公爵様のプロポーズが何で俺?!

雪那 由多

文字の大きさ
上 下
20 / 42

公爵様、夜に訪問何て一体何しに来たんですか……

しおりを挟む
 トゥリエル嬢のドリルでひっぱたかれた夜遅くになってビクトール様はバスク様を連れて帰ってきた。
 何で拾って帰ってきたのですかと恨めしく思うも夜の空気を纏う二人はパジャマ姿の俺にお帰りとハグをするけど若干一名俺を抱き上げてどこかの寝室へ連れ込もうとするのをビクトール様が阻止してくれた。

「いやぁ、あまりに可愛すぎて夢か現実か確かめないといけない気がしてな?
 だって婚約者のパジャマ姿なんて見せられたらいくら婚前とは言え手を出さない方がおかしいぞ?」

 不思議な事に抱きかかえられたと思った一瞬の合間にパジャマのボタンがすべて外れていた……
 なんて魔法だよと思いながら慌てて前を隠すようにその腕から逃げるも

「バスクは婚約者じゃないしお前の婚約者は別にいる。
 俺の可愛い息子に手を出したら明日がキュラーとの結婚日だ」
「申し訳ありませんでした」

 側面に手をぴったりとあてて九十度きっちりと頭を下げる様はさすが近衛隊長と言う美しい姿……近衛隊長が頭を下げる?
 そんなにもトゥリエル嬢との結婚は嫌なのかとどうでもいい疑問に頭を悩ましていればシメオンさんが

「ホットミルクでも飲みましょうか?
 ハチミツも入れて、美味しいですよ」
「ありがとうございます!」

 初めてはちみつ入りのホットミルクを貰った時はこんな美味しい物があるなんてと感動して以来バスク様がやってきて心荒れる時はこうやって甘やかしてくれるようになった。
 あの甘さを思い出して幸せ~と既にお口の中が涎で溢れだしそうにして準備万端の俺にシメオンさんは俺の手を引いて特別にと言ってキッチンへと連れてくれるのだった。

 ホットミルクは熱くなりすぎると膜を張る。
 膜を張るのが嫌だとバスク様は言いますがどちらかと言えば俺は

「やっぱり食べたくなっちゃうんだよね」

 何故か一緒にホットミルクを飲んでるバスク様とビクトール様のフレーバーはブランデー。
 久しぶりに飲んだと二人は懐かしがっているその横で俺はスプーンの先っぽにひっかけて集めた膜をぺろりと堪能していた。

「おいしいですか?」
「うん!」

 そうして膜が無くなってしまったミルクに息を吹き付けて飲めばシメオンさんは小さなクッキーまで出してくれた。

「夜なので少しですよ?」
「ありがとうございます!」

 出してくれたのは俺の好きな紅茶の葉っぱを刻んだものを練り込んだクッキー。
 ビクトール様がこういったお菓子を食べないので俺がこの家に来てから料理長が腕によりをかけて俺のおやつ作りに励んでくれているのだ。

「お菓子なんて贅沢だよなぁ」

 俺の今までの暮らしを知ってるビクトール様達は目頭を押さえて

「菓子なんていくらでも食べさせてやる。
 だからもっと我が儘言っていいんだぞ」
「ああ、俺が幸せって言う幸せを教えてやる。
 だから早く家においで」
「俺はビクトール様のお家にいられるだけで幸せすぎているのでこれ以上は受け取れません」

 オブラートにお断りすればシメオンさんも声を立てて笑う光景はとても暖かくて更に俺を幸せにしてくれる。

「では、魔法の勉強の途中なので先に失礼します」
「あまり遅くならないように注意するんだよ」
「はいおやすみなさい」

 そう言ってビクトール様は首を少しだけ傾ける。
 ひょっとしてここでやれと……
 何だ?と言うように俺達を見て居たバスク様は少しだけ戸惑う俺の様子にその視線がひょっとしてと言うように見開いて行くのを見ないようにして目を瞑って一瞬だというようにビクトール様の頬にキスを一つ。
 半分近くまで減ったホットミルクを持って二階にある自分の部屋に逃げる様に駆け込むのだった。
 背後からビッキーそこに俺もキスさせろ!!!
 なんて訳の分からない叫び声が響いてたけど何やら派手な物音と共に静かになったから大丈夫なんだろうと思う事にして置いた。








しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

僕はお別れしたつもりでした

まと
BL
遠距離恋愛中だった恋人との関係が自然消滅した。どこか心にぽっかりと穴が空いたまま毎日を過ごしていた藍(あい)。大晦日の夜、寂しがり屋の親友と二人で年越しを楽しむことになり、ハメを外して酔いつぶれてしまう。目が覚めたら「ここどこ」状態!! 親友と仲良すぎな主人公と、別れたはずの恋人とのお話。 ⚠️趣味で書いておりますので、誤字脱字のご報告や、世界観に対する批判コメントはご遠慮します。そういったコメントにはお返しできませんので宜しくお願いします。 大晦日あたりに出そうと思ったお話です。

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

拾われた後は

なか
BL
気づいたら森の中にいました。 そして拾われました。 僕と狼の人のこと。 ※完結しました その後の番外編をアップ中です

家を追い出されたのでツバメをやろうとしたら強面の乳兄弟に反対されて困っている

香歌奈
BL
ある日、突然、セレンは生まれ育った伯爵家を追い出された。 異母兄の婚約者に乱暴を働こうとした罪らしいが、全く身に覚えがない。なのに伯爵家当主となっている異母兄は家から締め出したばかりか、ヴァーレン伯爵家の籍まで抹消したと言う。 途方に暮れたセレンは、年の離れた乳兄弟ギーズを頼ることにした。ギーズは顔に大きな傷跡が残る強面の騎士。悪人からは恐れられ、女子供からは怯えられているという。でもセレンにとっては子守をしてくれた優しいお兄さん。ギーズの家に置いてもらう日々は昔のようで居心地がいい。とはいえ、いつまでも養ってもらうわけにはいかない。しかしお坊ちゃん育ちで手に職があるわけでもなく……。 「僕は女性ウケがいい。この顔を生かしてツバメをしようかな」「おい、待て。ツバメの意味がわかっているのか!」美貌の天然青年に振り回される強面騎士は、ついに実力行使に出る?!

あと一度だけでもいいから君に会いたい

藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。 いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。 もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。 ※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

手切れ金

のらねことすていぬ
BL
貧乏貴族の息子、ジゼルはある日恋人であるアルバートに振られてしまう。手切れ金を渡されて完全に捨てられたと思っていたが、なぜかアルバートは彼のもとを再び訪れてきて……。 貴族×貧乏貴族

君と秘密の部屋

325号室の住人
BL
☆全3話 完結致しました。 「いつから知っていたの?」 今、廊下の突き当りにある第3書庫準備室で僕を壁ドンしてる1歳年上の先輩は、乙女ゲームの攻略対象者の1人だ。 対して僕はただのモブ。 この世界があのゲームの舞台であると知ってしまった僕は、この第3書庫準備室の片隅でこっそりと2次創作のBLを書いていた。 それが、この目の前の人に、主人公のモデルが彼であるとバレてしまったのだ。 筆頭攻略対象者第2王子✕モブヲタ腐男子

処理中です...