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公爵様、ひょっとしてストーキングしてませんか?
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ビクトール様のお家はいつみても立派だった。
魔導院の事務員になってすぐの頃にこの国に大きな嵐が来た。
借りたばかりの家は古く、あっという間に屋根を持って行かれて途方に暮れていた時、何日も仕事を休んでいた俺を心配して駆けつけてくれたのだ。
嵐で壊れた家々が連なりゴミだらけの地域に白馬の王子様みたいな出で立ちでやって来たビクトール様は泣きながら後片付けをする俺とぼろぼろになった家を見てすぐさま俺を保護、お家の使用人さん達に家の補修を命じてくれた。
返せるお金はないからと言うも、だったら暫く内に滞在しなさいとさらにお金をかさむ事を平然と言ってのけたけど、結局の所助けてもらってほっとした所で熱を出して一週間ほどベットの住人になる事になったのだ。
その間三日ほど高熱でうなされていた間にビクトール様はお屋敷の一室を俺の専用の部屋と用意してくれてベットから体を起こせる頃になるとシーツを変えたりお屋敷の中で歩いて体力回復のリハビリをしたりしている間に客間から俺の部屋へと移動して、あまりに煌びやかなお部屋の内装に脱走したのは今でもビクトール様の使用人の間では語り継がれている。
そんな縁もあって時折夕食に招待されたり休日に招待されたりとすっかり仲良くさせてもらってる何のとりえのない事務員だけど、ついに俺はビクトール様の息子になってしまいました。
「ホモの結婚?」
「同性結婚は国でも認めれているよ。わざわざ回りくどいことする必要ないだろ……」
アイーダは相手が相手だけに何をして親子になったのだと物凄く動揺してたけど
「公爵様対策とか後輩対策に養子縁組して頂いただけだよ」
あー……と意識を飛ばしながら何とか納得してくれた。
「で、院長から……その、大丈夫?」
「大丈夫が何の意味か判らないよ!」
まさか身体とか言わないよねと睨み付ければアイーダはそっぽを向いて笑っているも
「でもよかったじゃない。
もっと早く養子縁組出来てたら学校であんな悔しい想いしなくてもよかったけど巡り合わせって言うの?
ちゃんとした裕福なお家の立派な方の息子さんになれたんだもの……
家みたいな小さな商家よりよっぽどましよね……」
しょぼんと寂しげな顔をするアイーダに今は恋愛感情を一切感じてない事を理解できる。
使い勝手の良い使用人、しかも信頼度高いと来れば確保しておきたい人材だったのだろう。
自分で言うのもなんだけどね。
「うちの番頭なんてちょっと大きな計算になるといつもミスるから、フランに計算してもらう方が確実だってお父さんも信頼してたのに……」
「あー、俺が思うにはあの人あれだけ計算不得意だから番頭じゃない仕事任せた方が良いと思うんだけど?」
「そうなるとうちの店の上下関係が荒れるから無理だってお父さん言うの。
だから学園出身って言うフランにいろいろ教えてたんだけど……
カドレニー侯爵家のご子息にうちみたいな小さな店の小間使いはさせれないわよ」
「侯爵家のご子息って言うけど、俺なかなかなじめないんだけど……」
「でもフランって前に一時期一緒に住んでたじゃない」
「住んでたって言ってもほとんどベットで寝てたからあのお屋敷に住んでいた感覚がないし……」
「この幸せ者めー」
贅沢だと言いながら肩をポカポカと殴るアイーダの癖は可愛らしいものだが……
「私の婚約者に手を上げるのは許せないな」
聞き覚えのあるフレーズに恐る恐るとアイーダと二人振り向けば
「でたっ!」
「申し訳ありません!」
ぎゃーっ!と、とても男の子と女の子の悲鳴には思えない叫び声にバスク様は苦笑を零していた。
「フラン、どうだい?
