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ゼロとイチのパズル 2

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 エドワーズは俺の知り合いの中で一番できる男だ。
 多分俺と頭の構造が限りなく近いからだろう。話しをしていてもストレスなく会話が出来ていた。
 だけど今は何を言ってるのか理解したくないと言う様に頭を抱えて車に運ばれるままドナドナされている。
 確かにかつて俺はエドワーズの職場にいつか俺もそこで働くんだと言うよな夢を抱いていた時があった。
 オヤジの妨害と言う今となれば何であんなにも言う事を聞く素直だったのだろうと疑問はあったが、その言葉で諦めた夢は確かにあった。
 本来ならワクワクドキドキと胸を高鳴らせ、夢と希望と共に足を踏み込む場所だったはずなのにだ。

「全員注目!
 彼がアヤトだ!この十年俺達を守ってくれたプログラムの生みの親だ!」

 車を降りて俺専用の身分証明書みたいな社員証を胸に掲げて案内されたのはこの建屋の中枢と言う場所で、俺を見て快く受け入れようと拍手までくれる人半分、年齢より若く見られるせいか「あんな子供が?www」って鼻で笑う奴もいる。
 まあ、一つの洗礼だな。助けを求めてこの態度、これは俺もかしこまらなくていいと言う意味だろう。ならばやる事はただ一つ。

「あ、あのモニターひょっとしてISSの中の様子?テレビで見る映像と同じだwww」

 ガッツリ観光客をしていた。
「アヤト……」
 エドワーズのどこか疲れ切った声だが
「契約したはずだぞ。
 渡したらもう俺はかかわらないし、文句も言わないって。所長さんのサインまで入った奴保存してあるぞ」
「すまない。違約金払っても良いから何とかしてくれってミッションが降りてるんだ」
「まじかwww」
 げらげら笑う俺にこの場に居る皆様は既に受け入れたのが間違いだと言う様に腹立たしいと仕事に戻って行った人もいる。
 それでも俺は間違っても見学コースに入らない部屋に足を運んだ貴重体験を食い入る様に眺めて満喫している。
「アヤト、頼むから……」
 もう半分泣きそうなエドワーズが周囲から非難の眼差しを一身に受ける羽目になり少し可愛そうになりかけてきたので
「で、結局何がどうなったの。
 そこんところ話を聞かないと俺何もわからないんだけど」
 話しを振ってみる。決して一通り満喫したからとは思わないでほしい。
「車の中じゃ話せないって、散々言ったくせにまだ話ししないつもりかよ」
「いや、だからその部分は建屋のこの部屋意外じゃ話せない事になってるんだ」
「で、まだ言わないの?」
「お前…… 相変わらずマイペースだな」
「当然。可能な限り俺の心地よい空気の中に居るのが俺の努力なの」
 傲慢とも言える態度にエドワーズは溜息を零すも
「ハッキングした奴が地下コンピュータルームに閉じ込められている。
 理由は直接プログラミングを盗みに来たらしく、パスワードの多さに辟易しているうちにプログラムの一部を消したみたいで、気付かずにパスワードを突破した所でハッキングされた事に気付いてあの部屋にロックがかかってしまったらしいんだ」
「ふーん。だったらロック解除すればいいだけじゃん」
「その肝心の資料があの部屋にあるわけだ。勿論それも奴は知っている。
 何とか警備員が来る前にトンズラしようとしてたらしいが、既に壊れたプログラムがそのロック解除を拒んだわけだ」
「うわー。大体どのへんか判った」
 あの神経質な所かと大体の場所は判った。
「とりあえずこちらから接続できるPC貸して」
「こっちだ」
 案内されたのはガラスで囲まれたブースの部屋のような区域の中にある大きな机にPCだけの部屋だった。
「履歴は保存される。勿論使用者の顔も写真を取られる。
 安全にかかわる所だから使えれる人は限られている。
 室内に入るのにも渡したカードがないと入れない。
 使用中はセキュリティも尽し、アドバイザーとして俺も待機する事になった」
「おおー」
 何だかよくわからんがかなり大物になったような錯覚をしてしまう。
 説明を受けながら案内してもらえばなんて言うDJブースだよと笑いたくなる物の
「所で命の危険って何なの?」
 別に閉じ込められてるだけじゃ問題ないし、一番危険な問題は食料もだが下の問題もあるだろう。まあ、いい歳だから服を汚すわけでもなく、トイレで出来なかったからと言って泣くわけでもないだろう。この後捕まった時に汚物を見られると言う屈辱が付いて来る程度で命の危険にはつながらないと考えていれば
「その部屋は常時-20℃設定になっている。コンピュータの発熱で0℃以下になってる程度。だけど監視カメラに映る温度計がどんどん室内を冷やして行って、そろそろ-10℃を切ると報告が来た」
「うちもそれぐらいになるけど、寒いよねー。っていうか業務用冷凍庫かよwww」
 どんだけ冷やすのかと思うもエドワーズの顔は固く
「あの馬鹿半袖であの部屋に入ったらしい」
「なんという勇者。OPのムービーで逝くやつだな」
 呆れてしまう。
 だけどやっぱり命の危険はあってはならないと言うエドワーズの無言の訴えに肩をすくめて
「メモの用意」
 言えばスマホを取り出してメモ帳を呼び出していた。
「今から言うもの用意して」
「何が必要か?」
「ピザにハンバーガーを五人前。あとのみ物はミネラルウォータをホットで。緑茶があればなおいいけど。とりあえず何か食べ物を俺の側に置いておいてほしい」
「ああ、脳の餌だな」
 カティの発表の後を見ているから納得できたらしいが視線は語る。あれだけ食べてまだ食べれるのか?と……
「それでも確実に体重減るから。俺をこんなんにしておいてご飯代けちらないでよ」
 俺の要望はただそれだけだった。

  



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