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公爵様、ほら、新たなカップルが出来ましたよ
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手痛い失恋と未熟加減。
食べる事に逃げずに兄と戦う事をもっと早く始めれば……なんてタラレバ論に意味なんてないだろう。
だけど俺を思ってそれだけでこのテーブルに並ぶだけの価値を掴んだのだ。
王家の人間にも顔を覚えてもらえ、魔導院の長と近衛の長がいる。
数こそまだまだ少ないが強力なカードを手に入れる事が出来たのだ。
どんなトラブルを持っているのか知らないが今まで通り先輩後輩として友人として俺が何が出来るか判らないけど話位は聞いてあげようと思った。
「そしてトゥリエル家の皆様方、今後バスクの婚約者とは二度と口にしないでほしい。
我々はバレンスエの悲劇を繰り返したくないし、この子が受け取るはずの親からの愛情、公爵家としての責任、それに伴う恩恵を今からでも欠片でも受け取ってもらいたいと思って言っている。
フランが支払った一番多感な十八年の代償はあまりに大きすぎる。
そして彼はこの瞳の事もあってこれからも奪われるだけの人生になるだろう。
我がカドレニー家はトゥリエル家よりもフランの生きる価値を重きに置く。
もちろん父母がキュラーに夢を持たせてしまった事に謝罪の意味を持っていろいろ奔走して新たな婚約者を見付けてきた。
既にトゥリエル家が了承すればすぐにと話も付けてきた。
公爵家に引けを取らないほどの家だから彼女の今までの努力に報いたいと思っている」
そう言うキュラーもこの失恋にぼろぼろと化粧が流れ落ちるのもお構いなしに目元をぬぐっていた。
夫妻も娘の幸せを願って二十五を過ぎても黙っていたが、このような事情にたてつくほど無謀な家では無く静かに「よろしくお願いします」と頭を下げるのだった。
静かな嗚咽が響く空気を壊そうとアルベルトはなるべく明るい声で声をかける。
「でどんな相手なんだ?
公爵家に引けを取らない、まさかビッキーとか?確かに家柄にも文句はないし王家にも近い所だし知った仲だし今更気兼ねがないな?
となるといきなり一児の母か。
まあフランもこの通りかわいいし良い子だから問題はないな!」
陽気に場を盛り上げようとするアルベルトにビクトール様はしごく真面目な顔をして
「キュラーの新しい婚約者はお前だアルベルト。
お前が王太子になる、次期王となる条件だ」
室内の空気が固まった。
アルベルト様も満面の笑顔の状態で固まった。
でもそれは一瞬で
「そのお話承りました。
我が娘にはこれ以上と無いお話謹んで承ります」
さすがは貴族、美味い話には即断即決で乗るのは凄いと思うも当の指名された二人は固まってお互いの顔を見合っていた。
「因みにこれはもう陛下の耳にも入っているし行き遅れのキュラーに拒否権もないしほぼ決定で昨日の話し合いの時点ですでに準備を始めた」
「ビッキー待て!
だからってキュラーってのは無茶すぎるだろう!」
「そうですわよ!
酔っぱらって真っ裸で森の中で眠るような殿方を夫にだなんて私にも少しは選ぶ権利を下さい!」
は?と言う様に誰もがトゥリエル嬢を見る。
心当たりがあるのかアルベルト様は顔を真っ赤にする。
「それは何時の事ですか?」
動揺しまくるトゥリエル嬢にジェルが聞けば
「まだ学生の頃ですわ。
夜寮から抜け出してまだ帰ってこないと言ったバスクに一緒に探してくれって学園内を探していた時に森の落ち葉の中で全裸で大の字に寝てましたわ!
さすがに私が見付けて見てしまったとは淑女の口から言えなく散らかしてあった荷物を持ってバスクにこの近くにいるはずと言って探させましたが、その様に裸でどこでも寝るような方が夫になるなんてもう少し考慮してくださいませ!」
いやいやと首を振る度にドリルが豪快に跳ね回る。
なかなかの光景だが
「でもどのみち見る事になるのだから知らないブツよりはまだいいのでは?」
何と言ってフォローをすればいいのだろうかと思うも俺の言葉にトゥリエル嬢は顔を真っ赤にし、ビクトール様はこれもまた縁と明後日の方に向かって納得をしていた。
「って言うか見られてたなんて……」
一番ダメージを受けたのは当然アルベルト様。
王子が学園抜け出して護衛も付けずに真っ裸になって酔っぱらってだなんて大問題だろうと頭を抱えて「思い出したくねえ……」と自らの汚点に涙を流すも誰も同情はしなかった。
それだけ大事に、でも内密に終えた出来事の暴露はトゥリエル嬢でさえしまったという顔をしていた。
それもまた何かの縁として化粧が乱れたトゥリエル嬢はもういいと言わんばかりに濡れたタオルを貰って化粧を落とすという男っぷりに彼女のご両親は令嬢らしからぬ言動に頭を抱えている。それでも貴族の令嬢としていきつく所にまで上り詰めたのだからいいじゃないかと真っ黒になるタオルを何度も新しいのに変えてもらった後でさらけ出した素顔は案外可愛らしくて彼女の好感度が少し上がった。
「そしてフラン」
どうやら次は俺の番らしい。
