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ルーツを思う 4
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「すみません。叔父達の面倒を見てもらって」
温かなコーヒーは砂糖ミルク入りの物。
銭湯のコーヒー牛乳をこよなく愛する長沢さんにはインスタントのコーヒーは邪道かもしれないけど勧めればありがたく受け取ってくれたのでベンチシートに座って頂く事にした。
入口では内田さんと大矢さんがまるで邪魔が入らないようにガラ悪く塞ぐ感じで立ちながらリアルゴールドを飲んでいた。いや、ちょっと意外って言うか長沢さんにもそちらが良かったかなあと今度宮下に調査させておく。
ちなみに長沢さんはオロナミンC派だったらしい。
とりあえず俺は何をどう切り出せばいいのか判らないが
「今時完全犯罪は難しいですよ?」
「吉野の、そんなの酒を呑まして山奥に捨てて知らない顔をしておけばそれだけで済む。だが一郎や先代達に誓ってワシらは何もしちゃいねえ」
きりっとした顔で言うけど何その具体例……何てつっこめないチキンな自分を褒め称えたい。
「すみません。言ってみただけです。それに熊の爪痕まで残ってるんじゃほぼ事故決定です。だけどどうしてあんな所に行ったのです?」
松茸狩りなどもっと安全な場所があっただろうに何て思うも
「最初はこの季節の山の様子を話してたんだが鍋を食べてるうちに松茸が取れるようになったって話しになってそろそろ綾人に初物を食べさせてやろうって事になったんじゃ。ワシらはいつもの場所に狩りに行こうかって話しになったんだがあの三人がたくさん採れる所があるからそこに行こうと言いだしてな、ワシらは一郎や先代の言いつけを守って大体の場所は知ってても採りにはいかん。あいつが孫が楽しみにしてるから荒らすなよってどこか嬉しそうな顔で言うからな」
柔らかな笑みで俺を見るあたりオープンでジジバカなジイちゃんはきっと子供の頃喜んで食べていた俺の事を思い出してはけん制していたのだろう。ほら、意外と大人げないところあったからね。
「まぁ、正直に言えばあそこは香りも強く一番大きいのが採れるんだけど山の歩き方がめんどくさくって危ないからお世話も最低限にしてるぐらい危険な所なんだよね」
「ああ、一郎も同じ事言っていた。場所も教えてもらえなくってケチだななんて思ってたけど、あの場所は確かに危険だったな」
着地地点が大きな岩だから滑ったら最後骨ぐらい簡単に折れるような急角度の斜面もある。
「あいつらは昇って足を滑らし、兄弟を巻きこんで落下した。その時に岩に頭をぶつけて……」
そこから顔を覆うように手を当てて
「落下した時はまだ意識もあったんじゃ。
多少あいつらにお灸据えるつもりで松茸狩りで説教してやるつもりだったが、あいつらがあの場所を案内してな。きっと綾人への嫌がらせであそこを荒らしたかったのじゃろう。とは言えワシらも山の人間じゃ。ここは登っちゃいけない場所位理解している。だからさすがにここはダメだって言ったんだが
『綾人はここの松茸を独り占めしているんだ。俺らだって吉野の人間、採っちゃいけないわけがない』
何て意気揚々と登ろうとした所で急に三人の顔が真っ青になりだしてな、いきなり『わーっ!!!』なんて叫びだして走り出したんじゃ。まるで逃げるようにしてあっと言う間に崖を半分ほど登ってしまってな、何故かワシらを見てあっち行け!来るなって大騒ぎを始めての。まるで崖の底から何かが這いずり回ってくるかのように足元を蹴りだして……そこからは話の通り、三人で足を引っ張り合いながら崖から落ちて頭を打っての。そりゃあ物凄く恐ろしい物でも見るような顔をしていてワシらは何が何だかわからなくなったんじゃ。
ただあの時は頭を打って血を流してはいたが意識ははっきりしていての……」
パラリとかけられた布をめくって目を背きたくなる場所を思い出す。
