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公爵様、人の話を聞いてください!
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「私はついに見つけた。私の真実の愛を捧げる方を」
目の前にバラの花束を抱えた男が片膝をついてバラを差し出してきた。
「どうぞ我妻としてこの愛を」
ここはモリエンテス国の王城の一角。
バラの花束を抱えている光景と言うこと自体ありえない景色だ。
侍女達が花を飾る為と言うのなら納得できるが、花束を抱えているのは近衛の隊長服を纏う方と類似する隊服を纏う方々が背後にずらりと並んでいる。
その先頭に立ち、黄金の髪と翡翠の瞳を持つ白皙の顔に立てば見上げるような長身の一際豪奢な作りの隊服の男は何故か俺をうっとりと頬を染めて見上げ、背後の方々はぽかーんと口を半開きに目の前に立つ俺を意識を半分失いながら見守っていた。
司書室に資料を取りに行こうと同僚のアイーダ・ヘラルデはあまりお目にかかる事のない近衛騎士の方々に頬を染めながらも俺、フラン・フライレの制服の裾を引っ張って通行の邪魔にならないようにと他の方々も同様に壁際に下がって通り過ぎるのを待っていた。
なのにだ
何故か近衛の方々はまっすぐ俺達の方へと向かってきておもむろに膝をつき、同僚のアイーダは何でと顔を真っ赤にしつつも差し出されたバラが俺へと向けられるのを見て目が一瞬に死んだ瞬間を見た俺はさっと視線を逸らせるのがやっとだった。
それから人生18年目にして初めて告白をされるという体験をするのだが……
押し付けられるように差し出されたバラを反射的に受け止めてしまった俺の手を近衛騎士の方は握りしめて
「いきなりの結婚では心の準備があるだろう。
次の社交シーズンまでを婚約期間とし、婚約者として過ごそう。
今しか出来ない事も色々とある事だろうし、私達の結婚まで十分な準備もしたいし……」
言いながら何を想像してか頬を赤らめながら咳払いをする想像なんて知りたくもない。
「とりあえずフランと呼んでもよいだろうか?」
うっとりと俺を見上げる視線に俺は意識を手放しながら
「あの、どちら様で?」
そう言うのがやっとだった。
「フランバカでしょ!
近衛隊隊長バスクアル・フォン・ベルトラン公爵閣下を知らないなんて!
フランすぐに謝って!」
死んだ瞳だったアイーダが途端に今度は泣き出すという情緒不安定な様子に
「アイーダ、君大丈夫?」
「大丈夫じゃないでしょ!」
心配するも頭に拳骨を落されてしまうのは解せない。
涙ながらに説教されるも俺の手は両手で塞がって防御も出来ない状態。
しかもこの見事なバラを痛める事なんて出来なくて殴られるままになっているも不意にアイーダの攻撃が止まった。
やっと気が晴れたのかと思うもそっと視線を上げれば厳しい顔の近衛隊の人がアイーダの振り下ろす手を掴んでいた。
「我妻となる婚約者への暴力は感心しないな」
返事もしてないのに未来の奥さん、そして婚約者決定していて思わずバラの人の背後にいる人達に視線を送ってしまう。
この人なんなんなの?!