カドレニー邸に少しは馴染めたか?」
驚きに数メートルほど逃げてしまうも、離れた距離から声をかけてくれる公爵様の後ろには本日も近衛の皆様がそろっていた。
近衛の皆様もまたかと言うように困ってらしたが
「ええと、ベルトラン公爵様、本日はどういったご用件で?」
思わずアイーダを盾にして声をかければ
「ちょうどこちらを通りかかったら可愛らしい声が聞こえたからな。
このような所で会えるなんてすばらしいと……」
ふと言葉を切って小首をかしげたと思ったらその立派な体に相応しい長い足であっという間に俺達の目の前にやってきたとおもったら
ちゅ……
背中に隠れていたのに何故かアイーダは一歩横にずれて俺の正面を公爵様に譲ったのを何で?!と考えるよりも先に顎を指先で掬われたと思ったら唇が重なっていた……
もうやだ……
もちろん最初こそ「ちゅ」何て可愛らしい音をさせていたけどそんな程度で離してくれる公爵様ではない。
ちゅ、ちゅ、ちゅ……と唇を舌を吸い上げられてあっという間に呼吸も難しい状態の俺はあっという間にあえぎながら情けなくもしがみついてしまう。
たとえ調子に乗ってケツを握られながら硬くて大きくなったモノを下腹部にこすり付けられても抵抗できなくて、それどころかこの光景をまた周囲の皆様にがん見されている事が判っててもそのキスに抵抗が出来なくて……
「ベルトラン公、いい加減にしてください」
「またカドレニー侯に怒られますよ」
「ふむ、仕方がないか」
なんて、前回と同じように近衛の方々に救出してもらい、俺は情けなく地面に両手をついて恥ずかしさから顔を上げられないでいた。
情けない……
こんな事されて何一つ抵抗できないなんてと悔し涙を流していれば、アイーダはいつの間にか俺に背中を向けて両手で顔を隠していた。
耳まで真っ赤な様子に、見苦しい物を見せてしまったと罪悪感が募る。
アイーダとて未婚の女性なのだ。
見合いをしてるとは聞いてもまだ見合いの段階。
このような事はまだ未体験と言うかまだ話を聞くぐらいらしく……
目の前で実践している俺を見て刺激が強すぎるのだろう。
女の子達の間でロマンス小説なる物が流行り、回し読みしているという話は聞いた事あるが、小説と現実のギャップを埋めるのは大変らしい。
「それ夜も今日は何時仕事は終わるのだ?
あいつは会議があるから送って行こう」
「お心使いありがとうございます。
ですが毎日送ってもらうわけにはいけないので」
そうなのだ。
養子縁組した次の日から毎朝迎えに来て毎日家まで送ってもらうと言うめんどくさい事をこの公爵様はしてくれるのだ。
ビクトール様改めビクトールお義父様はバスク様を毎回追い返してくれるのだけど、こういった日は送ってもらえと、狼に俺を手渡すような事を平然と言ってのけるのだ。
いや、寧ろ楽しそうに?
おかげで迎えに来てくれる日はジェルと大騒ぎになる。
と言うかジェルも絶望した目で俺とビクトール様を見比べ、以前にもましてベタベタと絡んでくるようになった。
そしてこいつも隙あらばキスをしてきて押し倒そうとする……
これって貴族の習性ですか?
さすがに違う事は判るけどそう思わずにはいられなくてバスク様にしっかりと約束されて別れた後魔導院の事務所に戻ればすぐにジェルが飛びついて来て
「この匂い!
あのクソ公爵がまた俺の婚約者にちょっかいを出して来たな!」
「不敬は止めろ。そして俺には誰も婚約者なぞ居ない」
子犬がじゃれる様に俺の胸に飛び込んできてお帰りなさいと言うジェルの頭にチョップをするも、もう不敬じゃないんだよーと心の中で自分に弁明していた。
魔導院の事務員になってすぐの頃にこの国に大きな嵐が来た。
借りたばかりの家は古く、あっという間に屋根を持って行かれて途方に暮れていた時、何日も仕事を休んでいた俺を心配して駆けつけてくれたのだ。
嵐で壊れた家々が連なりゴミだらけの地域に白馬の王子様みたいな出で立ちでやって来たビクトール様は泣きながら後片付けをする俺とぼろぼろになった家を見てすぐさま俺を保護、お家の使用人さん達に家の補修を命じてくれた。
返せるお金はないからと言うも、だったら暫く内に滞在しなさいとさらにお金をかさむ事を平然と言ってのけたけど、結局の所助けてもらってほっとした所で熱を出して一週間ほどベットの住人になる事になったのだ。
その間三日ほど高熱でうなされていた間にビクトール様はお屋敷の一室を俺の専用の部屋と用意してくれてベットから体を起こせる頃になるとシーツを変えたりお屋敷の中で歩いて体力回復のリハビリをしたりしている間に客間から俺の部屋へと移動して、あまりに煌びやかなお部屋の内装に脱走したのは今でもビクトール様の使用人の間では語り継がれている。
そんな縁もあって時折夕食に招待されたり休日に招待されたりとすっかり仲良くさせてもらってる何のとりえのない事務員だけど、ついに俺はビクトール様の息子になってしまいました。
「ホモの結婚?」
「同性結婚は国でも認めれているよ。わざわざ回りくどいことする必要ないだろ……」
アイーダは相手が相手だけに何をして親子になったのだと物凄く動揺してたけど
「公爵様対策とか後輩対策に養子縁組して頂いただけだよ」
あー……と意識を飛ばしながら何とか納得してくれた。
「で、院長から……その、大丈夫?」
「大丈夫が何の意味か判らないよ!」
まさか身体とか言わないよねと睨み付ければアイーダはそっぽを向いて笑っているも
「でもよかったじゃない。
もっと早く養子縁組出来てたら学校であんな悔しい想いしなくてもよかったけど巡り合わせって言うの?
