24 / 42
公爵様、お願いですから驚かせないでください
しおりを挟む
姿が見えなくなっても後ろの窓からずっとその姿を負う様に後ろ向きに座り、無言のままカドレニーのお屋敷に戻ってきた。
たった一晩の脱走にシメオンは涙を流しながら迎えに来てくれて、俺を温かなお風呂に入れ、綺麗なパジャマを着せてくれて、足の裏の怪我に治療を施し歩かないようにと俺を抱えてベットにまで運んでくれた。
ベットの片隅に座っていればベット横のテーブルに軽食を用意して
「ビクトール様が今夜大切なお話をしましょうとおっしゃられてました。
それまでお部屋でゆっくりお休みくださいとのことです」
「ありがとう、そしてごめんなさい。
ものすごく心配させて」
「いえ、無事帰ってきていただけてシメオンめは幸せです」
「それは俺が何とかって家の子供だから?」
聞けば息を一つ呑み込んで
「やはりビクトール様のお話をお聞きで」
うんとは言えず一つ頷けば
「その事はビクトール様に伝えさせて頂きます。
どのように聞いたか、そしてビクトール様がどのように貴方に伝えなければいけないのかその時までこの事は何も考えずにお休みください」
「考えない方が良いの?」
聞けば少しだけ瞳を伏せたシメオンは
「とても聞くに堪えない辛いお話になるでしょう。
フラン様のご家族の事、祖父だと思っていた家令の事やお世話になっていた農家の事も。
ビクトール様は全部調べ上げて国王に貴方の生存と今までの生活の話しを報告してきました。
なので、フラン様と魔導院でお会いなされてから手を尽くして調べて下さったビクトール様のお話をビクトール様の口から聞いてくださいませ」
何があったかなんて想像もつかないが、シメオンは体が冷えるからと足に障らないようにベットに寝かしてくれて毛布をかぶせてくれた。
「大丈夫です。
ビクトール様は貴方の過去を調べてもう一年以上たってますが、誰にも気づかれない間はそっとしておくようにとおっしゃってくれました。
ですが、ベルトラン公に見つかって、貴方の存在はかなりの方に目を引く事になってしまいました。
トゥリエル家のキュラール様にも知られ、貴方をただ見守るだけは叶わなくなりこのようにご子息として迎え入れる決心をなされました。
ビクトール様は可能な限りフラン様の過ごしたいように、そして貴族の柵に囚われないようにと見守り続けるつもりでしたが、それでもフラン様を不安にさせてしまった事悔いておられました」
布団から少しだけ顔を覗かせてシメオンの話に耳を傾ければ足のけがをした時の痛み止めだろうか薬が効き始めてうつらうつらとしてしまう。
「今は何も考えずお休みください。
その後少しだけビクトール様のお話をがんばって聞いてくださいませ」
子守唄のようなシメオンの柔らかい声と優しく頭を撫でられている間に意識はだんだんと遠くなっていった。
厚いカーテンが光を遮る薄暗い部屋の中で目が覚めた。
何時だろう、時計を見ようとして気が付いた。
すぐ傍らにはベットに頭を乗せて静かな寝息を落しているバスク様が居た。
俺が動いても目を覚まさない所を見ると深く眠っているのだろう。
喉が渇いて水差しから汲んであった水を飲んでも起きない辺り、ひょっとしてこの人は寝たばかりなのではと、目元に疲れを浮かべる痕に申し訳なさが広がった。
考えてみればこの人今日は仕事なのでは?近衛なのに大丈夫だろうかと起こすべきかどうか一瞬悩むも、いつからここにいてくれているのかわからないけどこのまま起こすのは申し訳なかった。
俺の身勝手な行動で随分心配をさせてしまった。
どうすればいいのか判らなくてまたもそもそとベットに潜り込んでバスク様の顔を覗いていれば息がかかったのだろう。
眩しそうに何とかと言う様に目を開けたバスク様と俺は目が合ってしまった。
へにゃりと弱弱しいような笑みを浮かべて
「良かった。
今度は無事見つかった……
頼むから黙って何処かいかないでくれ」
伸びた指先が俺の目元を撫で、頬を撫で、唇を撫でた。
「夢じゃない、ちゃんといる」
そう言ってまた瞼を閉ざしてしまったバスク様に向かって何も言い返せずただずっとその寝顔を俺は眺めていた。
たった一晩の脱走にシメオンは涙を流しながら迎えに来てくれて、俺を温かなお風呂に入れ、綺麗なパジャマを着せてくれて、足の裏の怪我に治療を施し歩かないようにと俺を抱えてベットにまで運んでくれた。
ベットの片隅に座っていればベット横のテーブルに軽食を用意して
「ビクトール様が今夜大切なお話をしましょうとおっしゃられてました。
それまでお部屋でゆっくりお休みくださいとのことです」
「ありがとう、そしてごめんなさい。
ものすごく心配させて」
「いえ、無事帰ってきていただけてシメオンめは幸せです」
「それは俺が何とかって家の子供だから?」
聞けば息を一つ呑み込んで
「やはりビクトール様のお話をお聞きで」
うんとは言えず一つ頷けば
「その事はビクトール様に伝えさせて頂きます。
どのように聞いたか、そしてビクトール様がどのように貴方に伝えなければいけないのかその時までこの事は何も考えずにお休みください」
