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公爵様、お願いです。俺の名前を呼んでください。
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寝る前にホットミルクを飲んだのがいけなかった。
当たり前だが飲めば排出する人間の体の構造に俺は魔法の勉強を終えて寝ようとするも上手く寝つけず、つまりトイレに向かう事にしたのだった。
同じ階にはビクトール様の部屋もある。
トイレはそちらとは違う方向だけどまだお仕事をしているようなら明日に響きますよと声をかけようかと思えば話し声が聞こえた。
声はバスク様。
本当に用があって見えていたんだと、貴重な時間を一緒にホットミルクを飲む時間に割いていただいて申し訳なく思い、邪魔をしないようにそっと部屋に戻る事にしたけど部屋から零れ落ちる会話に俺は足を止めてしまった。
「まさかキュラーにフランの事が気づかれるとは思わなかった」
「いや、俺としては今までよく気付かれなかったと言うかだ。
そんな事より陛下はどんなご様子で?」
「当然取り乱されておいでだ。
まさかご自分と同じアンバーとグレーのアレキサンドライトの瞳を持つ者がいるとは……
それが王家の血に流れる特殊な物だとは、フランは気づいてないのか?」
「多分だけど、シメオンに言わすとフランは自分の目はアンバーだと思っているようだ」
二人は同時に深く溜息をつき
「アンバーでもゴールデンイエローだ。その色も王家に繋がる少ない希少な色だが、ランプの下ではそれがホワイトシルバーの色になるなんて……」
「王家の濃い血に時々現れるあの色は現在確認されているのは陛下だけだ。
そして過去にも一人。
死んだと思われていたフェランディエーレ・オリオール・バレンスエ公爵家の嫡男だ」
その言葉に俺はそっと指を目元に持って行く。
鏡何て高価な物は昼間にちょっと見る機会がある程度でずっと納屋に住んでいた俺達にそんな高価な私物があるわけがない。
思い出してみれば寮に居た間も時々寮母さん達もぎょっとしていたし、考えればこの家に引っ越して来て部屋には鏡がなく、こんな立派な家だというのに表立った所には鏡の一つもない。
ここに来てさすがにおかしいと初めて気がついた。
「生きていれば18歳、金の髪と深い緑の瞳孔に金の虹彩。
お披露目の時にお前が明かりの下で金の虹彩が銀色に変わった事を教えてくれたから発覚した事だったが……」
「ああ、俺はあの時あの瞳を見て心総てを奪われたんだ。
子供心に未来の公爵家の名誉すらなげうってでも欲しいと、心奪われて以来ずっと今も思い続けている。
まさかバレンスエ公爵家が領地の民の救済の為に破たんするとは思わなかったが……」
「手を尽くして探したつもりだったがあの瞳の色。
利用されるといけないと家令が当時五歳だったあの子を連れて行方をくらませた直後だったな。
あれだけ救済を受けておきながら民にその財総てを奪われてなぶり殺しになる……
未だに思い出すだけで怒り狂いそうだ」
その言葉に血の気を引く音を聞いた。
ずっと祖父だと思ってた人は何とかと言う家の家令でずっと俺を守り続けてくれた。俺は王様と同じ瞳だっただけに身元がばれると酷い目にあうだろうからと苦しい生活でもずっと隠れる様に暮していたんだという事を初めて知った。
薬も手に入れれなく体を悪くしたじいちゃんの為を思って薬が買えるように立派になろうとたまたま俺が魔法を使っている所を見た村長さんの協力を得て体調の悪いじいちゃんに内緒で学園に入る準備をした俺は入学直前に初めて打ち明けた時猛反対したじいちゃんの言い分をやっと理解できて……
「これから王宮は紛糾するだろうな。
陛下のご子息に抵抗する様に王族の血を濃く受け継ぐフランを担ぎ上げるのだろう」
