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公爵様、お願いですから驚かせないでください
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姿が見えなくなっても後ろの窓からずっとその姿を負う様に後ろ向きに座り、無言のままカドレニーのお屋敷に戻ってきた。
たった一晩の脱走にシメオンは涙を流しながら迎えに来てくれて、俺を温かなお風呂に入れ、綺麗なパジャマを着せてくれて、足の裏の怪我に治療を施し歩かないようにと俺を抱えてベットにまで運んでくれた。
ベットの片隅に座っていればベット横のテーブルに軽食を用意して
「ビクトール様が今夜大切なお話をしましょうとおっしゃられてました。
それまでお部屋でゆっくりお休みくださいとのことです」
「ありがとう、そしてごめんなさい。
ものすごく心配させて」
「いえ、無事帰ってきていただけてシメオンめは幸せです」
「それは俺が何とかって家の子供だから?」
聞けば息を一つ呑み込んで
「やはりビクトール様のお話をお聞きで」
うんとは言えず一つ頷けば
「その事はビクトール様に伝えさせて頂きます。
どのように聞いたか、そしてビクトール様がどのように貴方に伝えなければいけないのかその時までこの事は何も考えずにお休みください」
「考えない方が良いの?」
聞けば少しだけ瞳を伏せたシメオンは
「とても聞くに堪えない辛いお話になるでしょう。
フラン様のご家族の事、祖父だと思っていた家令の事やお世話になっていた農家の事も。
ビクトール様は全部調べ上げて国王に貴方の生存と今までの生活の話しを報告してきました。
なので、フラン様と魔導院でお会いなされてから手を尽くして調べて下さったビクトール様のお話をビクトール様の口から聞いてくださいませ」
何があったかなんて想像もつかないが、シメオンは体が冷えるからと足に障らないようにベットに寝かしてくれて毛布をかぶせてくれた。
「大丈夫です。
ビクトール様は貴方の過去を調べてもう一年以上たってますが、誰にも気づかれない間はそっとしておくようにとおっしゃってくれました。
ですが、ベルトラン公に見つかって、貴方の存在はかなりの方に目を引く事になってしまいました。
トゥリエル家のキュラール様にも知られ、貴方をただ見守るだけは叶わなくなりこのようにご子息として迎え入れる決心をなされました。
ビクトール様は可能な限りフラン様の過ごしたいように、そして貴族の柵に囚われないようにと見守り続けるつもりでしたが、それでもフラン様を不安にさせてしまった事悔いておられました」
布団から少しだけ顔を覗かせてシメオンの話に耳を傾ければ足のけがをした時の痛み止めだろうか薬が効き始めてうつらうつらとしてしまう。
「今は何も考えずお休みください。
その後少しだけビクトール様のお話をがんばって聞いてくださいませ」
子守唄のようなシメオンの柔らかい声と優しく頭を撫でられている間に意識はだんだんと遠くなっていった。
厚いカーテンが光を遮る薄暗い部屋の中で目が覚めた。
何時だろう、時計を見ようとして気が付いた。
すぐ傍らにはベットに頭を乗せて静かな寝息を落しているバスク様が居た。
俺が動いても目を覚まさない所を見ると深く眠っているのだろう。
喉が渇いて水差しから汲んであった水を飲んでも起きない辺り、ひょっとしてこの人は寝たばかりなのではと、目元に疲れを浮かべる痕に申し訳なさが広がった。
考えてみればこの人今日は仕事なのでは?近衛なのに大丈夫だろうかと起こすべきかどうか一瞬悩むも、いつからここにいてくれているのかわからないけどこのまま起こすのは申し訳なかった。
俺の身勝手な行動で随分心配をさせてしまった。
どうすればいいのか判らなくてまたもそもそとベットに潜り込んでバスク様の顔を覗いていれば息がかかったのだろう。
眩しそうに何とかと言う様に目を開けたバスク様と俺は目が合ってしまった。
へにゃりと弱弱しいような笑みを浮かべて
「良かった。
今度は無事見つかった……
頼むから黙って何処かいかないでくれ」
伸びた指先が俺の目元を撫で、頬を撫で、唇を撫でた。
