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本と嵐と 2

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 本には魔物が住んでいる。
 特に読んで読んでと言っているような本は手にしてはいけない。
 今朝がた訪問するには非常識な時間にケリーの実家に突撃して、同じ授業を受けているプログラムの話しになり、新しくソフトを開発してかゆい所に届く簡易な物としてアプリを開発してみた。
 スケジュール帳をスマホのロック画面に映したりする程度な簡単なアプリ。勿論アプリからならインストール済みのLIMEやWhatsAppと自動に同期したり洗濯も出来たりして先方にも自動で確認が取れたりするビジネス要素も盛り込んだ。さらに名刺を写真撮ると自動にアドレスに登録したり、メモ書きを書き起こしたり音声を録音してテキストに変換すると言う要素も盛り込んだらアホほどメモリをくって没作品となった。
「何がいけないんだろうな」
「いや、詰め込み過ぎだから。
 それならいっその事自動同期を逆手にとって勝手に連携するって言うプラットホーム的なアプリにすればいいだろ」
「そうなるとバージョンアップの度に大幅なアップデートが必要になるね」
「つまり、後手後手になるので現実的じゃないので没決定」
「アヤト、本末転倒だよ」
「本末転倒だなんてよく知ってたな」
「クリフが日本語の勉強していたのを隣で見てて覚えたんだ」
「じゃあ今度帰った時ケリーにもドリル土産に買って来るな」
「あのう●この絵がいっぱいついた奴だろ!
 アヤトがいない時にカノウに教えてもらってるんだ。なんかヒイラギがいつも悲しそうな顔をしてるけど、日本の子供の勉強って楽しそうだな」
「ああ、普通のドリルも買ってくるから見比べて楽しんでくれ」
 いかに変り種か判って貰えるだけで満足だ。そしてう●こドリルのあの発想嫌いじゃない。むしろもっといろんなパターンで笑わせてくれればいいのにと思うだけの俺にはそう言ったユーモアがないと言われそうなので黙っている。
 そうやっているうちに
「二人ともお昼食べるでしょ?簡単だけど作ったから食べて行って」
 そう言って出されたのはジャガイモだけのマッシュポテトとローストチキン、パンとサラダと言う何ともらしいメニューだった。
「すみません。気を遣わせてしまって」
「気にしないで。ケリーが友達を呼んで来てこんなにも大声で笑ってるなんて初めてだからゆっくりして行ってね」
「ありがとうございます」
 なんかとんでもない暴露を聞いた気もしたがそこは俺も大人だ。スルーして焼きたてのローストチキンを食べる。ジューシーなもも肉からあふれ出た脂をマッシュポテトで拭って食べる。昔ネコとネズミのアニメでも定番の食べ方は絶対美味い奴。そして宗教的な問題か知らないがカレッジの晩餐会でも山盛りのマッシュポテトはお約束なのでこっちに来てからひたすらマッシュポテトを食べまくっている気がしてシェファーズパイが食べたくなった。
 飯田さんにお願いして作ってもらった時は網ね、何いきなりデザート作ってるのって言うような美しい見た目のパイだったけど、中身はごろごろにミンチしたお肉は生憎羊ではなく鹿だったが一緒に刻んだ野菜といためてブイヨンで煮込んで耐熱皿の代わりにパイ生地に入れて焼いて作ってくれていた。お肉とマッシュポテトの二層が飽きを越させない美味しさに飯田さんの取り分を覗いてペロリと食べた魅惑のパイだった事を思い出して、今度オリオールにリクエストしようと心に誓った。
 因みにケリーのお袋さんはどうやら料理自体が苦手らしく、今日は初めて友達を呼んで来た記念に気合を入れて料理を用意してくれたらしいが……
 表面はこんがりと綺麗なのに中は生焼けと言うローストチキンにどうしようかと思っていれば
「アヤトは食が細いな。食べれないなら貰うぞ?」
 ほんのりピンクでもなくきちんとピンクのチキンをひょいとフォークで刺してパクリと食べてしまった。良いのだろうかと思いながらもとりあえず食事を終えてからまたプログラムの話しに変り、気が付いたら夜になると言う充実した一日を過ごしていた。
 心配でちらちらと様子を見ていたが腹を壊す事も何もない様子にホッとしていた。きっとケリーの家ではこれが普通で昔からそうだったと思えば耐性が出来たのだろうと思い込む事にして置いた。

 
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