「ああ、だから偶然この魔導院に就職する為に来ていた姿を見て心臓が止まる思いだった。
バレンスエ公の奥方にそっくりで……
常に見守る様にしていたが……」
「俺だって心臓が止まるかと思ったぞ。
久しぶりに早く帰れるからお前を食事に誘いにこちらに来ればあの子の瞳が外からの明かりからランプの明かりの下に移動した瞬間に変わった色によくぞ悲鳴を上げなかったと今でも感心している」
「だからと言ってあんな目立つところでプロポーズする馬鹿がどこにいる」
「決まってるだろ?今度こそ失わないようにする為だ」
「まぁ、正直お前のプロポーズはあの子を守るにはちょうどいい。
父の力とお前の公爵家の力に守られれば下手に引っ張り出す事も出来ないし、父とお前の保護下ならバレンスエ家の再興は無理でも陛下はご安心なされるだろう。
権力闘争に巻き込まれないで済むし、自分と同じ瞳を持ったフランを我が子のようにかわいがられていたからな」
「ああ、殿下も弟が出来たと言って喜んでらした」
懐かしむような声を聞きながらそっと足音を立てずに部屋へと戻った。
初めて聞いた言葉に頭の中はパンクしそうで閉ざしたばかりの扉に背を預けてしまう。
ぼんやりと揺れるランプの明かりをもって恐る恐ると言うように足を運ぶ。
そっとカーテンを開ければ美しい月明かりが夜空に燦然と輝いていてる。
それからゆっくりと視線を下げて窓ガラスに映る自分の姿を見た。
鮮やかでない物の映る姿は確かに自分の姿。
だけど記憶とは違う色の双眸に思わず上げそうになる悲鳴に両手を当てて押し殺した。
かちゃんと派手な音を立ててランプが壊れ、シェードが砕け散った。
火種代わりの魔石がコロコロと転がり、部屋の中は真っ暗となる。
ポタリと涙が零れ落ちた。
初めて知る自分の秘密に鏡に映った自分の姿が自分ではない赤の他人のようで何とも言いようがなくて。
それがまさか自分が一番気に入っている瞳だとは思いもしなくって。
「俺は一体誰なんだよ?」
わけのわからない悔しさに突き動かされるように窓を開けてそのまま飛び出すのだった。
当たり前だが飲めば排出する人間の体の構造に俺は魔法の勉強を終えて寝ようとするも上手く寝つけず、つまりトイレに向かう事にしたのだった。
同じ階にはビクトール様の部屋もある。
トイレはそちらとは違う方向だけどまだお仕事をしているようなら明日に響きますよと声をかけようかと思えば話し声が聞こえた。
声はバスク様。
本当に用があって見えていたんだと、貴重な時間を一緒にホットミルクを飲む時間に割いていただいて申し訳なく思い、邪魔をしないようにそっと部屋に戻る事にしたけど部屋から零れ落ちる会話に俺は足を止めてしまった。
「まさかキュラーにフランの事が気づかれるとは思わなかった」
「いや、俺としては今までよく気付かれなかったと言うかだ。
そんな事より陛下はどんなご様子で?」
「当然取り乱されておいでだ。
まさかご自分と同じアンバーとグレーのアレキサンドライトの瞳を持つ者がいるとは……
それが王家の血に流れる特殊な物だとは、フランは気づいてないのか?」
「多分だけど、シメオンに言わすとフランは自分の目はアンバーだと思っているようだ」
二人は同時に深く溜息をつき
「アンバーでもゴールデンイエローだ。その色も王家に繋がる少ない希少な色だが、ランプの下ではそれがホワイトシルバーの色になるなんて……」
「王家の濃い血に時々現れるあの色は現在確認されているのは陛下だけだ。
そして過去にも一人。
死んだと思われていたフェランディエーレ・オリオール・バレンスエ公爵家の嫡男だ」
その言葉に俺はそっと指を目元に持って行く。
鏡何て高価な物は昼間にちょっと見る機会がある程度でずっと納屋に住んでいた俺達にそんな高価な私物があるわけがない。
思い出してみれば寮に居た間も時々寮母さん達もぎょっとしていたし、考えればこの家に引っ越して来て部屋には鏡がなく、こんな立派な家だというのに表立った所には鏡の一つもない。
