヒューリーが毎日世話をしても追いつかない惨状だ。

「おばけ屋敷の庭師の方がやぁーっとぉ見えたみたいでぇ、柵の上を歩きながら木を切ってたのぉ!
 すっごぉーいよねぇ!だぁってとげとげの付いた柵の上を歩いてたのぉ!
 マリーびっくりしちゃってずーっと見てたかったんだけどぉ、大通りが込むからって騎士様に案内されて何とか学校には間に合ったんだけどぉ……
 今思い出しても素敵な方でしたわぁ。
 お顔は見えなかったのですがぁ、木をケーキを切るみたいに切ってらしたのぉ。
 ステキですわぁ、おばけ屋敷じゃなくってぇ、マリーのおうちに来ていただきたいですぅ」

 大概に失礼な子だとアリーは腹が立つも、背後から制服の肘を遠慮気味に引っ張るラウイのおかげで感情的ならずに済んだ。
 いや、その前にその話し方を何とかしてくれと、ラウイに袖を引っ張られた時に周囲を見て初めて気が付いたクラスメイトの目はその喋り方にウンザリしていると言わんばかりに死んでいた。
 みんな苦労してるのね、と同情して何とか心を落ち着かせて頭の悪そうな喋り方に付き合う様に堪える事にした。

「すごぉーく背の高い方でしたわぁ。
 馬車の中だからおかおは見えなかったけどぉ、でもとてもきれぃな剣を持ってたわぁ!
 木を切るのに剣なんてへーんなの?って思いながらおしごとを見てたんだけどぉ、手にしていた剣がすごおおおーーーくきれぃでうっとりと眺めてしまいましたぁ。
 はぁ……今思い出してもぉ宝石のような美しい剣でぇ、まるでこの青空みたいな剣で魅入ってしまいましたわぁ」

 そう言うも本日の空模様はどんよりとした曇り空だ。
 ほんとにこの子の頭の中は勿論視界はどうなってるんだろうと聞くのも苦痛なしゃべり方ってあるんだとある種の感動と関わっちゃいけないと言う警戒を同時に覚えたがそんな事は今はどうでもいい。

「ミシェル!私お家に用事が出来たから帰るね!」
「アリー待て!俺も用事が出来たから一緒に行こう!」
「ええー?みしぇるさまぁ、マリーのお話はまだおわらないのですよぉ」
「いや、十分いい話を聞いた!
 ラウイ、お前も行くぞ!」
「どこに行くつもりなんだいリンヴェル君?」
「もちろんおば……」

 おばと言った所で慌てるように両手を使って続く言葉を抑え込んだミシェルの足を私は容赦なく踏んだ。

「はーい、全員席に着け。
 とっくに始業時間は始まってるぞー」

 ぱんぱんと手を叩きながら促せば苦痛と引き換えにマリーの話しを続きを聞きたいと言わんばかりのクラスメイトは仕方がないと言わんばかりに席に着くのだった。

「あとグレゴールとリンヴェル、先ほど聞き捨てならん言葉を聞いたが説明は出来るか?」
「先生の聞き違いでーす!」

 なんてミシェルは言うも、先生は私にじろりと睨みを聞かせて見るから

「お腹が痛いからお家に帰ろうと思いまーす」
「グレゴール、お前一応女の子なんだからそこはせめてちょっと風邪気味なのでとか言え。
 いくら仮病でも物は言い様だろう……」
「おかしいなぁ。
 アル兄様はそれで何とかなるとおっしゃってたのに……」
「兄上にからかわれたんだよ……」

 ミシェルの呟きに思わずアル兄めと拳を作ってしまうも

「とりあえず抜け出すのならそれなりの理由を作れ」

 教師としてその言葉はどうかと思う間にも出席を取って授業が始まるのだった。





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