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公爵様、本日はシメオンと帰るのでまっすぐ家に帰ってください
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爪先まで芸術までに整えられた先っぽが少々頬にめり込んでいるけどトゥリエル嬢は全く気にせずに俺の顔を左右上下と傾けさせ俺から顔の向きの自由まで奪い取っていた。
「肌と髪は前回に比べればビッキーの家が手入れしているようで少しは見れるようになりましたね」
言いながらこれは少々野暮ったいですがと前髪を掴んでおでこを晒された。
掴まずに普通に上げてくださいと文句も言えずに視線で必死に訴えればスイ……と目を細められ、陽に当る事も働いて節ばる事も無い美しい手が離された直後横っ面をドリルに叩かれ目の前に星が飛んでいた。
「痛い?痛い!
何で髪がって、髪ってこんなにも痛いモノなの?!」
思わず頬に手を当ててさすってしまえばアイーダも俺の顔を覗きながら
「うわー、赤くなってる。いったそー」
アイーダが追い打ちをかけるように頬を突いてくるも俺だってフライパンで殴られたような痛みに涙がちょちょぎれてあまりの痛みに頬を手で押さえてしまう。
「先輩、濡らしたハンカチです」
気の利くジェルが水魔法で程よく濡らしてくれたハンカチで優しく頬に当てて冷やしてくれるもドリルさんはつかつかと魔導院の奥の部屋に向かって
「ビクトール・カドレニー!そこにいるのは判ってます!
このキュラール・トゥリエルの前に出てらっしゃい!」
大声で叫べばさすがの魔導院の最奥に普段は要るはずのビクトール様はこの騒動に姿を現さずにはいられなかった。
「キュラー、この件もお前の親に言わせてもらう。
ここは気軽に関係者以外が遊びに来ていい場所じゃない」
頭が痛そうに、そして衛兵を連れてやってきたビクトール様は本日魔導院の長と言うにふさわしいローブを纏っておられていた。
この後王宮にお出かけの予定だからだけど、やっぱりこうやって見るとビクトール様って素敵だなと男の俺でも見惚れてしまうその姿に気づいてか、ビクトール様は俺の赤くなった頬に気づいてやってきてくれた。
そしてジェルが冷やしてくれる頬を癒しの魔法で治療すると言う贅沢な事を平然とした顔で施してくれる。
癒しの魔法はこの国でも十人も使い手のない貴重な魔法を俺の為に惜しむ事無く使ってくれる喜びと同様に普通の魔法よりも桁違いに魔力を消費する申し訳なさに困惑していれば頬に唇をちゅっと寄せて
「かわいそうに、
キュラーのドリルにやられたんだね」
もう大丈夫だよと、この人もナチュラルにキスをするという技を披露してくれて顔を真っ赤にしてしまう俺に追い打ちをかける様に「ありがとうのキスが欲しいな」と強請られて触れるだけのキスをさせられてしまった。
「親子なんだから遠慮する事はないんだよ」
「ううう……ありがとうございます」
嬉しいのか恥かしいのか俯いてしまう俺の頭を撫でてくれるビクトール様を今もまだ義父様とは呼べずにいる。
こればかりはほんと俺なんかを息子にしてと申し訳なく思うと同時にこの人が俺の義父になってくれた喜びはどれだけ言葉にしても足りないくらい感謝してるのにだ。
なので甘やかしてくれる時は素直に甘やかされる事にしているが、さすがに親愛の情のこういった表現にはまだついていけてなく、今ならきっと憤死できると本気で思った。
「それよりも三分ほどこのキュラール・トゥリエルに時間をよこしなさい」
先ほどまでの感情豊かな女性の姿はなりを潜め、貴族の女性らしいつんとした顎を突き上げた強気な姿勢でビクトール様を睨み付ければ逃げる事は出来ないと諦めてか直ぐに応接室へ入って行き、三分もしないうちに出てきた二人は酷く深刻そうな顔をしていた。
「とりあえず陛下にお会いに行くのならそれを阻む不敬は出来ませんのでお行きなさい。
そして今夜帰る前に私の家によって説明なさい。
当然バスクも一緒です、判りましたね」
「ああ、もう……
判ったからお前も判ってるよな?」
「当然です。
このキュラール・トゥリエル、父の黄金と母の豊かな美しい髪に誓って沈黙を約束しましょう」
「たのむ。
女性の剃った頭ほど目のやり場に困る物はないから、絶対約束を守ってくれ」
「信用なさい。
さあ、早くなさい。陛下がお待ちです」
言いながら一緒に魔導院を出ていこうとするトゥリエル嬢がふと何かを思い出したように振り向いて
「そうそう、指輪が取れなくなった時は石鹸水です。
石鹸を付けて手を洗えばすぐに取れますよ」
覚えておきなさいと言い残して去って行った後姿を誰もが黙って見送っていれば
「さあ、みなさん。お仕事に戻りましょう」
珍しくも事務長が存在感を出していた。
「肌と髪は前回に比べればビッキーの家が手入れしているようで少しは見れるようになりましたね」
言いながらこれは少々野暮ったいですがと前髪を掴んでおでこを晒された。
掴まずに普通に上げてくださいと文句も言えずに視線で必死に訴えればスイ……と目を細められ、陽に当る事も働いて節ばる事も無い美しい手が離された直後横っ面をドリルに叩かれ目の前に星が飛んでいた。
「痛い?痛い!