必死で口をパクパクして正気なのかと問うも背後の人も半分意識がないようで俺のヘルプに気づいてくれないようだった。
アイーダはすぐに「申し訳ありません」と泣き出しそうな声で謝罪をするアイーダの手をバラの花束を床に捨てた手で引っ張って俺の背後に移動させる。
意外だと言うようにムッとする顔を俺は睨み上げて
「折角ですが、このような立派なバラを貰う謂れはありません」
床に捨て置いたバラを拾い上げて形を整えてバラを突き返せば反射的にバラを受け止めた手に俺の手を引っ込める。
「そして顔も名前も知らない見ず知らずの方と結婚する意志も婚約する意味もありません」
きちんとお断りもする。
「では私達は仕事の途中なので失礼させていただきます」
そのままアイーダの手を引いて逃げるようにしてその場を後にするのだった。
目の前にバラの花束を抱えた男が片膝をついてバラを差し出してきた。
「どうぞ我妻としてこの愛を」
ここはモリエンテス国の王城の一角。
バラの花束を抱えている光景と言うこと自体ありえない景色だ。
侍女達が花を飾る為と言うのなら納得できるが、花束を抱えているのは近衛の隊長服を纏う方と類似する隊服を纏う方々が背後にずらりと並んでいる。
その先頭に立ち、黄金の髪と翡翠の瞳を持つ白皙の顔に立てば見上げるような長身の一際豪奢な作りの隊服の男は何故か俺をうっとりと頬を染めて見上げ、背後の方々はぽかーんと口を半開きに目の前に立つ俺を意識を半分失いながら見守っていた。
司書室に資料を取りに行こうと同僚のアイーダ・ヘラルデはあまりお目にかかる事のない近衛騎士の方々に頬を染めながらも俺、フラン・フライレの制服の裾を引っ張って通行の邪魔にならないようにと他の方々も同様に壁際に下がって通り過ぎるのを待っていた。
なのにだ
何故か近衛の方々はまっすぐ俺達の方へと向かってきておもむろに膝をつき、同僚のアイーダは何でと顔を真っ赤にしつつも差し出されたバラが俺へと向けられるのを見て目が一瞬に死んだ瞬間を見た俺はさっと視線を逸らせるのがやっとだった。
それから人生18年目にして初めて告白をされるという体験をするのだが……
押し付けられるように差し出されたバラを反射的に受け止めてしまった俺の手を近衛騎士の方は握りしめて
「いきなりの結婚では心の準備があるだろう。
次の社交シーズンまでを婚約期間とし、婚約者として過ごそう。
今しか出来ない事も色々とある事だろうし、私達の結婚まで十分な準備もしたいし……」
言いながら何を想像してか頬を赤らめながら咳払いをする想像なんて知りたくもない。
「とりあえずフランと呼んでもよいだろうか?」
うっとりと俺を見上げる視線に俺は意識を手放しながら
「あの、どちら様で?」
そう言うのがやっとだった。
「フランバカでしょ!
近衛隊隊長バスクアル・フォン・ベルトラン公爵閣下を知らないなんて!
フランすぐに謝って!」
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「アイーダ、君大丈夫?」
「大丈夫じゃないでしょ!」
心配するも頭に拳骨を落されてしまうのは解せない。
涙ながらに説教されるも俺の手は両手で塞がって防御も出来ない状態。
しかもこの見事なバラを痛める事なんて出来なくて殴られるままになっているも不意にアイーダの攻撃が止まった。
やっと気が晴れたのかと思うもそっと視線を上げれば厳しい顔の近衛隊の人がアイーダの振り下ろす手を掴んでいた。
「我妻となる婚約者への暴力は感心しないな」
返事もしてないのに未来の奥さん、そして婚約者決定していて思わずバラの人の背後にいる人達に視線を送ってしまう。
この人なんなんなの?!
必死で口をパクパクして正気なのかと問うも背後の人も半分意識がないようで俺のヘルプに気づいてくれないようだった。
アイーダはすぐに「申し訳ありません」と泣き出しそうな声で謝罪をするアイーダの手をバラの花束を床に捨てた手で引っ張って俺の背後に移動させる。
意外だと言うようにムッとする顔を俺は睨み上げて
「折角ですが、このような立派なバラを貰う謂れはありません」
床に捨て置いたバラを拾い上げて形を整えてバラを突き返せば反射的にバラを受け止めた手に俺の手を引っ込める。
「そして顔も名前も知らない見ず知らずの方と結婚する意志も婚約する意味もありません」
きちんとお断りもする。
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そのままアイーダの手を引いて逃げるようにしてその場を後にするのだった。
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