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公爵様、貴方ちゃんとまともに会話できるじゃないですか
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緊張からか心音が響いているのではと言う錯覚に落ちてのどがカラカラになっていれば公爵様は食器棚から取り出したコップを二つ並べ、水差しから水を注ぐ。
それを俺ともう一つ正面に置いて
「座っても構わないだろうか?」
「ど、どうじょっ!っふぐっ!」
カッコ悪い事に声が裏がえった上に舌を噛んだ……
恥ずかしくて思わず俯いてしまうも響くのは公爵様の楽しそうな優しげな笑声のみ。
庶民何て貴族様を前にすればこの程度の人間なのです。
お願いですから貴方が好きになった人はきっと俺によく似た人でしょうから正しい好きな人を探しに行ってくださいと緊張の中で固まったように座っていれば
「先日の件でビクトールにものすごく怒られてしまった」
「はい」
何だか微笑ましい光景で思わず笑みが浮かんでしまう。
「挙句に父と母、そして国王にも怒られてしまった」
「はい……はい?」
公爵様のお父様とお母様までならわかるも国王様なんて聞いてないですよ……
「城の一番人通りの多い場所でフラン、君にプロポーズすれば誰もが私達の事を知っているだろう。
知れ渡る様にしたのは私の判断だがまさか陛下の耳に入るとは、計画のう……」
「申し訳ありません!
あのような場であのような言葉を!」
公爵様に名前を知らないと言った挙句に一世一代のプロポーズをお断りしたのだ。
極刑者だぞとプルプルと震えてしまうのは自分が小物だとよく理解しているからだ。
立ち上がってきっちり九十度に体を折り曲げて頭を下げて謝罪するも、目の前の公爵様は本日は余裕を持った態度で首を横に振るのだった。
「君が謝罪するいわれはない。
この貴族社会では平民が貴族に声をかけれないように貴族も、それも上位貴族が平民に声をかける事はない」
その為の護衛でその為の執事と言う存在があるのだ。
「いくら近衛に務め、魔導院に務めるフランとは貴賤の差ではなく同じ城に務める立場の間柄。
声をかけたりかけられたりなくては仕事に支障が出る。
因って職場では貴族の爵位など意味がない。
これは学園で居る間に学ぶだろ?」
「はい。学園に在籍していた期間は一年ですが……」
「平民があまりにも数が少なかった為に意味をなしていない。
これは我々貴族側も頭を抱えている問題だ。
意味をはき違えて爵位の階級を越えた物と言う程度しか理解されていないのだからな。
卒業してしまえば階級社会に戻る事から声をかけられても無視してしまえばいいのだが、学園時代のそれを友情とか勘違いする阿呆には近寄らない、立場の差をはっきりさせるぐらいしか対策はない。
こんな使われ方をする悪校則の撤廃を求めるも僅かに入学する平民の、たとえばフランのような優秀な魔道士が生まれなかっただろう」
うんうんと頷く公爵様に俺は申し訳なく頭を下げれば目の前にあったコップにゴンとおでこをぶつけてしまい、何やら説明に夢中になってしまっていた公爵様はようやく口を閉ざして俺に目を向ける。
きっとコップの口の跡がくっきりと浮かんでいるだろうおでこに視線が集中する中で
「大変申し訳ないのですが、魔導師の資格が取れませんでした。
なのでこの魔導院においてはただの事務員の一人なのです」
ぱちくりと、鋭い切れ長の瞳なのにどこかコミカルなまでに大きく見開いた瞳が何度も瞬きを繰り返す。
それは面白いくらいに俺の言葉を理解する、否、なんて言ったと雄弁に語る仕種に
「私事ですが、魔道士になる為には高価なアイテムを購入したりしなくてはいけません。
同様に教科書も専門で高度な内容の、とても高価な教科書となります。
貴族の皆様には容易く購入できる物ですが、農家に雇われてるだけの、老いた祖父に守られるだけの私には到底手の出せる物ではなく……
魔力の多さで学園に入学できたのですが有効に技術を学ぶ事が出来なかったのです」
恥じ入る様に俯いてしまうこの癖だけは今も治らなかった。
「フラン悪いが今の話し他の者にした事はないのか?」
「いいえ?
