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星屑物語 9
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初手はどうぞと視線が言うのでありがたく強く踏み込んでの初撃目を打ち込めば、驚いた視線のエル様がにやりと笑う。
「しまったな、練習用の剣なんて用意するんじゃなかった」
ガキンとぶつかり合った音が収まった後、犬歯を見せながら笑うエル様に私も口の端を釣り上げながら
「そうですね、ちょっとこの剣軽すぎますので」
お互い微笑みあってしまうのはこの一撃がさっきまでのお遊びから予測していたよりもはるかに予測を超えた物だったから。
この一撃が受け止められるならと一歩下がった所からまた踏み込んで連撃を加えて行く。
さらに重い一撃にエル様もさっきまでの面白そうな顔から目を輝かせながら本気で楽しいと言う顔にだんだん変わっていく。
私の隙をついて切りかかってくるその一撃を剣で受け流して鍔迫り合いをするも膠着状態になって、お互い同じタイミングで離れる。
呼吸が合う。
これ以上に楽しい瞬間はない!
もうギャラリーの声なんて聞こえない。
正直最近はセシルとの練習ばかりでパターン化して飽きていた。
ルードも強いけど、同じ敷地内に住んでても月に数度しか会わない為剣の練習どころではない。と言うか、私の方が相手にならなさすぎて練習にすらならなく、ただ遊ばれて終わりなのでこういった楽しいと感じる打ち合いは初めてで楽しくてドレスを纏っている事すら忘れて剣を振るい続ける。
打ち込めばすべて塞がれて、鋭く迫ってくる攻撃に心地よい緊張感と予測不可能な初めての剣の太刀筋に高揚感が生まれる。
何て楽しいんだろう。
久しぶりのどうやって攻略して行けばいいのかと全神経が相手の一挙一動に集中するこの感覚の中、全力で今持ち得る技術をぶつけて行けば、その幸せな時間は唐突に終わった。
パキン
金属にひびの入る音。
お互い危険を察して次に移る行動を全力を込めて回避する様に離れ、十分な距離が開いた所で私が一振りすれば私が持つ練習用の剣が粉砕されてしまったのをお互い寂しそうな視線で見つめてしまう。
「あー、やっぱり持たなかったか……」
「ですね」
途中で折れてしまった剣と、さっきまでの幸せな時間の唐突な終わりに寂しさを覚えてしまう。
不意に視界に現れた手と落ちてきた影の元を探せば
「楽しかったね」
何処か私と同じように少しだけ寂しさをにじませて微笑んでいるように見えるのは私の気のせいだろうか。
視線を上げれば苦笑紛れに私の額の汗ばむ肌に浮かぶ雫を一撫でする無骨な指先の感触がくすぐったく、剣を振るい汗をかくなど令嬢らしからぬのにその指先が心地よくって思わず私も笑いながら
「はい、楽しくて終わりが判りませんでした」
しかしあまりに唐突に終わってしまった至福の時間が名残惜しくて、でもその手に折れてしまった剣の柄を渡せば侯爵様が拍手をしながら私達の下へとやって来た。
「お互い不完全燃焼かもしれないが久しぶりにいい物をみせてもらったよ」
最大の賛辞にありがとうございますとその言葉に応える。
執事さんが庭師を呼んで剣を片付けるように言う中、どこからか騒がしい一軍がやって来た。
「旦那様、騎士団の使いがファウエル様に緊急出動命令と面会を求めてますが」
そう言うもすでに庭の片隅に無理やり入り込んできたのだろうが、まさか正装した姿の家族全員と客人がそろっているとは思わなかっただろう身の置き場に困り果てている一軍が固まっていた。
