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星屑物語 15
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あまり有意義な時間だったといえないお茶を濁すだけ濁してアリアーネは夫となったファウエルと義父に近いのならとついでに新居の案内も兼ねて騎士団長の心配りも知らずに家まで送ってもらった。
城から歩いて五分。
裏門と言う近道をすれば歩いて一分の所にある古めかしい屋敷がクレヴィング家預かりの王都の屋敷だ。
「いつも丁寧にお庭など手入れされてるのは知ってたので無人ではないとは理解してましたがどなたのお屋敷かと思ってたかずっと謎でしたが……」
「建国の時はまだ戦闘の後の残る城の修復工事もあり、王宮の外にも、いずれ子供達が住む為の屋敷を望まれたルーティア様が出来る限りお城の側がいいとの言葉で西門に一番近い場所にお屋敷を頂いたそうです。
ちなみに昔はここもお城の一角でしたが補修の財源の関係と動線の関係で捨てられる所を面白がって貰い受けたそうです。
なのでこのお屋敷はルーティア様の為に作られた仕様となっており、女主人の屋敷とも言われております」
今では王都でも珍しくなっている煉瓦と石造りの重厚な雰囲気を醸し出す屋敷へと案内されれば突然の主達の帰還に屋敷の者達は大慌てで集まって来た。
「皆にご紹介します。
昨日お話ししました夫となられましたファウエル様と、お義父様のセルグラード侯爵家ご当主になられます。
エル様、お義父様、こちらは左から庭師のヒューリー、料理長のソナー、メイドのマリエル、メイド長のケイト、そして執事のモデラー。
家令は不在ですのでご容赦ください。
これは本家から一時的に私についてきたナタリーになります。
叔父のカナールがクレヴィングに戻る折りに同行しますそれまではこの屋敷の教育係として滞在してますが、どうぞ御用があればお申し付けください」
ナタリーが動揺なく深々とメイドとして礼をとれば一拍置いて全員がそろって頭を下げる。
そりゃそうだ。
行き成り宰相とか花婿が先触れもなく来たのだ。
失礼であるとは言え、クレヴィング家としての不手際は仕方がないと言う物だがお互い連絡不足は否めなかったのでそこはお義父様も見ないふりをしてくれた。
「所でファウエルの荷物は届いているかな?
昨日からうちの執事が張り切っていたが……」
お義父様の一言に
「はい。昨日から旦那様のお部屋作りにおいでいただいております。
今もお部屋の方に詰めておられますが、ご案内いたしましょうか?」
モデラーが腰を折って伺えば二人とも視線を合わせて是非にと言う。
「ですがあまり期待しないでください。何せ古いだけが取り柄の家なので」
来た初日に家の中を見て回って感じた感想は本家とあまり変わらないのねと言う古き良さをひしひしと感じるレトロ感。
嫌いじゃない、寧ろ好きなんだけどねと折角家を出たというのに実家にいるのと変わらないなんて気分に心の中で言いわけしながら二階へと繋がる階段を上がる。
そして城が最もよく見える東側に向かう廊下正面が主(私)の部屋、その手前の一室にエル様の執務室、昔は当然のようにあったと言うメイドの待機所はエル様の私室に作り替えてもらいベッドと簡単な食器棚とテーブルと小さな本棚を入れてもらった。
我が家の家系に親切な事にバックヤードにある物で十分だと言ってくれたのでエル様の趣味はハウリーさんが熟知しているからと思ってお任せしてある。
ちなみに廊下を挟んだ反対側に寝室がある。
一人で寝るには大きすぎるベッドだけど二人で寝るにも大きすぎるベッドを廊下から見たエル様もお義父様も沈黙をしていた。
全くこの屋敷の初代でもあるルーティア様って優雅でしたのねと思わずにはいられない間取りは今の時代でも一部屋一部屋が大きくて狭さを感じなくて全く困りませんね。
と言うか、未だに無言のお二人にどんな意味で無言なのか怖くて聞けません。
スルーしていきましょう。
大理石の廊下を抜けた先の総てのドアを開けての作業なのでセルグラード家の使いの方が作業する風景が丸見えの中足を運ぶ。
それにいち早く気付いたのはさすがセルグラード家の執事のハウリーさん。
「旦那様、ファウエル様、ご帰宅とあらばお迎えに上がりましたのに」
主人を出迎える事が出来なかった失態にハウリーさんは目を瞠ったが
「いや、城から近いという事で突如お伺いする事になってな。
こんな近い場所で羨ましい限りだ」
同じ城勤めのお義父様は苦笑紛れに笑うも
「それにしても立派……だな?」
「はい。このお屋敷の家具は総てエクスチュワート工房の家具でそろえてらっしゃるのでファウエル様の部屋もせっかくなのでバックヤードを拝見したのちにモデラー様に許可を頂き使わせていただきました」
ニコニコとしたハウリーさんが腕の振るいがいがありますと笑うも
「エクスチュワートなんて、どれもこれも一点で家が建つと言う王室御用達の家具屋じゃないか……」
実際は数百年前の古い家具なのにねとエル様専用の書斎の模様替え途中の光景に冷や汗を流しておののくエル様だが中々にして風格ある立派な執務室になったと思う。
さすがハウリーさんだ。
「はい、今では技術力の高さと職人不足から王室専用となっておりますが、それ以前は我々貴族にも対応していただいておりまして、初代様とは縁がありましたエクスチュワート様ご当人にはこのお屋敷に部屋を貰い住み込みながらお作りになられたと聞き及んでおります。
総てを揃えていただいたとの納品書があります。
