公爵様のプロポーズが何で俺？！

公爵様、ご飯美味しく食べれてますか？

「そんな中事件は起きた。
　とある年に嵐が立て続けにバレンスエ領にやってきた。
　海沿いの領なのでそう言った事はある物なのだが、それでも立て続けに三つ、時期をずらしていくつかがバレンスエ領を荒らして行き、壊滅的な被害にあった。
　まず農業は致命的な大打撃を受け、牛や馬の飼料が失われてしまい当然飢えから次々に死んでいった。
　当然家も失い衛生も悪くなって人も大勢死んだ。
　絶望の中バレンスエ公爵は私財を売り払って領民達に施しを与えたり小さいながらも雨露避けれる家を提供した。
　だけどすべて失った領民達にはそれが働く原動力にならなかった。
　そして何もしなくても公爵が家や食事を与えてくれる。
　無気力の中そんな味を占めてしまった領民は着る物がないからと新しい服を、子供に腹いっぱい飯を食べさせて、新しく土地を耕すから農機具を、働く為私達に家をと……恐ろしいまでに要求はエスカレートしていった。
　公爵はそんな領民の思いに応えようと古くから付き合いのある貴族達に頭を下げて金策に走り回るも、王宮の側室達や有力な家の侍女達はその姿を嘲笑っていた。
　王家の瞳を持つフランの親なのにとその奔走を面白おかしくからかうのだ。
　そして良くも悪くも領民の事を思えど働く事を知らないフランの母親は夜会や茶会にと出て嵐の事を怖かっただのと体験談を語りみんなから涙を誘うも援助なんてみっともないと気位の高さに新しいドレスや宝石を身に纏ってパーティ三昧の日々を過ごしていた」

　スープから魚料理、肉料理と変っても味は一切わからず、ビクトール様の話しも耳をすり抜けて行くように話しを聞くのを拒絶していた。
　そんな事があったなんてと思うも、誰もが本当だと言う様に視線をそらせて砂をかむように食事を進めていた。

「それはついに起きた。
　領民が何で領主様の家ばかり嵐にも無事な家に住んで綺麗な服を着て暖かいベットで寝れるんだ、と。
　あっという間にその不満は領中に広まり、領民がバレンスエの屋敷に詰め寄った。
　公爵は最後まで領民の思いに応えようとするももうすでに話し合いなんて出来る状態ではなくなっていた。
　フランの母親も実家に帰ると言って沢山の荷物を侍女達に用意させるも既に公爵家にはそれを運ぶだけの馬車さえなかった。
　気が付けばもう逃げ場何てどこにもなかった。
　王家とて国王が手を何度も伸ばそうとするも、王家の瞳を持つフランさえいなくなればと思う者達の多さに国王の手や想いは届かず、私の父母も何度も動こうとしたものの、我が家が王子殿下達の擁護派ではなく公爵家の子供に組みする事となる事だけは出来ないと躊躇ううちにバレンスエの屋敷は炎に包まれてしまった」

　派閥やそう言った事で人が死ぬ、ましてやそれが顔も覚えていない父母だなんてと唖然としてしまう。
　人は何て簡単に死んでしまうのかと……

「父や母も後悔していた。
　側室達はもちろん国王も、まさかそのような惨い最期を迎えるなど思っては居なかった」

　静まり返る室内でデザートが出されるものの、なかなか手を付けられずに紅茶だけを飲んでいた。
　美味しい香りものど越しも何とかして食べ切った可愛らしいケーキもすべて食事をしているとも思えないまま俯いて話しを黙って聞いていた。

「そこで私の父は一つ宣言をした。
　実は私の父と現国王との間で王位継承を現国王に譲る際に一つの盟約を交わしていた。
　王位は王家の瞳の現国王に、私の父は兄として王位継承争いをおこさないようにと次なる王を指名する権利を」

　初めて口にする言葉なのかバスク様はもちろんアルベルト殿下もトゥリエル夫妻もそして一度も話を振られる事のなかったジェルも驚きの瞳でビクトール様を見て

「その時かわした盟約には次の王を決める時は骨すら見つかってないフェランディエーレ・オリオール・バレンスエの消息が見つかった時だと宣言した。
　アル達が誰も未だに王太子になってないのも我が父が早々に私に爵位を継がせて田舎に隠れ住んでいるのもあの悲劇を忘れないために、損得なしで国は救済に動くように。
　きっと生きているだろうと信じているフランをどれだけかかっても、たとえ生きてなくとも探し出そうと言う父の誓を次期国王の継承の指名条件にした」