そんな一同をエル様が困った奴らだと言うように眉毛をへにゃっとまげて
「エル、この場はいいから呼びなさい。私も話を聞きたい。
あの様子だと私も登城しないといけないようだからな」
一同不安を隠さない顔になる中、エル様は騎士団の方を手招きする。
そろって走って近くまでやってきた騎士の方達は侯爵様達に騎士の礼をとった後
「お休みの所申し訳ありません。
隊長に報告いたします。
現在王都南側上空に魔物が旋回していると報告がありました。
すでに農地への被害が確認されてますが、人への被害はまだない模様。
騎士団長より直接向かうようにとの命令です」
「判った。
申し訳ないですが、私はこれより討伐に向かうので、ここで失礼させていただきます」
そう言って家族にも貴族の礼ではなく騎士の礼をとるエル様に私はあの、と言葉を重ねる。
急いでるんだぞと言う騎士様達の鋭い視線を無視して空へと指をさす。
「ひょっとしてあの魔物が今お話しされていたものでは?」
まだ豆粒ではあるが、田舎育ちの私にはしっかりとそれを目視できている。
「ああ、小型だけどドラゴンの亜種だね。
この辺から東南に向けてよく見られるワイバーンだな」
叔父様も目を細めてその姿を確認していた。
だけどエル様を始め皆様は確認できてないらしく不審者を見る目で私達を見ていた。
「あれが……クレヴィング領では寒くて見ない子ですね」
「なんと、ワイバーンか。あの個体の大きさから言うと群れから追い出されたか」
「町にまで来るとはよほど腹を空かせてましょう。
早急に討伐に行かなくては……」
「今からでは間に合いませんよ」
のほほんと叔父様がエル様を窘める。
何を言ってるんだ?!と一瞬エル様が叔父様を睨みつけるも
「ワイバーンにはワイバーンの討伐の仕方があります。
知能も人並みにあり、群れから追い出されたワイバーンは基本病弱か、老体か、群れに馴染めない気性の荒さか。
この様子だと気性の荒さに群れから追い出されたと見るのが良いでしょうか。
そこで侯爵様にご相談です」
ニコリとほほ笑んだ叔父様は侯爵様に向かって
「クレヴィング流討伐をお披露目します。
少々この庭を汚してしまいますがお借りしてもよろしいでしょうか?」
左胸に右手を当てて貴族の礼をとる叔父様に侯爵様は何処か渋い顔をするも
「人員被害を出さないのなら決めて見せろ」
疑わしい視線を一身に受ける中、許可の出た言葉に私を見る。
「アリー、出番だよ。
あのドラゴンをここに呼び寄せて捕獲。
成長したアリーの魔法を見せておくれ」
その言葉に私の成長具合を確認したがっている瞳の色を読み取り「はい」と元気に答えてしまう。
「しまったな、練習用の剣なんて用意するんじゃなかった」
ガキンとぶつかり合った音が収まった後、犬歯を見せながら笑うエル様に私も口の端を釣り上げながら
「そうですね、ちょっとこの剣軽すぎますので」
お互い微笑みあってしまうのはこの一撃がさっきまでのお遊びから予測していたよりもはるかに予測を超えた物だったから。
この一撃が受け止められるならと一歩下がった所からまた踏み込んで連撃を加えて行く。
さらに重い一撃にエル様もさっきまでの面白そうな顔から目を輝かせながら本気で楽しいと言う顔にだんだん変わっていく。
私の隙をついて切りかかってくるその一撃を剣で受け流して鍔迫り合いをするも膠着状態になって、お互い同じタイミングで離れる。
呼吸が合う。
これ以上に楽しい瞬間はない!
