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公爵様、再び……
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ビクトール様の胸で泣き疲れて寝てしまった18歳(笑)が目を覚ました時は既に夕日はだいぶ傾いていた。
「やっと起きたか」
夕方だというのに爽やかな笑顔で俺の目覚めに声をかけてくれたビクトール様はそのまま傍らに置かれた小さな食器棚からコップを取出し水を入れて俺に差し出してくれた。
ありがとうございますと感謝を述べて飲みだせばよほど喉が渇いていたのか一気に飲んでしまい、ビクトール様を笑わせる結果となってしまった。
やっと一息ついた所で
「随分魘されてたぞ。ちゃんと眠れてるか?」
さらに水のお替りを俺に出してくれてありがたく頂戴するも
「寝れると思いますか?」
「まぁ、突然の事がありすぎたから寝れるわけはないな」
苦笑交じりに親友が悪かったなと謝る優しいビクトール様、でも部下のフォローはなしに俺はついに昨日の事を告白するのだった。
「昨日ですが、せっかくお休みをいただいたのですが常連のパン屋の息子、まぁ、友人ですね。
朝店の前を通らなかったからと心配して家に様子を見に来てくれたのです」
「へぇ、親切なお友達だな?」
「パン屋のおかみさんが気を使ってくれたのですが、一昨日の事を理由にお休みをいただいたと伝えたところ豹変して……」
「まさか襲われたとか……?」
「運よくギルドの人が配達に来たので肉体的には無事でしたが、やっぱりプロポーズを一方的にして行って……」
「モテモテだな?」
「男にもてたいとは一度も思った事ありません」
「まぁ、普通はそうだな。
だがこれも人生経験だぞ?」
「こんな経験したくはありません!」
この三日間で何度貞操の危機を覚えたか……
思い出せば涙も出てくるこの出来事の連続にビクトール様は隣に座ってよしよしと頭を撫でて慰めてくれる始末。
肩もポンポンと叩いてあやしながら
「まぁ、フランにはまだ刺激が大きすぎたんだな。
相手は平民には拒否不可の公爵と心許せる気の合った友人、そして可愛がってた後輩。
はたから見れば人間不信になっても仕方がない取り合わせだなぁ」
肩に手を回しながらもうんうんと唸るビクトール様だけど、あれだけの目にあったのにビクトール様からはそう言った変な気配は全く感じられないので逆に胸元に飛び込んで甘えてしまう。
「俺もう職場の人間も信じらんないし家の帰り道も油断できません!!!」
「まぁ、一応俺は信用してくれ。
でないと魔導院の院長としてこの問題で立場が危うくなるからな」
まだ実験したい魔法があるから頑張ってくれといい笑顔で頭をなでなでと撫でられてしまう。
あー、院長の手っておっきくて気持ちいいなぁ……
性急しすぎる男共とは違いこんな風に包んでくれるような優しさを与えてくれるビクトール様のような包容力ある男になりたいと思うのが俺の目標だ。
じゃないと男に包まれるだけの男になってしまう。いや、包まれるまでならまだましだろうか……
ダメダメと何故か裸の三人に抱かれるという様子を頭に浮かべてしまい、そんな空想を振り払うように頭を振れば驚いた様子のビクトール様は面白そうに笑っていた。
「まぁ、お前をこの魔導院で採用してからお前の生活ぶりに付いては見守ってきたが。
お前も一人の男だ。結婚するもされるもそろそろ本気で考えなくてはいけない年頃。
問題児でもあるがお前の親友に付いては情報不足だが、二人ともとても有能な人物だけは保障する。
問題物件ではあるがな……
断るのも受けるのもお前の自由だ。少し真剣に考えて見るのも悪くないぞ?」
「いえ、そもそも公爵様の事何も知らないし公爵と平民何て問題しかないじゃないですか。
おまけにジェルだって侯爵家の人間です。