「まさか熊が現れて身動き取れなくなった三人を……」
そこからはもう言葉にならなかった。
「ちーっと懲らしめるつもりはあったが害意はなかった。いや、今更白々しいかもしれんがこんな事になるとは思いもしなかったんじゃ」
多分長沢さんが言ってる事が長沢さん達が見た事の総てで真実なのだろう。
「三人揃って急に錯乱して崖を登りだした事なんて信じてもらえんじゃろうし、タイミングよく、あの三人だけにこの時期の熊がちょっかいを出したとはとても思えん。ましてやわしらの目の前ではらわたを食いちぎるなぞ……
吉野には話したが、とてもじゃないがこんな話誰も信じるわけがない」
そう言って冷え切ってしまったコーヒーを一口で飲んで近くのゴミ箱に捨てた。
俺も何だかそのよくわからない話に信じられない気持ちもあったが、それ以上に長沢さん達が嘘をつく方が信じられなく
「警察にいっても信じられないでしょうね。むしろ怪しまれる位なら熊のせいにしましょう」
言えば当然のように驚く長沢さんに
「そもそも俺をどうにかしようと言うつもりで来ている人に気を配る必要ないし、折角熊が全部の泥を飲み込んでくれたんだ。感謝して甘える事にしよう」
言えば何とも言えないような目を向けられてしまった。
いや、幾ら嫌いだからってここまで言うかという所だろうが
「長沢さんだったらジイちゃんから聞いた事があると思うんだけど……」
言って本当に口に出していいのかと思いながらも
「みんな深山、深山って言うけど本当は御山って言うんだって。
この山には人より怖い御山様がいる。
御山様は山での出来事を全部見て知ってらっしゃる。御山では悪い事をしてはいけないって」
聞いた事があるようで目を見開いている様子に俺は目を伏せて
「熊の件もそうだけどきっと度を過ぎた考えをちゃんと見透かしていたんだろうな。
だからこの件は叔父さん達の自業自得。
そして俺の為にって言う理由を付けて人を傷つけるような真似はやめてください」
度が過ぎると御山様を怒らせてしまいます、そんな言葉は使わないで俺は目礼だけで『少し電話してきます』とそう言ってその場を離れた。
温かなコーヒーは砂糖ミルク入りの物。
銭湯のコーヒー牛乳をこよなく愛する長沢さんにはインスタントのコーヒーは邪道かもしれないけど勧めればありがたく受け取ってくれたのでベンチシートに座って頂く事にした。
入口では内田さんと大矢さんがまるで邪魔が入らないようにガラ悪く塞ぐ感じで立ちながらリアルゴールドを飲んでいた。いや、ちょっと意外って言うか長沢さんにもそちらが良かったかなあと今度宮下に調査させておく。
ちなみに長沢さんはオロナミンC派だったらしい。
とりあえず俺は何をどう切り出せばいいのか判らないが
「今時完全犯罪は難しいですよ?」
「吉野の、そんなの酒を呑まして山奥に捨てて知らない顔をしておけばそれだけで済む。だが一郎や先代達に誓ってワシらは何もしちゃいねえ」
きりっとした顔で言うけど何その具体例……何てつっこめないチキンな自分を褒め称えたい。
「すみません。言ってみただけです。それに熊の爪痕まで残ってるんじゃほぼ事故決定です。だけどどうしてあんな所に行ったのです?」
松茸狩りなどもっと安全な場所があっただろうに何て思うも
「最初はこの季節の山の様子を話してたんだが鍋を食べてるうちに松茸が取れるようになったって話しになってそろそろ綾人に初物を食べさせてやろうって事になったんじゃ。ワシらはいつもの場所に狩りに行こうかって話しになったんだがあの三人がたくさん採れる所があるからそこに行こうと言いだしてな、ワシらは一郎や先代の言いつけを守って大体の場所は知ってても採りにはいかん。あいつが孫が楽しみにしてるから荒らすなよってどこか嬉しそうな顔で言うからな」
柔らかな笑みで俺を見るあたりオープンでジジバカなジイちゃんはきっと子供の頃喜んで食べていた俺の事を思い出してはけん制していたのだろう。ほら、意外と大人げないところあったからね。
