上 下
710 / 976

運動と食欲と勉強と寝る事が子供の仕事です 1

しおりを挟む
 脳筋の使い方。
 程よく体を動かさせましょう。でないと有り余る体力で無駄に煩い。

 今は理科部、その前はマネージャーだったとはいえもともとスポーツ推薦で入学しただけに体力はある方だし、マネージャー業も肉体労働。校風的にマネージャーも基礎運動は一緒に走り込んだりすると言う。
 俺絶対そんな学校嫌だ。
 人気なくても文化部行くと運動嫌いじゃないけどそんなスポ魂は俺にはない。せいぜい必要にかられた運動と体の為の軽い運動その程度なら自分の為にもやるつもりはあるしやっていた。と言ってもここでの生活が総て軽い運動程度になるのだから良しとしているし、イギリス生活も週末は郊外の家だったりフランスの家だったりのメンテナンスで充実した肉体的な疲れを楽しんでいる。
 まあ、ようは庭の手入れだけど。
 植物に癒されて、綺麗な庭で心に安らぎを得て、美味しい野菜で腹を満たし、静かな城で質の良い睡眠を得る。
 幸せじゃないか。
 柵に囲まれた畑のメンテナンスをしながら視界の遠くで三人が斧を使って薪割をしている景色を眺める。
 陸斗と下田の指導で中々割れない薪に賑やかな声が聞こえて楽しそうだとこれは筋肉痛決定の光景に今日も勉強がはかどらないのも決定した。
それとは別に一樹や幸治が柵の外側を草刈りしてくれている。内側は綺麗になってるが、柵の周りも柵が傷まないように草刈りしましょうとあまり刈る場所がないので外側もしてくれると言う。気を付けろよと注意を促して時折様子を見ればいつの間にか草刈り機の使い方が上手になったなあと感心するしかない技術にバイト代弾まないとなと心に決めておく。幸治は俺がいない時も小遣い稼ぎで手伝いに来てる結果に宮下の指導はなかなかのものだと感心していた。ちゃんとその光景は動画にもアップされてるし、お手伝い料金は他の奴らのを参考に発生しているのでこの結果を見れば納得の仕事と言う様に圭斗の会社を介して請求が来るのだった。
 せっかく会社を立ち上げたのだからバイトとして雇い、会社の功績にもなる様にした。
 一樹は今は大学で家を出て行ったためにバイトはやめてしまったが、幸治は結局地元の高校に進学して少しでも学費がかからないようにと自宅から通っていた。
 浩太さんは言わないけど件の雅治は親元から専門学校に通っていると言う。そして妹はまだまだ中学生。母親も親元の近くでアパートを借りて働いているとは言え生活費がギリギリらしく学費は浩太さんが支払っていると言う。なので、かなり生活費がひっ迫しているし長男が卒業しない事には生活費に余裕がないと言う。鉄治さんももう引退しても良い年齢なのに頑張っているのはそれもあり、
「雅治が卒業したらわしも引退するつもりだよ」
 少し疲れた様に笑う鉄治さんだったが
「甘えてる俺が聞くのもなんですが、長沢さんと言い引退ってどういう定義ですか?」 
 麓の家の作業場で宮下の仕事を手伝うと言うより横取りしながらああだこうだと工具を取り出して修理したり襖を張り替えたりと生きがいを見つけた様に勝手に手伝っていると言う。ただで働かせるわけにもいかないのでパート扱いで長沢さんを圭斗の会社で雇ってるのだが
「圭斗と話してるんだがわしも浩太も雇ってもらおうかという話しをさせてもらってる」
 これは初耳。まあ、圭斗が社長なんだから決定したら話を聞かせてくれるのだと思うのだが
「儲けてるくせに」
「さすがに昔建てた家を手放すだけの時間が流れた。先細りしかない未来なら転職もありだなと考えてな」
 少し寂しそうだ。
「婆さんも経理とかしんどそうになって来たし、浩太も離婚した事で貯金も出来てないと言う」 
「まぁ、今一番子供の教育費と養育費がかかる年頃だし、やっぱり向こうでの生活は女性一人じゃ厳しいでしょう」
 ほぼ社会経験なしで役職のない事務員の給料はたかが知れている。向こうもこれといった特殊技能の必要ない事務員に昇給は考えてないようだし、それを承知で働いてるのだから大変だねぇと俺は言うしかない。パートで働くよりは貰える、パートよりは多く貰える。そこをどうとらえるかは浩太さんの元奥さんが考えればいい所だ。なのでそのフォローは浩太さんがしていると言う。嬉しい事に俺の家の離れやこの麓の家、フランスの城の修繕の動画を見て仕事の依頼が増えてその繋がりが出来ていると言う。