ベッドはもちろん窓枠からドア一枚になるまで、エクスチュワートの傑作です」
モデラーの言葉にお義父様だけではなくエル様も何処か頭を痛そうに目を瞑りながら壁に手を付いて無言で唸っていた……
城から歩いて五分。
裏門と言う近道をすれば歩いて一分の所にある古めかしい屋敷がクレヴィング家預かりの王都の屋敷だ。
「いつも丁寧にお庭など手入れされてるのは知ってたので無人ではないとは理解してましたがどなたのお屋敷かと思ってたかずっと謎でしたが……」
「建国の時はまだ戦闘の後の残る城の修復工事もあり、王宮の外にも、いずれ子供達が住む為の屋敷を望まれたルーティア様が出来る限りお城の側がいいとの言葉で西門に一番近い場所にお屋敷を頂いたそうです。
ちなみに昔はここもお城の一角でしたが補修の財源の関係と動線の関係で捨てられる所を面白がって貰い受けたそうです。
なのでこのお屋敷はルーティア様の為に作られた仕様となっており、女主人の屋敷とも言われております」
今では王都でも珍しくなっている煉瓦と石造りの重厚な雰囲気を醸し出す屋敷へと案内されれば突然の主達の帰還に屋敷の者達は大慌てで集まって来た。
「皆にご紹介します。
昨日お話ししました夫となられましたファウエル様と、お義父様のセルグラード侯爵家ご当主になられます。
エル様、お義父様、こちらは左から庭師のヒューリー、料理長のソナー、メイドのマリエル、メイド長のケイト、そして執事のモデラー。
家令は不在ですのでご容赦ください。
これは本家から一時的に私についてきたナタリーになります。
叔父のカナールがクレヴィングに戻る折りに同行しますそれまではこの屋敷の教育係として滞在してますが、どうぞ御用があればお申し付けください」
ナタリーが動揺なく深々とメイドとして礼をとれば一拍置いて全員がそろって頭を下げる。
そりゃそうだ。
行き成り宰相とか花婿が先触れもなく来たのだ。
失礼であるとは言え、クレヴィング家としての不手際は仕方がないと言う物だがお互い連絡不足は否めなかったのでそこはお義父様も見ないふりをしてくれた。
「所でファウエルの荷物は届いているかな?
昨日からうちの執事が張り切っていたが……」
お義父様の一言に
「はい。昨日から旦那様のお部屋作りにおいでいただいております。
今もお部屋の方に詰めておられますが、ご案内いたしましょうか?」
モデラーが腰を折って伺えば二人とも視線を合わせて是非にと言う。
「ですがあまり期待しないでください。何せ古いだけが取り柄の家なので」
来た初日に家の中を見て回って感じた感想は本家とあまり変わらないのねと言う古き良さをひしひしと感じるレトロ感。
嫌いじゃない、寧ろ好きなんだけどねと折角家を出たというのに実家にいるのと変わらないなんて気分に心の中で言いわけしながら二階へと繋がる階段を上がる。
そして城が最もよく見える東側に向かう廊下正面が主(私)の部屋、その手前の一室にエル様の執務室、昔は当然のようにあったと言うメイドの待機所はエル様の私室に作り替えてもらいベッドと簡単な食器棚とテーブルと小さな本棚を入れてもらった。
我が家の家系に親切な事にバックヤードにある物で十分だと言ってくれたのでエル様の趣味はハウリーさんが熟知しているからと思ってお任せしてある。
ちなみに廊下を挟んだ反対側に寝室がある。
一人で寝るには大きすぎるベッドだけど二人で寝るにも大きすぎるベッドを廊下から見たエル様もお義父様も沈黙をしていた。
全くこの屋敷の初代でもあるルーティア様って優雅でしたのねと思わずにはいられない間取りは今の時代でも一部屋一部屋が大きくて狭さを感じなくて全く困りませんね。
と言うか、未だに無言のお二人にどんな意味で無言なのか怖くて聞けません。
スルーしていきましょう。
大理石の廊下を抜けた先の総てのドアを開けての作業なのでセルグラード家の使いの方が作業する風景が丸見えの中足を運ぶ。
それにいち早く気付いたのはさすがセルグラード家の執事のハウリーさん。
「旦那様、ファウエル様、ご帰宅とあらばお迎えに上がりましたのに」
主人を出迎える事が出来なかった失態にハウリーさんは目を瞠ったが
「いや、城から近いという事で突如お伺いする事になってな。
こんな近い場所で羨ましい限りだ」
同じ城勤めのお義父様は苦笑紛れに笑うも
「それにしても立派……だな?」
「はい。このお屋敷の家具は総てエクスチュワート工房の家具でそろえてらっしゃるのでファウエル様の部屋もせっかくなのでバックヤードを拝見したのちにモデラー様に許可を頂き使わせていただきました」
ニコニコとしたハウリーさんが腕の振るいがいがありますと笑うも
「エクスチュワートなんて、どれもこれも一点で家が建つと言う王室御用達の家具屋じゃないか……」
実際は数百年前の古い家具なのにねとエル様専用の書斎の模様替え途中の光景に冷や汗を流しておののくエル様だが中々にして風格ある立派な執務室になったと思う。
さすがハウリーさんだ。
「はい、今では技術力の高さと職人不足から王室専用となっておりますが、それ以前は我々貴族にも対応していただいておりまして、初代様とは縁がありましたエクスチュワート様ご当人にはこのお屋敷に部屋を貰い住み込みながらお作りになられたと聞き及んでおります。
総てを揃えていただいたとの納品書があります。
ベッドはもちろん窓枠からドア一枚になるまで、エクスチュワートの傑作です」
モデラーの言葉にお義父様だけではなくエル様も何処か頭を痛そうに目を瞑りながら壁に手を付いて無言で唸っていた……
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