もうギャラリーの声なんて聞こえない。
正直最近はセシルとの練習ばかりでパターン化して飽きていた。
ルードも強いけど、同じ敷地内に住んでても月に数度しか会わない為剣の練習どころではない。と言うか、私の方が相手にならなさすぎて練習にすらならなく、ただ遊ばれて終わりなのでこういった楽しいと感じる打ち合いは初めてで楽しくてドレスを纏っている事すら忘れて剣を振るい続ける。
打ち込めばすべて塞がれて、鋭く迫ってくる攻撃に心地よい緊張感と予測不可能な初めての剣の太刀筋に高揚感が生まれる。
何て楽しいんだろう。
久しぶりのどうやって攻略して行けばいいのかと全神経が相手の一挙一動に集中するこの感覚の中、全力で今持ち得る技術をぶつけて行けば、その幸せな時間は唐突に終わった。
パキン
金属にひびの入る音。
お互い危険を察して次に移る行動を全力を込めて回避する様に離れ、十分な距離が開いた所で私が一振りすれば私が持つ練習用の剣が粉砕されてしまったのをお互い寂しそうな視線で見つめてしまう。
「あー、やっぱり持たなかったか……」
「ですね」
途中で折れてしまった剣と、さっきまでの幸せな時間の唐突な終わりに寂しさを覚えてしまう。
不意に視界に現れた手と落ちてきた影の元を探せば
「楽しかったね」
何処か私と同じように少しだけ寂しさをにじませて微笑んでいるように見えるのは私の気のせいだろうか。
視線を上げれば苦笑紛れに私の額の汗ばむ肌に浮かぶ雫を一撫でする無骨な指先の感触がくすぐったく、剣を振るい汗をかくなど令嬢らしからぬのにその指先が心地よくって思わず私も笑いながら
「はい、楽しくて終わりが判りませんでした」
しかしあまりに唐突に終わってしまった至福の時間が名残惜しくて、でもその手に折れてしまった剣の柄を渡せば侯爵様が拍手をしながら私達の下へとやって来た。
「お互い不完全燃焼かもしれないが久しぶりにいい物をみせてもらったよ」
最大の賛辞にありがとうございますとその言葉に応える。
執事さんが庭師を呼んで剣を片付けるように言う中、どこからか騒がしい一軍がやって来た。
「旦那様、騎士団の使いがファウエル様に緊急出動命令と面会を求めてますが」
そう言うもすでに庭の片隅に無理やり入り込んできたのだろうが、まさか正装した姿の家族全員と客人がそろっているとは思わなかっただろう身の置き場に困り果てている一軍が固まっていた。
そんな一同をエル様が困った奴らだと言うように眉毛をへにゃっとまげて
「エル、この場はいいから呼びなさい。私も話を聞きたい。
あの様子だと私も登城しないといけないようだからな」
一同不安を隠さない顔になる中、エル様は騎士団の方を手招きする。
そろって走って近くまでやってきた騎士の方達は侯爵様達に騎士の礼をとった後
「お休みの所申し訳ありません。
隊長に報告いたします。
現在王都南側上空に魔物が旋回していると報告がありました。
すでに農地への被害が確認されてますが、人への被害はまだない模様。
騎士団長より直接向かうようにとの命令です」
「判った。
申し訳ないですが、私はこれより討伐に向かうので、ここで失礼させていただきます」
そう言って家族にも貴族の礼ではなく騎士の礼をとるエル様に私はあの、と言葉を重ねる。
急いでるんだぞと言う騎士様達の鋭い視線を無視して空へと指をさす。
「ひょっとしてあの魔物が今お話しされていたものでは?」
まだ豆粒ではあるが、田舎育ちの私にはしっかりとそれを目視できている。
「ああ、小型だけどドラゴンの亜種だね。
この辺から東南に向けてよく見られるワイバーンだな」
叔父様も目を細めてその姿を確認していた。
だけどエル様を始め皆様は確認できてないらしく不審者を見る目で私達を見ていた。
「あれが……クレヴィング領では寒くて見ない子ですね」
「なんと、ワイバーンか。あの個体の大きさから言うと群れから追い出されたか」
「町にまで来るとはよほど腹を空かせてましょう。
早急に討伐に行かなくては……」
「今からでは間に合いませんよ」
のほほんと叔父様がエル様を窘める。
何を言ってるんだ?!と一瞬エル様が叔父様を睨みつけるも
「ワイバーンにはワイバーンの討伐の仕方があります。
知能も人並みにあり、群れから追い出されたワイバーンは基本病弱か、老体か、群れに馴染めない気性の荒さか。
この様子だと気性の荒さに群れから追い出されたと見るのが良いでしょうか。
そこで侯爵様にご相談です」
ニコリとほほ笑んだ叔父様は侯爵様に向かって
「クレヴィング流討伐をお披露目します。
少々この庭を汚してしまいますがお借りしてもよろしいでしょうか?」
左胸に右手を当てて貴族の礼をとる叔父様に侯爵様は何処か渋い顔をするも
「人員被害を出さないのなら決めて見せろ」
疑わしい視線を一身に受ける中、許可の出た言葉に私を見る。
「アリー、出番だよ。
あのドラゴンをここに呼び寄せて捕獲。
成長したアリーの魔法を見せておくれ」
その言葉に私の成長具合を確認したがっている瞳の色を読み取り「はい」と元気に答えてしまう。
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