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公爵様、友人をよろしくお願いします

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 自身では見えないが誰もが息を飲むように驚きすぐ側で

「確かに父と同じ色をしている」

 と、アルベルト様は最近は見ていないがこの色だったなと失笑を零していた。

「私はすぐに父に連絡をすればすぐに保護をしてどのように過ごしていたか調べる様にと指示をくれた。
 同様に父も陛下に内密で話しをしてくれて、前に話をしたと思うがカドレニー侯爵領の小さな村に住んでると言ったがすぐ隣の王家預かりのバレンスエ領の管理をしてくれている。
 あの放火の事件があってから父はカドレニーの兵士はもちろん王家からの騎士を借りて鎮圧と制圧をして陛下の代理人として管理下に置いている。
 万が一の為にとフランに返せるようにと準備をしてる為になかなか会いに来れないがそこはもう少し時間をくれ。
 そんなこんなで一年近くかけて準備をしてきたというのに……」

 じろりとバスク様を睨んだ。
 目元を引き攣らせながら小さな声で「すまない」と謝罪の言葉をきいた。
 今夜は上位貴族の謝罪を呆れるほど聞いたなと思う中でバスク様は俺達を全員見回す。

「まずはタウレル」
「は、はい」

 食事の間もずっと空気のようにビクトール様の話しをひたすら真剣に聞いていた才児は今何を考えているのだろうかと思いながら彼の声に耳を澄ませる。

「折角フランの為に自らを鍛えて勉学を励んでプロポーズまでしてくれたが、お前ではフランを守りきれない。
 何をと思うだろうが、お前自身侯爵家を乗っ取って侯爵の座に就いたばかり。
 そんなお前を支える貴族はどれほどいる?友人は?
 お前がいくら勉強が出来ても所詮は学生レベル、挙句に魔導院の魔道士ならともかくしがない事務員の一人でしかない。
 悔しい事にお前が忌嫌った実の父母の方が貴族として横の連携を取れている、それはすなわち貴族の力だ。
 貴族の力は爵位や金だけではない。庶民が知る事のない情報にこそ貴族の力の神髄だ。
 後ろ盾も仲間も力もないお前にフランを任せるなんてとてもじゃないが出来ない。
 今のお前では情報不足と協力者の不在でフランがすぐに暗殺されて死なせてしまう未来しか予想できない以上お前との結婚を認めるわけにはいかない」
「そうですね……」

 素直にもビクトール様の言葉を受け止め、自分の現状にがくりと項垂れたジェルにビクトール様は溜息を吐き

「別に友達もやめろと言ってるわけではない。
 よかったらフランの友達であり続けてくれ」

 言うもためらうように視線を彷徨わせるが

「それはお前の為にもなる。
 何の後ろ盾を持たないお前はフランの友人と言う地位を得て我が家を後ろ盾とすればお前の家に面倒なトラブルは早々舞い込む事はないだろう」

 一瞬息をのむジェルだったが数度呼吸をして深く頭を下げる。

「ありがとうございます……」

 なかなかあげられない頭と少しだけ涙ぐんだ声にひょっとしてすでにトラブルに見舞われてるのではと、最近職場に遅刻しがちなのはそれが理由かと思ってしまう。

「友人や後ろ盾はないだろうがお前には優秀な先生達がいただろう。
 頭を下げて助言を貰うなり雇うなりしてタウレル家に招き入れろ。
 私からの助言はこれぐらいだ」

 アルベルト様の助言にそれだけで今ジェルの家が大変になってる事が判り、本当に大丈夫なのかとビクトール様を見上げるも

「腐っても侯爵家だ。
 こいつが家を乗っ取ってから随分安定しているから心配するまでもない。
 本当は仕事なんてやめて家だけに集中しろと言いたいんだが友達も居ないようなこいつに職場で友人関係を作るという健全な人間関係の方が今は優先される。
 何かあればビッキーが動くだろうからそんな不安な顔をしなくてもいい」

 アルベルト様は減った砂糖菓子の代わりに出されたチョコレートを摘まみながら心配しなくていいと言う。
 きっと大丈夫だと俺は自分を励ますように心の中で大丈夫と何度も言いながら

「ジェル、これから友達として改めてよろしく」
「友達だなんて納得はできないけど、先輩を守る為なら俺……」

 ぼろぼろと涙を流すジェルは正真正銘の初恋を終わらせる選択しか出来なかったのだ。









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