ここに来てさすがにおかしいと初めて気がついた。
「生きていれば18歳、金の髪と深い緑の瞳孔に金の虹彩。
お披露目の時にお前が明かりの下で金の虹彩が銀色に変わった事を教えてくれたから発覚した事だったが……」
「ああ、俺はあの時あの瞳を見て心総てを奪われたんだ。
子供心に未来の公爵家の名誉すらなげうってでも欲しいと、心奪われて以来ずっと今も思い続けている。
まさかバレンスエ公爵家が領地の民の救済の為に破たんするとは思わなかったが……」
「手を尽くして探したつもりだったがあの瞳の色。
利用されるといけないと家令が当時五歳だったあの子を連れて行方をくらませた直後だったな。
あれだけ救済を受けておきながら民にその財総てを奪われてなぶり殺しになる……
未だに思い出すだけで怒り狂いそうだ」
その言葉に血の気を引く音を聞いた。
ずっと祖父だと思ってた人は何とかと言う家の家令でずっと俺を守り続けてくれた。俺は王様と同じ瞳だっただけに身元がばれると酷い目にあうだろうからと苦しい生活でもずっと隠れる様に暮していたんだという事を初めて知った。
薬も手に入れれなく体を悪くしたじいちゃんの為を思って薬が買えるように立派になろうとたまたま俺が魔法を使っている所を見た村長さんの協力を得て体調の悪いじいちゃんに内緒で学園に入る準備をした俺は入学直前に初めて打ち明けた時猛反対したじいちゃんの言い分をやっと理解できて……
「これから王宮は紛糾するだろうな。
陛下のご子息に抵抗する様に王族の血を濃く受け継ぐフランを担ぎ上げるのだろう」
「ああ、だから偶然この魔導院に就職する為に来ていた姿を見て心臓が止まる思いだった。
バレンスエ公の奥方にそっくりで……
常に見守る様にしていたが……」
「俺だって心臓が止まるかと思ったぞ。
久しぶりに早く帰れるからお前を食事に誘いにこちらに来ればあの子の瞳が外からの明かりからランプの明かりの下に移動した瞬間に変わった色によくぞ悲鳴を上げなかったと今でも感心している」
「だからと言ってあんな目立つところでプロポーズする馬鹿がどこにいる」
「決まってるだろ?今度こそ失わないようにする為だ」
「まぁ、正直お前のプロポーズはあの子を守るにはちょうどいい。
父の力とお前の公爵家の力に守られれば下手に引っ張り出す事も出来ないし、父とお前の保護下ならバレンスエ家の再興は無理でも陛下はご安心なされるだろう。
権力闘争に巻き込まれないで済むし、自分と同じ瞳を持ったフランを我が子のようにかわいがられていたからな」
「ああ、殿下も弟が出来たと言って喜んでらした」
懐かしむような声を聞きながらそっと足音を立てずに部屋へと戻った。
初めて聞いた言葉に頭の中はパンクしそうで閉ざしたばかりの扉に背を預けてしまう。
ぼんやりと揺れるランプの明かりをもって恐る恐ると言うように足を運ぶ。
そっとカーテンを開ければ美しい月明かりが夜空に燦然と輝いていてる。
それからゆっくりと視線を下げて窓ガラスに映る自分の姿を見た。
鮮やかでない物の映る姿は確かに自分の姿。
だけど記憶とは違う色の双眸に思わず上げそうになる悲鳴に両手を当てて押し殺した。
かちゃんと派手な音を立ててランプが壊れ、シェードが砕け散った。
火種代わりの魔石がコロコロと転がり、部屋の中は真っ暗となる。
ポタリと涙が零れ落ちた。
初めて知る自分の秘密に鏡に映った自分の姿が自分ではない赤の他人のようで何とも言いようがなくて。
それがまさか自分が一番気に入っている瞳だとは思いもしなくって。
「俺は一体誰なんだよ?」
わけのわからない悔しさに突き動かされるように窓を開けてそのまま飛び出すのだった。
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