そもそも在学は一年だし居ても裕福な方ばかりで話しを聞いてくれる人もいません」
魔力は貴族になればなるほど、そして古い家柄であればあるほど多くなる傾向があるのは既に常識。
故にその血を守る為に上位貴族は上位貴族同士で結婚する傾向がある。
ひょんなところから、平民からこれだけの強い魔力を持つ者が生まれると言うのはどこぞの家の御落胤と考えるのが普通なのだろうが、フランは祖父からそう言った話を一切聞かされた事はなかった。
学園を卒業した今では故意に隠されていたのでは?と言われた事もあるが祖父が亡くなった今となっては手掛かり何て何もない。
「ああ、でも学園生活は悪くはなかったですよ。
寮に払うお金がなかったので通気窓のある地下室を一室いただけた挙句に寮の食事の手伝いをすれば賄を貰えました」
「ん?」
「制服も授業で知り合った先輩達からお古も貰えたし」
「んん??」
「耐久限界を迎えてるかもしれないと言って貴重な魔法アイテムも無償で譲ってもらった事もあります」
「んんん???」
「親切にしていただいた先輩達のおかげで何とかテストを乗り切れて無事一年を過ごす事が出来ました」
「んんんん????」
「いつも貰ってばかりで申し訳ないので俺でも判る宿題とか、めんどくさいアイテム製作とかでお礼はさせていただきましたが……」
「おいビッキーちょっと来い!!!」
何故か扉の向こう側にいるビクトール様に向かって声を上げていた。
と言うかビクトール様の事ビッキーなんて言うんだ。
ヒッキーじゃなくってほっとしたというか何と言うか……
俺に呼ばれるならわかるがと不思議そうな顔をしたビクトール様がこちらに来るより先に公爵様がビクトール様に詰め寄り部屋の外で何やら話を始めていた。
声は全く聞こえないがビクトール様は驚きの顔で俺を見て公爵様と話を重ねていた。
今の内にのどを潤しておこうとコップの水を飲んだ後についでに水差しからコップに水を補充しておいた。
それを俺ともう一つ正面に置いて
「座っても構わないだろうか?」
「ど、どうじょっ!っふぐっ!」
カッコ悪い事に声が裏がえった上に舌を噛んだ……
恥ずかしくて思わず俯いてしまうも響くのは公爵様の楽しそうな優しげな笑声のみ。
庶民何て貴族様を前にすればこの程度の人間なのです。
お願いですから貴方が好きになった人はきっと俺によく似た人でしょうから正しい好きな人を探しに行ってくださいと緊張の中で固まったように座っていれば
「先日の件でビクトールにものすごく怒られてしまった」
「はい」
何だか微笑ましい光景で思わず笑みが浮かんでしまう。
「挙句に父と母、そして国王にも怒られてしまった」
「はい……はい?」
公爵様のお父様とお母様までならわかるも国王様なんて聞いてないですよ……
「城の一番人通りの多い場所でフラン、君にプロポーズすれば誰もが私達の事を知っているだろう。
知れ渡る様にしたのは私の判断だがまさか陛下の耳に入るとは、計画のう……」
「申し訳ありません!