何で髪がって、髪ってこんなにも痛いモノなの?!」
思わず頬に手を当ててさすってしまえばアイーダも俺の顔を覗きながら
「うわー、赤くなってる。いったそー」
アイーダが追い打ちをかけるように頬を突いてくるも俺だってフライパンで殴られたような痛みに涙がちょちょぎれてあまりの痛みに頬を手で押さえてしまう。
「先輩、濡らしたハンカチです」
気の利くジェルが水魔法で程よく濡らしてくれたハンカチで優しく頬に当てて冷やしてくれるもドリルさんはつかつかと魔導院の奥の部屋に向かって
「ビクトール・カドレニー!そこにいるのは判ってます!
このキュラール・トゥリエルの前に出てらっしゃい!」
大声で叫べばさすがの魔導院の最奥に普段は要るはずのビクトール様はこの騒動に姿を現さずにはいられなかった。
「キュラー、この件もお前の親に言わせてもらう。
ここは気軽に関係者以外が遊びに来ていい場所じゃない」
頭が痛そうに、そして衛兵を連れてやってきたビクトール様は本日魔導院の長と言うにふさわしいローブを纏っておられていた。
この後王宮にお出かけの予定だからだけど、やっぱりこうやって見るとビクトール様って素敵だなと男の俺でも見惚れてしまうその姿に気づいてか、ビクトール様は俺の赤くなった頬に気づいてやってきてくれた。
そしてジェルが冷やしてくれる頬を癒しの魔法で治療すると言う贅沢な事を平然とした顔で施してくれる。
癒しの魔法はこの国でも十人も使い手のない貴重な魔法を俺の為に惜しむ事無く使ってくれる喜びと同様に普通の魔法よりも桁違いに魔力を消費する申し訳なさに困惑していれば頬に唇をちゅっと寄せて
「かわいそうに、
キュラーのドリルにやられたんだね」
もう大丈夫だよと、この人もナチュラルにキスをするという技を披露してくれて顔を真っ赤にしてしまう俺に追い打ちをかける様に「ありがとうのキスが欲しいな」と強請られて触れるだけのキスをさせられてしまった。
「親子なんだから遠慮する事はないんだよ」
「ううう……ありがとうございます」
嬉しいのか恥かしいのか俯いてしまう俺の頭を撫でてくれるビクトール様を今もまだ義父様とは呼べずにいる。
こればかりはほんと俺なんかを息子にしてと申し訳なく思うと同時にこの人が俺の義父になってくれた喜びはどれだけ言葉にしても足りないくらい感謝してるのにだ。
なので甘やかしてくれる時は素直に甘やかされる事にしているが、さすがに親愛の情のこういった表現にはまだついていけてなく、今ならきっと憤死できると本気で思った。
「それよりも三分ほどこのキュラール・トゥリエルに時間をよこしなさい」
先ほどまでの感情豊かな女性の姿はなりを潜め、貴族の女性らしいつんとした顎を突き上げた強気な姿勢でビクトール様を睨み付ければ逃げる事は出来ないと諦めてか直ぐに応接室へ入って行き、三分もしないうちに出てきた二人は酷く深刻そうな顔をしていた。
「とりあえず陛下にお会いに行くのならそれを阻む不敬は出来ませんのでお行きなさい。
そして今夜帰る前に私の家によって説明なさい。
当然バスクも一緒です、判りましたね」
「ああ、もう……
判ったからお前も判ってるよな?」
「当然です。
このキュラール・トゥリエル、父の黄金と母の豊かな美しい髪に誓って沈黙を約束しましょう」
「たのむ。
女性の剃った頭ほど目のやり場に困る物はないから、絶対約束を守ってくれ」
「信用なさい。
さあ、早くなさい。陛下がお待ちです」
言いながら一緒に魔導院を出ていこうとするトゥリエル嬢がふと何かを思い出したように振り向いて
「そうそう、指輪が取れなくなった時は石鹸水です。
石鹸を付けて手を洗えばすぐに取れますよ」
覚えておきなさいと言い残して去って行った後姿を誰もが黙って見送っていれば
「さあ、みなさん。お仕事に戻りましょう」
珍しくも事務長が存在感を出していた。
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