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立ち止まって振り返って 1
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師匠、それは確かに存在していた。
生まれも育ちも総てに置いて勝ち組だったケリー・エマーソンはここにきて自分が大した人間ではない事を噛みしめていた。
寧ろ無能なのではと気づき始めていた。
俺のここまでの道のりはすべておぜん立てされた安全なレールに乗ってやって来た物だと思い知らされた。
「おら!園田!落とせって言った枝葉その右隣だって言っただろ!」
「綾っち!俺が分るとでも思ってるの?!」
「陸斗は指示が無くても全部理解してるぞ!」
「実桜さーん!今からでも助けにきてー!!!」
実桜の指示の下で樹木の剪定を学んだ陸斗は枝の撃ち落し方、刈りこみ方、剪定の仕方を学び一人前の庭師へと踏み出していた。
ちがーう。
陸斗よ、お前はどこに進もうとしている。
圭斗と同じように設計も出来る施工の二級建築士を目指してるのではないかと思うも植田曰く
『りっ君お家も作れてお庭も作れる建築士を目指してるようですよ』
なんでそうなった……
頭を抱えて項垂れながら圭斗になんて言い訳をしようと思ったが発端は本当に単純な出来事だった。
『りっ君は綾っちからもらった金柑の木をすごく大切に育てています。
スマホで調べて水やりから肥料やりと学んで、最後は実桜さんに教えを乞えて去年やっと花を咲かせて実になりました。りっ君ならこう言った小さな喜びを分け与えたいのでしょうね』
そんな植田の情報。
すごく感動的な話だが、金柑は放っておいても花を咲かせて実を熟させる。
畑で何年も放置したのに零れ落ちた種から芽が出て繁殖する強さももっている。だけどそれだって野生の力であるからの話しで人の手が入れば弱々しくなる。抜根した時に抜けれなくて根っこを鋸で切り落としたように自然に伸ばされた根っこを短くし、そして余分な根っこも整理したせいでその年は花芽も付けなかった。翌年辛うじて咲かせたもののその数僅か。だけど陸斗の努力によってその数を増やし、そして参戦した実桜さんの実力はもういらないほど金柑の木は体力を取り戻していた。
その後のメンテナンスもあるだろうが、タイミングとして手を入れた実桜さんに尊敬の念を向ける陸斗によって金柑の木の為にも弟子入りした事も理由の一つだろうが、金柑の世話位園芸部だってできる。なんせ世話もしなくてもいいのが金柑の木だ。そりゃ世話した方が実が大きくなって良いのだろうが、しなくても実を生らす生命力を見誤らないでほしい。
俺が留学に向けて奔走している間の出来事だった為に見逃した事だったがそれが今大活躍している。
木に登り、僅かなロープとベルトで身体を支えてデンノコで枝を打ち落し、風通しの良い林を作り上げる陸斗。
きっと圭斗が見ればなんでこうなったと頭を抱え、宮下が見れば立派になったと涙を流すと言う想像の付く光景に俺はどうにでもなれと思っている中、陸斗に学ぶアレックスは物凄く楽しそうだった。
「木登り何て危ないからするなって言われたけど、この景色は木を登らないと見れない景色だな」
こんな所で天職を見つけてしまったアレックスは陸斗に剪定を学びながら樹形を整える事を覚え、今は枝打ちを学んでいた。
「アレックスさん、景色に意識を取られると怪我をします。枝の伸び方を見て枝打ちに集中してください!」
陸斗の的確な指示に慌てて視線を枯れ枝に向け
「まずは枝打ちですね」
「枯れ枝を落しきってください!」
そんな景色をケリーは地上から空に向かって見上げていた。
ケリーはアレックスのように木を登る事に恐怖を抱いてただ見上げるしか出来なかった。
実家の二階のテラスから景色を眺めるのが好きだったが、木に登って…… と言う事は終ぞ出来なかった。
高所恐怖症。
と言うまでもないが。不安定の足場は足がすくむと言う様にそこから足を進める事が出来なかった。
そして……
「綾っち!なんかの幼虫を見つけたよ!!!」
楽しそうに投げつけようとする水野の背後を追いかける様にウィルとクリフが追いかけてきた。そして幼虫と言うより芋虫を俺に投げつけてくる水野に悲鳴を上げる綾人を笑う二人を眺めながら宙に放り投げられた幼虫に嫌悪感を抱いて動けずにいるケリーは畑作りからも適性がないと言われたばかりだった。
「水野!おまえなんてひどい事を!!! 畑に殺虫剤蒔いてやる!」
綾人はすかさず取り出したスマホで殺虫剤を大量に購入しようとするのを見て
「綾人さん、それを蒔かれると野菜としてお店で提供できなくなるのでやめましょうね」