あのような場であのような言葉を!」
公爵様に名前を知らないと言った挙句に一世一代のプロポーズをお断りしたのだ。
極刑者だぞとプルプルと震えてしまうのは自分が小物だとよく理解しているからだ。
立ち上がってきっちり九十度に体を折り曲げて頭を下げて謝罪するも、目の前の公爵様は本日は余裕を持った態度で首を横に振るのだった。
「君が謝罪するいわれはない。
この貴族社会では平民が貴族に声をかけれないように貴族も、それも上位貴族が平民に声をかける事はない」
その為の護衛でその為の執事と言う存在があるのだ。
「いくら近衛に務め、魔導院に務めるフランとは貴賤の差ではなく同じ城に務める立場の間柄。
声をかけたりかけられたりなくては仕事に支障が出る。
因って職場では貴族の爵位など意味がない。
これは学園で居る間に学ぶだろ?」
「はい。学園に在籍していた期間は一年ですが……」
「平民があまりにも数が少なかった為に意味をなしていない。
これは我々貴族側も頭を抱えている問題だ。
意味をはき違えて爵位の階級を越えた物と言う程度しか理解されていないのだからな。
卒業してしまえば階級社会に戻る事から声をかけられても無視してしまえばいいのだが、学園時代のそれを友情とか勘違いする阿呆には近寄らない、立場の差をはっきりさせるぐらいしか対策はない。
こんな使われ方をする悪校則の撤廃を求めるも僅かに入学する平民の、たとえばフランのような優秀な魔道士が生まれなかっただろう」
うんうんと頷く公爵様に俺は申し訳なく頭を下げれば目の前にあったコップにゴンとおでこをぶつけてしまい、何やら説明に夢中になってしまっていた公爵様はようやく口を閉ざして俺に目を向ける。
きっとコップの口の跡がくっきりと浮かんでいるだろうおでこに視線が集中する中で
「大変申し訳ないのですが、魔導師の資格が取れませんでした。
なのでこの魔導院においてはただの事務員の一人なのです」
ぱちくりと、鋭い切れ長の瞳なのにどこかコミカルなまでに大きく見開いた瞳が何度も瞬きを繰り返す。
それは面白いくらいに俺の言葉を理解する、否、なんて言ったと雄弁に語る仕種に
「私事ですが、魔道士になる為には高価なアイテムを購入したりしなくてはいけません。
同様に教科書も専門で高度な内容の、とても高価な教科書となります。
貴族の皆様には容易く購入できる物ですが、農家に雇われてるだけの、老いた祖父に守られるだけの私には到底手の出せる物ではなく……
魔力の多さで学園に入学できたのですが有効に技術を学ぶ事が出来なかったのです」
恥じ入る様に俯いてしまうこの癖だけは今も治らなかった。
「フラン悪いが今の話し他の者にした事はないのか?」
「いいえ?
そもそも在学は一年だし居ても裕福な方ばかりで話しを聞いてくれる人もいません」
魔力は貴族になればなるほど、そして古い家柄であればあるほど多くなる傾向があるのは既に常識。
故にその血を守る為に上位貴族は上位貴族同士で結婚する傾向がある。
ひょんなところから、平民からこれだけの強い魔力を持つ者が生まれると言うのはどこぞの家の御落胤と考えるのが普通なのだろうが、フランは祖父からそう言った話を一切聞かされた事はなかった。
学園を卒業した今では故意に隠されていたのでは?と言われた事もあるが祖父が亡くなった今となっては手掛かり何て何もない。
「ああ、でも学園生活は悪くはなかったですよ。
寮に払うお金がなかったので通気窓のある地下室を一室いただけた挙句に寮の食事の手伝いをすれば賄を貰えました」
「ん?」
「制服も授業で知り合った先輩達からお古も貰えたし」
「んん??」
「耐久限界を迎えてるかもしれないと言って貴重な魔法アイテムも無償で譲ってもらった事もあります」
「んんん???」
「親切にしていただいた先輩達のおかげで何とかテストを乗り切れて無事一年を過ごす事が出来ました」
「んんんん????」
「いつも貰ってばかりで申し訳ないので俺でも判る宿題とか、めんどくさいアイテム製作とかでお礼はさせていただきましたが……」
「おいビッキーちょっと来い!!!」
何故か扉の向こう側にいるビクトール様に向かって声を上げていた。
と言うかビクトール様の事ビッキーなんて言うんだ。
ヒッキーじゃなくってほっとしたというか何と言うか……
俺に呼ばれるならわかるがと不思議そうな顔をしたビクトール様がこちらに来るより先に公爵様がビクトール様に詰め寄り部屋の外で何やら話を始めていた。
声は全く聞こえないがビクトール様は驚きの顔で俺を見て公爵様と話を重ねていた。
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