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駆けぬく季節は何時も全力前進 6

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 俺がうっかり爆睡している間にフローラはジェムやクリフ、フェイによって家に帰らされた。というか追い出された。
 一応ここはヤローばかりなので女の子一人居すわらせる事を俺が拒否ったからの対応だ。
「綾人は頭固いなぁ。
 女の子がせまってきて悪い気はしないだろ?」
 なんて言われたけど
「はあ?あれと何かあって一生と言うかめんどくさい事に付き合えって言われたらどうする?俺は別にお前らみたいに彼女とか必要としてないし、簡単にヤれる女に何の価値がある。
 少なくとも事故物件を好んでお近づきになる奴の顔こそ見てみたいもんだ」
 そこまで言って女子に耐性のない奴らは如何にヤバいのかを理解するのだった。まぁ、フェイは社会経験もあるから一切相手にしてなかったけど、ジェムはこの時までフローラのお願いには全敗所か女子全般男子にもぼろ負けの人生だったので、一つ一つ耐性を付けてあげたいと思う綾人によってこの家は夕方以降フローラには帰ってもらうルールが出来た。
 まあ、最初はぐだぐだと言い訳をして居座ろうとしたがそこでアレックスの出番。インテリ系ヤンキーなんて俺が位置づけしただけに年下で女の子一人と言う状況にフローラは逃げる様に去って行った。俺から見たら番犬だよなと思うのはなまじ賢いだけのセーフラインを確実に守るから安心してみていられるだけの話し。某狂犬様にお任せしたら蹴ったりとか罵声、暴言で、とかはないだろうけどみんなで美味しいご飯食べながら一人だけ同じメニューでまず飯とか容赦なくやるんだろうなと想像。いや、ここは王道に美味しいご飯攻撃で年頃の女の子に飯テロで食べすぎで……以下省略。
 イイダサンハソンナコトシナイ……
 何回か深呼吸する事でお犬様の話しから離れる事にした。
 そんな事もあり軽度のストーカー被害と言うにはまだストーキングどまりな嫌がらせをされてる程度だが寝落ちからの目覚めに夜遅くまで勉強をしていたジェムにご飯を用意してもらうのだった。
 俺は暖炉の部屋のソファで寝ていたのでぐっすりと寝れなかったけど、さすがに六時間も寝れば体の疲れはある程度取れていた。

「悪いな、夜遅くに」
「俺もちょうど夜食が恋しかったところなんだ」
 メニューは簡単にシチューにマッシュポテト。それにパンとワイン。贅沢だ……
 目の前に並べられた料理はそれなりに腕を上げて安定したお味にシチューを絡ませたパンを頬張って行く。
 ジェムは具のないシチューにパンを沈めてチーズを乗せて焼いただけのものをスプーンで食べながら一緒に食事をしてくれる。
「フィンとクリフは?」
「もう部屋に戻ってるよ。呼ぶのはやめてよ、もうシチューないんだから」
 また何か作らないといけなくなると、料理はそれなりに家で手伝わされてたからできる程度のレベルはあまりまだやらせないでくれと言うもの。自分からそう言う様にまだまだな腕前だがアレックスやケリーの腕前を見れば人並み程度には上手になってるぞと言ってやりたい。
「それにしてもフローラは相変わらず熱烈でしたね」
「まぁ、年上に憧れる子供って奴だな」
 それのそんな判断。
「それを言ったらみんな年上だよ?」
 スキップしてくるお子様と学費を稼いでからやってくる学生が多いせいか、学費を稼いやってくる学生をどうやらかっこよく見えるマジックにかかりやすいと統計で出ているらしい。
 誰だよ、そんな統計出したやつ。
 呆れながらもそんな物かというのは年齢より若く見られがちな綾人は例によってスキップでもして来たようなお子様に見えるのがフローラに絡まれている理由だと思っている。泣きたい……
「女の子は強い相手に惚れる傾向にあるって言ってたけど、綾人は確実に強者の部類だからね」
「パブで料理を奢るぐらいビールに弱いのにどこから強者って言葉が生まれたんだか」
 くつくつと笑っていれば
「みんな綾人と仲良くすれば料理を食べさせてくれるって言う程度には認識してるから。人間一番惨めなのはおなかがすく事だから、食べさせてくれるならその相手を尊重ぐらいするよ」
 それぐらい分別できる知識のある生徒の集団に綾人は二日酔いになるくらいなら飯ぐらい食べさせると言うスタンスを今も貫いている。
「寮で飯食わせてもらえるんだからそこで我慢すればいいのに」
「寮だとあまりおいしくないって言うか、量自体も少なくて足りないんだよ」
 足りない分を満たす為のパブでのビールに綾人に食べさせてもらえれば幸せだと言う、案外苦学生が多いんだなと想像してみたりする。
 こちらの国では積極的に奨学金を借りて勉強するのが普通なせいか、入学出来ればそれが当たり前という風潮はあるくらい卒業後のステータスには旨みがあると言う物らしい。その証拠ではないが、やっぱりこの学校に進学している人は審査が通りやすいと言う面もあり、それだけ期待されていると言う物だろう。
 青田買いと言うか、それもなんだかなーなんて考えている間に食事を終えれば

「それよりもこの間のわけのわからないソフトどうだった?」
 この間のソフトと言うとアメリカの友人に渡した物かと思い出しながら
「もう渡したから、後は向こうの環境に合わせてカスタムするらしい」
 少なくともそれぐらいは出来る腕前を持つ天才様にはあのソフトがどう発展するか俺も楽しみでいる。仮令二度と触る事のないソフトで製作者の名前を大金で俺が売り払った事は言う必要ないが。
 これに関しては俺を守る為でもあるし、向こうも製作者が俺であることを知っているからの対応。その事には一切文句を言うつもりはない。
 その気になればまた新しく作ればいいだけなのだから、お金が振り込まれた時点でもう俺がかかわる必要のない懸案なだけ。
「カスタムって、あれ理解できる人居るんだ」
 驚きの中に尊敬する声が聞こえる。
 そんな声に
「ごめん。実は翻訳ソフトがあるんだ……」
 何て心の中で子供の夢を壊してしまったのを申し訳ない様に謝りながらもネタ晴らしをするも
「いやいや、あれを翻訳できるソフトがある事自体綾人は凄いよ!」
 さらに爆誉め。
 居た堪れなさすぎると席を立ち
「お風呂入る」
「うん。今日はアヤトが帰って来るからと思ってお風呂入れてあるから、ゆっくり入ってきて」
 後片付けを始めるジェムから逃げるようにバスルームに飛び込む綾人だった。
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