 新規の顧客を獲得するのが難しい時代によかったじゃないかと思うもだからと言って右肩上がりなわけでもないのでやっぱり最後は横のつながりが大切となり、森下さんを初めとした皆さんとも相変わらず仲良く仕事をしている。
「幸治には大学に進学させてやりたいと思ってる。
 陸斗を見て自分もああなるんだって良い目標になってる。目的の大学は香のアパートから通える場所に会って、幸治は陸斗には悪いけど家の経済状況を考えると少しでも節約したいって圭斗にも頭下げていた」
「まぁ、二人なら許すな。お金がない苦しさはよく判ってるし」
 俺からの借金はなくなって少しずつ収入も増えて会社としては何とか最初の二年は赤字だったけど何とか脱却して黒字になっている程度。冬場の減収は動画からの収益が補填しているレベルだけど。宮下の木工細工やそれに触発した長沢さんが作った釘を使わずに地元の木で作ったベビーベットの揺りかごが高額なのにもかかわらず幾つも発注が発生して現役よりも忙しく働いていると言う。とは言えネットでの通販なので圭斗の会社を窓口にして長沢さんも会社で働いてと言う事になったのだが
『この年で会社勤めが出来るとは思わなかったぞ』
 案外楽しそうなので何よりですと宮下の作業場を占領して手が空いた時に鉄治さんも遊びに来るようになっていた。
 宮下の作業場は温かいし明るいし、宮下がちゃっかりレンガで作った竈が大活躍しているようだし、仕事終わりの風呂も大満足しているようだし。折角風呂を入れるのならと圭斗も入りに来ているのでそこに宮下と先生の分も合わせれば十分以上活用されていると思ってる。しっかり掃除してもらえれば使ってもらう方が風呂にもいいからね。大きく足を延ばしては入れる檜風呂なんて一度味をしめたらやめられないよねと風呂掃除って知ってる?と聞きたい先生の世話も兼ねているので文句は言わない。ほら管理費だと思えば風呂と電気代位払ってやるよと言う所だ。
「何よりも幸治が頑張ってる姿を見てるから。 
 幸治にとっても雅治と母親と一緒に暮す事に疑問を持たないわけじゃないけど家の事をちゃんと考えてるから割り切ったんだろうな。
 誰よりも我慢しているからこそ圭斗達はあいつが選択した事を尊重してくれているよ」
 痛々しそうな顔で笑う鉄治はもっと自分勝手になればいいのにとぼやくが、多分それは山の家で必死にもがく先輩達の苦しむ姿を見ていた為にちゃんと将来の事、家の事、進学した後の事も考えるような子になっただけだ。
 どのみち学力的には足りてると中学時代からずっと面倒見てた陸斗からの太鼓判もある。むしろ陸斗はどこまで進化するのだろうかと俺が勉強させてしまったけど(反省)幸治が受験する時には陸斗は手伝ってあげれないからと言って前倒しで勉強を教えたと言う猛者だった。
 はい。
 どう考えても俺が悪いのですよね。
 学業の事にどう接すればいいのかわからないらしい浩太さんだったらしいけど、ある意味親が出る幕が無かったと言う少し寂しさを覚えたと言う。親孝行で別にいいじゃんとそんな話をした覚えはある。
「あとバイトもありがたい。進学に向けて小遣いをためてるみたいだからな」
「誘惑も多いだろうし、これからは制服じゃなくなるから服を買うお金が必要になる上に成長してるから。会うたびに大きくなったって驚くぐらい大きくなりやがってどいつもこいつも……」
 気が付けば身長を越されていた事に悪態をつけば俺のコンプレックスを知る鉄治さんは笑い
「まぁ、浩太位には大きくなるだろう」
 気持ちいい位の笑い声は幸治のこれからの不安何て大した事じゃないと言う様な明るさに俺も地元を離れて新しい人間関係が楽しい物になればと願うのだった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

家賃一万円、庭付き、駐車場付き、付喪神付き?!

