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気合を入れてまずは一歩 3

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「で、式は本当にあれでいいのかよ?」
 うちの未来的な話は置いて肝心のまだ聞いてない報告を聞く。
 時期は六月の始め、場所はここ。
 とりあえず今回参加してくれた人達は全員招待してあるし
「うん。大矢さんも張り切ってくれてね。一度家を見に来てくれた時竈があるのを見て台所が広いのも良いけどここも使わせてくれってなってさ。やっぱり汁物とかはここで作りたいって言ってたから」
「確かにねー。台所だけじゃ賄きれないしねー」
「あと飯田さんとか、師匠の西野さん夫婦にも送っておいたんだ」
「これたらいいな。長沢さんとも会えたら嬉しいだろうし」
 未だに月一で会いに行っている宮下もすごいけど、病気をする前ほどではないが日常生活に支障がくらないくらい回復をし始めるリハビリの努力には本当に頭が下がる。さらに彫刻をまた始めたみたいで近く三日月の蔵で個展もやれるほど作品を作り上げている。目標があるって事は良い事だと頷いていれば
「あとはお天気が心配だよね」
「まぁ、そればかりは何ともできないからな」
 そうか。みんな承諾したのか。
 適当に言ってみた提案だけど本気で昔話みたいな結婚式をやるのかと驚いているが
「逆に俺の方はみんな来てくれるのって不安なんだけど」
 そんな心配。
「まあな。俺もちゃんと来てもらえるのか心配だしな」
 何て頷くも宮下の言うみんなと俺の言うみんなは全く違う人物たち。
 もちろん結婚式の招待状何て送ってない。
 だけど無問題。
 彼らは客人ではないのだから……
 これは完全なサプライズ。そして悪巧みし…… ではなく、お節介をしてそうな吉野信者の皆様への俺なりの躾だと思ってニヤニヤしていれば肝心の事を思い出した。
 「どっちにしてもこうやって結婚式までには家がきちんとできて、いつでも住める状態だし。
 ああ、そういや香奈の花嫁衣装ってどうなった?」

「うん。今長沢さんの奥さん達と一緒に一生懸命作ってるよ」

 ほわほわとした幸せな言葉に俺は一瞬耳を疑う。
「すまん。もう一度言ってくれ」
「今花嫁衣装って言うの?長沢さんの奥さんに教えてもらえながら一生懸命縫ってるよ」 
「縫ってるって……」
「反物買って、針と糸でチクチクって……」
「だからって自分で縫うとか?!」
「俺がこの家のリフォームを頑張ったから香奈ちゃんも何か自分で作るって言いだして、だったら花嫁衣装位作ろうって事になったの。ウェディングドレスよりきっと簡単だろうからって」
「いや、確かに着物って直線だし、あれ?縫うだけとか?」
 着物の縫い方なんて知るかというように言えば
「一応用意してくれた着物屋さんも一緒に裁断とかしてくれてるから安心していいよ」
「いや、安心とか意味わからんのだけど……」
「着付けとかも手伝ってくれるって言うから頭のセットとかも纏めてお願いしたって」
「香奈がしっかりしてるって言うのは判った。
 まさかの総て手配済みとか笑えて仕方ないが
「ああ、だから桐の箪笥を仕立て直したんだ」
「うん。長沢さんがそうやって手作りまでしたのだから大切にしろって」
「そうか。香奈も良かったな。長沢さんが箪笥を仕立て直した物を用意してくれて」
「ほんとは新しい物が良かったんだろうけど……」
「そう言う物は嫁の家から用意するんだっけ?気にしないならそれでいいだけだし、でも長沢さんが折角頼ってくれたんだから最後まで世話をしたいって言ってくれたんだ」
 孤立しがちな圭斗の家族があまり交流がないのに宮下に連れられて挨拶をするようになって、一生に一度の一番の見せ所の花嫁衣装作りに頼ってくれた事が嬉しかったのだろう。
 兄貴肌の長沢さんならば奥さんもかなり面倒見も良い人。
 最初こそきっと篠田の子供と言う事で警戒はしたかもしれないけど、圭斗と陸斗を知っているからそこまで嫌悪感はなかったのだろう。
 長沢さんに連れられて着物屋さんで着物を見繕う様子とか何だか想像できて
「もう長沢さん達がお爺ちゃんとお婆ちゃんだな」
「さすがにそこまでは図々しくなれないよ」
「まあな。
 だけど心の中で思ってるぐらいは罰当たりじゃないから、そう言う意味で尊敬して置け」
 いつだったか長沢さんは早くに旅だったジイちゃんの代わりに面倒を見ると言ってくれた時があった。それは直接俺に言う事はなかったが、別の口から伝えられた言葉の通り俺の事を心底心配してくれていた。
 その優しさは俺の近しい人達にまで広がってて
「俺達長沢さんに足を向けて寝れないな」
「何言ってるの。師匠に向かって足を向ける何て出来ないに決まってるだろ」
 至極当然と言うように言う宮下に正された俺も確かに今更だと笑って誤魔化した。







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