「考えない方が良いの?」
聞けば少しだけ瞳を伏せたシメオンは
「とても聞くに堪えない辛いお話になるでしょう。
フラン様のご家族の事、祖父だと思っていた家令の事やお世話になっていた農家の事も。
ビクトール様は全部調べ上げて国王に貴方の生存と今までの生活の話しを報告してきました。
なので、フラン様と魔導院でお会いなされてから手を尽くして調べて下さったビクトール様のお話をビクトール様の口から聞いてくださいませ」
何があったかなんて想像もつかないが、シメオンは体が冷えるからと足に障らないようにベットに寝かしてくれて毛布をかぶせてくれた。
「大丈夫です。
ビクトール様は貴方の過去を調べてもう一年以上たってますが、誰にも気づかれない間はそっとしておくようにとおっしゃってくれました。
ですが、ベルトラン公に見つかって、貴方の存在はかなりの方に目を引く事になってしまいました。
トゥリエル家のキュラール様にも知られ、貴方をただ見守るだけは叶わなくなりこのようにご子息として迎え入れる決心をなされました。
ビクトール様は可能な限りフラン様の過ごしたいように、そして貴族の柵に囚われないようにと見守り続けるつもりでしたが、それでもフラン様を不安にさせてしまった事悔いておられました」
布団から少しだけ顔を覗かせてシメオンの話に耳を傾ければ足のけがをした時の痛み止めだろうか薬が効き始めてうつらうつらとしてしまう。
「今は何も考えずお休みください。
その後少しだけビクトール様のお話をがんばって聞いてくださいませ」
子守唄のようなシメオンの柔らかい声と優しく頭を撫でられている間に意識はだんだんと遠くなっていった。
厚いカーテンが光を遮る薄暗い部屋の中で目が覚めた。
何時だろう、時計を見ようとして気が付いた。
すぐ傍らにはベットに頭を乗せて静かな寝息を落しているバスク様が居た。
俺が動いても目を覚まさない所を見ると深く眠っているのだろう。
喉が渇いて水差しから汲んであった水を飲んでも起きない辺り、ひょっとしてこの人は寝たばかりなのではと、目元に疲れを浮かべる痕に申し訳なさが広がった。
考えてみればこの人今日は仕事なのでは?近衛なのに大丈夫だろうかと起こすべきかどうか一瞬悩むも、いつからここにいてくれているのかわからないけどこのまま起こすのは申し訳なかった。
俺の身勝手な行動で随分心配をさせてしまった。
どうすればいいのか判らなくてまたもそもそとベットに潜り込んでバスク様の顔を覗いていれば息がかかったのだろう。
眩しそうに何とかと言う様に目を開けたバスク様と俺は目が合ってしまった。
へにゃりと弱弱しいような笑みを浮かべて
「良かった。
今度は無事見つかった……
頼むから黙って何処かいかないでくれ」
伸びた指先が俺の目元を撫で、頬を撫で、唇を撫でた。
「夢じゃない、ちゃんといる」
そう言ってまた瞼を閉ざしてしまったバスク様に向かって何も言い返せずただずっとその寝顔を俺は眺めていた。
102
お気に入りに追加
1,677
あなたにおすすめの小説

僕はお別れしたつもりでした
まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!!
親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。
⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。
大晦日あたりに出そうと思ったお話です。



新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている
香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。
異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。
途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。
「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

君と秘密の部屋
325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。
「いつから知っていたの?」
今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。
対して僕はただのモブ。
この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。
それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。
筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる