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山にお帰り 12
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まあ、俺みたいな子供相手なら仕方がないよね、なんて三十代でも子供枠なのはこの店の格式を思えば当然かと思う。
「はい。青山さんと青山さんのお兄さんにもいつもわがままばかりお願いしていて一人前な顔をさせてもらってます」
言えば多分青山さんよりもお兄さんの名前の出現に少しだけ目を瞠る。
と言うのか知っているのか……
さすが飯田父。
和食の業界では顔が広いなあと感心しながら
「稔さんとお知り合いでしたか?」
「正しくは息子の薫さんの方ですが、今では家族ぐるみで行ったり来たりさせてもらってます」
まあまあと言う様子。
言っても行ったり来たりは料理の素材と出来上がった料理。しかも宮下宅配便と言う裏技を使っての物。前に京都旅行に行って以来からやむを得なしに一度お邪魔させていただいた。飛行機が強風で目的の空港に着けなかったので代わりに着陸したのが関西方面の空港。ホテルもキャンセルとなったけどどこもかしこもすでに満員。なのでお願いしたら快く泊めて頂き、青山さんの所で配る予定にしていたお土産を宿泊代替わりに置いて帰ると言う、青山さん少しだけ残念そうな声が今でも忘れられない。
「稔さん、結構気難しいでしょ?」
なんて言うも
「そこは料理に関する事なので当然でしょうし、うちに来た時は畑の世話をしてもらったりとお客様なのにじっとしてられないようで申し訳ない位です」
鶏小屋も入りたい放題だし、飯田さんの調理場も使いたい放題。
竈も使いこなすし糸と針だけで生簀の魚を釣っては焼いて食べてらして……
飯田さんが進化するとこうなるのかとさすがに生簀で魚釣りはまだやってなかったので少しだけ飯田さんの進化系を見せてもらった気になった。
そんな事を話しているうちに一人の男の人がやってきて
「いらっしゃいませ、本日料理を担当させていただいてます料理長の溝口と申します」
飯田さんのお父さんと似たような年頃の男性だった。
「ご丁寧にありがとうございます。
今晩は突然お邪魔させていただいて申し訳ありません」
何て深々と俺も頭を下げれば
「いえ、今はちょうど空いてる時期なので飯田の紹介なら問題ありません」
にっこりと青山と呼ばずに飯田と呼ぶ当り恐ろしいと震えてしまう。
それから少し昔、一緒に働いていた頃の話をした後は定型文でどうぞごゆっくり。
お料理楽しみにしてます。
そんな挨拶。
女将と料理長も下がった所でやっと三人向き合って
「挨拶上手ですね」
とりあえずはそんな及第点。
俺は肩をすくめて
「沢村さんの教育のおかげです」
言えば所長が沢村さんを見るも本人は首を横に振った所で理解してくれた。
「沢村弁護士もこう言う所の常連でしたね」
「親父の俺が知らない過去が怖い」
「頑張れ二代目?」
上には上がいる、そう理解すれば気が楽になって箸を持つ前に
「では綾人君の卒業を祝って乾杯!」
「おめでとうございます!」
「ありがとうございます!」
これも名目の一つの席。
これなら個人的な知人とのお食事会と言う名目も立つ。
飯田さんのお父さんと同じ元職場の人のお店だけあってどこか似たお味に和食の良さを思い出して涙が出てきた。
多分泣いていたのだろう。
沢村さんも所長さんもぎょっとしていたけど
「和食うめぇ…… 煮物最高!」
そう言う事かという様にお酒はビールから日本酒に変えて一人幸せな顔で堪能する綾人を他所にきっとこう言う時じゃないと入る事のない店のお料理に舌包みを打つのだった。
そんな満たされた心とおなかで何度目かのジャグジーを堪能し、他にも飛行機のお爺ちゃんとご飯を食べたりといくつか用事を済ませた所で
「綾人さん、こんな所に居たのですか……」
仕事を終えて一眠りした所で一緒にお昼を食べてから山に帰ろうと言う約束で迎えに来た飯田さんは窓から見える景色に意識を飛ばしていた。
「前にクソ親父のせいで台無しにされたのでリベンジに来ました!」
世にいうスイートルームに三日程のお泊りに宿泊料金知りたくないなーなんて思ったけど
「青山の家に避難と言う手もあったし、高遠もうちに来ないか楽しみにしてましたよ?」
「それも考えたけどね。やっぱりもうばれてると思うからばれるならばれるで来にくい方を選んだだけだよ」
「ええ、そうですね。LIME見て部屋番探してお邪魔したらフロアの扉の数が圧倒的におかしいから目を疑いましたよ」
「うん。俺も目を疑った。
だけどここなら絶対快適だって思ったからね」
荷物は既にまとめてあり、後は忘れ物がないかチェックをするだけ。
冷蔵庫のソフトドリンクやミネラルウォーターはフリーなのでありがたく飯田さんにも贈呈。むしろこの部屋代で取られたらキレてもおかしくない。
「はい。青山さんと青山さんのお兄さんにもいつもわがままばかりお願いしていて一人前な顔をさせてもらってます」
言えば多分青山さんよりもお兄さんの名前の出現に少しだけ目を瞠る。
と言うのか知っているのか……
さすが飯田父。
和食の業界では顔が広いなあと感心しながら
「稔さんとお知り合いでしたか?」
「正しくは息子の薫さんの方ですが、今では家族ぐるみで行ったり来たりさせてもらってます」
まあまあと言う様子。
言っても行ったり来たりは料理の素材と出来上がった料理。しかも宮下宅配便と言う裏技を使っての物。前に京都旅行に行って以来からやむを得なしに一度お邪魔させていただいた。飛行機が強風で目的の空港に着けなかったので代わりに着陸したのが関西方面の空港。ホテルもキャンセルとなったけどどこもかしこもすでに満員。なのでお願いしたら快く泊めて頂き、青山さんの所で配る予定にしていたお土産を宿泊代替わりに置いて帰ると言う、青山さん少しだけ残念そうな声が今でも忘れられない。
「稔さん、結構気難しいでしょ?」
なんて言うも
「そこは料理に関する事なので当然でしょうし、うちに来た時は畑の世話をしてもらったりとお客様なのにじっとしてられないようで申し訳ない位です」
鶏小屋も入りたい放題だし、飯田さんの調理場も使いたい放題。
竈も使いこなすし糸と針だけで生簀の魚を釣っては焼いて食べてらして……
飯田さんが進化するとこうなるのかとさすがに生簀で魚釣りはまだやってなかったので少しだけ飯田さんの進化系を見せてもらった気になった。
そんな事を話しているうちに一人の男の人がやってきて
「いらっしゃいませ、本日料理を担当させていただいてます料理長の溝口と申します」
飯田さんのお父さんと似たような年頃の男性だった。
「ご丁寧にありがとうございます。
今晩は突然お邪魔させていただいて申し訳ありません」
何て深々と俺も頭を下げれば
「いえ、今はちょうど空いてる時期なので飯田の紹介なら問題ありません」
にっこりと青山と呼ばずに飯田と呼ぶ当り恐ろしいと震えてしまう。
それから少し昔、一緒に働いていた頃の話をした後は定型文でどうぞごゆっくり。
お料理楽しみにしてます。
そんな挨拶。
女将と料理長も下がった所でやっと三人向き合って
「挨拶上手ですね」
とりあえずはそんな及第点。
俺は肩をすくめて
「沢村さんの教育のおかげです」
言えば所長が沢村さんを見るも本人は首を横に振った所で理解してくれた。
「沢村弁護士もこう言う所の常連でしたね」
「親父の俺が知らない過去が怖い」
「頑張れ二代目?」
上には上がいる、そう理解すれば気が楽になって箸を持つ前に
「では綾人君の卒業を祝って乾杯!」
「おめでとうございます!」
「ありがとうございます!」
これも名目の一つの席。
これなら個人的な知人とのお食事会と言う名目も立つ。
飯田さんのお父さんと同じ元職場の人のお店だけあってどこか似たお味に和食の良さを思い出して涙が出てきた。
多分泣いていたのだろう。
沢村さんも所長さんもぎょっとしていたけど
「和食うめぇ…… 煮物最高!」
そう言う事かという様にお酒はビールから日本酒に変えて一人幸せな顔で堪能する綾人を他所にきっとこう言う時じゃないと入る事のない店のお料理に舌包みを打つのだった。
そんな満たされた心とおなかで何度目かのジャグジーを堪能し、他にも飛行機のお爺ちゃんとご飯を食べたりといくつか用事を済ませた所で
「綾人さん、こんな所に居たのですか……」
仕事を終えて一眠りした所で一緒にお昼を食べてから山に帰ろうと言う約束で迎えに来た飯田さんは窓から見える景色に意識を飛ばしていた。
「前にクソ親父のせいで台無しにされたのでリベンジに来ました!」
世にいうスイートルームに三日程のお泊りに宿泊料金知りたくないなーなんて思ったけど
「青山の家に避難と言う手もあったし、高遠もうちに来ないか楽しみにしてましたよ?」
「それも考えたけどね。やっぱりもうばれてると思うからばれるならばれるで来にくい方を選んだだけだよ」
「ええ、そうですね。LIME見て部屋番探してお邪魔したらフロアの扉の数が圧倒的におかしいから目を疑いましたよ」
「うん。俺も目を疑った。
だけどここなら絶対快適だって思ったからね」
荷物は既にまとめてあり、後は忘れ物がないかチェックをするだけ。
冷蔵庫のソフトドリンクやミネラルウォーターはフリーなのでありがたく飯田さんにも贈呈。むしろこの部屋代で取られたらキレてもおかしくない。
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