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公爵様、既に変態を極めてたのですね。正直どんびきです。
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アルベルト様の顔がこわばった。
既に二十五歳を迎えているのに誰も王太子にも指名されず王宮内は派閥紛争が巻き起こっているというのにそう言った裏事情があるとはついぞ聞いた事がなかったようだ。
母は心を患い王妃としてほぼ役目を果たせずにいて即妃の一人が代理を務めている。
外交を務める即妃も居て、母の役目は年数回の行事のみとなっていた。
おかげでと言うか城内でのアルベルトの立場は弱く腹違いの弟達の方が堂々と城内を歩き臣下を連れ立っていた。
ただ父親でもある国王が即妃を黙らせ年功序列で平等に扱ってくれたのがせめてもの救いだった。
「アルベルトには不満かもしれないが父達の時代も王位継承問題がひどかったらしい。
父は隣国の姫を娶った第一子であり現王は古い血筋を持つだけの裕福でも無く後ろ盾もない美しいだけの娘の子供だった。
まぁ、お手付きと言う奴だ。
だけどその娘が王家の瞳を持つ男児を産んでしまった。
あれよあれよという間に担ぎ上げられてしまうも隣国の姫と言う立場上父も権力争いに巻き込まれてな。
唯一救いだったのが父と現王の関係が良好だと言う事だったのだ。
父と現王は話し合い王位を譲る代わりに次の王位継承問題を紛争まがいにさせない為に王位指名権作りそれを貰う事にした。
第一子だろうが女児だろうが、家の権力でむごたらしい派閥争いに子供達を巻き込ませないようにと言う対策を取ってめでたく父は愛した母の所に、現王は王家の瞳を持って玉座に着いた。
だけど事態は思わぬ展開となった。
まさか王家の瞳を持つ王が居る時代にもう一人王家の瞳を持つフランが生まれたのは流石に予想外だった。
バレンスエ公夫妻はこの密約は知らない物の王家の瞳を見てすぐに父に相談し父から王に話しを持って行ってとりあえずどんなふうなのかと様子を見に行く事にした。
で、そこでこの馬鹿が王家の瞳だっていう事を色んな人に大声で話しまくって深窓の令息作戦がいきなり失敗した」
じろりとビクトール様はバスク様を睨むもバスク様はさすがにまずいと思ってか視線を逸らせたままだった。
「まぁ、子供の事だし状況も知らないし、ましてや父と現王と前王三人の密約があった事すら誰も知らないのだ。
さてどうするかと言ったと父が頭を抱えた時、お前は生まれて五日目のフランを見て言ったんだ。
『僕この子をお嫁さんにする!』
正直七歳の言葉とは言えども生まれたばかりの赤ん坊に向かって言った言葉に俺は寒気を覚えたんだが、父はその言葉を聞いて乗ったんだ」
「乗ったんですかって、バスク様って七歳にして変態を極めてたんですね?」
「いや、俺そんなこと言ったのか?」
「言ったよ。驚きすぎて赤ん坊の顔なんて覚る事も出来ないままそれだけを記憶して家に帰ったからな。
ショックだったな……」
魂が半分抜けかけた状態のビクトール様とさすがにこの展開はトゥリエル家も知らなかったようでご夫妻も青ざめた顔で変態?とバスク様を見ていたがトゥリエル嬢だけがちょっと若いからって何よ!と発狂するのをジェルが「若いにもほどがあるだろ?!」ってなだめてくれていた。なだめてたのか?
