公爵様のプロポーズが何で俺?!

雪那 由多

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公爵様、皆さん仲がよろしいのですね……

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 フランの手を取って甲にキスを落したアルベルトは引き攣った笑みを披露していた。
 
「いたずらにしては面白くないな」
「うん、そうだね。実はちょっと噂で聞く流行に乗ってみただけなんだ。
 バスクも面白くないよ?こんな事の為に剣の腕を鍛えたんじゃないよね?
 これでも一応第一王子なんだけど?王位継承一位なんだけど?」
「それは過去の呼称だな」
「待て待て待て待て!」

 両手両足を付いて顔を真っ青にして涙を流しながら逃げ出すアルベルトに俺は二人のその様子を唖然とながめてしまう。
 王子と公爵ってどう考えても王子の方が偉いんだよな?
 子供でも知っている事だが思わず確認する様にビクトール様と声をかけてどういう事かと訴えれば

「二人とも食事の時間にじゃれ合うのはいい加減にしろ」
「バスクも相変らず暢気な物ですね」

 トゥリエル嬢がこれだけの騒動を他所にカモのスモークを口に運び、ワインを一口飲んで

「私達四人はモリエンテス王立学園の同期ですの。
 最も幼い頃よりお互いの家を行き来する間柄の幼馴染です。
 この三人集まれば爵位も身分も関係なくただの何時まで経ってもお馬鹿な男の子でしてよ」
「俺をそこに含むのは酷いんじゃないか?」

 ビクトール様がトゥリエル嬢に抗議をするも

「幼馴染なら付き合ってあげなさい」
「それはキュラーも含めて?」
「ですから私は父と母を連れてこの場にいるのです。
 そもそも一年以上黙ってた挙句に教えもしないのだから、大切とは言え酷いじゃないの」

 言いながらアボガドとエビのカクテルを頬張り始めた。
 どうやらストレスが食に向く傾向らしい。
 穏やかに食事をする隣に座るご両親は自分の娘を微笑ましい目で見守りながらも黙々と食事を続けていた。

「じゃあ、この二人はほっておいてフラン、話の続きをしよう」
「ビッキー助けてくれないの?」
「王子が楽しそうで何よりですので」

 微笑みながらビクトール様は白のワインを貰って口を湿らし

「実はトゥリエル家は会った事はないだろうが、俺は勿論バスクもアルベルトもお前と何度も会った事がある。
 生まれてまだ五日かそれぐらいの頃に初めて会って、それから毎年誕生日やそれ以外も何度だってあった事がある。
 とはいっても幼い時だからお前は覚えてないだろう。
 そして農家で暮す事になって、その余裕のない生活に覚えてられなかったというのも仕方がないと思っている」

 重い空気の中オードブルから暖かなスープが出され、体を温め、程よい塩加減のコンソメスープのはずなのに味は全くわからなかった。

「なぜそのような生活になったかはフランの父と母に原因はある。
 フランの父親はとても領民思いで、バレンスエ領の民の事を良く考えながら領地を治めていた。
 そして母親はいわゆる深窓の令嬢と言う人で、お茶会や夜会の花となれる美しい方で裁縫をたしなんだり音楽を愛したり、まぁ、絵に描いたような貴夫人だったんだ。
 そして二人の間に産まれた一粒種がフラン、フェランディエーレ・オリオール・バレンスエ、君だ。
 大層二人はかわいがって、母親譲りの髪と父親譲りの顔立ち、そして王族の近しい血にしか現れないその瞳、通称王家の瞳を持って産まれた。
 それは大騒ぎになったのを今も覚えている。
 君の母親は生まれたばかりのフランを王家にとられるんじゃないかと泣き暮していたし、王家は王家でアルベルトを筆頭に既に三人の子供がいたのだが王位継承権がどうなるんだと当人よりも母親の方が大慌てだったな」

 言えばアルベルト王子も笑みを浮かべ

「俺は王子教育から解放されるって思って喜んだが、母親がその日以来俺にも同じ目を持って産まれさせてやれなくてごめんなさいって、長い事、今も心を患ってしまっているのが残念だったな」

 そして今も城の奥からめったに出てこないというのはそう言う事なのだろうと心で思うも現状はどうなっているのかと口に出せないでいた。














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