ちゃんとした裕福なお家の立派な方の息子さんになれたんだもの……
家みたいな小さな商家よりよっぽどましよね……」
しょぼんと寂しげな顔をするアイーダに今は恋愛感情を一切感じてない事を理解できる。
使い勝手の良い使用人、しかも信頼度高いと来れば確保しておきたい人材だったのだろう。
自分で言うのもなんだけどね。
「うちの番頭なんてちょっと大きな計算になるといつもミスるから、フランに計算してもらう方が確実だってお父さんも信頼してたのに……」
「あー、俺が思うにはあの人あれだけ計算不得意だから番頭じゃない仕事任せた方が良いと思うんだけど?」
「そうなるとうちの店の上下関係が荒れるから無理だってお父さん言うの。
だから学園出身って言うフランにいろいろ教えてたんだけど……
カドレニー侯爵家のご子息にうちみたいな小さな店の小間使いはさせれないわよ」
「侯爵家のご子息って言うけど、俺なかなかなじめないんだけど……」
「でもフランって前に一時期一緒に住んでたじゃない」
「住んでたって言ってもほとんどベットで寝てたからあのお屋敷に住んでいた感覚がないし……」
「この幸せ者めー」
贅沢だと言いながら肩をポカポカと殴るアイーダの癖は可愛らしいものだが……
「私の婚約者に手を上げるのは許せないな」
聞き覚えのあるフレーズに恐る恐るとアイーダと二人振り向けば
「でたっ!」
「申し訳ありません!」
ぎゃーっ!と、とても男の子と女の子の悲鳴には思えない叫び声にバスク様は苦笑を零していた。
「フラン、どうだい?
カドレニー邸に少しは馴染めたか?」
驚きに数メートルほど逃げてしまうも、離れた距離から声をかけてくれる公爵様の後ろには本日も近衛の皆様がそろっていた。
近衛の皆様もまたかと言うように困ってらしたが
「ええと、ベルトラン公爵様、本日はどういったご用件で?」
思わずアイーダを盾にして声をかければ
「ちょうどこちらを通りかかったら可愛らしい声が聞こえたからな。
このような所で会えるなんてすばらしいと……」
ふと言葉を切って小首をかしげたと思ったらその立派な体に相応しい長い足であっという間に俺達の目の前にやってきたとおもったら
ちゅ……
背中に隠れていたのに何故かアイーダは一歩横にずれて俺の正面を公爵様に譲ったのを何で?!と考えるよりも先に顎を指先で掬われたと思ったら唇が重なっていた……
もうやだ……
もちろん最初こそ「ちゅ」何て可愛らしい音をさせていたけどそんな程度で離してくれる公爵様ではない。
ちゅ、ちゅ、ちゅ……と唇を舌を吸い上げられてあっという間に呼吸も難しい状態の俺はあっという間にあえぎながら情けなくもしがみついてしまう。
たとえ調子に乗ってケツを握られながら硬くて大きくなったモノを下腹部にこすり付けられても抵抗できなくて、それどころかこの光景をまた周囲の皆様にがん見されている事が判っててもそのキスに抵抗が出来なくて……
「ベルトラン公、いい加減にしてください」
「またカドレニー侯に怒られますよ」
「ふむ、仕方がないか」
なんて、前回と同じように近衛の方々に救出してもらい、俺は情けなく地面に両手をついて恥ずかしさから顔を上げられないでいた。
情けない……
こんな事されて何一つ抵抗できないなんてと悔し涙を流していれば、アイーダはいつの間にか俺に背中を向けて両手で顔を隠していた。
耳まで真っ赤な様子に、見苦しい物を見せてしまったと罪悪感が募る。
アイーダとて未婚の女性なのだ。
見合いをしてるとは聞いてもまだ見合いの段階。
このような事はまだ未体験と言うかまだ話を聞くぐらいらしく……
目の前で実践している俺を見て刺激が強すぎるのだろう。
女の子達の間でロマンス小説なる物が流行り、回し読みしているという話は聞いた事あるが、小説と現実のギャップを埋めるのは大変らしい。
「それ夜も今日は何時仕事は終わるのだ?
あいつは会議があるから送って行こう」
「お心使いありがとうございます。
ですが毎日送ってもらうわけにはいけないので」
そうなのだ。
養子縁組した次の日から毎朝迎えに来て毎日家まで送ってもらうと言うめんどくさい事をこの公爵様はしてくれるのだ。
ビクトール様改めビクトールお義父様はバスク様を毎回追い返してくれるのだけど、こういった日は送ってもらえと、狼に俺を手渡すような事を平然と言ってのけるのだ。
いや、寧ろ楽しそうに?
おかげで迎えに来てくれる日はジェルと大騒ぎになる。
と言うかジェルも絶望した目で俺とビクトール様を見比べ、以前にもましてベタベタと絡んでくるようになった。
そしてこいつも隙あらばキスをしてきて押し倒そうとする……
これって貴族の習性ですか?
さすがに違う事は判るけどそう思わずにはいられなくてバスク様にしっかりと約束されて別れた後魔導院の事務所に戻ればすぐにジェルが飛びついて来て
「この匂い!
あのクソ公爵がまた俺の婚約者にちょっかいを出して来たな!」
「不敬は止めろ。そして俺には誰も婚約者なぞ居ない」
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