何を言われるか、どんな事を言われるのか不安に心臓が破裂しそうになる中じっとビクトール様の声に耳を傾けた。
食べる事に逃げずに兄と戦う事をもっと早く始めれば……なんてタラレバ論に意味なんてないだろう。
だけど俺を思ってそれだけでこのテーブルに並ぶだけの価値を掴んだのだ。
王家の人間にも顔を覚えてもらえ、魔導院の長と近衛の長がいる。
数こそまだまだ少ないが強力なカードを手に入れる事が出来たのだ。
どんなトラブルを持っているのか知らないが今まで通り先輩後輩として友人として俺が何が出来るか判らないけど話位は聞いてあげようと思った。
「そしてトゥリエル家の皆様方、今後バスクの婚約者とは二度と口にしないでほしい。
我々はバレンスエの悲劇を繰り返したくないし、この子が受け取るはずの親からの愛情、公爵家としての責任、それに伴う恩恵を今からでも欠片でも受け取ってもらいたいと思って言っている。
フランが支払った一番多感な十八年の代償はあまりに大きすぎる。
そして彼はこの瞳の事もあってこれからも奪われるだけの人生になるだろう。
我がカドレニー家はトゥリエル家よりもフランの生きる価値を重きに置く。
もちろん父母がキュラーに夢を持たせてしまった事に謝罪の意味を持っていろいろ奔走して新たな婚約者を見付けてきた。
既にトゥリエル家が了承すればすぐにと話も付けてきた。
公爵家に引けを取らないほどの家だから彼女の今までの努力に報いたいと思っている」
そう言うキュラーもこの失恋にぼろぼろと化粧が流れ落ちるのもお構いなしに目元をぬぐっていた。
夫妻も娘の幸せを願って二十五を過ぎても黙っていたが、このような事情にたてつくほど無謀な家では無く静かに「よろしくお願いします」と頭を下げるのだった。
静かな嗚咽が響く空気を壊そうとアルベルトはなるべく明るい声で声をかける。
「でどんな相手なんだ?
公爵家に引けを取らない、まさかビッキーとか?確かに家柄にも文句はないし王家にも近い所だし知った仲だし今更気兼ねがないな?
となるといきなり一児の母か。
まあフランもこの通りかわいいし良い子だから問題はないな!」
陽気に場を盛り上げようとするアルベルトにビクトール様はしごく真面目な顔をして
「キュラーの新しい婚約者はお前だアルベルト。
お前が王太子になる、次期王となる条件だ」
室内の空気が固まった。
アルベルト様も満面の笑顔の状態で固まった。
でもそれは一瞬で
「そのお話承りました。
我が娘にはこれ以上と無いお話謹んで承ります」
さすがは貴族、美味い話には即断即決で乗るのは凄いと思うも当の指名された二人は固まってお互いの顔を見合っていた。
「因みにこれはもう陛下の耳にも入っているし行き遅れのキュラーに拒否権もないしほぼ決定で昨日の話し合いの時点ですでに準備を始めた」
「ビッキー待て!
だからってキュラーってのは無茶すぎるだろう!」
「そうですわよ!
酔っぱらって真っ裸で森の中で眠るような殿方を夫にだなんて私にも少しは選ぶ権利を下さい!」
は?と言う様に誰もがトゥリエル嬢を見る。
心当たりがあるのかアルベルト様は顔を真っ赤にする。
「それは何時の事ですか?」
動揺しまくるトゥリエル嬢にジェルが聞けば
「まだ学生の頃ですわ。
夜寮から抜け出してまだ帰ってこないと言ったバスクに一緒に探してくれって学園内を探していた時に森の落ち葉の中で全裸で大の字に寝てましたわ!
さすがに私が見付けて見てしまったとは淑女の口から言えなく散らかしてあった荷物を持ってバスクにこの近くにいるはずと言って探させましたが、その様に裸でどこでも寝るような方が夫になるなんてもう少し考慮してくださいませ!」
いやいやと首を振る度にドリルが豪快に跳ね回る。
なかなかの光景だが
「でもどのみち見る事になるのだから知らないブツよりはまだいいのでは?」
何と言ってフォローをすればいいのだろうかと思うも俺の言葉にトゥリエル嬢は顔を真っ赤にし、ビクトール様はこれもまた縁と明後日の方に向かって納得をしていた。
「って言うか見られてたなんて……」
一番ダメージを受けたのは当然アルベルト様。
王子が学園抜け出して護衛も付けずに真っ裸になって酔っぱらってだなんて大問題だろうと頭を抱えて「思い出したくねえ……」と自らの汚点に涙を流すも誰も同情はしなかった。
それだけ大事に、でも内密に終えた出来事の暴露はトゥリエル嬢でさえしまったという顔をしていた。
それもまた何かの縁として化粧が乱れたトゥリエル嬢はもういいと言わんばかりに濡れたタオルを貰って化粧を落とすという男っぷりに彼女のご両親は令嬢らしからぬ言動に頭を抱えている。それでも貴族の令嬢としていきつく所にまで上り詰めたのだからいいじゃないかと真っ黒になるタオルを何度も新しいのに変えてもらった後でさらけ出した素顔は案外可愛らしくて彼女の好感度が少し上がった。
「そしてフラン」
どうやら次は俺の番らしい。
何を言われるか、どんな事を言われるのか不安に心臓が破裂しそうになる中じっとビクトール様の声に耳を傾けた。
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