雪那 由多
ライト文芸
 恋人に振られて独立を決心!  尊敬する先輩から紹介された家は庭付き駐車場付きで家賃一万円!  庭は畑仕事もできるくらいに広くみかんや柿、林檎のなる果実園もある。  さらに言えばリフォームしたての古民家は新築同然のピッカピカ!  そんな至れり尽くせりの家の家賃が一万円なわけがない!  古めかしい残置物からの熱い視線、夜な夜なさざめく話し声。  見えてしまう特異体質の瞳で見たこの家の住人達に納得のこのお値段!  見知らぬ土地で友人も居ない新天地の家に置いて行かれた道具から生まれた付喪神達との共同生活が今スタート! **************************************************************** 第6回ほっこり・じんわり大賞で読者賞を頂きました! 沢山の方に読んでいただき、そして投票を頂きまして本当にありがとうございました! ****************************************************************

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福論。〜飯作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

西園寺若葉
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

姉らぶるっ!!

藍染惣右介兵衛
青春
 俺には二人の容姿端麗な姉がいる。 自慢そうに聞こえただろうか?  それは少しばかり誤解だ。 この二人の姉、どちらも重大な欠陥があるのだ…… 次女の青山花穂は高校二年で生徒会長。 外見上はすべて完璧に見える花穂姉ちゃん…… 「花穂姉ちゃん! 下着でウロウロするのやめろよなっ!」 「んじゃ、裸ならいいってことねっ!」 ▼物語概要 【恋愛感情欠落、解離性健忘というトラウマを抱えながら、姉やヒロインに囲まれて成長していく話です】 47万字以上の大長編になります。(2020年11月現在) 【※不健全ラブコメの注意事項】  この作品は通常のラブコメより下品下劣この上なく、ドン引き、ドシモ、変態、マニアック、陰謀と陰毛渦巻くご都合主義のオンパレードです。  それをウリにして、ギャグなどをミックスした作品です。一話(1部分)1800~3000字と短く、四コマ漫画感覚で手軽に読めます。  全編47万字前後となります。読みごたえも初期より増し、ガッツリ読みたい方にもお勧めです。  また、執筆・原作・草案者が男性と女性両方なので、主人公が男にもかかわらず、男性目線からややずれている部分があります。 【元々、小説家になろうで連載していたものを大幅改訂して連載します】 【なろう版から一部、ストーリー展開と主要キャラの名前が変更になりました】 【2017年4月、本幕が完結しました】 序幕・本幕であらかたの謎が解け、メインヒロインが確定します。 【2018年1月、真幕を開始しました】 ここから読み始めると盛大なネタバレになります(汗)

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

裏路地古民家カフェでまったりしたい

雪那 由多
大衆娯楽
夜月燈火は亡き祖父の家をカフェに作り直して人生を再出発。 高校時代の友人と再会からの有無を言わさぬ魔王の指示で俺の意志一つなくリフォームは進んでいく。 あれ? 俺が思ったのとなんか違うけどでも俺が想像したよりいいカフェになってるんだけど予算内ならまあいいか? え?あまい? は?コーヒー不味い? インスタントしか飲んだ事ないから分かるわけないじゃん。 はい?!修行いって来い??? しかも棒を銜えて筋トレってどんな修行?! その甲斐あって人通りのない裏路地の古民家カフェは人はいないが穏やかな時間とコーヒーの香りと周囲の優しさに助けられ今日もオープンします。 第6回ライト文芸大賞で奨励賞を頂きました!ありがとうございました!

隣の古道具屋さん

雪那 由多
ライト文芸
祖父から受け継いだ喫茶店・渡り鳥の隣には佐倉古道具店がある。 幼馴染の香月は日々古道具の修復に励み、俺、渡瀬朔夜は従妹であり、この喫茶店のオーナーでもある七緒と一緒に古くからの常連しか立ち寄らない喫茶店を切り盛りしている。 そんな隣の古道具店では時々不思議な古道具が舞い込んでくる。 修行の身の香月と共にそんな不思議を目の当たりにしながらも一つ一つ壊れた古道具を修復するように不思議と向き合う少し不思議な日常の出来事。

Bグループの少年

櫻井春輝
青春
 クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?

処理中です...