「父はバスクの『僕のお嫁さん』発言を聞いてすぐに二人を婚約者同士にさせたんだ」
まさかの本当の婚約者だとはさすがに想像が付かなかった。
と言うか誰か止めろよと盛大に突っ込みたかったが代りにアルベルト殿下が言ってくれた。
「ベルトラン公夫妻は当然王家の瞳の騒動を知っているから可能な限り王家から遠ざけたかったのもあるし、ベルトラン公の家格なら申し分も無い。
更に王家の瞳を持つ子供が早々に生まれる事は無いのだ。
バレンスエ公の家にはまた子供を産めばいいと言って王位継承問題の飛び火を受けずに済むのならと夫妻も父の提案を受け入れたのだ」
そこまで説明した所でビクトール様は俺達の顔を見て
「あまり知られてないのだが現王は歳のせいか目を患い王家の瞳の変化と力はなくなっている。
今はただの金の虹彩を持つだけの瞳だ。
そんな折にフランが王家の瞳を持つのがバスクの騒動のせいで気付かれないままでいるのはもう避けられない。
父は最悪フランの暗殺までを考えて俺の子供に、父の孫とする事で後ろ盾を付けたのがフランの養子の理由だ」
「だったらなんでそのようにちゃんと話をして下さらなかったのですか……」
優しいビクトール様だけど憐れんでくれてとは思っても居なかった。
ただ、さすがに命の問題に発展していたなんて想像はつかなくて、少しだけ恐怖に身を震わせるのだった。
既に二十五歳を迎えているのに誰も王太子にも指名されず王宮内は派閥紛争が巻き起こっているというのにそう言った裏事情があるとはついぞ聞いた事がなかったようだ。
母は心を患い王妃としてほぼ役目を果たせずにいて即妃の一人が代理を務めている。
外交を務める即妃も居て、母の役目は年数回の行事のみとなっていた。
おかげでと言うか城内でのアルベルトの立場は弱く腹違いの弟達の方が堂々と城内を歩き臣下を連れ立っていた。
ただ父親でもある国王が即妃を黙らせ年功序列で平等に扱ってくれたのがせめてもの救いだった。
「アルベルトには不満かもしれないが父達の時代も王位継承問題がひどかったらしい。
父は隣国の姫を娶った第一子であり現王は古い血筋を持つだけの裕福でも無く後ろ盾もない美しいだけの娘の子供だった。
まぁ、お手付きと言う奴だ。
だけどその娘が王家の瞳を持つ男児を産んでしまった。
あれよあれよという間に担ぎ上げられてしまうも隣国の姫と言う立場上父も権力争いに巻き込まれてな。
唯一救いだったのが父と現王の関係が良好だと言う事だったのだ。
父と現王は話し合い王位を譲る代わりに次の王位継承問題を紛争まがいにさせない為に王位指名権作りそれを貰う事にした。
第一子だろうが女児だろうが、家の権力でむごたらしい派閥争いに子供達を巻き込ませないようにと言う対策を取ってめでたく父は愛した母の所に、現王は王家の瞳を持って玉座に着いた。
だけど事態は思わぬ展開となった。
まさか王家の瞳を持つ王が居る時代にもう一人王家の瞳を持つフランが生まれたのは流石に予想外だった。
バレンスエ公夫妻はこの密約は知らない物の王家の瞳を見てすぐに父に相談し父から王に話しを持って行ってとりあえずどんなふうなのかと様子を見に行く事にした。
で、そこでこの馬鹿が王家の瞳だっていう事を色んな人に大声で話しまくって深窓の令息作戦がいきなり失敗した」
じろりとビクトール様はバスク様を睨むもバスク様はさすがにまずいと思ってか視線を逸らせたままだった。
「まぁ、子供の事だし状況も知らないし、ましてや父と現王と前王三人の密約があった事すら誰も知らないのだ。
さてどうするかと言ったと父が頭を抱えた時、お前は生まれて五日目のフランを見て言ったんだ。
『僕この子をお嫁さんにする!』
正直七歳の言葉とは言えども生まれたばかりの赤ん坊に向かって言った言葉に俺は寒気を覚えたんだが、父はその言葉を聞いて乗ったんだ」
「乗ったんですかって、バスク様って七歳にして変態を極めてたんですね?」
「いや、俺そんなこと言ったのか?」
「言ったよ。驚きすぎて赤ん坊の顔なんて覚る事も出来ないままそれだけを記憶して家に帰ったからな。
ショックだったな……」
魂が半分抜けかけた状態のビクトール様とさすがにこの展開はトゥリエル家も知らなかったようでご夫妻も青ざめた顔で変態?とバスク様を見ていたがトゥリエル嬢だけがちょっと若いからって何よ!と発狂するのをジェルが「若いにもほどがあるだろ?!」ってなだめてくれていた。なだめてたのか?
「父はバスクの『僕のお嫁さん』発言を聞いてすぐに二人を婚約者同士にさせたんだ」
まさかの本当の婚約者だとはさすがに想像が付かなかった。
と言うか誰か止めろよと盛大に突っ込みたかったが代りにアルベルト殿下が言ってくれた。
「ベルトラン公夫妻は当然王家の瞳の騒動を知っているから可能な限り王家から遠ざけたかったのもあるし、ベルトラン公の家格なら申し分も無い。
更に王家の瞳を持つ子供が早々に生まれる事は無いのだ。
バレンスエ公の家にはまた子供を産めばいいと言って王位継承問題の飛び火を受けずに済むのならと夫妻も父の提案を受け入れたのだ」
そこまで説明した所でビクトール様は俺達の顔を見て
「あまり知られてないのだが現王は歳のせいか目を患い王家の瞳の変化と力はなくなっている。
今はただの金の虹彩を持つだけの瞳だ。
そんな折にフランが王家の瞳を持つのがバスクの騒動のせいで気付かれないままでいるのはもう避けられない。
父は最悪フランの暗殺までを考えて俺の子供に、父の孫とする事で後ろ盾を付けたのがフランの養子の理由だ」
「だったらなんでそのようにちゃんと話をして下さらなかったのですか……」
優しいビクトール様だけど憐れんでくれてとは思っても居なかった。
ただ、さすがに命の問題に発展していたなんて想像はつかなくて、少しだけ恐怖に身を震わせるのだった。
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