どちらを選んでもありえません」
「だとするとお前の友人が一番有力か……」
「いえいえ、男五人兄弟の末っ子で店は長男が継いでいるんです。子供達も良くお手伝いしていてかわいいんですよ。
店を出店する為の修行中ですがはっきり言ってあいつパンを作る才能がないんです」
「……」
既に成人男性が息子夫婦に譲った店にいつまでもいる理由……
「他のご兄弟は?」
「結婚したり、仕事先にと家を出たりと既に家にはいません」
つまり家の手伝いと言う
「貴族以上に問題物件だな」
「悪い奴じゃないって言うそれだけが取り柄の友人です」
「それしかないって言うのが大問題だな。
こいつとは間違いが起きても結婚したらいけないぞ」
「ええ、それぐらいは俺も判ってます」
だから友人なのですと言えば知人程度にしなさいと怒られてしまった。
「とは言えだ。俺にも友情と言う物がある」
誰との?なんて一瞬考えていればノックの鳴ってない扉に向かって入れと言う。
ゆっくりと開かれて行った扉の向こう側にはそれは見事に鍛え上げられた肉体を持つ近衛の隊長様がそこにいた。
でも顔は怒られた犬のごとくしょぼんとしている。
何だかかわいいと思うも同情するいわれはない。
「俺は隣の部屋に居るしこいつにはすでにお前に悪戯さえできないようにアイテムも持たせている」
首にはしっかりと罪人を移動させる時に付けておく首輪が装着されていた。
「ビクトール様、公爵様にこれはいくらなんでも……」
「俺が出した条件に乗ったのはこいつだ。
こいつなりの誠意としてあの日の弁明を聞いてやってくれ」
落ち着く様に肩を数回さすってくれた手がこれほど心強いと思った事はない手に縋りつこうとするもするりとすり抜けて部屋を出て行ってしまった後姿に手を伸ばしてしまうも無情にも扉までご丁寧に閉ざされてしまった。
お願いです、公爵様と二人きりにしないでください。
心の悲鳴はビクトール様に一切届かなくこの数日で涙を流す事が得意になりだした涙腺は盛大にな水量をほうしゅつしてくれるのだった。
「やっと起きたか」
夕方だというのに爽やかな笑顔で俺の目覚めに声をかけてくれたビクトール様はそのまま傍らに置かれた小さな食器棚からコップを取出し水を入れて俺に差し出してくれた。
ありがとうございますと感謝を述べて飲みだせばよほど喉が渇いていたのか一気に飲んでしまい、ビクトール様を笑わせる結果となってしまった。
やっと一息ついた所で
「随分魘されてたぞ。ちゃんと眠れてるか?」
さらに水のお替りを俺に出してくれてありがたく頂戴するも
「寝れると思いますか?」
「まぁ、突然の事がありすぎたから寝れるわけはないな」
苦笑交じりに親友が悪かったなと謝る優しいビクトール様、でも部下のフォローはなしに俺はついに昨日の事を告白するのだった。
「昨日ですが、せっかくお休みをいただいたのですが常連のパン屋の息子、まぁ、友人ですね。
朝店の前を通らなかったからと心配して家に様子を見に来てくれたのです」
「へぇ、親切なお友達だな?」
「パン屋のおかみさんが気を使ってくれたのですが、一昨日の事を理由にお休みをいただいたと伝えたところ豹変して……」
「まさか襲われたとか……?」
「運よくギルドの人が配達に来たので肉体的には無事でしたが、やっぱりプロポーズを一方的にして行って……」
「モテモテだな?」
「男にもてたいとは一度も思った事ありません」
「まぁ、普通はそうだな。
だがこれも人生経験だぞ?」
「こんな経験したくはありません!」
この三日間で何度貞操の危機を覚えたか……
思い出せば涙も出てくるこの出来事の連続にビクトール様は隣に座ってよしよしと頭を撫でて慰めてくれる始末。
肩もポンポンと叩いてあやしながら
「まぁ、フランにはまだ刺激が大きすぎたんだな。
相手は平民には拒否不可の公爵と心許せる気の合った友人、そして可愛がってた後輩。
