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青い空、白い画面。それならそれでやってやればいいじゃないかって誰がやるんだ? 1
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空が青いなー。
圧倒的な熱量を孕む風を受けて綾人はイギリスから遥か西の地、アメリカに立っていた。
「アヤトー、ボーっとしてないで付いて来い」
「あー、俺よりもカティの方がピンチなんですけど」
振り向けば大きなトランクを持って歩いていたと思えば姿が消えた。いや、何もない所で躓いて顔面から地面に突っ込んでいた。
これを助けるって言うか知り合いって思われる方が嫌なんだけどと周囲の人の注目を浴びながらも彼女は少し恥ずかしそうな顔をして立ち上がって服に付いた埃を叩き落としていた。
その程度のダメージだなんて慣れてるなーと逆に感心するしかない。
「あの馬鹿……
仕方がない。迷子にならないように引っ張って連れて来い」
「迷子って、もう宿泊先のホテルじゃん」
空港からタクシーに乗って辿り着いたホテルで下してもらった所。つまり人通りの激しいロータリーだ。
何を言ってると思うも
「カティはホテル内で迷子になる奴だ。部屋に閉じ込めておけ」
「ちょっと取説下さい!」
「首輪に鎖をつけておけば問題ない」
「いや、カーライル教授それはヤバいって」
なんて話をしながらチェックイン。
転んだところを見ていたのか見かねてポーターが助けに来てくれたのでそっと三人分のチップを渡して部屋に荷物を運んでもらう。
俺は研究論文の入ったかばんは自分で持って教授と三人同じフロアなので一緒に運んでもらう事にした。カティに持たせている間に二回は転んだのでもう持たせないと押し付けられた結果だが、あながち間違いではないので俺が死守してるのが現状だ。
「じゃあ、荷物を置いたら一度確認するから部屋に集合だ」
「カティ、迎えに行くから大人しく待ってろ」
「アヤトー、幾らなんでも隣の先生の部屋は間違えないよ」
ぷくーっと頬を膨らますカティに俺はカティをその場で三回ほど回せてちょうど俺とカティの立ち位置が変わる様に立ったところで
「先生の部屋どっちだ」
「この部屋に決まってるじゃん!」
そう言って自信満々に指差したのは俺の部屋でもなく教授の部屋でもなくカティ自身の部屋だった。
頭を抱える教授と俺だが、さすがのカティもまさか自分の部屋を指さしてるのを指摘されれば文句は言えないようだった。
「迎えに行くから、部屋から出ないでくれよ」
「はい……」
しょぼんとして入ろうとした部屋は教授の部屋で、慌てて正しい部屋を案内したのは俺と教授の部屋に挟まれた場所だった。
最低限フォローが出来る配置だが、何度も見てきたとは言えこれは酷いと言う様にカティが部屋に入った所で
「私だけではフォローが出来ん。アヤト、頼むぞ」
「教授も諦めないでください」
言うも、そっと疲れた視線を俺へと向けて部屋へと入って行ってしまった。
「俺お世話される側担当なんだけどー」
誰も居ない廊下でぼやいてみても誰も返事をしてくれないので俺も部屋へと入る事にした。
渡米一日目はまだ始まったばかり。
憧れの工科大学を目の前に気分は晴れない。
空はこんなにも青く輝いてるのにまるで既に発表前までの夜の憂鬱な気分さえ感じてしまう。
トランクからスーツをクローゼットにかけておく。少しでも皺が伸びますようにと靴も一緒に並べておく。
発表会の後パーティもあるらしくちゃんとドレスコードを求められてきた。そしてホテルのディナーにもドレスコードが存在している。スーツは二着、ドレスシャツとネクタイを何枚かもってきてこれでOK。
男子はこれで問題ないが女子は大変だ。
一応発表会の時はスーツを着るらしいがその後のパーティではドレスに変えなくてはいけないと言う。更にディナー用を何着か。勿論それに合わせて靴や宝飾類も用意しなくてはいけないと言う。
「女の子って大変だなあ」
心からそう思うも
「いざとなったらホテルのブティックに買いに行けばいいから大丈夫よ」
男子と違って女子は適当に入手できるから問題ないわと言ううっかりカティでもそこはお嬢様。生まれてからの生活から旅先で必要な物は揃えるが当たり前の家なのでこう言う臨機応変さは見習いたい。
かくいうこういった場合のスーツって何着てけばいいんだとぼやいた俺にカティは呼び寄せた執事と共に俺を服屋に連れて行ってくれた。
どうでもいい話だが、カティの方向音痴はどこに行くにも執事が連れて行ってくれていたので方向感覚が養われなかったと言う程度に自分を理解している迷惑な話だ。
かつて飯田さんにスーツを作ってくれたような、ではなく完全フルオーダーメイドの店だった。既製品は置いておらずお呼びがかかればその家まで足を向けると言う小説の中でしか聞かないような店だった。当然ビックリ価格のお値段に
「こんな店をさらりと案内させられた俺がビックリだよ!!」
と喚けばカティは
「そう?だったらお詫びにスーツ代を支払うよ」
と言う。
いやね、さすがにこのお値段の物を貰う間柄でもないからそこは丁寧に断って自腹でお買い上げ。確りと首回りや股下まで計られたので今後ご利用になる場合は俺に割り当てられた番号が書かれたカードを持って来店すれば一々サイズを計り直さなくても良いと言う親切設定。
仕上がりを着れば着心地が抜群に良く、生地の肌触りも良かったのでその後何着か作ってもらったら
「アヤトもやっと見る目が付いて来たな」
ロードの城にお泊りに行った時にそれを着てディナーを楽しんでいた時に挨拶に来たロードにお褒めの言葉を貰えた。
俺には一切服の良し悪しは判らないが、見る人が見ればちゃんといい物だと判るらしい。種を明かせばロードも同じテーラーのスーツを持っていただけなのだが
「そう言ういい店を紹介してくれる相手を大切にしなさい」
そんなロードの忠告だからこそ俺はうっかりカティの面倒を今も見る羽目になっている。
なんてこったい……
圧倒的な熱量を孕む風を受けて綾人はイギリスから遥か西の地、アメリカに立っていた。
「アヤトー、ボーっとしてないで付いて来い」
「あー、俺よりもカティの方がピンチなんですけど」
振り向けば大きなトランクを持って歩いていたと思えば姿が消えた。いや、何もない所で躓いて顔面から地面に突っ込んでいた。
これを助けるって言うか知り合いって思われる方が嫌なんだけどと周囲の人の注目を浴びながらも彼女は少し恥ずかしそうな顔をして立ち上がって服に付いた埃を叩き落としていた。
その程度のダメージだなんて慣れてるなーと逆に感心するしかない。
「あの馬鹿……
仕方がない。迷子にならないように引っ張って連れて来い」
「迷子って、もう宿泊先のホテルじゃん」
空港からタクシーに乗って辿り着いたホテルで下してもらった所。つまり人通りの激しいロータリーだ。
何を言ってると思うも
「カティはホテル内で迷子になる奴だ。部屋に閉じ込めておけ」
「ちょっと取説下さい!」
「首輪に鎖をつけておけば問題ない」
「いや、カーライル教授それはヤバいって」
なんて話をしながらチェックイン。
転んだところを見ていたのか見かねてポーターが助けに来てくれたのでそっと三人分のチップを渡して部屋に荷物を運んでもらう。
俺は研究論文の入ったかばんは自分で持って教授と三人同じフロアなので一緒に運んでもらう事にした。カティに持たせている間に二回は転んだのでもう持たせないと押し付けられた結果だが、あながち間違いではないので俺が死守してるのが現状だ。
「じゃあ、荷物を置いたら一度確認するから部屋に集合だ」
「カティ、迎えに行くから大人しく待ってろ」
「アヤトー、幾らなんでも隣の先生の部屋は間違えないよ」
ぷくーっと頬を膨らますカティに俺はカティをその場で三回ほど回せてちょうど俺とカティの立ち位置が変わる様に立ったところで
「先生の部屋どっちだ」
「この部屋に決まってるじゃん!」
そう言って自信満々に指差したのは俺の部屋でもなく教授の部屋でもなくカティ自身の部屋だった。
頭を抱える教授と俺だが、さすがのカティもまさか自分の部屋を指さしてるのを指摘されれば文句は言えないようだった。
「迎えに行くから、部屋から出ないでくれよ」
「はい……」
しょぼんとして入ろうとした部屋は教授の部屋で、慌てて正しい部屋を案内したのは俺と教授の部屋に挟まれた場所だった。
最低限フォローが出来る配置だが、何度も見てきたとは言えこれは酷いと言う様にカティが部屋に入った所で
「私だけではフォローが出来ん。アヤト、頼むぞ」
「教授も諦めないでください」
言うも、そっと疲れた視線を俺へと向けて部屋へと入って行ってしまった。
「俺お世話される側担当なんだけどー」
誰も居ない廊下でぼやいてみても誰も返事をしてくれないので俺も部屋へと入る事にした。
渡米一日目はまだ始まったばかり。
憧れの工科大学を目の前に気分は晴れない。
空はこんなにも青く輝いてるのにまるで既に発表前までの夜の憂鬱な気分さえ感じてしまう。
トランクからスーツをクローゼットにかけておく。少しでも皺が伸びますようにと靴も一緒に並べておく。
発表会の後パーティもあるらしくちゃんとドレスコードを求められてきた。そしてホテルのディナーにもドレスコードが存在している。スーツは二着、ドレスシャツとネクタイを何枚かもってきてこれでOK。
男子はこれで問題ないが女子は大変だ。
一応発表会の時はスーツを着るらしいがその後のパーティではドレスに変えなくてはいけないと言う。更にディナー用を何着か。勿論それに合わせて靴や宝飾類も用意しなくてはいけないと言う。
「女の子って大変だなあ」
心からそう思うも
「いざとなったらホテルのブティックに買いに行けばいいから大丈夫よ」
男子と違って女子は適当に入手できるから問題ないわと言ううっかりカティでもそこはお嬢様。生まれてからの生活から旅先で必要な物は揃えるが当たり前の家なのでこう言う臨機応変さは見習いたい。
かくいうこういった場合のスーツって何着てけばいいんだとぼやいた俺にカティは呼び寄せた執事と共に俺を服屋に連れて行ってくれた。
どうでもいい話だが、カティの方向音痴はどこに行くにも執事が連れて行ってくれていたので方向感覚が養われなかったと言う程度に自分を理解している迷惑な話だ。
かつて飯田さんにスーツを作ってくれたような、ではなく完全フルオーダーメイドの店だった。既製品は置いておらずお呼びがかかればその家まで足を向けると言う小説の中でしか聞かないような店だった。当然ビックリ価格のお値段に
「こんな店をさらりと案内させられた俺がビックリだよ!!」
と喚けばカティは
「そう?だったらお詫びにスーツ代を支払うよ」
と言う。
いやね、さすがにこのお値段の物を貰う間柄でもないからそこは丁寧に断って自腹でお買い上げ。確りと首回りや股下まで計られたので今後ご利用になる場合は俺に割り当てられた番号が書かれたカードを持って来店すれば一々サイズを計り直さなくても良いと言う親切設定。
仕上がりを着れば着心地が抜群に良く、生地の肌触りも良かったのでその後何着か作ってもらったら
「アヤトもやっと見る目が付いて来たな」
ロードの城にお泊りに行った時にそれを着てディナーを楽しんでいた時に挨拶に来たロードにお褒めの言葉を貰えた。
俺には一切服の良し悪しは判らないが、見る人が見ればちゃんといい物だと判るらしい。種を明かせばロードも同じテーラーのスーツを持っていただけなのだが
「そう言ういい店を紹介してくれる相手を大切にしなさい」
そんなロードの忠告だからこそ俺はうっかりカティの面倒を今も見る羽目になっている。
なんてこったい……
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