「夢じゃない、ちゃんといる」
そう言ってまた瞼を閉ざしてしまったバスク様に向かって何も言い返せずただずっとその寝顔を俺は眺めていた。
たった一晩の脱走にシメオンは涙を流しながら迎えに来てくれて、俺を温かなお風呂に入れ、綺麗なパジャマを着せてくれて、足の裏の怪我に治療を施し歩かないようにと俺を抱えてベットにまで運んでくれた。
ベットの片隅に座っていればベット横のテーブルに軽食を用意して
「ビクトール様が今夜大切なお話をしましょうとおっしゃられてました。
それまでお部屋でゆっくりお休みくださいとのことです」
「ありがとう、そしてごめんなさい。
ものすごく心配させて」
「いえ、無事帰ってきていただけてシメオンめは幸せです」
「それは俺が何とかって家の子供だから?」
聞けば息を一つ呑み込んで
「やはりビクトール様のお話をお聞きで」
うんとは言えず一つ頷けば
「その事はビクトール様に伝えさせて頂きます。
どのように聞いたか、そしてビクトール様がどのように貴方に伝えなければいけないのかその時までこの事は何も考えずにお休みください」
「考えない方が良いの?」
聞けば少しだけ瞳を伏せたシメオンは
「とても聞くに堪えない辛いお話になるでしょう。
フラン様のご家族の事、祖父だと思っていた家令の事やお世話になっていた農家の事も。
ビクトール様は全部調べ上げて国王に貴方の生存と今までの生活の話しを報告してきました。
なので、フラン様と魔導院でお会いなされてから手を尽くして調べて下さったビクトール様のお話をビクトール様の口から聞いてくださいませ」
何があったかなんて想像もつかないが、シメオンは体が冷えるからと足に障らないようにベットに寝かしてくれて毛布をかぶせてくれた。
「大丈夫です。
ビクトール様は貴方の過去を調べてもう一年以上たってますが、誰にも気づかれない間はそっとしておくようにとおっしゃってくれました。
ですが、ベルトラン公に見つかって、貴方の存在はかなりの方に目を引く事になってしまいました。
トゥリエル家のキュラール様にも知られ、貴方をただ見守るだけは叶わなくなりこのようにご子息として迎え入れる決心をなされました。
ビクトール様は可能な限りフラン様の過ごしたいように、そして貴族の柵に囚われないようにと見守り続けるつもりでしたが、それでもフラン様を不安にさせてしまった事悔いておられました」
布団から少しだけ顔を覗かせてシメオンの話に耳を傾ければ足のけがをした時の痛み止めだろうか薬が効き始めてうつらうつらとしてしまう。
「今は何も考えずお休みください。
その後少しだけビクトール様のお話をがんばって聞いてくださいませ」
子守唄のようなシメオンの柔らかい声と優しく頭を撫でられている間に意識はだんだんと遠くなっていった。
厚いカーテンが光を遮る薄暗い部屋の中で目が覚めた。
何時だろう、時計を見ようとして気が付いた。
すぐ傍らにはベットに頭を乗せて静かな寝息を落しているバスク様が居た。
俺が動いても目を覚まさない所を見ると深く眠っているのだろう。
喉が渇いて水差しから汲んであった水を飲んでも起きない辺り、ひょっとしてこの人は寝たばかりなのではと、目元に疲れを浮かべる痕に申し訳なさが広がった。
考えてみればこの人今日は仕事なのでは?近衛なのに大丈夫だろうかと起こすべきかどうか一瞬悩むも、いつからここにいてくれているのかわからないけどこのまま起こすのは申し訳なかった。
俺の身勝手な行動で随分心配をさせてしまった。
どうすればいいのか判らなくてまたもそもそとベットに潜り込んでバスク様の顔を覗いていれば息がかかったのだろう。
眩しそうに何とかと言う様に目を開けたバスク様と俺は目が合ってしまった。
へにゃりと弱弱しいような笑みを浮かべて
「良かった。
今度は無事見つかった……
頼むから黙って何処かいかないでくれ」
伸びた指先が俺の目元を撫で、頬を撫で、唇を撫でた。
「夢じゃない、ちゃんといる」
そう言ってまた瞼を閉ざしてしまったバスク様に向かって何も言い返せずただずっとその寝顔を俺は眺めていた。
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