はたから見れば人間不信になっても仕方がない取り合わせだなぁ」
肩に手を回しながらもうんうんと唸るビクトール様だけど、あれだけの目にあったのにビクトール様からはそう言った変な気配は全く感じられないので逆に胸元に飛び込んで甘えてしまう。
「俺もう職場の人間も信じらんないし家の帰り道も油断できません!!!」
「まぁ、一応俺は信用してくれ。
でないと魔導院の院長としてこの問題で立場が危うくなるからな」
まだ実験したい魔法があるから頑張ってくれといい笑顔で頭をなでなでと撫でられてしまう。
あー、院長の手っておっきくて気持ちいいなぁ……
性急しすぎる男共とは違いこんな風に包んでくれるような優しさを与えてくれるビクトール様のような包容力ある男になりたいと思うのが俺の目標だ。
じゃないと男に包まれるだけの男になってしまう。いや、包まれるまでならまだましだろうか……
ダメダメと何故か裸の三人に抱かれるという様子を頭に浮かべてしまい、そんな空想を振り払うように頭を振れば驚いた様子のビクトール様は面白そうに笑っていた。
「まぁ、お前をこの魔導院で採用してからお前の生活ぶりに付いては見守ってきたが。
お前も一人の男だ。結婚するもされるもそろそろ本気で考えなくてはいけない年頃。
問題児でもあるがお前の親友に付いては情報不足だが、二人ともとても有能な人物だけは保障する。
問題物件ではあるがな……
断るのも受けるのもお前の自由だ。少し真剣に考えて見るのも悪くないぞ?」
「いえ、そもそも公爵様の事何も知らないし公爵と平民何て問題しかないじゃないですか。
おまけにジェルだって侯爵家の人間です。
どちらを選んでもありえません」
「だとするとお前の友人が一番有力か……」
「いえいえ、男五人兄弟の末っ子で店は長男が継いでいるんです。子供達も良くお手伝いしていてかわいいんですよ。
店を出店する為の修行中ですがはっきり言ってあいつパンを作る才能がないんです」
「……」
既に成人男性が息子夫婦に譲った店にいつまでもいる理由……
「他のご兄弟は?」
「結婚したり、仕事先にと家を出たりと既に家にはいません」
つまり家の手伝いと言う
「貴族以上に問題物件だな」
「悪い奴じゃないって言うそれだけが取り柄の友人です」
「それしかないって言うのが大問題だな。
こいつとは間違いが起きても結婚したらいけないぞ」
「ええ、それぐらいは俺も判ってます」
だから友人なのですと言えば知人程度にしなさいと怒られてしまった。
「とは言えだ。俺にも友情と言う物がある」
誰との?なんて一瞬考えていればノックの鳴ってない扉に向かって入れと言う。
ゆっくりと開かれて行った扉の向こう側にはそれは見事に鍛え上げられた肉体を持つ近衛の隊長様がそこにいた。
でも顔は怒られた犬のごとくしょぼんとしている。
何だかかわいいと思うも同情するいわれはない。
「俺は隣の部屋に居るしこいつにはすでにお前に悪戯さえできないようにアイテムも持たせている」
首にはしっかりと罪人を移動させる時に付けておく首輪が装着されていた。
「ビクトール様、公爵様にこれはいくらなんでも……」
「俺が出した条件に乗ったのはこいつだ。
こいつなりの誠意としてあの日の弁明を聞いてやってくれ」
落ち着く様に肩を数回さすってくれた手がこれほど心強いと思った事はない手に縋りつこうとするもするりとすり抜けて部屋を出て行ってしまった後姿に手を伸ばしてしまうも無情にも扉までご丁寧に閉ざされてしまった。
お願いです、公爵様と二人きりにしないでください。
心の悲鳴はビクトール様に一切届かなくこの数日で涙を流す事が得意になりだした涙腺は盛大にな水量をほうしゅつしてくれるのだった。
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