「まぁ、正直に言えばあそこは香りも強く一番大きいのが採れるんだけど山の歩き方がめんどくさくって危ないからお世話も最低限にしてるぐらい危険な所なんだよね」
「ああ、一郎も同じ事言っていた。場所も教えてもらえなくってケチだななんて思ってたけど、あの場所は確かに危険だったな」
着地地点が大きな岩だから滑ったら最後骨ぐらい簡単に折れるような急角度の斜面もある。
「あいつらは昇って足を滑らし、兄弟を巻きこんで落下した。その時に岩に頭をぶつけて……」
そこから顔を覆うように手を当てて
「落下した時はまだ意識もあったんじゃ。
多少あいつらにお灸据えるつもりで松茸狩りで説教してやるつもりだったが、あいつらがあの場所を案内してな。きっと綾人への嫌がらせであそこを荒らしたかったのじゃろう。とは言えワシらも山の人間じゃ。ここは登っちゃいけない場所位理解している。だからさすがにここはダメだって言ったんだが
『綾人はここの松茸を独り占めしているんだ。俺らだって吉野の人間、採っちゃいけないわけがない』
何て意気揚々と登ろうとした所で急に三人の顔が真っ青になりだしてな、いきなり『わーっ!!!』なんて叫びだして走り出したんじゃ。まるで逃げるようにしてあっと言う間に崖を半分ほど登ってしまってな、何故かワシらを見てあっち行け!来るなって大騒ぎを始めての。まるで崖の底から何かが這いずり回ってくるかのように足元を蹴りだして……そこからは話の通り、三人で足を引っ張り合いながら崖から落ちて頭を打っての。そりゃあ物凄く恐ろしい物でも見るような顔をしていてワシらは何が何だかわからなくなったんじゃ。
ただあの時は頭を打って血を流してはいたが意識ははっきりしていての……」
パラリとかけられた布をめくって目を背きたくなる場所を思い出す。
「まさか熊が現れて身動き取れなくなった三人を……」
そこからはもう言葉にならなかった。
「ちーっと懲らしめるつもりはあったが害意はなかった。いや、今更白々しいかもしれんがこんな事になるとは思いもしなかったんじゃ」
多分長沢さんが言ってる事が長沢さん達が見た事の総てで真実なのだろう。
「三人揃って急に錯乱して崖を登りだした事なんて信じてもらえんじゃろうし、タイミングよく、あの三人だけにこの時期の熊がちょっかいを出したとはとても思えん。ましてやわしらの目の前ではらわたを食いちぎるなぞ……
吉野には話したが、とてもじゃないがこんな話誰も信じるわけがない」
そう言って冷え切ってしまったコーヒーを一口で飲んで近くのゴミ箱に捨てた。
俺も何だかそのよくわからない話に信じられない気持ちもあったが、それ以上に長沢さん達が嘘をつく方が信じられなく
「警察にいっても信じられないでしょうね。むしろ怪しまれる位なら熊のせいにしましょう」
言えば当然のように驚く長沢さんに
「そもそも俺をどうにかしようと言うつもりで来ている人に気を配る必要ないし、折角熊が全部の泥を飲み込んでくれたんだ。感謝して甘える事にしよう」
言えば何とも言えないような目を向けられてしまった。
いや、幾ら嫌いだからってここまで言うかという所だろうが
「長沢さんだったらジイちゃんから聞いた事があると思うんだけど……」
言って本当に口に出していいのかと思いながらも
「みんな深山、深山って言うけど本当は御山って言うんだって。
この山には人より怖い御山様がいる。
御山様は山での出来事を全部見て知ってらっしゃる。御山では悪い事をしてはいけないって」
聞いた事があるようで目を見開いている様子に俺は目を伏せて
「熊の件もそうだけどきっと度を過ぎた考えをちゃんと見透かしていたんだろうな。
だからこの件は叔父さん達の自業自得。
そして俺の為にって言う理由を付けて人を傷つけるような真似はやめてください」
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