飯田が綾人のスマホを取り上げて没収するのだった。
畑も耕せず、木にも登れないケリーはこの城の中で何もできない完全な役立たずと言うのを理解せざるを得なかった。
生まれも育ちも総てに置いて勝ち組だったケリー・エマーソンはここにきて自分が大した人間ではない事を噛みしめていた。
寧ろ無能なのではと気づき始めていた。
俺のここまでの道のりはすべておぜん立てされた安全なレールに乗ってやって来た物だと思い知らされた。
「おら!園田!落とせって言った枝葉その右隣だって言っただろ!」
「綾っち!俺が分るとでも思ってるの?!」
「陸斗は指示が無くても全部理解してるぞ!」
「実桜さーん!今からでも助けにきてー!!!」
実桜の指示の下で樹木の剪定を学んだ陸斗は枝の撃ち落し方、刈りこみ方、剪定の仕方を学び一人前の庭師へと踏み出していた。
ちがーう。
陸斗よ、お前はどこに進もうとしている。
圭斗と同じように設計も出来る施工の二級建築士を目指してるのではないかと思うも植田曰く
『りっ君お家も作れてお庭も作れる建築士を目指してるようですよ』
なんでそうなった……
頭を抱えて項垂れながら圭斗になんて言い訳をしようと思ったが発端は本当に単純な出来事だった。
『りっ君は綾っちからもらった金柑の木をすごく大切に育てています。
スマホで調べて水やりから肥料やりと学んで、最後は実桜さんに教えを乞えて去年やっと花を咲かせて実になりました。りっ君ならこう言った小さな喜びを分け与えたいのでしょうね』
そんな植田の情報。
すごく感動的な話だが、金柑は放っておいても花を咲かせて実を熟させる。
畑で何年も放置したのに零れ落ちた種から芽が出て繁殖する強さももっている。だけどそれだって野生の力であるからの話しで人の手が入れば弱々しくなる。抜根した時に抜けれなくて根っこを鋸で切り落としたように自然に伸ばされた根っこを短くし、そして余分な根っこも整理したせいでその年は花芽も付けなかった。翌年辛うじて咲かせたもののその数僅か。だけど陸斗の努力によってその数を増やし、そして参戦した実桜さんの実力はもういらないほど金柑の木は体力を取り戻していた。
その後のメンテナンスもあるだろうが、タイミングとして手を入れた実桜さんに尊敬の念を向ける陸斗によって金柑の木の為にも弟子入りした事も理由の一つだろうが、金柑の世話位園芸部だってできる。なんせ世話もしなくてもいいのが金柑の木だ。そりゃ世話した方が実が大きくなって良いのだろうが、しなくても実を生らす生命力を見誤らないでほしい。
俺が留学に向けて奔走している間の出来事だった為に見逃した事だったがそれが今大活躍している。
木に登り、僅かなロープとベルトで身体を支えてデンノコで枝を打ち落し、風通しの良い林を作り上げる陸斗。
きっと圭斗が見ればなんでこうなったと頭を抱え、宮下が見れば立派になったと涙を流すと言う想像の付く光景に俺はどうにでもなれと思っている中、陸斗に学ぶアレックスは物凄く楽しそうだった。
「木登り何て危ないからするなって言われたけど、この景色は木を登らないと見れない景色だな」
こんな所で天職を見つけてしまったアレックスは陸斗に剪定を学びながら樹形を整える事を覚え、今は枝打ちを学んでいた。
「アレックスさん、景色に意識を取られると怪我をします。枝の伸び方を見て枝打ちに集中してください!」
陸斗の的確な指示に慌てて視線を枯れ枝に向け
「まずは枝打ちですね」
「枯れ枝を落しきってください!」
そんな景色をケリーは地上から空に向かって見上げていた。
ケリーはアレックスのように木を登る事に恐怖を抱いてただ見上げるしか出来なかった。
実家の二階のテラスから景色を眺めるのが好きだったが、木に登って…… と言う事は終ぞ出来なかった。
高所恐怖症。
と言うまでもないが。不安定の足場は足がすくむと言う様にそこから足を進める事が出来なかった。
そして……
「綾っち!なんかの幼虫を見つけたよ!!!」
楽しそうに投げつけようとする水野の背後を追いかける様にウィルとクリフが追いかけてきた。そして幼虫と言うより芋虫を俺に投げつけてくる水野に悲鳴を上げる綾人を笑う二人を眺めながら宙に放り投げられた幼虫に嫌悪感を抱いて動けずにいるケリーは畑作りからも適性がないと言われたばかりだった。
「水野!おまえなんてひどい事を!!! 畑に殺虫剤蒔いてやる!」
綾人はすかさず取り出したスマホで殺虫剤を大量に購入しようとするのを見て
「綾人さん、それを蒔かれると野菜としてお店で提供できなくなるのでやめましょうね」
飯田が綾人のスマホを取り上げて没収するのだった。
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